今回は本当に何も起こりません。伏線も張るだけ張って回収しないかもしれないです。
睨み付けるような、鋭い視線を感じた。現代の日本では、夜の海辺を歩くのは相当に危険を孕んでいる。それが一般認識ではあったが、規格外のこの男には多少の危険など気にも留めなかった。
「チッ……さっきからコソコソと様子を伺っているだけか……」
遥か遠くからベジータを警戒する深海棲艦たち。人智を超えたその力は人ならざる者にもその圧倒的な気を感知させるのだろうか。
「あいつらの手におえないような奴らがいないか探しに来たが……どうやら俺の出番はないな」
「気味が悪い気はいくつか感じられるが、この地球の奴らじゃ敵わんレベルの奴は流石にいないか…」
「戦うために生まれ、平和などとは無縁だったこの俺が、まさか平和を求めるようになるなんてな」
「昔の俺だったら一体どうしていただろうか……」
独り言のように呟くと、ベジータは来た道を引き返し、鎮守府へ戻っていった。
しかし、水平線の向うから覗く深海の者が、橙の球を手にしていたことには気が付くことはなかった。それは悪魔のような笑みを浮かべて、夜の闇に消えていった。
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―――鎮守府―――
ベジータ曰く、『口うるさい女は苦手だ』
「夜の浜辺に散歩に行ってたぁ?!」
ゆうべベジータが何をしていたのかを聞いた天津風は、驚愕した。深夜の海に行くなど、通常では考えられないことなのである。
「ふん、別に何もいなかったんだ、無事なら問題ないだろう」
「あ、あ、ああああなた、な、何考えてるのよ!!」
「そんな、夜に海に行くなんて、万が一何かあったらどうするのよ!!」
「別に心配せんでも大丈夫だ。その時は返り討ちにしてやるぜ」
「し、心配なんてしてるわけないじゃない!!もしそうやって勝手なことをされて事件でも起きたりしたら、鎮守府に迷惑がかかるのよ?!もう少し常識の範疇で行動しなさいよ!!」
顔を真っ赤にして怒る天津風。多少の照れ隠しもあるのだろう、我儘を言って聞かない子供のように、両腕をぶんぶんと振り回した。
「天津風ー?あんまりもたもたしてると学校に遅刻するわよー」
そこに陽炎がやってきて、天津風を急かすように言った。
「分かってる!……もう、陽炎が来たからこれくらいにするけど、これ以上勝手なことはしないでよね!わかった?!」
「チッ……仕方ない」
天津風は最後にそれだけ言い残すと、足早に執務室を出ていった。
「あはは、ベジータさん、怒られちゃったね」
一体いつからいたのかと思うほどに影の薄い提督が話しかけてきた。もちろん、初めから執務室で書類を片付けていたのだが。
「全く女は訳が分からんことで怒りやがる…。そういえばお前も学校とやらに行かなくてもいいのか?もう8時になるぞ」
その言葉は予想していなかった、とでも言いたいのか、提督は少し呆気にとられた。しかし少し考えた後、極わずかに寂しさを纏った表情で返した。
「そうだね、私も学校はあるけれど……。緊急の用事があるときなんかは、欠席したり遅刻したりもしなきゃいけないからね。今日学校に行かないのは、そういうこと」
「まだ若いのにこんなバカでかい土地を管理しないといかんのか……」
ほんの少し、ベジータは驚いたような表情を見せた。提督と同じくらいの頃の自分の息子と比べて、なかなかしっかりしている、と関心さえした。
「ふん…(それにしても俺はこの地球のことなど全く知らんな…)…少し、調べるか」
「え?ベジータさん、何か言った?」
「提督、俺は少し用事ができた。どこか調べごとの出来る場所を教えろ」
「調べごと?それなら図書館があるけれど、また突然なことだね。今少し忙しいから、長門にでも案内させるね。あの子普段全然人のためになることしないから、たまにはいいかな」
「自分で秘書艦やりたいって言うくせに全然仕事しないから役に立たないし…」ボソッ
「それに長門ってば私の体触ってばっかりで…。男の体なんて触って何が楽しいんだろうね」
「さ、さあな……」
笑顔で毒を吐く提督に、ベジータは寒気を感じた。怒らせたら一番不味いと、本能で察知したのである。
少し短くなってしまい、申し訳ありません。
何も進まない話、という区切りだとここで区切るのが一番よかったので…
さて次回は、橙の球なんてものが関係してくるかもしれないですが、橙の球って一体何なんでしょうね(すっとぼけ