すいません、ヒッキーとセッシーの後半戦はまた次回です。
次は、次こそは頑張ります!
「さて、授業前にまず諸君らに決めてもらわなきゃいけない事がある」
授業となり、織斑千冬は教壇に立ちそんな切り出しから始める。
ちなみにだが、今までの座学の授業は一般教科もIS関連も山田先生かその他の先生が担当しているため千冬が教壇に立つのは自己紹介以来になる。
「これより再来週に行われる対抗戦のクラス代表者を決める。
代表者は対抗戦以外にも生徒会の会議や委員会に出席など・・・まあ、委員長と考えてくれてかまわない。自他立候補、推薦でも構わない誰かいないか?」
宇宙開発を目的に作られ近代兵器として名を轟かせたISの現在はなぜかスポーツ的な要素が大半を占めている。
アラスカ条約だかで軍事利用ができない等の理由だそうだが、恐らく裏では軍用ISとかが作られている事だろう。
まあ、そこのところは今はいい。余計な詮索は寿命を縮めるだけだ。
スポーツ的要素が強い故にこの学園では公式イベントとして生徒間での試合や大会が多種多様に組み込まれている。
その中でもこの対抗戦とは、クラスの代表者同士が入学間もない頃の行われる初めての大会で、言うなりゃ新人戦や親善試合のようなものだ。
入学することで一種の燃え尽き症候群になっている生徒のモチベーションを上げるためのイベントで、直接的な成績にはあまり関係ない。
要は、競わせることで互いの意識を高めるとか、これからの目標を定めるだとかの目的があるのだろう。
だがそれは、あくまで大人の都合であり、勝手な思惑だ。
十代の多感な少女達にとってはただのお祭り騒ぎかなんかにしか思っていない。
それでもここは世の世界に天下のIS学園なぞと呼ばれるエリート校で、
そこに通う生徒達も何かと意識が高い。
つい先ほどまでうるさかったあの少女がいい例だろう。いや、悪い例と言ったほうがいいか。
皆が皆あんな感じだと思われては甚だ迷惑だと思う事だろう。
そんな学園なのだから自分に自信がある生徒はこぞって立候補するのに可笑しなことはない。普通ならただめんどくさい委員長も、この学園ではステータスと言える。
その証拠に今現在も生徒達はがやがやと話し合っているが、誰一人めんどくさいなんて顔をする奴はいない。
しかしだ
自分から立候補する者はいない。
それもそうだろう、何せこの学年、このクラスにはイレギュラーが2つも存在している。
イレギュラーその1、男性操縦者。
実力云々関係なく珍しいだけの存在。
人間というのは珍しい物に目がない生き物で、希少価値や限定なんていう言葉に弱い。
だからコンビニとかでも年中季節限定商品が並んでいるだろ。単純にそうすれば売り上げが上がるし、人気が出れば来年も継続する。
合理的な商売方法の一つと言える。
イレギュラーその2、イギリスの代表候補生。
男の操縦者なんてものは所詮珍しいだけだ。でもこちらは違う。
その才能と実力を国から見込まれ称号を得たエリート。
先ほどの彼女の言葉はあながち間違ってはいない。
ただ、それを本人が言っているから嘘くさく感じるだけでなかなか的を得ている。
嘘をついていないのに嘘くさく感じる対話能力が優れているだけだ。
そんな明らかな実力者がいる中で自ら立候補するのは勇気が必要だ。だが、人の勇気なんてものは大体の場合、蛮勇でありこんなお遊び感覚の状況で発揮されるものではない。
故に彼女達は、自らの立候補を度外視するほかなく、
それがオルコットの目論見なのだろう。
始めの三文芝居で自分の存在を主張し、周りを牽制した。
実力が物を言う大会で自分が立候補しやすいように。
いや、むしろあの自尊心の塊のような性格からしたら他の誰かに自分を推薦させるためにか。
性格に難あれど、中々冴えた腹づもりだ。
流石は国を代表する人間と言えるだろう。
あえて、文句をつけるとしたら、それは彼女が人の心を理解しきれていないという点だ。
「はい!織斑君を推薦します」
「え・・・?」
「はい私もそれがいいと思います」
「えぇッ!?」
実力だけなら確かにオルコットはこのクラスで一番だろう。
しかし、エンターティナーとしてオルコットの持つ『代表候補生』という肩書は『男の操縦者』より遥かに下だ。
彼女は先ほどまでの問答で自分の存在をアピールすることに労力を注ぎ、こちらを見下すことで優位性を誇示しようとした。
確かに、セシリア・オルコットの存在はクラス中に広がった。散々言いがかりにも等しい文句を言い続け終始こちらを見下していた。
だが、同時に大きなミスを犯している。
教官を倒したという下り。
一夏のアレは、冷静に聞けば教官側のミスであり実力ではない。実力で教官を倒して見せたオルコットとは運例の差だ。
そこの所を追及もしくは斬り捨てていれば彼女の思惑は大体叶っていただろう。
しかし、あれを聞いていた周りの女子には、男の操縦者とオルコットは入試において同じように教官を倒したと印象付けてしまった。
それがこの結果。
皮肉な事に珍しいだけの存在に価値をつけてしまったのはオルコット自身だ。
そして見誤る。彼女が正しく彼女達の心を理解していれば、自尊心を多少折っても自分から立候補していたはずだ。
実力不明の男の実力を証明した事に気づいていれば、自分の周りから見える価値を正しく理解し、男の操縦者が与える影響を偏見なく見ていれば、
ほぼ間違いなくセシリア・オルコットはクラス代表として祝福されながらその任に就いたことだろう。
「お待ちになってください!」
そうしていれば、こんな声を荒げ惨めに自分を売り込む事もなかっただろう。
あの人の心を分からないと言われた騎士王様もイギリスだっけかな・・・
ふと、そんな事を意味もなく考えてしまう。
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「納得がいきません!そのような選出は断じて認められません!」
オルコットは怒気の強い口調で抗議しながら席を立ち、クラス中に問いかけるように言葉を放つ。
「男がクラス代表なんていい恥さらしもいいところ論外も論外ですわ!」
先ほどまでのお気楽なムードは完全になくなり、オルコット以外は誰も発言をしない。
そんな状況だからか、それとも怒りで周りが見えていないのかオルコットの言葉は段々と過激になり、要領を得ない物とかす。
「そのような屈辱を1年間味わうなど我慢なりません!大体、文化としても後進的な国で暮らすこと自体わたくしにとっては耐え難い苦痛だというのに!」
腕を振り、抗議というよりただの愚痴を言うオルコットの姿を見ると実に滑稽だと心底思う。
周りのヘイトを集め、自分以外を敵にする。
それはいつぞやのまだ、青春を謳歌していた少年だった頃の誰かさんと重なるものに思える。
無論俺はこんな感じではなかったし、俺は図り自覚をして敵を作るが、こっちは天然でただの馬鹿としか言いようがない。
明確な違いはあれど、思惑を理解していた人間にとってこの道化っぷりは確かに滑稽で笑いを禁じ得ない。
文化祭の時のマニュフェスト作りで、強化外装の笑顔が似合うあの女性が俺の事を笑っていた。それも爆笑で。
当時は、そんなに面白い事じゃないだろと思っていたが、今のオルコットの姿を見るとあの時の爆笑の意味がよく分かる。
一方は敵を作り集団を団結させるため、一方は集団の中心に自分を置くためにただ愚直に道化を演じ、真逆の思いを抱いてるのにもかかわらず、
同じ結果を曝け出した。
自分がやっている分には何とも思わないが、他者が自分と同じような事をしているというのは非常に不愉快だ。
ふむ、これが同族嫌悪と言う奴なのか。
確かにいい物ではないな。歯の奥の食べかすが取れないような、云万円もつぎ込んでガチャってるのにレアが一つも出ないようなそんな不快感が全身をかける。
「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」
「おいしい料理もたくさんありますわ!貴方・・・わたくしの祖国を侮辱しますの!」
終いの果てには一夏と何の話してんだよとツッコミを入れたくなるような会話を繰り返す始末。
ああ、何とも不快だ、不愉快いだ。
イライラを通り越してムカムカが収まらない。
何とも不出来だ、出来損ないにもほどがある。それをなぜ、わざわざ俺に見せつける。
だから
だからこんなお些末な舞台、俺が壊してやろう。
こんな気分を害する見世物を俺の前に晒したお礼だ、特別サービスで御代はいらねーよ。