今、私は茂の家にいる。
花音が本を取りたいって言うからな。
灯「何か話があるんだろ?」
コイツにはおかしい所がある。弁当を食べているときとか、病院を言い当てた時とかな。
花音は何かを隠している、絶対に。
花「えっ?」
・・・・・・だというのに、何で間抜けな声をだしているんだ。
灯「ここは茂の部屋だろ?」
花「そうですが?」
成る程、コイツはあれか。話の核心をつく前に、前置きを置くタイプか。
・・・・・・面倒なやつだな。本を取りに行く間しか話せないから時間もないのに。
灯「茂と取りに行けば良かったんじゃねぇのか?」
そう言うと、ワザとらしく驚いた顔をする。
花「やっぱり清国寺さんは頭いいですね!!尊敬してしまいますよ!!」
灯「ずーと、2人っきりになっても怪しまれないようなタイミング狙ってたもんな、お前。私の過去聞いたときらへんから。あと演技はやめろ」
花「そうですね」
スゥ……。
いつもの笑顔は消え、代わりに強い意志を宿しながら相手を見る花音の姿があった。
コイツの顔が変わった??
本題に入るようだな。
花「明久君の事、どう思いますか?
はぁ?真剣な顔して何を聞いてくるかと思えば、吉井の事だと?
灯「そんな事を聞いてどうするんだ?」
コイツが、アイツの事知ってる筈がないし恋愛相談だったら帰るぞ?
花「財閥同士ならよく知っていると思ったので」
灯「なっ、私のはともかく、吉井の情報は何処で手に入れた?」
もし、情報が漏洩しているのなら、潰す必要がある。
花「知ってました。最初から」
淡々とそう言った。どうやら、嘘はついてないようだった。だから、何故吉井のことを知っていたのか聞いてみた。
灯「最初から?いつ知ったんだ?」
そういうと、苦虫を噛み潰したようにこう言った。
花「小さい頃にあった事があるんです」
と、
灯「何処であったんだ?」
小さい頃に会ったとしても一度だけのことなんだろうが、一応聞いてみる。
花「これ以上は、…今はいえません。」
灯「……そうか」
あまりにも悲しそうな顔をするから、私はただ頷くしかなかった。
花「・・・・・・私は彼の絵が好きでした」
灯「で、私に話したい事は?」
花音が、哀愁に浸りそうになったので、私は先を進めた。
花「実は、明久君女性苦手なんですよ」
灯「あんなに、普通に話したりしてるのにか?」
これには、驚いた。全然そういう様には見えなかったから
花「上手に隠してますから。急に肩に手を置いたりしたら、ビクッっとしたりしますよ」
灯「で、それを直して欲しいと」
言っておくが、私は精神科の医者じゃない。だから、無理だと断ろうと思った。
花「いえ、そういう訳ではありません」
灯「じゃあ、どういう了見だ?」
花「今の彼は、全てを諦めてるようにみえるのです」
おそらく、昔はとても仲が良かったのだろう。じゃなかったら数日でここまで相手の事を理解できるはずがない。
灯「諦めてる?」
花「はい、絵も描いてないようですし、なんとかしてあげたいのです!!なので、手を貸して下さい!!」
一生懸命そう頼んでいた。成る程な・・・・・そういう事か。
灯「いやだ」
だったら、言い方を変えてもらおうか?
花「何でですか!?」
灯「どうして、なんとかしてあげたいのか??」
花「そ、それは……」
灯「お前の頼みは個人的なものだからな。ちゃんとハッキリ言わないと私は引き受けない。」
花「じゃ、じゃあ……明久君の事が、友達として好きなので、協力してくれませんか?」
友達として、か。
まあいいが。
灯「分かった。協力してやる」
まあ、元々興味があったしな。
吉井 明久
吉井レオの弟、財閥の後継者候補。
趣味は、写真撮影の他に料理・ゲーム、そして絵を描くこと
後継者候補だという事を調べるのに相当苦労したんだ。
まだ、隠している事は沢山あるはずだ。
それに、花音には借りがあるしな。
2人は本を花音に渡して茂の部屋をでた。
花「あ、この事は他言無用ですよ?」
灯「知ってる」
成る程な。お弁当の時の話、明久の兄弟の話で弟の可能性を答えた時の回答だけが曖昧だった訳だ。
身体が弱かったら弟か妹かを判断するのに、お肉の量なんて関係ないに決まっているのに。
それは、よく知らない相手じゃなくて、よく知っている相手だったから。
それにしても、コイツの行動には矛盾が多すぎる。
なんで、明久にも昔会っていた事を隠す?
コイツの目的が分からない・・・・・・。
まあ、時が来れば分かるだろうけどな。
その時までは、我慢してやるか。