メイド喫茶。そこで俺たちは話を聞くことになった。
「ここです」
まだ自販機の直撃した腰が痛いのか、摩りながら南は案内してくれた。で、いざご入店。
「おかえりなさいませ!ご主人様、お嬢様」
「おかえりなさいました」
「何言ってんの?」
返事をしたらシャンクスに冷たく突っ込まれた。で、席に案内され、南と話す。
「で、お前ここで何してるわけ?うちの学校でバイトOKだったっけ?」
「それは問題ありませんよ先生」
横から絢瀬に突っ込まれた。で、大体の事情を説明される。
「ふーん……ミナリンスキーねー……。どんなスキーだよ」
「まさか、伝説のメイドさんがことりだったなんて……」
矢澤も驚愕する。
「ま、なんでもいいわな。俺は帰るわ。正直、自分の教え子連れてメイド喫茶に入るのはなんかちょっとアレだから……」
「待って下さい。ついでに、ここで次のライブ場所を考えましょう」
絢瀬が呼び止めた。
「いや、ついでの意味がさっぱりなんだが……。ていうか、俺は今までお前らの作戦会議に付き合った覚えはないぞ」
「いいから先生も手伝ってよ」
「お前らの奢りならいいよ」
「いいですよ」
そんなわけで、会議。全員が話し合う中、俺は携帯を弄る。しばらくして、ガタッと高坂が立ち上がった。
「よし!秋葉でライブに決定!」
………どうしてそうなるの?
*
翌日の放課後。二年の教室。目を閉じて南が何かを考えていた。と、おもったら急に覚醒したように目を見開く。
「チョコレートパフェ、美味シイ!」
なぜか片言でそう言った。
「生地がパリパリのクレープ、食べたい」
「食えばいいだろ」
「うぅ〜っ!思い付かないよぉ〜!」
あの後、南が秋葉に一番詳しいからという理由で作詞をやらされることになっていた。そして、なぜか俺も。
『先生、現代国語教師でしょ!なら歌詞位作れるよね?』
と、いう成層圏辺りまで飛躍した理論によって俺がやる羽目になった。ったく、路上ライブとか言い出すしよ。そうなったらこっちも向こうの区役所とかから許可もらわねぇといけねーのによ。こんな事してる暇なんてないってのに……。
「先生!どうにかしてよ!」
「こんなもんテキトーにやりゃいいんだよ。おら、こんな感じで」
俺は言いながらルーズリーフに歌詞を書く。
『ランラン、ランララランランラン、ランラン、ランラララン』
「ナウシカじゃないですか!ていうかランしか言ってないし!どこまで走るんですか⁉︎」
「いや、そのランじゃねぇから。ていうか、まずはタイトルから決めりゃいいんじゃねぇの?そうすりゃ中身なんてそれに合わせて頭の悪そうな比喩表現並べりゃ出来んだろ」
「……なんか、アドバイスを聞いてる気がしないんですが……でも、タイトルから入るのはいいかもしれませんね」
で、再び目を閉じて考える南。
「……わかんないよぅ……」
結局かよ。
「しゃーねーな。こんなのどうだよ」
『飛べ!μ's』
「パクリじゃないですか!」
『μ's・刻を越えて』
「ガンダムシリーズ⁉︎」
『千の風になって』
「縁起でもやめてください!ていうか大喜利やってる場合じゃないんですよ!」
「もしくは、ダンスから決めるのもいいんじゃね?俺はダンスとかよく分からんからなんとも言えねぇけど、やっぱ激しいとか優しいとかあるんだろ?」
「うーん……でも、踊りを決めるのは私じゃないですし……」
「バッカお前、先にダンスを作らせればその分、お前が歌詞の提出期限が伸びるだろ。そうやって社会人は言い訳して、責任を相手に擦りつけて締め切りを伸ばすんだよ」
「先生、今までそんなことしてたんだ……」
なんか呆れられたな……。そんな事してると、ガララッと扉の開く音がした。園田と高坂が入ってきた。
「ことりちゃん!」
「穂乃果ちゃん?」
「こうなったら一緒に考えよう!とっておきの方法で!」
………ロクなことじゃねーだろうな。
*
再びメイド喫茶。
「おかえりなさいませ!ご主人様!」
「おかえりなさいませ!ご主人様!」
「お、おかえりなさいませ……ご主人様……」
三バカがバカしてる。俺はそれを遠くの席から見ながらバカにしていた。
「すいませーん。このナンタララーメンっての一つ」
「かしこまりました、社長」
メイドさんに俺は言った。
「先生、何やってるんですか?てか社長ってなんですか?」
「いや、呼び方変えてもらえるっていうから……」
「この人は楽しんじゃってるし……」
「なぁ、ジャンケンで金取るってどういうことなの?バブルなの?」
「メイド喫茶とはそういうところでしょう」
なるほど、つまりメイド喫茶ってのはいつでもバブルってことだな。俺もここに就職したい……。
数日後、その路上ライブが行われた。無事に歌詞も決まったようで。あー……ライブ一つやんのにメイド服の貸し出しと路上使用の許可……それと理事長の許可……。夏休みはぜってーダラけてやる。