「なにをクラスだけじゃなく真名まで正直に名乗ってるのよっ、このバカ!」
戦場に立つ双方が超常の域に立つ英霊同士の戦いとなれば、ひと当てすれば大まかな判断がつくクラス名ではあるが、その「ひと当て」をするまでだけでも情報を秘匿するのが重要であろう聖杯戦争。
そんな聖杯戦争に、独断でクラス名および真名すら教えてしまうようなサーヴァントが果たしているだろうか?
「名乗られたのなら私も名乗らぬわけには行くまい。私はストロング・ザ・武道のサーヴァント、超人閻魔……かつてザ・マンと呼ばれていた男よ」
いた。
アサシンの佐々木小次郎……そして武道にとって、己の情報の秘匿というのは大した重要ごとではないようだ。
「む、見事な名乗り。婦女子に狼藉を働いていた男ではあるが野卑にあらず、か」
「グロロー。この争いが聖杯戦争を名乗りサーヴァント同士の戦いであるという名目がある以上、相手がサーヴァントであるならば女だからとて手心を加えるのは逆に侮辱というものよ~」
「ふむ、成る程。いや、これに関しては非は私にあるというべきか。多少なりともその女の人となりを知ってしまっているがゆえに、女として扱ってしまったが……敵として現れたのなら例え怯える女が相手でも斬るが礼儀であった」
「ほう、貴様キャスターと知己であったか……いや、だからこそ助けたのであろうがな」
「ちょっと!」
尻餅付いてたキャスターが立ち上がってお尻をパタパタ叩いて埃を落としながらアサシンに詰め寄る。
余計なことを言うな、黙っていろ、と言いたげだ。
その頃には衛宮くんのサルベージも終えていた凛ちゃんとイリヤ。
キャスターが声を荒らげたこともあって3人のサーヴァントに注目している。
一方その注目されているアサシンたちはどうかというと。
「ん? どうしたマスターよ」
「ばっ! 何を言ってるのよ!」
「グロロー。マスターだと?」
「うむ、こやつが私を召喚した魔術師、マスターよ。サーヴァントがマスターになってはならぬというルールの有無は不明だが……不正の一種であろう。それがゆえに私のようなサーヴァントのまがい物が召喚された上に、私にはこの寺の山門から一定の距離を離れられぬというペナルティが付いてしまったのだからな」
「だから! それを! ばらすなって言ってるのよー!」
「今初めて言われたのだが?」
「こっ……このっ……!」
注目していたら明かされる驚愕の真実。
今この場に、敵サーヴァントが二名。
キャスターとアサシン。
そのうち真名が明らかになったのがアサシン、佐々木小次郎。
しかしその実態は、キャスターがサーヴァントの身でありながら呼び出した不正サーヴァントであったという……驚きである。
まさか戦う前からここまで相手の情報が手に入るだなんて思わなかったのが、凛ちゃんだ。
「聖杯戦争って情報の秘匿も重要な要素と思ってたけど違ったのね」
若干呆れ気味につぶやくのだった。
「じゃ、夜の寺にサーヴァントが三人……勝負でしょう」
「くっ!」
グダグダになりかけてた空気。
しかし勝負を予想させる凛ちゃんの言葉で緊張が走る!
キャスターにのみ。
アサシンは涼しげな態度の中に、愉しみを見出しているようにすら見える。
「召喚されたはいいが門番をやっていろ、などと言われた時は拍子抜けであったが……ふむ、心躍る死合を得る機会に恵まれるとは、私も中々の幸運に恵まれたようだ」
「これでキャスターとアサシンをやっつけたらサーヴァント六人分の魂が私の中に入るのよね……なによ、聖杯戦争っておじい様に聞いてたのと違って全然簡単に終わるんじゃない」
「あれがキャスターかぁ……結構美人だなぁ。いくら聖杯戦争だからって殺しちゃうのひどくないか?」
「セイバーを自殺させた人が何言ってるのよ」
ほかの連中はこんな感じで、のんびりムードだ。
今から死闘が始まるというのに当の本人であるアサシンが一番涼しい顔をしているのが、キャスターにとっては気に入らないことでもある。
言わなくても問題なかった情報をペラペラと喋ってくれちゃって……と、ちょっと憤る。
「さて、では早速マスターを守るために、サーヴァントの私が前に出て戦おうと思うのだが……それで良いのかな? マスターよ」
などと言って殊勝な態度だが、まったくもってありがたくないと思っているのがキャスターだ。
「グロロー。私は二人同時でも一向に構わんのだぞ?」
「そのような事を言ってくれるな。お主ほどの相手を前にして、己の技量の限りを尽くし戦いたいと思わぬ武人はおるまいよ」
「グロロー! その意気やよし! 凛よ、ゴングを鳴らすのだ!」
「は、はい!」
カァーン!
こうして、キャスターそっちのけでストロング・ザ・武道VSアサシン、柳洞寺の境内バトルが今、始まる。
ゴングは高らかに鳴ったが、その戦いの立ち上がりは静かなものとなった。
武道とアサシン。
二人のサーヴァントに動きは見られず、睨み合っているのだ。
武道はいつもの、偉そうに腕を組んでの仁王立ち。
一方のアサシンは長い刀を両手に持ちながらも、だらりと力を抜き切っ先が地面に触れそうなほど。
「むむむ、両者動きがないわ。きっとこれがジャパニーズサムライの、静の戦いと言うやつなのね。ワビサビ!」
「あんたいつの時代の外人よ。でも意外ね、お互い好戦的な性格っぽいからガンガン打ち合う、さぞ派手な戦いになるかと思ったのに」
「キャスターってよく見たら耳が尖ってるな。エルフか。エルフなのか」
対して凛ちゃんたちはすっかり余裕の観戦モード。
武道が負けるとは全然思っていないみたい。
二人のサーヴァントは動きがないように見えるが、実はジリジリと近づきつつあるのだが、果たしてそれに気づいているのか。
そして、一定のラインを超えた時ついに。
きぃぃぃん。
硬い、金属音が聞こえた。
見れば、アサシンの構えが変わっている。
刀を肩の高さまであげて水平に構える不思議な構えを取っているのだ。
一方の武道。
こちらも腕組みを外し、左手を顔の横に折りたたんでいる。
よくよく見れば、その左腕の一部が削り取られているのが見える。
「ふむ、見事。一太刀で首を飛ばすつもりだったのだがな」
「グロロー。貴様も下等サーヴァントに似合わず中々のやり手のようだな」
二人のサーヴァントの会話から、アサシンが仕掛け、武道がガードしたのだと読み取れた。
しかし凛ちゃんたちには言われても見えなかったほどの戦いである。
アサシンの動きが見えなかったのは、かつて見たランサーをアサシンが素早さにおいて上回っている……それだけが原因ではないだろう。
静から動。一瞬の攻防。虚と間合いの取り合い。
そういう駆け引きが合わさることで、本来の速度を何倍にも感じるように戦っているようなのだ。
だからこそ、攻防が見えない。
そして結果だけが見えるのだ。
その一合目の結果が、相手はノーダメージで武道は腕に刀傷を受けるという結果なのだが。
「ちょっと凛。これ結構やばくない?」
「そ、そうね……相手は刀を使ってるのに武道はなんでか素手で戦うみたいだし」
「竹刀で戦えー、って言わなくていいのか? 遠坂」
「言っても聞く武道じゃないわよ」
ギルガメッシュやキン骨兵など、武道とのファイトスタイルと噛み合わないために若干、苦戦しているように「見えていた」戦いはあった。
しかし、この戦いは初めて武道が「苦戦する」戦いなのかもしれない。
それにちょっと焦った凛ちゃんは治癒の魔術を武道に使おうとする。
珍しくマスターらしいサポートをする機会に恵まれてちょっと張り切って。
だがしかし。
「グロロー。凛よ。試合中にそのような無粋な事はやめてもらおうか」
「な、何言ってんのよ! 卑怯とか言うんじゃないでしょうね、聖杯戦争でマスターがサーヴァントのサポートをして何が悪いのよ!」
「グロロロー。戦いの性質上、卑怯がどうこう言うつもりはない。しかし、今に限って言えばそれは余計なことなのだ」
武道は凛ちゃんのサポートを不要と断じる。
その理由とは一体何か。
「グロロー。今受けた傷を無かったことにしてしまえば余計な油断が生まれる。それはこやつとの戦いには不純物となろう。一瞬の判断に狂いが生じれば完璧な戦いにも狂いが生じようぞ~」
そういう事らしい。
何を言ってるんだか……と、思う反面、ランナーズハイのように疲労した状態で初めて見える境地もあるというので、武道の発言をすべていつものゆで理論だと呆れた目でツッコミすることも凛ちゃんには出来ない。
つまり……この戦いに自分に入り込む余地はないのか? と凛ちゃんは臍を噛む。
一方、凛ちゃんと違いニヤリと笑うキャスター。
何か悪いことを考えたようだ。
せっかくの美人が悪者っぽく見える。
「でもドS美人に踏まれてなじられるってのも男として憧れるよな」
衛宮くんにとってはマイナスにならないようだけど。
そんな悪者顔キャスターのとった手段とは……
「アサシンよ、残り全ての令呪を持って命じる」
「令呪!」
そう、令呪だ。
マスターに3回だけ許可された、サーヴァントに対する絶対命令権。
困惑してるセイバーに自害させるなど嫌がることを強要することもでき、その他にも短時間のパワーアップや、火事場のクソ力のようにすごいパワーを任意で引き出すこともできるすごい能力。
それが令呪。
キャスターもまた、アサシンのマスター。
ゆえに令呪を持っているのだが、その令呪を使ってなんと命じるのか?
「目の前のサーヴァントに勝ちなさい!」
キャスターの令呪が一瞬強い輝きを放ち、消える。
キャスターの令呪発動だが、特に物理的に何かが動くことはなかった。
しかし、戦っているサーヴァント……アサシンと、そして武道は確かな変化を感じ取っていた。
次いで、変化を読み取ったのはマスターの凛ちゃんだ。
聖杯戦争のマスターはサーヴァントをその目で見たら、なんとなく能力がわかる、という能力が与えられるので、アサシンの目に見えない変化が見えたのだ。
「あ、アサシンの全ステータスのランクが……2つ上がっている!?」
という変化が見えた。
さすがに令呪を使用しただけあって、すごい能力の上昇率である。
いや、一瞬、もっと短い時間に範囲も限定して令呪を使えば、2ランクと言わず、3ランク、4ランクステータスを上げることも可能かも知れない。
しかし、その使い方の場合はタイミングがシビアになる。
一方、この使い方であれば、今の武道との戦いが終われば令呪も無意味と消えるのだが、逆に言えばこの戦いの最中は常に2ランクアップした状態で戦えるのだ。
その結果、平均値においては武道に及ぶべくもなかったはずのアサシンのステータス。未だに
「ほう、力がみなぎる……絶好調にさらに上乗せをしたような感じか。まさかキャスターがこのようなことをするとはな」
「ふん、何とでも言いなさい。本当は飼い犬の制御を失うような事はやりたくなかったけど……ここでの勝機を逃すわけには行かないのよ!」
一対一の試合が始まった以上、なぜか直接手出しをするのはダメな気分になってしまったキャスターにとって、これがギリギリの範囲で手が出せるサポートでもあったのだ。
「ふむ……期せずして能力が上がってしまったが……卑怯とは言うまいな?」
「グロロー。能力を上げたければいくらでも上げるが良い。だがな、貴様の目の前にいるのは、完璧に極まった完璧超人であると言うことを忘れるでないぞ」
外的要因で能力が上がったわけではあるが、それはお互いのサーヴァントであるという事情を考えれば卑怯な行いでもない。
殊更に騒ぎ立てずに戦いを続けるのが、武道とアサシンである。
「ま、まさかあんな手を使うなんて……こうなればこっちも、令呪で武道の能力の底上げを……!」
「グロロー。無駄だ」
キャスターのまさかの手段に驚いた凛ちゃん。
しかし、だったら自分も同じことをすれば同じだけ能力が上がってハンデは無くなるはず……と、思って令呪を使おうとするのだが、武道はそれを無駄と言う。
なぜか?
「なんでよ!」
「グロロー。凛よ。お前はもうすでに令呪を三回使っているではないか~」
え? いつ? と驚く凛ちゃん。
「グロロー。もう忘れたのか」
覚えのないことに困惑する凛ちゃんに武道は言った。
第一話での
「いや、あの、それでもちゃんとクラス名と真名、それにあなたの聖杯に託す願いを聞いておくのがマスターとしてのマナーなので」
これで一度目。
第五話での
「うっさいわね、明日以降学校でどうするのか、ってなるでしょ。早くしてよ」
これで二度目。
第八話での
「わかってるわよ。私だって疲れてるからとっとと帰って寝たいのよ。わかったわね武道。ささっと手早くたたんじゃいなさい」
これで三度目。
で、ある。
「……ちょっと!? あれ令呪を使ったことになってたの!? ていうか、衛宮くんの時なんてあんた実質何もやってないじゃない!」
これには凛ちゃん、ちょっと切れかけた。
「黙れ」
「アッ、ハイ」
でもやっぱり武道は怖いので納得するしかないのであった。
理不尽である。
しかしその理不尽はキャスターにとっては追い風。
予定外の幸運にニヤリと笑う。
「ふふふ、どれだけ強力なサーヴァントを持っていても、まさに宝の持ち腐れ……だったようね」
「ぐぬぬムカつく」
まだまだ勝利を得たわけではないが、凛ちゃんに対する嫌がらせも兼ねて余裕の表情を見せるキャスターであった。
して、試合の方は?
がきん、と硬質な、そして鈍い音が響く。
鈍く感じた理由は、まるで複数の音が同時に鳴ったように聞こえたから。
アサシンは凛ちゃんたちの目には見えないものの、何らかの攻撃を放ち、後ろに飛び退いたようだ。
一方の武道は、両手で頭をガードした構え。
その両腕……さらに首筋には薄く切り傷が見える。
今の音は、その3つの切り傷を作った音だろうか。
「な、なんじゃーあれはー!?」
「音は一回しか鳴っていないのに武道には三つの傷がついておるぞー!?」
これに驚くのは衛宮くんとイリヤ。
ノリが男塾だ。
そんな外野の驚きに答えるのは
「秘剣・燕返し」
アサシンである。
佐々木小次郎である。
こやつ、クラス名と真名をバラしただけでは飽き足らず、聞かれたらスキル名まで答えてしまうのか。
「む、む~! あれがツバメガエシ! ガンリューの佐々木小次郎が使ったと言われる必殺技ね! バトル・オブ・ガンリュー!」
「佐々木小次郎は存在すらフィクションじゃないかと言われて記録があやふやな侍で、その使っていた技も書物によって諸説いろいろだけど……あれが本物なのかぁ」
「あんたら他人事だからって余裕ね……でもああいう今の時代で見れないものを再現して戦う姿が見れる、っていうのも聖杯戦争の醍醐味なんでしょうね。ちょっと感動する気持ちはわかるわ」
打てば響くように答えてくれるアサシンは客にとっては中々のエンターティナー。
凛ちゃんたちもプチ興奮である。
キャスターは余計なことを言うのはやめて、と胃を痛めているけど。
「グロロロー。佐々木小次郎……か」
「ふっ、流石は閻魔。全て知っている……か。では私は舌を引き抜かれるのかな?」
一方の武道とアサシンの様子はおかしいが……?
「むむっ、どういう事かしら今の会話。わかる?」
「私に分かるわけないでしょ」
「ここは解説のキャスターに聞こうぜ。キャスターさーん、今の会話の真相、何か知りませんかー?」
「言う訳無いでしょうが、敵同士なのに」
戦ってない人たちは一人を除いてお気楽ムードでもある。
「私は佐々木小次郎ではない。名など知らぬ。佐々木小次郎という侍の人生も知らぬ。私が佐々木小次郎を名乗る理由はただ一つ。聖杯が呼び出したかったサーヴァントの条件が「燕返しの使える人間」だったからだ」
そんな彼らに答えるのは、アサシン。
アサシンのサーヴァント……佐々木小次郎。
彼は佐々木小次郎として生きて名を残した英霊だから召喚されたのではない。
聖杯が燕返しの使い手に佐々木小次郎と名をつけたから、彼はアサシンのサーヴァント・佐々木小次郎として召喚されているだけなのだ。
「グロロー。その通り。巌流島で宮本武蔵と決闘した佐々木小次郎とこやつは別人よ~」
「なんだってー!?」
「イリヤ、聖杯ってそんな事もするの!?」
「知らないわよ!」
衝撃の事実。
それに驚くのは凛ちゃんたち3バカのみ。
アサシンのマスターであるキャスターは驚いてはいないようだ。
それもそのはず。
キャスターはすでに聖杯が歪んでいる事を知ってしまっている。
だから呼び出された英霊もまた、歪みを生じてしまったのだろうと当たりがついているのだ。
それを言わないだけで。
「グロロー!」
にわかに騒がしくなる放送席……もとい、凛ちゃんたちだったが、武道が一喝して黙らせる。
「さて、アサシンよ。先ほどのお前の問いに答えておこうか……舌を引き抜く、などと言うのは私の仕事ではないためにどうでも良いことよ。そしてなぁ……私にとっては貴様が偽であろうが何であろうが関係はない! 全て等しく下等サーヴァントよ! 違うというのならば、その剣を持ってして私を超えて見せるのだな~!」
そして、閻魔の逸話の一つ……嘘つきは閻魔大王に舌を抜かれる、というのが嘘っぱちらしい事も暴露してしまった。
こういった伝説の真偽の確認ができるのもまた、英霊を現代に再現する聖杯戦争ならではの醍醐味であろう。
「くっく。下等……か。人ならぬ神仏の類であればその物言いも納得のもの……だが私も人としての矜持、己の技にたいする意地というものはあったらしいな。その言いよう、些か不愉快だ」
いちいち偉そうで相手を煽るかのような武道の物言い。
アサシンはそれに対し憚る事なく不愉快というが、その表情はどちらかというと楽しげにすら見える。
「グロロー。不愉快か。ならばどうするというのだ?」
「斬って捨てるのみよ。いかな神仏、閻魔と言えども斬られた首が地に落ちてなお、人を下等とは言えまい」
どうやら武道の物言いはアサシンのやる気に火を付けたようだ。
いっそ涼しげな態度でありながら、その内に秘める心は熱を持っているようである。
「グロロー! よくぞ言った! ならばかかってくるが良いわ!」
「言われるまでもなく……斬る!」
そして再開される戦い。
再びアサシンの燕返しが放たれ、武道が受ける。
「グロロー! 私の体は岩よりも硬く、鎧のように全身を鍛えている! その程度で斬れると思わんことだな!」
「なるほど。私も生前は怠惰であったか。燕を斬るための工夫こそすれど、岩を、鉄を斬ろうとは考えたこともなかった」
アサシンの攻撃では武道の耐久力を突破することはできないのか、武道は余裕である。
しかしまた、アサシンも焦りを見せることはなかった。
「なれば、この場で岩を、鉄を、鎧を、全てを斬る技を練り上げるのみ。死後もこうして剣の工夫を考えるしかないとは、私はとことん度し難い人間のようだ」
「グロロロー。人間の研鑽とやらが完璧に届くなどという思い上がり、それを叩き潰してこその完璧超人よ~」
武道、そしてアサシン。
態度も違えば戦い方も違う二人だが、共通している点があるとすればただ一点。
戦いにおいて、お互い相手に譲ることを知らないという事であろうか。
「アサシン!」
「む?」
そんな時、セコンド……ではなく戦いの外のキャスターからの魔力がアサシンに……アサシンの刀に降りかかる。
「あなたの刀に自動再生の魔術をかけたわ! 折れない限り刀の劣化を気にせず戦えるから……勝ちなさいよ!」
「ふっ、そうか。聖杯戦争とはマスターと協力して戦うもの、でもあったか。さて武道よ。卑怯とは言うまいな?」
「グロロー。当然だ。下等サーヴァントごとき何をしようと叩き潰すのみ。それができずして何が完璧超人か!」
アサシンの持つ刀……
だがいかな名刀と言えど人の手によって作られた剣に過ぎない。
ましてや、日本刀は表面と内部で硬さに差が有り、へし折れにくい代わりに硬いものを斬り損ねたときは刃が逆に反る……腰が伸びた状態になる事も珍しくない。
己の刀に不満を言うことなどないが、頑丈な武道との戦いにおいて何度万全の技を振るえるか? そういう不安がないとは言えなかった。
しかし、キャスターの援護でその心配もなくなった。
手に持つ武器、剣の構成材質が鋼であろうとサーヴァントの体は所詮は魔力の塊、それゆえ再生機能の付与はキャスターにとってそれほど難しい魔術ではなかったのだろう。
いや、ひょっとしたら真の鉄であろうとキャスターなら魔術で再生する機能を付与することは容易いのかもしれない。
しかし、ここまで刀の持ち手に違和感を与えずに能力を付与できるのは、やはりキャスターが凡百の魔術師ではない優れた魔術師である証拠か。
いや。
(キャスターめ、よほど勝ちたいのであろうな)
アサシンは刀を技を振るいながらそう思う。
(到底いいマスターとは言えぬ。いい関係を築けた覚えもない相手ではあるが……勝ちに拘るその姿勢だけは本物)
冷静に考えながら、アサシンは剣を振るい続ける。
本来は首を囲むように、三方向から同時に斬る事で回避も防御も許さぬ必殺の剣となる燕返しだが、それが必殺とならぬ対戦相手に。
(そして、意図したものでも望んだものでもないのだろうが……これほどの相手との戦いを用意してくれた女でもある。ならばせめて勝利くらいは与えてやりたかったが)
首を斬る。
ただ首を斬る。
アサシンの剣はそのための剣だ。
人が相手であれば防ぎきれるものではあるまい。
仮に二刀による防御をしようと、その防御を掻い潜った三つ目の太刀が相手の首を刎ねる。
空を舞う燕を斬るための工夫を重ねているうちに、気付けばそういう技が完成していた。
人が相手であれば何者であろうが斬れる自信があった。
そして相手が人ならざる超常の力を振るう英霊であろうと、己の剣なら互角以上に戦えるであろうと思っていた。
しかし。
「勝てぬ……か」
「グロロー!」
武道の攻撃がアサシンに掠った。
ただのパンチに見えるが、規格外のパワーを持つ武道の拳はもはや普通に振るうだけで一撃必殺の奥義となる。
例え令呪による強化で全ステータスが強化され、耐久力が上がったとは言え、元の耐久力が低いアサシンにとってその攻撃は掠るだけでも致命の一撃となりかねない。
現に今掠ったのは肩の先、少しが触れた程度なのだが、アサシンの体は引っ張られるようにぶっ飛ぶ。
「ふんっ!」
「グロロー!」
だが、崩れた体制からでも、アサシンは武道の首を取るために剣を振る。
このアサシン。
例え正規の英霊でないとは言え、此度の聖杯戦争において……いや、歴代の聖杯戦争においてすら、純粋な剣技で彼に勝るサーヴァントは存在しなかったであろう。
それほどの腕だ。
その上で、令呪とキャスターからのサポートによる強化をされたアサシンは、今や白兵戦に限って言えば歴代の聖杯戦争の全サーヴァントの中でも2番目に強い存在と言えるだろう。
しかし、そのアサシンをもってしても勝てぬ相手がいる。
それは不運なのか……それとも、強者を求める武芸者にとっては幸運と言えるのか。
「燕返し」
その技は、既に武道に通じない。
しかしアサシンには燕返ししかなかった。
なんど首に斬りつけようとも止まらない武道。
その事実にアサシンは落胆する。
徒手空拳対剣術。
生前の常識であれば剣術の方が圧倒的有利であろうに、戦う相手が人でないというだけで、こうまでその常識が覆されるとは。
「所詮は暇つぶしから始めたこと……とはいえ、こうまで通じぬとは。私の剣は所詮は人の限界を超えぬもの。人外を相手とすれば途端に地金を晒す児戯に過ぎなかったとはなぁ」
卓越した技量の持ち主であるアサシンは己の限界を知っている。
だからこそ、この勝負の行く末が既に見えてしまっていた。
優れた将棋打ちが50手先の詰みを悟ってしまうかのように、この戦いの終局が見える。
令呪によって強化された現在の自分の戦闘力、何度斬り損ねようと劣化する心配のない刀、ここまでの攻防で見た武道の動き。
それらから算出されるこの戦闘の終局は自分の死、以外にない。
どうやらキャスターのために勝利を、というのは無理のようだ。
もっとも、最初から良い主従関係というものでもなかったので、キャスターのための戦いなどという意識は大して持っていなかったが。
それでも生前……いや、有史以来、人間の敵としてこれ以上の存在はいない、とさえ思えるような強者との戦いを与えてくれた恩にくらいは報いたいという思いもなくはなかったのだが。
秘剣・燕返し。
佐々木小次郎として召喚されるに足る技の使い手として召喚された自身の象徴となる技。
この死合の中だけでも何度振るったか数え切れない。
それほどに振るってなお、敵が健在ということは単純に自分の技が劣っていたのだと思うよりほかにない。
悔いは残るが……仕方あるまい。
たんっ、と音を立て大きく後ろに下がるアサシン。
その直前にも燕返しで武道の首を取り囲むように3つの斬撃を同時に飛ばしたのだが、やはり武道は揺るがなかった。
それはもうわかりきっていることでもあるのだが。
「マスターよ」
「アサシン?」
そうして、武道との間合いを大きく開けてからアサシンはキャスターに声をかける。
「すまんな、私ではやつに及ばぬ」
言葉の内容ほどに、申し訳ないという気持ちの見えない謝罪の言葉。
言ったアサシンはあっさりしたものだが、言われたキャスターの方は絶句する。
「な、何を言ってるのよ! まだ一発かすった程度だし、回復させたわよ!?」
「うむ、この攻防がこのまま続けよというのであれば、朝まで戦えるのだろうが……そうはならんのでな」
サーヴァントと言え、元が戦う人でなかったキャスターにはわからない事であろう。
それでも小次郎は説明をしないと言うのも不義理が過ぎると思い、あえて説明をする。
「私はやつの首を落とそうと、ありとあらゆる工夫を凝らしている最中だ。ただ同じように刀を振るっているだけに見えるかもしれんが、間合い、距離、角度、その他様々な要素を変えて一太刀一太刀を振るっていたのだがな。ずいぶん前に私にできる全ては出し切ってしまっているのだ。その上で、さらなる工夫を……と、やっていたのだが」
「グロロー。貴様が慣れるのなら私もまた慣れる、という事だ」
「うむ。こやつ、な。相手の動きに合わせて技を修正する精度が私とは桁違いなのだ。まるで数千年、数万年の経験から当てはめて動いてるかのように」
アサシン、佐々木小次郎には「宗和の心得」なるスキルがあり、何度同じ技を使おうとも見切らせずに戦うことができる……はずなのだが、スキルではなく純粋な能力によるゴリ押しで武道はアサシンの剣を見切りつつあったのだ。
その結果が、先ほどのかすった攻撃に現れている。
あれはマグレ当たりなどではない。
当たるべくして当たった攻撃、という事だ。
「今の一手では掠っただけだが、次はより深く、その次はさらに深く打ち込まれるだろう。もはやそれは止められん……この勝負、詰みだ」
「くぅっ」
自分の敗北を語るアサシンだが、その表情には焦燥感というものはない涼しげなもの。
キャスターの方が苦しそうである。
「こっ、このっ……役立たず! 勝てないからどうするって言うのよ! 今から負けた時の言い訳かしら?」
「うむ、その通り」
そんなアサシンの態度に腹を立てたキャスターの罵り声に対する返事もそっけないもの。
このアサシン、もはや勝負を完全に諦めたのか。
「グロロー。下等サーヴァントに相応しくつまらん幕引きであったな。実につまらん! アサシンよ、もはや戦う気がないというのであれば、とっとと自決するがよいわ~」
「黙れ」
そこで。
涼しげな態度とは裏腹、弱気とも取れるアサシンの発言に呆れ混じりに武道が茶々をいれるのだが、アサシンはそれを一刀両断。
今までの、涼しげな態度や負けを認めたような発言とは裏腹に、かつてないほどにその目には力が宿っている。
「ほう」
一方の武道はそんな態度を面白がるような態度である。
相変わらず目は釣り上がって血走りまくって怖いのだけど。
「確かに勝ち目はないのかもしれん……人は所詮、人にしかなれず、神仏の手のひらの上から零れ出ること叶わぬ矮小な存在かもしれん……だが、それでも下等下等と言われて気に入らんと憤る事をやめてしまってはならんのだ」
「ふん。それで憤った貴様はなんとするのだ? 下等は下等。所詮なにもなす力などなく、我らに管理、粛清されるだけの存在ではないか~」
武道の煽りスキル健在なり。
しかしアサシンどこ吹く風と、瞑目し受け流す。
そして目を閉じたまま剣を構える。
先程までの、燕返しを放つ際の独特の構え……ではなく、刀を肩に担ぐかのような蜻蛉の構えで。
「その首すっ飛ばす事ができればさぞ爽快であったろうが……首はもはや諦めた。これより修羅道に入りただ貴様を……斬る」
言葉と同時に目を見開き、アサシンは消えた。
いや、消えたように見えるほどの速度で動いた。
次の瞬間には、アサシンの剣の切っ先が武道の脛に深く食い込んでいた。
「ヌゥッ!?」
これにはさしもの武道も驚きの声を上げる。
体勢もぐらりと崩れた。
「あ、ああー!? 体勢が崩れたら燕返しがくるー!?」
「ぶ、武道ー!」
武道の体勢が崩れたことに驚くイリヤと凛ちゃん。
二人とも、アサシンの次の一手は燕返しかと思ったのだが?
「シッ!」
「グロォ~!」
アサシンの次の一手は燕返しにあらず、武道の脇に切り込んでいた。
さらに武道は仰け反るが、ここでもアサシンは燕返しではない。
武道の股下から脳天めがけた斬撃を放っていた。
流石に察した武道が掌で受け止めようとするが、その掌にも深々と切り込みが入り武道が出血する。
「こ、これは~!? 一体どう言うことだ!?」
「さっきまでは斬られても多少の切り傷こそあれど、出血するほどのダメージには届かなかったのに!」
衛宮くんと凛ちゃんは突然の武道の劣勢が理解できなかった。
解説のキャスターに聞いてみたいところだが、キャスターも驚いている。
そこで解説するのはミート君イリヤだ。
「アサシンは燕返しを捨てたんだわ!」
「どういう事なの、イリヤ!」
「教えてくれ、雷電!」
「うむ!」
「さっきまでのアサシン……佐々木小次郎は、その象徴たる燕返しに拘っていたわ! それも当然ね、だってあれは魔法の域の剣技。佐々木小次郎にしか使えない奥義だもの!」
「でも通じなかったよな?」
「そうよ! 通じなかったの! 確かに燕返しは魔法の域にある超絶的な剣技、人外の技かもしれないわ! でも所詮は人の世界の技でしかなかったの!」
「それの何が悪いのよ」
「悪くはないわ! 本来ならね。でも小次郎は出会ってしまった……人ならざるものと! 燕返しといえど所詮は人を斬る技。神には届かなかったんだわ! あのまま続けてもきっと……いずれは燕返しの3つの斬撃、全てを躱され小次郎は敗れ去っていたでしょうね!」
「まぁ……本人はそう言ってたなぁ」
「だから小次郎は燕返しを捨てたの! 生前の人生で練り上げた剣をより高みに持っていくことを諦めたのよ!」
「諦めたって割には強くなってるように見えるんだけど?」
「小次郎が諦めたのは燕返しを持って神仏を斬ること! 剣で神仏を斬ることを諦めたわけじゃないわ! そして剣とは燕返しを使うための道具にあらず……剣とは、ありとあらゆる技に応えるための武の器……すなわち『武器』なのよ!」
「つまり……どういうことだってばよ?」
「小次郎は一度極めの域に達した剣を捨て去り、再び新しい剣術を作ろうとしているの! 今の小次郎の剣は剣聖の弟子モドキの剣じゃないわ! 神を斬る修羅になるための剣なのよ! もはやフタイテン!」
「うん、さっぱりわからん」
「私も」
イリヤが言いたいのは、アサシンは洗練された燕返しをさらに進化させ神仏を斬る技へと昇華することを諦め、再び剣と向き合い、剣とはどのように人を斬るものなのか……いや、修羅の剣はどのように神を倒すのか、と問いかけ、その答えを模索しようとしているのではないか? と言いたかったらしい。
しかし凛ちゃんも衛宮くんも、ついでにキャスターもサムライの考えなんてわかるわけがないので、何がどう違うのかさっぱりである。
まぁそれでも、燕返しという完成度の高い技を捨て、一から新しい技を作る工夫をしてるのかなぁ? という事くらいは察することができたようだが。
「なによアサシン! できるんなら最初からやりなさいよ!」
「あわわ……遠坂、危ないんじゃないか?」
「そうよね……でも回復魔術は武道が拒絶してるし……絶体絶命じゃない!」
「心配しなくてもいいわよ、すぐ終わるから」
アサシンの猛攻、傷つく武道。
その戦いを見てキャスターは喜び、衛宮くんは驚き、凛ちゃんは焦る。
だというのにイリヤはもはや勝敗は見えたと言わんばかりの態度である。
それも武道の勝利を疑っていない態度。
そして。
「いけー! アサシンー!」
「グロロー」
キャスターの声援をバックにアサシンの鋭い斬撃が再び武道を斬るかと思えば、そうはならなかった。
武道の前蹴りでアサシンがぶっ飛んだのだ。
「アサシーン!?」
「や、やったぁ!?」
「いきなり武道の攻撃が当たったぜ!? どういうことだよ!」
「うむ!」
イリヤの解説が、再び始まる。
「アサシンの斬撃は、新しい剣は、ひょっとしたら神に届きかけたかもしれない……でもね。新しく生まれた未熟な剣じゃ勝てないのよ。積み上げたものが無さ過ぎる」
「どういうことだってばよ!?」
「攻撃も防御も回避も、アサシンは全てを構築しながら戦わなければならなくなった……でも、それだとどんなに頑張っても足りないのよ。時間が。だって武道はすでに心技体、全てが完璧の域にある完璧超人なんですもの。小次郎の新しい剣に対しても……武道にとっては経験したものよ。全く同じものを経験したわけじゃないにしても、武道の10万年以上に及ぶ鍛錬と戦いの引き出しの中には、似たような相手との戦いの対処法もあったんでしょうね。あとはそれを引き出せばおしまい。小次郎はこう来たらこう返す、それらの経験が一切ないような状態だから……対応しきれるわけがなかったのよ」
と、いう事だそうだ。
実際のところ、その解説が正しいのかどうかは……戦っていた二人にしかわからないことだが。
武道の蹴りでぶっ飛んだ小次郎は、地面に一度目のバウンドすらすることなく中空で消滅してしまった。
完全決着、である。
「グロロー。凛よ、試合は終わった。ゴングだ」
「は、はいっ!」
カンカンカァーン!
戦いの真相などわからなくとも、結果は出た。
そしてそれが全てであろうが……ここにストロング・ザ・武道VSアサシンの戦いに幕は降りたのだ。
「それにしても……武道がここまで出血するなんて」
「グロロー。下等なりに多少は頑張ったようだが……ふん。所詮は下等よ!」
いかな対戦相手をも下等と断じる武道。
彼の胸中は誰にもわからない……
「きぃー! アサシンのウスノロ野郎! せめて武道を倒してから死ねばよかったのに!」
そしてここに残る敵サーヴァントはキャスター一人。
そのキャスター、アサシンの死を、戦いを、まったくの無意味と罵るのであった。
これには日本かぶれなイリヤはちょっぴりムカっと来たが、きっと武道がいつものようにやっつけるだろうと思うことにする。
「グロロー。さて、次は貴様だな」
「連戦だけど大丈夫なの? まぁ流石に今度は治癒魔術を拒否しないと思うけど」
「グロロー。不要ではあるがなぁ」
凛ちゃんを伴い武道は歩く。
キャスターに向かって。
「くっ」
対するキャスター、どうすればいいのかと悩む。
武道がいかに強いとは言えその戦法は素手の格闘と竹刀での殴打がメイン。
ならば空に浮かび上がり魔術の連射で渡り合えるか?
そうとも思うが、キャスターはなんだか武道相手に空を飛ぶのは危険な気がしてならなかった。
超人は空を飛べるのだからそれは正解である。
だが、空を飛ばなければ勝てるわけでもない。
キャスターはどうあっても、勝ち目が見えない相手との戦いを前に、歯を食い縛り、睨みつける。
「グロロー。もはや戦力差は明らかであろうに戦いを諦めていないようだな」
その通り。
キャスターには勝ち目がないからと勝利を諦めるような潔さの持ち合わせはなかった。
頭の中で自分の持ちうるあらゆる魔術を武道に使った際の戦闘状況のシミュレート。
撤退も視野に入れたあらゆる考察を走らせ、その全てが武道に通じると思えない絶望に膝を折りそうになるが、キャスターは勝負を諦めない。
「グロロー。もはや勝敗は見えているであろうに諦めぬその意志の強さは中々のもの。よって恩赦を与えよう」
「恩赦?」
聞き返したのは、言われたキャスターではなく凛ちゃん。
そういやどこかで聞いたこともあるような? とも思う。
「そうら、くらうが良い~」
武道の指先から放たれるビババ光線。
この技を我々は知っている!
「あ、あれはー! 私のバーサーカーを一度は人間にした!」
「俺を赤子に幼児退行させた!」
「零の悲劇!」
そう、武道の必殺スキルのひとつである!
「あ、あ、あぁぁぁ……」
零の悲劇をうけたキャスター。
だがその見た目には大きな変化はない。
別に衛宮くんみたいに見た目そのまま、中身赤ちゃんになったわけではないのだが……
「あぁぁぁ……あれ? こ、これは?」
そして武道の光線が止まった時。
キャスターは自分の手をまじまじと見やり、その手で自分の顔を触る。
「え? え? これって……」
「ステータスが見えなくなってる……サーヴァントじゃなくなってるの?」
「グロロー。サーヴァントでなくなってはもはや私と戦う必要もあるまい」
なんと、キャスター本物の人間になってしまったのだった!
「ひゃっほう! やったー!」
その喜びの声が誰であるかは、Fate原作を知る読者には言うまでもないことだろう。