魔法少女リリカルなのは~転生者は静かに暮らしたい~ 作:レイブラスト
無事に転生してから、実に5年が経過した。いや、正確には記憶が戻った去年からだから、一年か。待てよ? 僕はそれ以前のものもうろ覚えながら持ってるからより正確には……まあいいや。めんどくさい。それに、思い出すと恥ずかしい。自分が離乳する前のことなんて……。
ああそれと、神様は願いをしっかりと叶えてくれた。僕の両親は穏やかで、ほんわかしている……けど、しっかりしていて頼もしい。ギアスも完璧で、試しに使ったら両親の心が流れてきた。心の中でも穏やかで、とても安心した。何より、お父さんはカッコイイしお母さんは美人。もう嬉しいなんてもんじゃない。近所の友達に自慢したいくらいだ。……さすがに他のお母さん達と比べているみたいで、やらないけど。ちなみに両親は研究者で、パワードスーツの製作に携わっているらしい。これは先が楽しみになってきた。
「ねぇ智くん。お母さん買い物に行くけど、一緒に行く?」
この人が僕のお母さんの、尾崎優美。黒髪のロングヘアで、大和撫子って言葉がぴったりくる。研究所の同僚や先輩、ご近所さんから「優ちゃん」って呼ばれてるのを見たことがある。ちなみにお父さんの名前は、尾崎隼也って言うんだ。
「うん。行く行く!」
そんな優しくて大好きなお母さんと一緒にいるのが、今の僕の大切な時間。……これってマザコンかな? でも、お父さんのことも大好きだから、単なる親好き? わからない……
「ふぅ~。これだけあれば大丈夫ね」
その後、お母さんはマイバックに買ったものをたくさん入れて僕と一緒に道を歩いていた。割と近くに店があるから、車を使わなくてもいいから節約にもなる。
「……? あれ? あれあれ?」
「どうしたの?」
突然お母さんがバックをまさぐりながら困惑の声を上げた。何かあったんだろうか?
「どうしよう、智くん……牛乳買い忘れちゃった……」
「ありゃ……もっかい行く?」
「でも、智くん疲れてるんじゃ……」
「大丈夫、あそこの公園で待ってるから。お母さんは早く行って来て」
「智くん……ありがとう。急いで行ってくるねっ」
そう言うと、踵を返して小走りに来た道を戻って行く。早く戻って来てほしいな。
「さて……公園で遊んでようかな」
暇つぶしにはもってこいだ。でも、この時僕は気づいてなかった。公園に向かうことで、ある運命的な出会いをすることに。
「Fly into rhe Sky、高く飛び立て~! 焼けつくように燃え……?」
歌を歌いながら公園を歩いて行くと、ベンチに1人の女の子が座っていて、泣いていた。それだけなら、僕は普通に声を掛けていたと思う。でも今回は無理だ。何せ相手は―――高町なのはだからだ。
(これここで声掛けたら絶対に友達フラグ立つよな……そうなると、今後の事件に大きく関わるかも……それは勘弁願いたい。でも見過ごす訳にもいかないし……ん?)
街灯に隠れて様子を見ながら困っていると、1人の男の子がなのはに近づいて行った。
(あの子……そうか、あの子が転生者なのか。こりゃラッキー! 彼女はあの子に任せておいて、僕は退散させて……あれ?)
2人に背を向けようと方向を変えた時、僕と同じように近くの街灯に隠れている小柄の女の子と目が合った。
(一体、何者なんだろう?)
ふと気になって、僕はギアスを発動させた。
(様子を伺ってる……じゃあ、あの子も転生者―――)
っ!? 途中で途切れた……ギアスの無効化? まさか……もう2人目を見つけるとは……しかも女の子なんて……
「君は……」
「っ!」
話しかけようとすると、逃げてしまった。いや、何で!?
「待って!」
大慌てで後を追いかける。後ろの男の子が、こっちに注目していたのに気づかずに。
(……アイツ、転生者か?)
彼、白崎誠一は立ち去った智哉の背を見ながらそう考えていた。
(いや、俺の勘違いかもしれん。それより今はこっちだ)
が、すぐに気持ちを切り替えると目の前の高町なのはに向け、ソレを発動した―――
「高町なのは。俺に対し全幅の信頼を寄せろ!!」
「はぁ……はぁ……ま、待ってってば……!」
「はぁ、はぁ……し、しつこいよ……」
その後、すっかり疲れ果てた僕達は息も絶え絶えに膝に手を置いた。
「ねぇ……何で逃げたの? 君が、転生者だから?」
「っ!? どうし……!」
慌てて口を塞ぐがもう遅い。
「やっぱり……」
「うぅ……バレたくなかったのに……」
「ごめんね。僕、このこと誰にも言わないから。だから機嫌直して?」
「……本当?」
「ホントホント」
何度も頷いてみせる。これで信じてもらえるなら、万々歳だ。
「……わかった。でもその代わり、君のことを教えてくれない? 私も、話すから」
「もちろんいいとも」
所謂情報交換という形で話がついた。安いもんだ。
聞くところによると、この子の名前は上川彩愛と言って、前世では酷いいじめを受けていた上に殺害されてしまったらしい。それを不憫に思った神様(女性の神らしい)に転生させてもらったそうな。
「……何でそんなことができるの? こんな可愛らしい子が、どうして殺されなきゃ……!」
知らず知らずの内に、僕は拳を握りしめていた。容姿を変更するには願いの1つとして含めなければならない。つまり、上川さんは前世のままの姿だ。性格も第一印象は悪くないと思うのに……何で……!
「ふぇっ!? か、可愛い……?」
「え? あ、声出てた!? ご、ごめんね、変なこと言って」
「う、ううん。可愛いって言われたの初めてだから……嬉しい……」
顔を赤らめ笑顔になる上川さん。ヤバイ、結構恥ずかしい……さっきの怒りが吹っ飛んじゃった。ま、まあこれは置いといて、彼女の願い事は、優しい家族のところに生まれたい、みんなが仲良くしてほしい、ギアスキャンセラー(ギアス系以外に、通常の催眠術にも効果あり)、完全治癒能力(自他共に使用可能)、専用デバイス『フェアリー』(女性人格でネックレス型)の5つだそうだ。奇しくも僕と同じ数で、最初の2つは被ってた。
「この子がフェアリーだよ」
『よろしくお願いします、尾崎さん』
「こちらこそ。僕のことは智哉でいいよ」
「それって私も?」
「え? ……う、うん。そう、なるのかな? 僕ら、出会ってばかりだけど……友達になれそうだし……」
首を傾げながら言った上川さんに思わずドキッとしながら、答える。……何だ今の。何で僕、緊張してるんだ?
「なら、これから智哉君って呼ぶ。私のことも、名前で呼んでほしい」
「えと……それじゃあ、あ、彩愛…ちゃん……?」
「っ……!」
女の子を名前で呼ぶのはかなり恥ずかしく、勇気がいることだと今知った。か……彩愛ちゃんもこういうのは初めてなのか、顔を赤らめていた。
『マスターと智哉さんの心拍数と体温が上昇しています。風邪ですか?』
「な、何でもないよ! ちょっと緊張しただけ」
「そ、そうそう! 女の子の友達ができて、緊張しただけ……」
慌てて取り繕うが、本当に緊張しただけなのか甚だ疑問であった。
「あ、いたいた! ごめんね智くん、遅れちゃった」
その時、お母さんが僕を見つけて近づいて来た。無事に牛乳を買ったみたい。フェアリーはバレないように黙っている。
「智哉君のお母さん?」
「う、うん。そうだよ」
「あら? 貴女はお隣の上川さんとこの……」
「「へ……? き、君、隣だったの!?」」
互いに互いを見ながら揃って驚いてしまう。だって、今まで会ったこともなかったんだから、仕方ないじゃないか!
「あらあら……どうやら智くんに可愛い彼女さんができたみたいね」
「早いよお母さん! 彩愛ちゃんとはまだ友達だよ!」
「そ、そうです! そんな、彼女なんて、~~っ!」
再び僕らは顔を赤らめてしまう。てか、4、5歳の子供達がこんな話してるのっていいのかな?
「と、とにかく早く帰ろうよ! それ、腐っちゃうよ!」
「ふふ、そうね。なら、彩愛ちゃんも送ってあげましょうか」
「「へぇ!?」」
何度目だろう。驚いて素っ頓狂な声を出したのは。
「同じ方向に家があるんだから、いいんじゃない?」
「それは……確かに」
「じゃあ行こ? 私も彩愛ちゃんと親睦を深めたいし」
「は、はぁ……」
まさか公園に来たのがきっかけで転生者と出会うどころか、友達になるなんて……世の中何が起きるかわからんものだ。案外、これが運命の出会いだったり……はは、まさかね。
今回はここまでとなります。果たして白崎はなのはに何をしたのか? その謎は近々明らかになりますのでしばしお待ちを。