放課後の部室。今は一年組みの英語に回されてる。
「にゃー!これが毎日続くのかにゃ〜……」
突然、悲鳴を挙げる凛。
「ゴチャゴチャ言ってねぇで単語覚えろやァッ‼︎」
俺はマシンガンみたいなエアガンを乱射した。壁にBB弾が弾かれ、凛の額に命中する。
「痛ったぁい!」
「何も外国で永遠に暮らせるほどペラペラになれっつってるわけじゃねぇんだ。その教科書ごと丸暗記すりゃいいんだよ!」
「そんなこと言ったって!まずここは日本なのにどうして英語なんて学ぶ必要があるの⁉︎」
「出ぇたよバカの常套句‼︎いいからさっさと丸暗記しろってんだよ‼︎」
また乱射し、BB弾が散らばる。
「どうでもいいけど、これ自分で片付けなさいよ先生」
西木野に怒られたので黙って片付けた。
「で、何がわかんねぇんだよ凛として咲く花の如く」
「! 教えてくれるの⁉︎ていうか、出来るの⁉︎」
「英語なんて文理どっち行っても使わなきゃなんねんだから当たりめぇだろハゲ」
「は、ハゲじゃないにゃ‼︎」
で、俺はホワイトボードを前に出す。
「いいか、まずは英語の文法からだ」
「へ?」
「まぁ、平たく言えば、英語はいくつかの人間によって形成されてるんだ」
「はぁ?」
何言ってんだこいつ、みたいな顔になる西木野と、興味があるのかこっちを見る凛と小泉。
「はいまず、他人の言うことしか聞かない『主語さん』。こいつは、自分の意見などまるで持たずにただ周りに合わせてる優柔不断な野郎だ。俺の三番目に嫌いなタイプ」
「ふむふむ」
真剣に聞く凛。
「それと、『動詞くん』。こいつは真逆で、命令したがるタイプ。俺の二番目に嫌いなタイプだな」
「ちょくちょく先生の闇が入ってますね……」
呆れる小泉。
「それで、さらに『保護ちゃん』。自己中な動詞くんをサポートする切実な看護婦さんのような子だ。お尻とか触っても優しく微笑んで怒ってくる」
「先生、看護婦さんのお尻触ったんだ……」
今度呆れたのは西木野。
「その他にも、動詞くんだけじゃなく、他の奴のサポートも出来る。女性の完成系のような、ドラゴンボールでいうパーフェクトセル並みの子だ」
と、特徴を書いていく俺。
「最後に、『目的語大統領』」
「大統領⁉︎一人だけ職についてる⁉︎」
西木野が突っ込んだ。
「まぁ、簡単に言うとそのまんまだ」
「簡単過ぎるよ‼︎」
「これらの人間が四人合体することにより、文……つまり、パーフェクトストライクガンダムとなる」
「大統領がガンダムの一部になるの⁉︎」
さっきから突っ込みまくりの西木野。
「では、この例文を使ってみよう」
俺はホワイトボードの動詞くんにバッテンを書いた後、英文を写した。
『I call her BBA』
「いやどんだけ動詞くん嫌いなの⁉︎」
「いいか?まず、この『私』が主語さんだ。で、callが動詞くん。この時に、主語さんに動詞くんは『call=呼べ』と命令してる形になる」
「なるほど……」
「また、目的語大統領がBBAとなっている事から、主語さんに動詞くんはBBAと呼べ、と命令してることが分かるな」
「うん。わかるにゃ」
「だが、ここで問題が起こる。誰をBBAと呼べばいい?その時に、動詞くんをサポートする天使が、補語看護婦長だ」
「さっきと違いますよ⁉︎ていうか天使なのか看護婦なのかハッキリしてください‼︎」
今度は小泉の突っ込み。
「補語ちゃんは動詞くんの足りない説明に『西き……彼女を』とサポートする働きをしてるんだ」
「今、西木野って言いかけた?言いかけたわよね?」
「これらの働きを総合すると……」
『I call her BBA』
『私は彼女をババァと呼ぶ』
「と、なるわけだ」
「おおっ‼︎」
「BBAってババァってこと⁉︎あんた、私をババァって言いかけたのね⁉︎」
ガタッ!と立ち上がる西木野。さらにその隣で凛も立ち上がった。
「わかったにゃー!」
「今ので分かったの⁉︎」
「先生ありがとうにゃ!ちょっと考えてみるね!」
「はいはい。じゃ、頑張れよ」
すると、いつの間にか全員が聞いていたようで、ホワイトボードの周りには全員が集まっていた。
「すごーい先生!」
「なんで英語教師にならなかったんですか⁉︎」
「それよりババァってどういう意味⁉︎」
などと声が上がる中、俺の目の前に矢澤が立ち塞がった。
「に、にこにも教えて!」
突き出されたのは数学。
「ごめん。数学はマジでどうしようもない。自分でやれ」
「そんなぁー‼︎」
「じゃ、コンビニ行ってくるわ」
そのまま俺は部室を後にした。
*
校門から出ると、どっかで聞いたことある音楽が聞こえた。
「!」
横を見ると、女子中学生くらいの金髪少女が、音楽を聴いていた。………これ、なんの曲だっけ……。ちょっと覗いて確認するつもりで視線だけ動かした時だ。その少女と目が合った。その瞬間、バッ!と飛び退く女の子。
「な、なんですかあなた‼︎」
「や、教師だけど。ここの」
「う、嘘つかないでください!そんな犯罪者みたいな目をした教師がいてたまりますか‼︎」
「おい、どういう意味だそれ」
だが、無視してそいつは鞄についてる防犯ブザーを前にかざした。
「ちょっ……!バカお前それは洒落んならねぇから‼︎俺の人生シャットダウンさせる気か⁉︎」
「は、早く離れて下さい……!」
なんなんだこいつ……と、思った時だ。
「亜里沙?」
声がかかり、その少女が横を見ると、絢瀬が立っていた。
「お姉ちゃん‼︎」
そのまま絢瀬を盾にするように回り込む少女。
「唐沢先生………?」
「お前の妹かよ……」