魔法少女リリカルなのはstrikers 蒼炎の剣士   作:京勇樹

73 / 84
騎士

地上本部の廊下を進み、シグナムはある部屋に入った

そこは、時空管理局地上本部中将、レジアス・ゲイズの執務室

その部屋に入ったシグナムは、驚きで固まった

その部屋には、二つの遺体が有った

一つは、その執務室の主たるレジアス・ゲイズ

もう1つは、ボディースーツを着た金髪の女

ドゥーエだった

 

(レジアス中将の傷は……あの女の爪か……)

 

レジアスの胸部の傷を見て、シグナムはレジアスの死因を察した

そして、ドゥーエの死因たる傷を見て

 

「これは、貴方が?」

 

とゼストに問い掛けた

ドゥーエの死因は、胸部の刺創だった

そしてその証拠に、ゼストの持つ槍から血が滴っていた

すると、ゼストは

 

「そうだ……俺が遅すぎたから……こうなった」

 

と声を震わせながら、返答した

それを聞いたシグナムは、数瞬目を閉じると

 

「騎士ゼスト……ご同行願います」

 

と投降するように勧告した

しかしゼストは、槍を持つ手に力を入れて

 

「すまないが、それは出来ない……」

 

と言って、シグナムと相対

槍を構えた

それを見たアギトは

 

「旦那!?」

 

とゼストに近づこうとした

だが

 

「来るな、アギト!!」

 

ゼストはそれを、声で止めた

 

「俺にはまだ、やるべきことが残っている……それまで、止まる訳にはいかん!」

 

ゼストはそう言って、シグナムを睨んだ

それに対し、シグナムは

 

「やめてください、騎士ゼスト! 偉大な先輩ある貴方とは、戦いたくない!」

 

と言った

実はゼストは、シグナムが所属する武装隊の先達だったのだ

それをシグナムは、過去のデータから調べあげた

だがゼストは

 

「どっちみち、俺の命は長くない……」

 

と言った

気付けば、ゼストの口端から血が流れている

それも、赤黒い血だった

 

「騎士ゼスト……」

 

その血を見て、シグナムはゼストの命が風前の灯火だと気付いた

だからこそ、シグナムは構えた

同じ騎士として、最後の相手になるつもりなのだ

 

「参ります……我が名は、夜天の王、八神はやての騎士……烈火の将、シグナム!!」

 

「……ゼスト・グランガイツ……」

 

二人は互いに名乗ると、同時に武器を構えた

そして、少しの間沈黙が続き

 

「オーバードライヴ!!」

 

「紫電……一閃!!」

 

戦いは、一閃で終わった

ゼストの一撃は、シグナムの髪留めと肩アーマーを吹き飛ばした

それに対してシグナムの一撃は、ゼストを右肩から左腰に掛けて斬っていた

 

「旦那!」

 

倒れたゼストに、アギトは涙を流しながら近づいた

 

「アギト……俺がロードで、すまなかったな……」

 

「そんなこと言うなよぉ……」

 

ゼストの言葉を聞いて、アギトは涙を流しながら首を左右に振った

そして

 

「旦那は……立派な騎士で、自慢のロードだった……だから、そんなこと言うなよぉ……」

 

と言った

そんなアギトを、ゼストは撫でながら

 

「お前は、以後……シグナムをロードとしろ……」

 

と言った

 

「旦那!?」

 

「シグナムの魔力光は……アギトのに近い……更に、シグナムは炎を使う……親和性は、高い筈だ……」

 

アギトは驚くが、ゼストは自身を静かに見つめるシグナムを見ながら、そう言った

そして

 

「騎士シグナム……」

 

とシグナムを呼んだ

呼ばれたシグナムは、片膝を突いた

するとゼストは、右手の指輪を外して

 

「この中に……スカリエッティ達の出来る限りのデータが、入っている……」

 

とシグナムに差し出した

それを、シグナムは受け取り

 

「確かに、預かりました」

 

と告げた

それを、聞いて

 

「出来れば、ルーテシアも助けたかったが……」

 

と悔しそうに言った

それを聞いたシグナムは

 

「その少女ならば、私の部下達が保護しました……ご安心ください」

 

と教えた

それを聞いて、ゼストは

 

「良かった……」

 

と窓から、空を見上げた

そして、最後に

 

「お前達は……間違うな……その歩む道を……」

 

と言って、永遠の眠りに就いたのだった


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。