比企谷八幡の異世界漂流記。   作:Lチキ

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お久しぶりです皆さん。

いや~更新が遅れて申し訳ありません。少し所用がたてこみ中々できなかったです。

今回はつなぎの回なのであまり面白さがないカモですが、お楽しみできたら幸いです。

それでは本編どうぞ、感想待ってます。


そして、長い1日はようやく終わりを迎える。

夕日が教室に差し込み新築と見間違えるほどに白かった壁や天井が染め上げられる。

 

授業が全て終わり殺伐としていた1組の生徒はそれぞれ親睦を深めるなり部活見学をするなりとせわしなく出ていき、30人余りいた教室には2人の人影を残すのみとなった。

 

人影の1つ。少年は海に面し目を引かれるほどの夕焼けを見ようともせず頭を抱え消沈している。

 

 

「なんでこんな事になったんだけ・・・?」

 

 

少年の呟きには、困惑、驚愕、理解不能と様々な感情がうずまいている。初めはとても些細な事だった。

それが、売り言葉に買い言葉で最終的に入学初っ端からイギリス人の少女と模擬戦をする事となっていた。

 

いかも相手は代表候補生という国家代表見習いとのことで・・・冷静に考えれば分かるだろうけど、つい最近まで素人であった自分とは実力も経験も違う相手だ。

 

なぜこうなったのか、理由を考えればキリがない。

 

発端であるイギリスの代表候補生の少女セシリア・オルコットの女尊男卑発言に不当な日本批判、暴言の数々。

それに我慢ができずついつい口を出してしまったら・・・

 

 

他にも担任であるはずの千冬姉並びに副担任山田先生。

 

姉であるはずの担任は止めるどころか模擬戦を推奨してきたし、山田先生はチラッと見ただけだが、初めから最後までオロオロとしてるだけだった。

 

勝手な言い分だけど先生なんだからもっとしっかりしてほしい。

 

子供の喧嘩に親は口を出すなとかよく言うけど、目の前で繰り広げられる口喧嘩を見ていながら止めもせず、最終的に出した結論が言い合っても埒が明かないから殴り合えとかどうなんだよ‥‥

 

ついでにどさくさに紛れて、というか本当にいつの間にか自分に降りかかる被害を回避していた兄にクラスの雰囲気だったりと理由はあるだろうけど、あえてその中で一番の原因と言えば、

 

 

「お前のせいだろうが」

 

 

自業自得としか言いようがない。

目の前の八兄に冷ややかな目で見られ、俺は乾いた笑みしか出てこなかった。

 

 

「ハハ・・・ですよねー」

 

 

「どこぞの誰かが安い挑発に乗ったのが原因だろ」

 

 

「いや、返す言葉もないよな~・・・・・・・・・ないです、調子乗ってごめんなさい」

 

 

兄の思惑を知らずとはいえ打ち砕いたのは俺で本当は項垂れること自体見当違いだったりするんだけど、それでも嘆かずにはいられなかった。

 

何より、目の前で静かに怒る兄が怖い。とにかく怖い。

 

八兄と俺とは年の離れていない兄弟で体格なんかは俺の方が男らしく喧嘩をしても多分俺が勝つ。伊達にあの千冬姉を相手にして今まで無事に過ごしてきたわけではないからな。

 

でも、八兄の怖いところはそういう事じゃないんだよな・・・

 

陰湿で陰険でじわじわと追いつめ、蛇のようにしつこく攻めてくる精神攻撃。それが八兄の最も怖いところだ。

 

物理的な攻撃なら耐性もあるし千冬姉以下の八兄のそれならむしろ無傷で済むと言っても過言じゃない。

でも精神的に人を追いつめる事に関して八兄のそれは本当に最悪だ。悪魔と言ってもいいだろ、アレで何回泣かされた事やら・・・

 

その場さえ凌げばいい千冬姉と違い、年単位の長期期間に渡りじわじわと攻めてくる八兄のやり方は、あの束さんすら泣かしたことがあるほどだ。

 

信じられるか、あのあの(・・)束さんをだぞ・・・?

 

そんな訳でこれ以上八兄を怒らすと本格的に俺の学園生活が終わりそうなのでどうにか謝り許してもらう。

 

何度目かの謝罪の後、やっと八兄からのお許しをもらえたがその代わりの条件を出された。

 

 

 

「今回は保留にしとくけど、模擬戦でへまやらかしたら覚悟しとけよ」

 

 

一見脅し文句と思われるが、いかんせんうちの兄は捻くれ者で素直じゃない。

本音を建て前ならぬ、嫌味や屁理屈に紛れ込ませる言動を多々取る。

 

中学時代の赤毛の悪友は、八兄のこれを捻デレ‥とか言ってたな。

 

つまり、これも要は模擬戦頑張れよという遠回しな激励なのだ・・・!

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

・・・・・・そう思いたい。

 

 

止しとけばいいのにほんの好奇心で聞いてしまった。

 

 

「ちなみに、どうなるんだ‥‥?」

 

 

恐る恐る慎重に問いかけると八幡は頬を引きニヤリと口元を歪ませ笑う。

 

窓側に立つ八兄の姿は、真っ赤な夕日の影となり不気味に不穏にゆらゆらと立ち上がる。

 

 

「・・・さあ、どうなるんだろうな?」

 

 

「・・・っ」

 

 

笑顔のはずなのに影で塗りつぶされた黒い顔にギョロリと淀む2つの瞳。いっそドラマや映画のホラーシーン顔負けの迫力を醸し出された姿に、

 

低くゆっくりと口走る言葉。

 

あまりの不気味さに背筋を上る寒気と服の上からでも分かるほどの鳥肌が止まらない。

 

そしてようやく現実を見つめ返すことができた

 

 

(これ、アカン奴だ・・・)

 

 

負ければ何かが終わってしまう。そんな予感がした。主に俺のライフ的な何かが・・・

 

 

 

 

恐怖からくる覚悟を決めた一夏の顔は、もはや1人の戦士といっていいほどの凛々しさがある。

 

元から栄える顔付であった事もあるが、少年は覚悟を決める事で1歩大人となったのだ。

 

保身のために他者を蹴落とす汚い大人にな・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏が正しい青少年として間違った覚悟を決めているちょうどその時。慌ただしく教室に入ってくる人影が現れた。

 

若干息を切らしながら頬をそめ、持ち前の2つの凶器を揺らしながら教室にやってくるあどけなさが残る顔立ちの少女。

 

山田先生である。彼女は扉に近い席に座る一夏の姿を見つけると安堵の表情になる。

 

何か用事でもあったのか先生は教室に入ってくるなり一夏に話しかけ、それと並行するように視線を巡らせもう1人を探していた。

 

一夏の後ろ、夕日で照らされる窓側の席に目線を向けた時、彼女は見つけてしまった・・・

 

 

 

「あ、織斑君達よかった、まだ・・・て、キャアアアアアアアアアア!?!?」

 

 

「や、山田先生!?」

 

 

突然女性らしい絹を裂くような悲鳴を上げ、そのまま後ろに倒れ込む。

 

間一髪のところで近くにいた一夏が受け止め怪我はない様子だ。

 

倒れそのまま白目を剥け気絶してしまったので一夏は肩を揺さぶり先生に呼びかけ続ける。

 

 

「うおっ!?どうしたんですか山田先生!」

 

 

必死の叫び声に山田先生は微かに意識を戻しうわごとの様に同じ言葉をつぶやいている。

 

 

「・・・ぉ・・・ぉ・・・」

 

 

「え?なんですか先生、しっかりしてください」

 

 

突然倒れた先生を心配しながら、なんでこんな事になったのか分からず困惑しながらもどうにか原因を知るために一夏は山田先生の口元まで自分の耳を近づけ言葉を聞こうとする。

 

かすれる様な声で、ほとんど何を言っているのか分からないけれど確かに聞こえた。

 

震える指である方向をさし最後の力を振り絞った声で言う。

 

 

「ぉ‥…お、お化け‥‥‥‥‥‥‥…」

 

 

ガクリと最後にそう言い残し先生は完全に意識を手放す。

 

始めは何のことか全く分からなかった一夏も先生が指さす方向に目を向けるとすぐに理解する。

 

そこには―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――夕日に照らされた八幡の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後の教室で気絶している教師に、その彼女を呼びかけ続ける少年、そして眉間に皺を寄せながら不機嫌そうに無言でいるもう一人の少年。

 

 

「ブクブクブク」

 

 

「山田先生―――――――――――――!!!」

 

 

「‥‥‥」

 

 

大体の人間はこの光景を見たら同じ感想を思うに違いない。

 

 

「・・・なんだこれは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

私は今、放課後の学園で自身の受け持つクラス1年1組の教室に向かい足を進めていた。

 

本来なら学年主任であり寮長を務めている事から新入生がやってくるこの時期は多忙であり、放課後は寮にやってくる者の対応か書類整理でもしているはずで。

 

自身の受け持つクラスと言えど寄っている暇はないのだが、今回はいささか用事がある。

 

 

元々IS学園は離島を改築して作られ、モノレールを除き移動する手段は実質ないとされている。そのため日本中、あるいは世界中の生徒が通うには交通の面で不便となり、その他にも様々な弊害がある事から全寮制なのだ。

 

だが、八幡と一夏という例外の分の部屋が色々なごたごたのせいで今だ確保できないでいた。だから1週間は自宅からの通学となっていたはずなのだが、日本政府の連中がここにきてやはり警備上の都合、安全面に配慮して今日から寮生活をするようにと言ってきた。

 

いきなりの要請であったが姉として弟達の安全を考えると断る事も出来ず承諾した。でも、2人とも実家に帰るつもりでいるため寮生活する準備をしていない。なので、授業が終わると同時に本島にある実家に帰り2人分の着替えと日用品をバックに詰めて持ってきたのだ。

 

その趣旨を山田君にあらかじめ伝えてもらうために2人を引き留める役をしてもらっているのだが、つい先ほどその彼女の悲鳴が廊下に鳴り響いた。

 

一瞬ぎょっとし足を止めてしまったが、すぐに異常が起きたことを理解し急ぎ教室に向かう。

 

教室の扉をくぐり私が見た光景は、白目を剥きながら口から泡を吹いている山田先生。

 

そこに必死に呼びかけている一夏。

 

少し奥の方で、眉間に皺を寄せながらピクピクと頬を引きつらす八幡の姿。

 

何が起きたのか分からずついつい口から出てしまった言葉が、

 

 

「なんだこれは?」

 

 

だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして、意識を取り戻した山田先生と私は事の顛末を一夏から聞いて、先生は心底申し訳なさそうに八幡に謝罪している。

 

 

「本当にごめんなさい!」

 

 

「・・・・・・・・・別に気にしてませんから」

 

 

と、口ではそう言っているが明らかに気にしている様子の八幡。

 

そこに先生はフォローを入れようとするが逆にそれが追い打ちとなってしまっている。

 

 

「あの、その、別に怖かったとかじゃないんです!夕日のせいで顔が見えなくて誰かわからず、黒い影に気持ちの悪い目がぎょろぎょろとしていて驚いてしまっただけで、織斑さんの事が怖かったとかじゃなくて――――」

 

 

「・・・・・・」

 

 

時として純粋な心遣いが人の心を傷つける。そんな言葉がありありと分かる光景だ。

 

山田先生は良くも悪くも幼い部分があり、彼女の言う多くの言葉は嘘偽りのない本心であるというある意味で束とは真逆の人物と言える。

 

でもそれは逆を言うと人を傷つけない嘘をつく事ができないという事でありその結果がこれなのだ。

念のため言っておくが先生は、気遣いと心配りと罪悪感でフォローしようとしているだけで、遠回しに八幡を傷つけようとしている訳ではない。

 

 

「――――――だから、ついついお化けと間違えてしまって織斑さんが悪いとかじゃなくてっ」

 

 

「・・・先生、本人もいいと言っているので・・・もうその辺で・・・」

 

 

尚も、追い打ちならぬフォローを続けている先生を制止する。

 

私の言葉に先生も小さくはいと答え、最後に八幡に向かい頭を下げた。

それを確認し、私は改めて本題に入ろうとする。

 

 

「・・・お前達には・・・これからの事で連絡事項がある・・・っ」

 

 

「‥‥‥」

 

 

「本当なら1週間は自宅からの・・・通学であるがっ・・・安全面に配慮し今日から寮で生活してももらう・・・プッ」

 

 

「‥‥‥」

 

 

「荷物は私が最低限のものを用意した‥‥後必要な物があれば・・・各自で持ってくるように・・・ッ」

 

 

「‥‥…」

 

 

「何か質問はあるか‥‥‥‥ッッ」

 

 

「・・・先生、いい加減に笑うのやめてもらっていいですか」

 

 

「何のことだ、私は笑ってなど‥‥‥‥プッ・・・い、いないぞ・・」

 

 

「とりあえずそのニヤケ顔をやめて、説得力と教師を辞書でひいてきてください。あと、そのニヤケ顔やめろ」

 

 

不機嫌そうな八幡をよそに私は耐え切れず盛大にふきだした。

 

 

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