慎二は桜の夢を守りたいようです(旧題:仮面ライダー慎二)   作:ワカメオルフェノク

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『僕はね、無駄なことはしたくないんだよ。だからさ遠坂、手を組まないか?』
                                間桐慎二




第二話

 

学校へ無事遅刻せずに到着した慎二は校門前に待っている少女達に一瞬げんなりした顔をするがすぐニコニコと笑顔になりながらその輪の中に入った。

 

「あ、おはようございます間桐先輩」

 

『おはようございまーす!』

 

「やぁおはよう皆、僕の事待っててくれるなんて嬉しいねぇ(すっごい面倒なんだけども)」

 

内心ため息を吐きながらも表情を一切変えない辺り彼は演劇部にでも入部すればいいのではないのだろうか。この演技力はあの遠坂とためをはれるだろう。一人が彼の腕に自分の腕を絡める。

 

彼女達と慎二の関係はただの先輩後輩の関係なのだ。弓道部で尊敬された、ただそれだけの関係なのである。

 

それ故に慎二は彼女達が何故今日も今日で校門の前で自分のことを待っているのか時々疑問に思いつつもそれはあまりにも無粋だろうと聴くことはなかった。これがどこかのヒロインホイホイなら息を吐くように簡単に聞いていたのだろう。特に桜へ。

 

まぁ彼も彼で、こんな時間にまで僕の事を待ってくれるなんて、あぁモテるって辛いな。なんて馬鹿げたことを考える始末である。終いには「ほら非モテども、勝ち組の僕との格差を知って自殺したくなったかー?」なんて内心馬鹿笑いする始末だ。

 

「―それでですねー、ってどうかしましたか?先輩」

 

「ん? あぁ、何もないさ」

 

彼を囲む一人の少女がその顔を覗き込んでいる。慎二の考え事をしている顔に何か違和感を覚えたのだろうか。それでも慎二は何事も無いかのようにいつもの笑みを見せる。すると何事もなかったように少女は話を続けた。慎二はそんな彼女に疑問を持つことなく学校の中へと歩んでゆく。

 

「おい慎二、副将が朝錬に来ないとは何事だ」

 

突如聞こえてきた女性の声、聞き慣れている慎二は驚くことなくそちらへ視線を向ける。そこにいたのは染めたような人工色でない自然な茶色のセミショートの少女、美綴綾子の姿があった。

 

美綴綾子、慎二と同級生であり同じ弓道部に所属する女子高生だ。主将であるためかよくサボる慎二とは衝突をよく繰り替えしている。それが原因なのかそんなに仲はよいとは言えない。実際のところ美綴自身サボるという理由で態々好き嫌いを決めてはいないのだが、完全に慎二の苦手意識からか一方的に避けているため若干不仲なのである。

 

だからなのだろう、仁王立ちの綾子にたいして慎二は面倒なのと遭遇したなぁと内心ぼやく。

 

「(それ、うちのサーヴァントに文句言ってくれないかなぁ)まぁそんな事言うなよ美綴、僕にだってゆっくり朝を迎えたくてね。見逃してくれよ」

 

「お前そう言って毎朝サボってるだろうが。明日はちゃんと来い!」

 

「あーはいはい。それはまた今度ね」

 

手短にあしらいつつ、慎二は下足箱へと向かう。正直朝が辛い彼にとって朝錬なんてものは完全に地獄の時間だ。意識のない時間に何やらされるかわかった物ではない。後ろから聞こえる綾子の声をBGMにしつつ慎二は穏やかに自分の教室へと向かうのであった。

 

「(・・・・・・げ、そういやライダーまだ朝飯食ってたよな? あの馬鹿(サーヴァント)、桜の護衛完全にしてないじゃんか!)」

 

割と穏やかではなかった。

 

 

 

 

「・・・・・・で? 何よ、急に呼び出したりして。敵同士である私に何か用なのかしら? 間桐慎二君?」

 

その日の昼、どこの学校も昼休みをとっているであろう時間帯。慎二は得意げな顔をして遠坂凛に声をかけ屋上に一緒に来ていた。

 

遠坂凛、綾子の友人であり、慎二の同級生その二である。容姿端麗、頭脳明晰、悪い噂一切なし、そのため殆どの男子生徒の憧れの存在で、常に優雅な立ち振る舞いを見せるお嬢様のような少女。所謂人気者である。そして魔術師でもある。

 

そんな魔術師に態々声をかける理由、それは聖杯戦争を知っているものならわかるであろう。

 

「何言ってんの? その敵の呼び出しに態々答えたってのならわかるだろ? ・・・・・・同盟を組もうって話さ」

 

同盟。そう、この聖杯戦争で潤滑に物事を運ぶため、そして勝利を掴む確立を上げるための策の一つ。その交渉に来ていたのだ。慎二は知り合いのうち、サーヴァントを召喚出来る人間の第一に凛が最も相応しいと睨み、声をかけたのだ。別に付き合いたいからではないらしい。

 

「言っておくけど、私はそのつもりは毛頭ないわよ? 考えてもみなさいよ、魔術の才の欠片もない貴方と同盟を組んで何かメリットがあるわけ?」

 

「いやぁ、参ったねぇこりゃ」

 

凛の反応にまるで「照れるなよ」と言いたげに肩を竦める慎二。そんな彼の態度に若干癪に触ったのか、ピクピクと米神が動いている。彼女自身殴りたくなったのだろう。それを我慢できている彼女は意外と忍耐強いのだろう。そんな彼女なんかお構いなしに慎二は彼女の傍へと近づく。高校生にもなるとその身長差は目で見てはっきりわかるほどで凛と慎二も例外ではなかった。拳二個分ほど慎二の方が高く、見下ろすように彼女を見つめていた。対する凛はこめかみを指で押しながら彼を見上げていた。それはそれはとても鬱陶しそうで今にもグーパンチが飛びそうである。

 

未だ(・・・)召喚が出来てないセカンドオーナーを哀れんで既に(・・・)召喚を終えているサードオーナーである間桐が手伝う・・・・・・君の召喚を円滑にし、高位クラスのサーヴァントの召喚を成功させる手伝いが出来るんだけど、果たしてメリットなんかないと?」

 

「誰が未だに召喚が出来てないうっかり八兵衛ですって!!」

 

そんな事もなかった。

 

「誰もそこまで言ってないだろ? て言うか遠坂って水戸黄門なんて観ていたんだな(心底どうでもいいけど)」

 

「ぐっ、そんな事今はどうでもいいでしょ。それよりも貴方みたいな二流、三流以下の魔術も使えない奴のサポートなんて要らないわ。意味わかる? 貴方みたいなお荷物を抱えたくないってことよ」

 

そうばっさりと切り捨てた凛に、未だ自信たっぷりな笑みを見せる慎二。その顔が心底嫌なのか、少女がしてはいけないような険しい表情をし、彼を睨んだ。

 

「まぁ別にいいさ。君がまともにサーヴァントを召喚出来るならね? じゃあな遠坂」

 

慎二はそう言いながら踵を返す。交渉は失敗したのだ。ならば早々に退散し、対策を練らなくてはならない。遠坂以外、それも知り合いのうちに誰がサーヴァントの召喚権を持っているのか見当がつかないため手の打ちようがない。だが、そんな泣き言を言っている暇もない。

 

「えぇ、さようなら。その顔を私に向けないでね間桐君。私、貴方の顔を見るたびに怒りが込みあがるの。ぶん殴られたくなかったら消えなさい」

 

「おやおや、手厳しいね」

 

最後までその上っ面なへらへらした笑みのまま、慎二は屋上から消えていった。残された凛は怒りのあまり思い切り壁を殴りつけ、あまりの痛さに一時悶絶をしたとか。

 

彼女は優雅(偽)なのかもしれない。

 

 

 

 

へらへらと階段を下りてゆく慎二だったが、ふとその表情を鋭いものに変えた。それはまるで獣のような研ぎ澄まされたもので、まるで人間ではないような表情になっていた。「こんな昼間から」と愚痴を吐き捨て、慎二は駆け出す。

 

「あ、慎二君じゃないってちょっとまちんしゃい! 廊下を走んなゴラァ!」

 

「やかましい! それより藤村先生、僕早退するからな!」

 

途中ですれ違った教師の藤村に早退を告げると彼は学校から飛び出し町のほうへと向かった。全力疾走ともとれるその速さは群を抜いて速いスピードを保っていた。サーヴァントほどとまではいかないがそれなりの速さを持ち合わせていた。

 

「おいライダー! 聞こえてるんなら桜のことちゃんと守れよ! お前のマスターだろ!」

 

空を見上げながらそう叫ぶ。するとその言葉に反応したのか空から紫色の女性が飛んできた。そして何事もないように慎二と並走していた。そう、ライダー本人である。

 

「確かに桜は私の真のマスターです。しかし今のマスターは貴方ですよ、慎二」

 

「ならマスターの命令だ。極力桜の傍にいてあいつを守れ。僕が必要としたときは僕の傍にいていい。いいな!」

 

「・・・・・・わかりました。お気をつけて」

 

慎二の命令に了承を唱えるとライダーはその姿を透明化させ、消えていった。サーヴァントの力の一つがこの英霊化である。一般の目、そして他のマスターの目に留まらないように姿を消す能力である。ライダーは姿を消し、桜の元へと向かったのであった。

 

「(とりあえず遠坂が召喚してない事はわかってるんだ。全員揃ってからが聖杯戦争の始まり・・・・・・ならまだ攻撃を仕掛けてはこない筈だ・・・・・・念のためにライダーを向かわせたけど、心配だなぁ)」

 

若干心配になりながらも慎二は目的地へとつく。そこは古い廃屋で今にも倒壊しそうだった。

 

そこで慎二は目の当たりにする。辺りに散漫する灰、そして化け物に恐怖し体が震え動くに動けない男性、そして灰色の化け物【オルフェノク】

 

オルフェノクとは人間が一度死を体験し、そこから進化して蘇った存在のことを言う。その異形の姿は進化の証でありその色は死の淵から生還した意味を持っていた。ただし元の素体が人間のためかその進化に耐えられず短命。だがオルフェノクになるとかなりの優越感に浸れるらしく未だ進化をしていない人間を襲い、時にはただ快楽のために殺し、時にはこの優越感を提供するために仲間を作る一環として殺すなどさまざまな行動を起こす。

 

そして短命でありながら通常の兵器では死なないというチートっぷり、流石の慎二君も激おこぷんぷん丸である。

 

オルフェノクへ突進をかまし、吹き飛ばす慎二。すぐにその男性を支えその場から急いで離れる。相手は化け物だ、すぐに体勢を立て直し追いかけてくるに違いない。オルフェノクは廃屋の壁に激突し、建物の倒壊とともに一時的に動きを止める。

 

オルフェノクから若干ではあるが距離を離せた慎二は男性を一人で立たせた。勿論彼を一人で逃がし自分がオルフェノクと戦うためである。

 

「おいあんた、一人で逃げられるよな!? 僕はあの化け物を惹きつけてやるから急いでここから逃げろよ!」

 

「あ、あぁ」

 

何か言いたいのだろう。だが眼前に現れたあの恐怖の権化のような化け物のせいで今はまともに返答すら出来ないらしい。男性は慎二から離れその場を去る。一刻も早くその場から逃げ出したかったのだ。

 

その姿を確認した慎二はオルフェノクへその体を向けた。彼も本当ならこんな漫画のような場面になど飛び込みたくはなかっただろう。面倒事が嫌いな彼の事だ。内心心底飛び込んでいった自分に嫌気が差しているだろう。だからこそさっさと片付けて友人の衛宮をいじらなくてはならない。ストレス発散に彼は本当に必要らしく、所謂日課らしい。

 

「おい大馬鹿野郎(オルフェノク)! 僕の穏やかなスクールライフを邪魔したんだ。倒されても文句言うなよぉ!」

 

腰に巻かれるバックル、そしてその手に持っている携帯に5のボタンを3回プッシュし、エンターキーを押してバックルに差し込んだ。オルフェノクはいったい何をするのかわからなかったが、とりあえずという所なのか愚直に突進をかけてきたのだった。

 

「変身!」

 

差し込まれた携帯を横に倒し、バックルにはめ込む。己の体を赤いラインが包み、そしてその姿を黒い戦士へと変えた。黒いスーツに体を包み、胸のプレート、関節部に銀色のサポーターをつけ、赤いラインがその体を包む、フルフェイスのマスクはその顔はギリシャ文字のφをモチーフにしているらしく黄色い円が半分に中央から左右に分けられ、それは目に見えなくもない。赤いラインの入った戦士へとその姿を変えた慎二は突進してくるオルフェノクにラリアットをぶちかまし背中から地面に叩きつけた。

 

「ハハァッ! 最近流行のプロレス技を完璧にこなす僕のラリアッツ!!」

 

叩きつけられたオルフェノクがうめき声を上げる。余程の痛みだったのだろう。起き上がるのに少し時間がかかる。

 

しかし、慎二は攻撃の手を緩めることはしなかった。

 

オルフェノクに飛びつき、そのまま我武者羅に振り回し壁へとぶつける。その後ふらついたところへタイミングよく回し蹴りを食らわせる。

 

「洗練されつくした僕の美しいキックッ!」

 

ネーミングセンスは最悪だというのに、想像以上の痛みを伴う蹴りにオルフェノクは困惑した。そんな敵が困惑する中、慎二はファイズポインターにミッションメモリを嵌め込み、ファイズフォンのエンターを押す。

 

【Exceeds charge】

 

電子音が鳴り響くとバックルからポインターへとラインに沿って、赤い輝きが右足に溜まる。オルフェノクにファイズポインターによって作られたフォトンブラッドに捕まり、そのまま拘束される。身動きが出来ないオルフェノクへ、慎二は高く飛び上がり、その勢いをつけた蹴りを放つ。【クリムゾンスマッシュ】それがファイズの必殺技である。

 

「どうだ、僕のクリムゾンスマッシュ。やっぱこの高火力は痺れるだろ?」

 

変身を解いた後、素晴らしいほどのどや顔をかました慎二はルンルン気分で自分の家へと帰っていった。

 

その後、勝手に早退したということで桜に心配された挙句正座させられて説教を食らうことになる等、当時の彼は思ってもみなかっただろう。心の中で何回解せんと呟いたのか数えてみたいものだ。

 

 

 

 

「はぁー、しんど」

 

桜の説教が終わり、自分のベッドにダイブする。戦闘による肉体的な疲労と説教による精神的な疲労が慎二を襲う。もうこのまま眠りにつきたいと思うが、今日の桜は少しご立腹である。夕食に出なければ本気で何されるかわからない。唯でさえ衛宮の家で食事を済ませているような通い妻なのだ。向こうに住むなんて言い出したらたまったものではない。

 

「あ゛ーだる」

 

「何ともまぁ情けない姿をさらけ出しているんでしょうか、この馬鹿で間抜けですっとこどっこいなマスターは。こんなものが私のマスターだなんて」

 

「こ ん な も の」

 

「・・・・・・まったく」

 

毒舌にさえまともに反応できない慎二の姿にため息を吐くと、ライダーは慎二のベッドへ近づいた。そして相手の了承も取らず疲労によって強張っている背中の筋肉へ、その白く細長く綺麗な曲線を描く指が押し込まれた。所謂マッサージである。

 

「筋肉痛は免れませんね。少しでも取り除かなくては明日支障が出てしまいます」

 

「お、お間抜けサーヴァントにしては気が利くじゃんって何で力強くしたんだいだだだだだ」

 

「その減らず口を閉じなさい。閉じなければその喉にバールぶっ刺します」

 

「うっす」

 

慎二は黙り、彼女のされるがままになる。肉体の疲労が少しではあるが抜けていくような感覚がある。本来のサーヴァントにそんな能力があるわけではないが、彼女なりの労いなのだろう。慎二はその程よい指圧に心地よさを覚える。

 

「もし支障が出てしまっては桜が心配します。それだけは避けなくてはなりません。なので不本意ですが疲労回復の補助を手伝います」

 

「あっそ、勝手にすれば。でもするからにはちゃんとしろよ」

 

「もとよりそのつもりです」

 

そうして慎二は、桜が夕食だと呼んでくるまで言葉とは裏腹にライダーの指圧を堪能するのだった。

 

 

 

 




慎二はオルフェノクとの戦闘は数年前からずっとしている、いわばエキスパートワカメというわけです。
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