翌日。俺は駅へ向かった。
「よう」
「遅いよ先生!」
大抵、こういう時に一番に声をかけてくるのは高坂だ。
「20分遅刻だよ!」
「悪い。パフェ食ってたら遅刻した」
「しかも理由が最低だ⁉︎」
「いいから行こうぜ。さっさと行ってゴロゴロしたい」
今回は無視された。で、高坂が元気よく拳を突き上げる。
「じゃ、行こう!」
『おー!』
*
別荘に到着。
『おお〜〜ッ‼︎』
全員が声を上げた。
「すごいよ真姫ちゃん!」
「流石、お金持ちにゃあ〜!」
「そう?普通でしょ?」
「え、何お前。俺に喧嘩売ってんの?そういう台詞はテメーで稼げるようになってからいえ」
なんて話しながら別荘に入った。
*
「ここ取ったー!」
ベッドにダイブする高坂。それに続いて凛も。
「うおお、パンツ見えた」
「先生。訴えられますよ」
「うおっ。園田。お前いたのかよ」
なんでやり取りはともかく、凛が園田を呼んだ。
「海未先輩も早くっ……あっ」
なぜか、気まずそうな顔をする凛。
「やり直しですね」
「うん。海未ちゃん。穂乃果ちゃん!」
だが、高坂は寝ている。
「……てか何?どしたの?」
「絵里先ぱ……絵里の提案で、これから部活の時は先輩禁止になったんです」
「ふーん……。あ、俺も先生禁止な。これからは社長と呼ぶように」
「その先生の社長への憧れはなんなんですか……?」
「さて、じゃあ俺は寝てるわ。お前ら練習でもなんでもやっていいけど怪我すんなよ。俺の責任になるのは嫌だし」
「それなら、保護者としてめんどう見てくださいね」
しまった……失言だったか……。
*
別荘の前。つまり外。
「これが、合宿での練習メニューです」
全員が整列して園田の話を聞いている。うわあ……練習メニューっつーか、練習しかしてねぇし……てか精神統一って何?あと、先生となんかするって書いてあるんだけど、まぁ……なんだ、気の所為だろう。
「って、海は⁉︎」
高坂が言った。
「私、ですが……?」
「そうじゃなくて!海だよ!海水浴だよ!」
「ああ、それならほら、」
笑顔で、遠泳10kmを指差す園田。
「ええ……」
「10km……」
「最近、基礎体力をつける練習が減っています……。せっかくの合宿ですからここで……」
「おい脳筋」
俺はそこで口を挟んだ。
「だ、誰が脳筋ですか⁉︎」
「お前だよ。なんだそのプロボクサーみてぇなメニューは。そもそも、食事と睡眠と風呂が入ってねぇし、何よりその先生となんかするって何」
「先生。私はこの前のことりの件で見ました。あなたは、自販機を持ち上げて投げつけるほどの筋力がある!」
「あ?」
「ですから、そのトレーニングを是非……」
「却下だ」
「どうして⁉︎」
「俺はトレーニングなんてした覚えねぇし、そもそもランニングとか筋トレとか元々入ってんじゃねぇか。そんなもん、お前らが持つのか」
「大丈夫です!熱いハートがあれば!」
「情熱で甲子園行けるほど世の中甘くねーんだよ。ちょっとそれ貸してみろ」
俺は言いながら懐からマジックペンを取り出した。で、そのトレーニングメニューを改竄する。
「とりあえず、ここからここまでを全部自由時間にしよう。練習はこのくらいか……」
「合宿なのに練習時間がショートケーキくらいしかないんですけど⁉︎」
「いいんだよそのくらいで。大抵、合宿の目標ってのは親睦を深めることにあるんだからな」
「ダメです!ここをこうして……」
「おい、園田」
「なんですか⁉︎」
「もう、全員いねぇぞ」
気が付けば、絢瀬と園田以外は海に突撃していた。
「そんなあ……」
「まぁまぁ海未。先生の言うことも正しいわよ。1日目くらいは、思いっきり羽を伸ばしたら?」
「……分かりました」
そのまま園田も海へ走り出した。
「お前も行って来いよ」
「先生も行きましょう?」
「はぁ?俺は水着なんて持ってきてねーぞ。そもそも海があるなんて聞かされてないし」
「いいから、ね?」
「………はいはい」
めんどくせーな……。