比企谷八幡の異世界漂流記。   作:Lチキ

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そして彼は世界を渡る

IS(インフィニット・ストラトス)

 

10年前に科学者篠ノ乃束が開発。

宇宙空間でのより安全で効率的な作業を目的とした次世代型パワードスーツ。

 

無類なき機動力と戦闘能力を誇り、瞬く間に世界に広まった世紀の大発明。

 

ただし、現状では当初の使用目的である宇宙空間への進出はなく、核に変わる新たな戦争抑止力として注目を集めた。

 

その原因は、ISが発表され間もなく起きた全世界同時多発テロ、ミサイル一斉発射事件、通称白騎士事件が上げられる。

 

世界50か国以上のミサイル兵器がサンバーテロにより日本に向け発射された。当時の自衛隊並びに在日米軍の持つ武装ではこれらの3割程度しか撃墜はできないと予想され、日本は戦後これまでにない危機に晒された。

 

しかし、そこに現れたのが第1世代型ISにして篠ノ乃束の自作IS、白騎士である。

 

白騎士は従来の兵器ではありえに事に、ミサイル軍を撃墜し、日本を救った。

 

当時の調査では、混乱によるけが人は多数存在したが、実質的な日本への被害は0とされ、世界最大級のテロ行為は、被害者なしという奇跡的な結末を迎えた。

 

なお、このテロ活動を行った犯人は未だ捕まっておらず、10年たった現在でも捜査は続いているが、犯人の足取りは以前不明の模様―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィ○ペディアを開きながら、一人の”少年”は唖然とした様子で記事を見ていた。

 

 

「こりゃあ・・・」

 

 

年の頃は高校生かそれより若いくらいで、成長期を終えていないその体はまだ幼い。整った顔立ちに目の濁った少年は一人呟く。

 

 

「ありえない・・・が、現実か・・・」

 

 

神妙な顔持ちで、思考を巡らせる少年。彼から醸し出される雰囲気はとても子供と恵与していいものではない。

 

大人、いや成熟した、そんな印象を受ける。

 

少なくとも日本という平和な国において、義務教育が終わっていないような少年が出すものではない覇気を出している事は間違いないだろう。

 

しかし、そんな雰囲気を醸し出しているにも関わらず彼の顔は無気力というのに近い。濁った瞳には、ハイライトは無論の事、精気すら見る事ができない。

 

そのミスマッチが不自然さを増している。まるで、死んだ目をした大人が急に子供に戻ったような・・・

 

どこの少年探偵だよ、というツッコミが出てしまうほどにありえない事だ。

 

しかし、彼の続ける独り言はそんなありえない考えに現実味を出す。

 

 

「これは、転生‥‥か?」

 

 

少年は確信に近い現実を導き出す。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝の時間というのは大抵の場合はせわしなく過ぎていく。大人は出勤や家事などで時間がなく、子供は登校やら寝坊やらで時間が制限されてしまう。

 

この時間帯に余裕を持てる人種は、規則正しい生活をきっちりやってる奴らか不規則な生活習慣を送ってる奴の2択だろう。

 

前者は言うまでもなく真面目な奴。

 

後者はあれだ、夜行性の奴らとか1日が24時間以上ある奴や家から一歩も出ずに社会と自分を断絶させた奴とかだな。

 

くそ真面目かただのくそ、どっちにしろくそな奴らしか朝の時間を満喫できないのである。

 

俺みたいに中途半端にだらけている奴はその部類には入らない。つまり俺はどっちにしろクソというジャンルに分類されてはいないのである。

 

・・・・・・クソではなくともこの思考はゲスであるが、それはこの際おいておく。

 

 

しかし、世の中には何事にも例外が存在する。

どちらのくそにも属さない俺でもある条件を満たせば、朝はゆっくりまったりお気楽ライフを過ごすことができるのだ。

 

 

自室のベットで朝の惰眠をむさぼる俺を、まだ幼さが残る少年の声が目覚めさせる。

 

 

「おーい、八兄朝だぞー」

 

 

「・・・・・・おう」

 

 

朝を満喫できる簡単な方法。それはクソ真面目な奴が一人家にいればいい。そうすれば、家事やその他もろもろから目覚まし時計にもなる。

 

まさに一家に一台ほしいレベル。そう考える俺がマジでゲスいな。

 

 

 

 

 

 

白を基調としたそれなりに大きな一軒家のリビングで、俺は朝一番のコーヒーを飲みながら携帯端末のページを見る。

 

俺は、”生前”比企谷八幡という名の詐欺師だった。35くらいの若さでその生涯を閉じたのだが、気が付いたら見知らぬ土地の見知らぬ家族の一員として、2度目の生を受けていた。

 

これが俗に言う転生という奴なのだろうか。

 

宗教とかは良くわからんが、輪廻転生とかは一般的にも知られている言葉であり、死んだ人間のその後における概念的な思考だ。

 

現代ではラノベとかにもやたら登場するが、その場合は蜘蛛の糸をもじった様な設定をしていたりする。

 

冴えなかったり現世に未練があったりする男が、死ぬ間際に誰かを助けそれを見ていた神様が異世界にて新しい生を与えるみたいな感じだったか・・・?

 

俺は基本的ラノベは見る方だがそっち系の話はあまり専門ではない。

 

なので表面上の知識しかないので分からない事も多い。特に俺は死んだ後に神という存在にあった覚えなどない。

 

もし会えるのなら生前の恨みつらみを晴らすために陰口の一つでも叩いてやろうとしたんだけどな。我ながらみみっちいな、おい。

 

それに、転生なら赤ん坊のころからスタートするみたいな感じなのに、この体はすでに高校生くらいのものだし、周りの人間にも俺という存在は認識されているので幽霊とか瞬間移動でもしたわけではない。

 

これはむしろ憑依とか言うのに近いのではないだろうか・・・?

 

まあいい、こんなこといくら考えても分からん。現状での情報は少なすぎる。

 

なによりもまずは、今の俺の状態とこの”世界”について知らなければいけないだろう。

 

 

「情報整理はいつどんな時でも最優先に行う必須事項だ」

 

 

「八兄何かいった?」

 

 

「・・・何でもねーよ。つーか独り言に反応するなよ恥ずかしい奴。あっちいけよ」

 

 

「いやいや、独り言の方が恥ずかしいから。それにあっちいけとか酷くないか!」

 

 

朝からテンションがやたら高いこいつ、全自動目覚まし・・・もとい、織斑一夏。

 

現在はリビングの机を挟み向い合いながら、朝食を共に食べている。

 

この少年はどうやらこの世界では俺の弟というポジションらしい。

 

見た目は俺とあまり似ておらず、身長も心なしかこいつの方が高い爽やか系イケメンだ‥‥‥ッチ

 

しかも、今食べてる食事も全部こいつが作っており、その他家事全般を一人でこなすスッペクを持っていると来たものだ。

 

作ってもらってなんだが、気に入らねえ・・・イケメンはスペックが高いほど女にモテるが、女子力が高いイケメンは男に嫌われる。

 

別にこれは僻みではない、男子の純然たる総合意志である。

 

 

「そういや、今日は千冬姉も帰ってくるから夕飯は豪華にするんだけど何かリクある?」

 

 

「・・・イタリヤン」

 

 

「ん、了解。ピザとパスタにドリアね。あと付け合せでフォカッチャとかも作っとく」

 

 

「おう」

 

 

前言撤回、やっぱり男は家事の1つや2つできないといけないな。育面とかもいるし今どきの男は家事くらいできなきゃね、うん。

 

 

 

 

 

話に出てきた千冬姉こと織斑千冬。

 

織斑家長女でありこの家で唯一成人している稼ぎ頭、どうやら両親はいないらしく女手一つで2人の弟を養ってきたらしい。

 

一夏に聞いたところ、物心つく前から兄弟3人でそれ以外の身内は親戚含めよく分からないそうだ。

 

他人?のお家事情なんて関わり合っても碌な事にならないのでこの事はこれ以上追及はしない。

 

で、最後に俺、比企谷八幡でありこの世界での名前は織斑八幡。

 

上から

 

千冬

 

 

一夏

 

の順で俺と一夏は現在学生で、千冬は社会人である。

 

周囲の整理はこのくらいでいいだろう。学校での交友関係なんかもありそうだが、俺に友達とかいないだろうしその辺はスル―。

 

こんな確信を当たり前のように持てる自分がなんか悲しい・・・そして多分あたってるんだろうな・・・

 

 

 

 

次にこの”世界”

 

どうやらこの世界は俺のいた世界の平行世界という奴らしい。その確証を得たのが冒頭のウィキ先生だ。

 

俺のいた世界とこの世界は、年号やら歴史やらはほとんど変わらない。しかし、違いも勿論ある。

 

その最たるものがIS、インフィニット・ストラトスだ。

 

始めこいつの存在を知った時は何処のSFだよと鼻で笑った物だが、調べてみると本当に存在した。

 

しかも、そのスペックたるやマジで規格外という感じで俺の元いた世界で最新鋭だった兵器が子供の玩具レベルに見られるほどだ。

 

何でもISが数機あれば国を制圧できるとかできないとか。

 

 

まさに完全無敵を誇る兵器なのだが、こいつには重大な欠点が存在する。

 

兵器というのは、武術や剣術なんかと違いそのコンセプトは少しの訓練で誰でも扱える武器、大量生産ができその品質が一定以上である事というのがある。

 

といっても実際の兵器は銃にしろミサイルにしろ相当な訓練を積まなきゃ戦場で扱えるレベルにはならないのだが、少なくとも引鉄を引いたら弾が出る。運がよければ当たる。当たったら重症か致命傷をあたえる。

 

このくらいができれば兵器のコンセプトに十分なっていると言える。

 

その点で言えばこのISは兵器としてどうしようもないほどに欠陥品である。

 

どういう仕組みかは俺には分からんし自称専門家だという連中も分からないらしいが、こいつは女にしか起動することができないらしい。

 

しかも、この兵器を起動するコアと呼ばれる部分は完全なブラックボックスで製作者の篠ノ乃束しかその作り方を知らず、世界には400台程度しかISは存在していない。

 

これは、もう一つの大量生産という概念そのものがない事になる。

 

まあ、この点は核なんかにもいえる事なのでそれ=兵器として欠陥があるとは言えないが、それでも全世界と比較しても少ない数だと言わざるをおえない。

 

 

さらにだ、それで終われば欠陥がある兵器に国のお偉いさんや軍関係の奴らが頭を悩ませるだけで俺のような一般市民にはさほど関係ない話で終わるのだが、

 

ISを巡る悪循環はとある社会問題を呼んでいる。

 

 

女尊男卑

 

 

これはISを扱える女性は男よりも優れている存在だ、みたいな考えで男を蔑にして女が派閥を利かす、要はこの世界の女はやたらと男に対して態度が悪い。

 

態度が悪いだけならまだいいほうだが、中には男を小間使いや奴隷の如くこき使う連中もいるという話だ。

 

この問題は非常にやばい。

 

俺の仕事柄利用できなくはないが、基本的に不利益しか生まない。

 

詐欺の基本は念密な情報収集と相手との立場関係でその成功率が大きく変わる。

 

相手より精神的に有利な立場、最低でも対等な立場というのが望ましい。

 

しかし、この世界では初めの段階から男女の違いだけで立場は-からのスタートになる。

 

元からその見た目じゃ-じゃないのかって?

 

名誉棄損で訴えるぞ。

 

この見た目も初見の奴らには結構効果があんだよ。不気味に不敵に笑っていれば大抵の奴は怯え精神的に有利な立場になれるし、これはこれでうま味もあるんだよ。

 

 

「うおっもうこんな時間かよ、八兄早く行かないとモノレール出ちゃうって」

 

 

「俺の支度はもう終わってる」

 

 

「え、いつの間に・・・ほんとに終わってるし!?ちょ、ちょっと待ってて今準備するから」

 

 

残りの白米と味噌汁を口にかき入れ、あいた皿を流しに持っていき、支度を始める一夏。

 

季節は4月、桜が舞い落ちるこの時期に俺達は真新しい制服を着ている。

 

白地に赤いラインをあしらった現代的なデザインの学生服。

 

 

この世界には何事にも例外というのが存在する。

 

これはつい先日の話だ。この世界に初めて飛ばされてきた俺は、訳も分からずキョドっていた。死んだはずの自分が見知らぬ場所にいたら誰だってキョドるだろう。

 

それでも大人の意地で一応は冷静を装ったけどな。

 

そんな俺に初めて話しかけたのが一夏であり、馴れ馴れしく八兄だの呼ばれる物で反射的に「お前に兄と呼ばれる筋合いはない!」といったら軽く泣かれた。

 

突然自分を兄と呼ぶイケメンが泣き出し、逆に冷静な思考を取り戻した俺はとりあえず一夏から話を聞くと、さっき整理したような内容を断片的に教えられた。もう少し話を聞きたかったが、どうやら俺はその日高校受験当日だったらしく一夏に強制的に受験会場に連れてこられた。

 

そして事件は起こった。

 

訳も分からず連れてこられた受験会場でこの一夏は、女にしか動かせないISを男のみで起動させてしまったのだ。

 

どこのニュータイプだよお前はとか思っているとなぜか俺までISを起動させられる事が判明しIS学園というISの専門学校に強制的に入学させられる事となった。

 

 

 

「なんでこうなったのか・・・」

 

 

俺の呟きに答えてくれる者は誰もいない。深いため息をつき、俺は一人家を後にする。

しいて理由を挙げるのなら、人の手を引っ張り間違った受験会場に連れていった一夏が悪い。

 

女にしか動かせないIS、その専門学校という事はそこは純然たる女子校であり、そこに通う生徒は将来的にISと深く関わる職業に就くことが予想される。

 

そう、女尊男卑の元となりその影響を色濃く持つ女子校に入学させられるのである。

 

そこには女の園に入ることができる期待なんかはなく、ただただ憂鬱なため息が出るだけだった。

 

 

「八兄!おいてくなんてひどいよ」

 

 

「朝から騒いでんじゃねぇ。その口永遠に閉じてろ」

 

 

「それって暗に死ねって事!?」

 

 

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