魔法少女リリカルなのは~転生者は静かに暮らしたい~ 作:レイブラスト
「夏だ! 海だ! 砂浜だ!」
「どうしたんだいきなり」
「いや、叫びたくなってな……」
目的地である別荘に到着し、全員が水着に着替えて砂浜に向かったのだが、テンションが高くなっている博人君に若干驚く。まあ彼が叫んだ通り、目的地が海のすぐ近く、それも他に誰もいないのだからテンション上がるのも無理はない。
「な、何で誰もいないの?」
「……貸し切り?」
「大当たりだよ、真由里ちゃん。この一帯は、隼也さんの友達に頼んで貸し切ってもらったの」
ぽつりと口にした真由里ちゃんにお母さんが得意気に言う。ちょい待て。
「僕、単に海の見える別荘としか聞いてないんだけど? 初耳なんだけど」
そもそもお父さんの友人って何なんだ?
「あ、言ってなかったな。俺のダチの1人が、企業やってんだ。今でも仲良くて、その伝手で頼んだんだが……本当に貸し切りにしてくれるとは思ってなかったな」
「予想の斜め上行ってんですけど……」
「言ってなくてごめんな」
いや、言われないと気づかないでしょ。
「と、智哉の父さんは企業の方と友達だったのか……でも、智哉と関わりは無さそうだな」
「当たり前だよ! 会ったことすらないのに」
「とにかく、今はここで過ごす日々を楽みましょう。ね?」
微笑みながらお母さんが言う。……こうして見ると、美人だな。僕を生んだとは思えないプロポーションだし。
「むぅ……」
あれ? 彩愛ちゃんの機嫌が悪くなった? まさか、僕がお母さんに見とれてると思っている? なら誤解を解かないと!
「えと、彩愛ちゃんも……可愛いよ」
「ふぇ!? あぅ……」
あ、真っ赤になっちゃった。初心な子が嫉妬するとこうなるんですね、わかりました。ていうか……彩愛ちゃんの水着姿、本当に可愛いな。フリルの着いたワンピースタイプで、似合いまくってる。ちなみに僕と博人君は海パンで、真由里ちゃんは……学校指定のスクール水着?
「何故それに?」
「……他になかったから」
あ、さいですか。
「そうなのか。でも……中々可愛いと思うけどな。何かしっくり来るし」
「……ありがとう、博人君」
少し照れた様子の真由里ちゃん。お、これは博人君に脈ありかな? ……小学生なのに何言ってんだよという話だけど。
「そんじゃあみんな。今日からしばらく、楽しく遊ぼうか!」
「おう!」
「「うん!」」
声を上げ、僕らは海へと走って行く。僕らにとっての夏の思い出が、始まるのだ―――
「うおおおおおおおおおおおおお! 負けるかぁぁぁぁああああああああああああああ!!」
「それは! こっちの台詞だぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!」
海に飛び込み数分。僕と博人君はクロールでどちらが速く泳げるか競争していた。目的地は近くの岩場までだ。
「智哉君、頑張れ~!」
「……負けないで、博人君」
同じく海に入っている彩愛ちゃんと真由里ちゃんが応援してくれている(それも互いを)。なので負けられない!
「「いけぇぇぇえええええええええええええええええ!!」」
ついに岩場に辿り着いた!
「「どっちが先だ!?」」
確認するように彩愛ちゃん達に聞くが―――
「「えっと……同着だった」」
「「え、嘘!?」」
信じられないことに同着だったようだ。本当はタッチの差とかあるんだろうけど、彼女達からは見えなかったのかもしれない。仕方ないね。
「はぁ、引き分けか……次はどうする、智哉?」
「僕は彩愛ちゃんと遊んでるよ。博人君は真由里ちゃんと居たら? この中じゃ新参者だし、少し人見知りなところがあるし」
「確かに。んじゃ、そうするか」
よし、博人君と真由里ちゃんを2人きりにさせることに成功させたぞ。
「彩愛ちゃん、一緒に遊ぼうか」
「うん。何しようか?」
「んー……一緒に泳ぐとか? いつも歩いてる感じで」
「いいよ。楽しそうだし」
「ありがと」
『要するに海でのデートですね』
あの、フェアリーさん? そういうのは百も承知なんだから、言わないでくれる? てか、よく錆びないね。
『海水程度で私は錆びませんよ』
そうかい……
何はともあれ、僕と彩愛ちゃんは海を一緒に並んで泳いで行った。
「競争してた時は気づかなかったけど、結構気持ちいいね」
「かなり白熱してたもん。そんなに夢中になってた?」
「ああ。負けらんないって思ってたら早く着くことに集中しちゃって。結局同着だったけど」
「よく競い合ってるよね、智哉君と博人君て」
「友達でライバルだからな」
和気藹々と話しながら泳いでいく。が何故か、彩愛ちゃんが立ち止まった。
「ん? どしたの?」
「……智哉君。私、夏休みが始まる前に、智哉君と約束したよね? 私をお嫁さんにしてくれるって」
「あ、ああ……したけど」
今頃何か不満でもあったんだろうか?
「えっとね、あの時、言葉だけで約束したじゃない? 今になって思ったんだけど、ちゃんと形でわかるように約束してほしいなって」
「いいけど……それ、指切りとかなの?」
「あ、近いけど惜しい」
え、じゃあ何が……
「正解はこれだよ………チュッ」
「!?!?」
…………………………………………い、今、何された………………? き、キス……だよな? 僕、彩愛ちゃんと…………キスしちゃった!?
「あ、彩愛ちゃん……!?」
「改めて。大好きだよ、智哉君。私を、お嫁さんにしてね?」
「! ああ……約束する」
そう言うと、僕は彩愛ちゃんに再びキスをした。触れるだけの軽いキスだったけど、今の僕達にはこれだけで十分だった。
一方その頃、久数は。
「久数~! 早くしないと、乗り遅れるわよ~!」
「セイバーさんも、早く!」
「ま、待ってください……2人共早いですよ……」
「こんな広いところを、よく迷わずに進めるものですね……」
アリサ、すずか、久数、セイバーは空港に訪れていた。お盆休みを利用して、バニングス家が所有している無人島に向かうことになったのだ。
「それにしても、無人島を持っているなんて、次元が違います……」
「一体いくらあれば買えるのでしょうか?」
「さあ……? っとセイバーさん、早く行きましょう。置いてかれそうです」
「折角彼女達が稽古のことも考えてくれたんです。行けなかったら申し訳がありません」
久数達は自分の荷物を持って小走りに移動する。
実はセイバーが言ったように久数は既に2人に魔法やデバイスのことを話しており、今回の旅行はその為の稽古も兼ねているのだ。
「これまでの戦闘データを見る限り、マスターはレアスキルにより召喚された質量兵器を主に使う傾向にあります。魔法の方ももっと鍛えないといけませんよ」
「……返す言葉もありません」
そう、久数は
「ミッドチルダに行くまでには、上達しているといいですが」
「ミッドチルダ……ですか。…………俺は、行きたくありませんけど(ボソッ」
セイバーに気付かれないように小声で呟くと、彼らはアリサの自家用ジェットへと乗り込んだ。