魔法少女リリカルなのは~転生者は静かに暮らしたい~ 作:レイブラスト
別荘滞在・最終日。
「王様ゲーム! 始まるよ~!」
「「イェェェェェェェェェェェェェェェェェェーイ!!」」
「……イエ~イ」
突然ほろ酔い気味のお母さんが提案したことに博人君とお父さんは歓声を上げ、真由里ちゃんは控えめに手を上げる。が、僕らはゲームがゲームだけに唖然としている。
「何で……王様ゲーム?」
「楽しそうだから」
「でも優美さん。これ、下手をしたら……」
あらぬ事を想像したのか、彩愛ちゃんが赤面した。
「あらあら、彩愛ちゃんはおませさんね。大丈夫よ、そんな命令は出さないから」
「だから安心していてくれ」
「まあ、お父さん達が言うなら……」
今一つ不安が拭えないけど……
「……あの、王様ゲームって、どんなルール?」
その時、真由里ちゃんが質問してきた。
「王様ゲームはね、みんなでくじを引いて、王様になった人が、番号が書かれたくじを引いた人達から選んだ2人に1つだけ命令を言うの。そして、王様の命令は絶対なの」
お母さんが簡潔にルールを説明していく。なるほど、わかりやすい。
「……そうなんだ」
「とことん楽しもうな、真由里! それに智哉と彩愛も!」
「……うん」
「(こうなりゃ腹括るか)ああ」
「(覚悟を決めよう)うん」
博人君達なら変なことを言ったりはしないだろうけど。てかよく考えたら、僕の両親以外子供じゃん。なら安心だ。
「さて、それじゃあ皆くじを引いて」
指示に従って、一斉にくじを引く。
「せーの……」
「「「「「王様だ~れだ!」」」」」」
「……え? 今のは?」
「くじを引いた時は、こう言うのが決まってるんだ」
「……ふ~ん」
「最初の王様は誰かな?」
僕のくじは王様じゃない。誰が王様なんだろうか?
「あ、俺だ」
博人君だった。まずは一安心。さあ、どんな命令を出してくる?
「そんじゃあ……4番は2番を抱っこする」
「4番は私よ」
お母さんが4番か。えっと、僕は…………
「……2番?」
いきなり当たった!?
「智くんが2番なのね。さ、いらっしゃい」
「う、うん……」
さすがに恥ずかしいが、命令なので仕方なくお母さんに近づき、抱っこされる。
「ふふ。こうやるのって、何年ぶりかしら」
「不思議……こうしてると、何だか安心する……」
「そりゃそうだ。子供はみんな、親といると安心するものさ」
お父さんが腕を組みながら、自分にもこんなことがあったなと言わんばかりの顔をして頷いている。
「優美さん……羨ましい」
そこで対抗意識を燃やすのは何か間違ってると思うんだけど、彩愛ちゃん。
少しして僕とお母さんは離れると、再びくじを引いた。
「「「「「「王様だ~れだ!」」」」」」
「お。俺だ」
今度はお父さんか。無難なのだといいな。
「なら……3番が5番を膝枕するってのはどうだ?」
「あら、いいわね」
膝枕か。考えようによっては難儀ではないな。番号は……僕じゃないな。
「俺5番~!」
「……3番」
真由里ちゃんと博人君か。……面白くなってきたぞ。
「……膝枕って?」
「うーんと……俺が母さんに耳垢取って貰ってる時にやる奴だ」
「……わかった」
「そんじゃ、よろしく」
真由里ちゃんはその場に綺麗に正座をし、その膝に博人君が頭を乗せる。
「重くないか?」
「……ううん、平気」
「そっか。……それにしても、真由里って暖かいんだな」
「……ありがとう」
「ふむ……中々良い雰囲気だな」
「この子達も将来が楽しみね」
その様子を見て楽しんでるお父さん達。……これ、わざとやったんじゃあるまいな? 無理に近いけど。
そして、再びくじを引く
「今度は誰だ!?」
またもや僕は王様じゃない。
「私みたい」
彩愛ちゃんか。
「じゃあ、1番が王様と、おでこをくっつける」
! 僕1番じゃん……!
「僕……です」
「それじゃあ………ん」
ゆっくりと、痛くならないように額をくっつける。
彩愛ちゃんの温度が伝わってくるし……顔が結構近い。
「近いね……」
「確かに……」
互いに顔が赤くなる。博人君は楽しそうに見ており、真由里ちゃんは興味深そうに見ており、お父さん達はニヤニヤしていた。……もう何も言うまい。特に最後。
そんなこんなで、王様ゲームは続いていった。
同時刻。無人島・バニングス家別荘
「えいっ、はっ……」
砂浜にて、久数が魔法の練習をしていた。と言っても本人は高度な魔法を使う気はないので、基本的なものを極めているのだが。
「こんなところでしょうか……」
「お疲れ様です、マスター」
練習を終えたところにセイバーがタオルを差し出す。近くにはアリサとすずかもいる。
「ここに来てから毎日特訓してて、大変だね」
「そうかしら? 私としては本気が感じられないけど。アンタの話にあったように、ミッドチルダってとこに行くんなら、魔法を鍛えないとダメなんじゃないの?」
「ええ。その筈なんですが……」
「……………………」
アリサとセイバーの疑念の目線に久数は無言で目を閉じると、ため息をついて彼女達に向き直った。
「…………正直に言います。俺は……ミッドチルダには、行きたくありません」
「!? な、何故ですか!?」
「ミッドチルダは、日本と比べて遥かに危険です。任務の途中で誰がいつ死んでもおかしくはありません。そうなったらと思うと……怖いんです」
「怖い……?」
アリサが発した一言に、久数はこくりと頷く。
「向こうは下手をしたら未成年でも死んでしまう場合がありますし、死んだら会えないじゃないですか……俺のことを、想ってくれてる人達に」
「っ! ……気づいていたのですか?」
「……確信はなかったんですけど」
驚いた様子のセイバーに久数は肯定する。アリサとすずかも、同様に驚いていた。
「俺は、俺の好きな人達を残して死にたくはない……ミッドに行くぐらいなら、地球で、セイバーさんと、アリサさんと、すずかさんと、平和に暮らしていたいんです……」
久数は自分の思っていることを全て吐き出した。それは邪なもののない、純粋な彼の願いであった。
そんな彼を、アリサ達は優しく微笑んで見ていた。
「そうだったの……まったく、そうならそうと早く言いなさいよ」
「私達、久数君が望むなら、ずっと傍に居る。ミッドチルダに行かなくていい。久数君の想いを受け止められるなら……」
「……2人も、私も、マスターのことを大切に想っているんです。マスターが自分で決めたことなら、異論はありません」
「っ!! セイバー、さん……みんな……ありがとう………」
直後、安心したのか久数は前のめりに倒れた。慌ててセイバーが抱き止めて表情を伺うが、すっかり寝ていた。
「疲れてたみたいね。ったく、久数は1人じゃ上手くいけそうにないんじゃない?」
「だね。私達で、ちゃんと支えてあげないといけないかも」
「そこでアンタは何故私を見る!? 別に私は、将来久数をつきっきりで支えてあげたいとか、思ってる訳じゃ……」
「ふふ。でしたら、私達も努力しないといけませんね」
「はい……!」
その後、アリサの執事である鮫島とすずかのメイドであるノエルが迎えに来て、久数を布団に運ぶのを手伝ってくれた。
こうして、それぞれの夏はあっという間に過ぎていった―――