魔法少女リリカルなのは~転生者は静かに暮らしたい~ 作:レイブラスト
月村家・応接間
あの後、月村家の一室に移動した僕達は、彩愛ちゃんから事の発端を全て聞いた。僕は彼女の話を信じたけど、他の3人は信じられないようだった。しかし、彩愛ちゃんがフェアリーに録音していた音声記録を聞かせたところ、どうにか信じてもらえた。……ただし。
「まさか、彩愛まで魔導士だったなんてね」
「びっくりしちゃった……」
そう。彩愛ちゃんが魔導士であることが露見してしまった。証拠を見せるのに仕方がなかったとはいえ、取り繕うのはもう無理だ。
「俺にまで黙ってたなんて、水臭いなぁ」
「ごめんなさい……」
しゅんと俯き、素直に謝る。
「……よし、許そう!」
「「へ?」」
何故か博人君が即許してくれた。え、早くない?
「俺達に隠していたのは事実だけど、ちゃんと謝ってくれたから何も言うことはないさ」
「私はアンタみたいに割り切るのは難しいけど、今更どうこう言う気はないわ」
「もう隠し事はしないでね? 約束だよ。私達も、彩愛ちゃんが魔導士ってこと内緒にするって約束するから」
「う、うん……」
とどのつまり、みんなには許してもらえたようだ。結果オーライ……なのかな?
「で、話を戻すが、白崎の奴は何でアリサ達にそんな催眠術を掛けたんだ?」
「多分、久数君がいなくなった時の違和感をなくす為だと思う。彼は久数君を密かに邪魔者扱いしていたから」
「それって……殺すってことか?」
「……多分」
恐るべき事態に全員の顔面が蒼白になる。小4の子供が、殺人をしようなんて思いにもよらなかったんだろう。
「そう言えば……今日、久数君は?」
「確か、用事があるって学校に残るって言ってたよ。そろそろ帰って来るんじゃないかな?」
「っ、まずい……!」
すぐに立ち上がると、僕は彩愛ちゃんと共に部屋を出ようとする。
「お、おい! どこ行くんだ!? 何があった!?」
「久数君は今1人だ! 白崎君に狙われる可能性が大なんだ!!」
「博人君達はここに居て。彼は、私と智哉君が探すから!」
久数君を白崎君より先に見つける為、僕達は外に出た。
「とは言ったものの、どうやって探す!?」
捜索範囲はかなり広い。シュロウガの探知システムを使っても時間はかかる。
「ここは二手に分かれた方が見つけやすい。私はこっちを探すから、智哉君はあっちを!」
「わかった。見つけたら互いに連絡し合おう!」
効率よく探す為、僕と彩愛ちゃんは別々の道へと向かって行った。
「はぁ……すっかり遅くなってしまいました」
『帰り際に翠屋で買い物するからですよ』
人気のない道を、久数が待機状態のセイバーと話しながら歩いていた。
「すいません……でも、あのケーキ早く買わないと売り切れそうだったので」
『人気商品でしたからね』
楽しく会話しながら歩いていた時、彼の前に人影が見えた。
「よっ、西神」
「あ、白崎君。こんな時間に、こんなところでどうしたんです?」
「何、ちょっとお前に用があってな」
「俺にですか? ……ひょっとして、このケーキですか? ダメですよ、ちゃんと自分で買ってください」
「いや、ケーキじゃないんだが」
「では一体?」
「それはだな……」
間を開けた瞬間、誠一は結界を張った。
(マスター。アースラの探知システムのハッキングに成功しました。一時間だけですが、結界を見つけることはできなくなりました)
(それだけあれば十分だ。でかしたぞ、メサイア)
『マスター。この一帯に結界が張られるのを確認しました』
「え? 誰が……まさか、白崎君? 何故結界を張るんです?」
「知る必要はない。何故なら……お前はここで―――死ぬんだからなぁ!!」
バリアジャケットを纏い、メサイアをサイト形態に変形させると、誠一は間合いを一気に詰めて斬りかかった。
「うわぁ!?」
慌てて久数もバリアジャケットを纏うと、攻撃を寸でのところで躱した。
『大丈夫ですか、マスター!?』
「ええ…。それより、いきなり何するんですか! 俺が何かしたんですか!?」
「ああしたさ。お前は原作を守らなかったんだよ」
「? どういう意味ですか?」
言葉の真意がわからず、久数は首を傾げる。
「原作ではForceの時点で、なのは、フェイト、はやて、更にアリサ、すずかは誰とも付き合ってないし結婚もしていない。わかるか?」
「それは……俺も読んでましたから、その辺は少しなら……」
「俺は原作での死亡及び退場キャラを救いつつ、大まかな流れを原作通りに進めたい。だが、お前はアリサとすずかと恋愛関係に発展し、魔法に関しても独断で先に教え、更に防衛プログラムもお前のデバイスで直接葬りやがった。アレは本来ならアルカンシェルで消滅させる筈だったのに……」
「そんなこと言われましても……」
正直あの時は無我夢中だったので、ダメージ配分を気にしてる暇がなかった。
「それにアリサ達は原作が終わるまで恋愛も結婚もしてはいけないのに……。大人しく踏み台をやってればまだ良かったが、お前という存在は原作を壊しかねない。だから死ね。ここで、今すぐに」
「ち、ちょっと待って下さい! そんな身勝手な理由で殺されなきゃいけないんですか!? どうして―――」
「問答無用っ!!」
「危ない!」
誠一が振り上げたサイトを、実体化したセイバーが剣で受け止める。
「セイバーさん!」
「覚悟を決めて下さい、マスター! 彼は間違いなく、マスターを殺そうとしています!!」
「っ……わかりました!」
こんなところで死ぬ訳にはいかないと、久数もハンドガン二丁を手に持つ。
「お前の質量兵器への対策は十分してきた。勝てると思うな!!」
メサイアをランスに変形させ、誠一は久数とセイバーを殺す為、戦いを始めた。
『マスター、結界の反応を探知。すぐ先です』
「結界? ……まさか!」
その頃、久数を探していた彩愛とフェアリーは結界を見つけ、智哉に連絡した。
「智哉君、結界を見つけた! 多分中に久数君が居ると思うから、座標を送る!」
『確認した。僕もすぐそっちに行く。それまで行動を見張っててくれないか?』
「いいよ」
通信を切ると、彩愛は結界の中に入って行った。
結界のほぼ中心部に辿り着くと、そこでは久数、セイバーと誠一が戦いを繰り広げていた。
「どうした? お前等の力はそんなものか?」
切り傷を大量に作り、俯せに倒れた久数の背中を踏みつけながら誠一は言う。
「がっ、あ……!」
「マ、マスター……!」
セイバーも力が入らない様子で地面に突っ伏していた。
実はメサイアの力によってセイバーと久数の魔力リンクがほぼ遮断されてしまい、戦闘力が大幅に下がってしまったのだ。加えて久数は真っ先に喉を攻撃されており、これ以上武器を出すことが不可能になっていた。攻撃魔法が上手く使えないのも仇になっていた。
「どうして、マスターの武器が効かない……!?」
「簡単なことさ。これを見ろ」
誠一は服をめくり、身に纏っている迷彩柄の防弾チョッキを見せた。
「自衛隊から拝借したんだ。ギアスを使えば簡単だったぜ」
「そ、そんなことするなんて、犯罪ですよ……!」
「バレなきゃ犯罪じゃない―――どこぞの宇宙人もそう言ってたじゃないか。ていうかお前も、ロケットランチャーとか使えばいいのに」
「そんなことして、貴方が死んだらどうするんですか!!」
「だからお前は甘いんだ。何にせよここでお前等を殺しても、バレなければ俺が正義なんだよ!!」
更に踏みつける力を強める。
「ぐぁああああああああーっ!?」
痛みに耐えかね、久数は悲鳴を上げる。
「(何て酷いことを……!)やめて!!」
それを見ていた彩愛はとても見ては居られず、飛び出してしまった。
「ん?」
「あ……彩愛、さん……!?」
「貴女、巻き込まれたのですか……?」
「どうしてこんなことをするの!? 2人が何したって言うの!?」
「チッ、うるさい女だ……!」
久数を蹴飛ばすと、誠一は彩愛に向かって歩き出した。
「な、何を……?」
恐れる彩愛に肉迫すると、頭を両手で掴んで強引に自分の目と合わせた。
「上川彩愛! 今見たことは全て忘れろ!!」
ギアスを使って記憶を消去しようとする。しかし……
「いや! 離して!!」
「っ!? ギアスキャンセラーだと……!」
左目に反転した青いギアスの紋章が浮かび、自分のギアスを無効化したことに誠一はおろか、久数達も驚いていた。
「そうか……やはりお前も特典、しかもギアスキャンセラーを持っていたとはな……! だとすると敵対した以上俺の障害になるのは確実。よし―――殺すか」
「っ!? やめろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ランス形態のメサイアを振るい攻撃する誠一。
『無駄です』
「何っ!?」
しかしその攻撃は、彩愛の背中から生えている天使のような翼―――戦闘形態のフェアリーによって防御された。
「なるほど、その翼がお前のデバイスか。いいぜ……俺がこの手でもいでや「させるか!!」誰だ―――うおっ!?」
そこへ凄まじい風圧と共に、黒い影が現れた。そう、シュロウガだ。
「どうにか間に合ったな……無事だったか? 彩愛ちゃん、それに久数君達も」
「う、うん!」
「は、はい……しかし貴方は……」
「お前のその声、聞き覚えがあるぞ……そうか、尾崎か! お前も見てたのか! 大層なデバイスまで持って……味方になってくれたら心強かったかもしれないが、これはこれで殺し甲斐があるってもんだ!!」
「君は……!」
目撃者を全て殺すつもりでいる誠一にシュロウガは戦慄を覚えた。本当に彼がこの世界における主人公なのか? そうも思い始めた。
「フフ、まずは誰を「そうはさせません!」がっ!?」
右手のメサイアを構え直した時、久数が不意を突いて飛びついた。
「智哉君! 今のうちに、セイバーさんと彩愛さんを連れて逃げて下さい!!」
「マスター! 何を!?」
「正気か?」
「どうせ俺はこの傷では助かりません。ですがセイバーさんは貴方か彩愛さんと魔力をリンクさせれば助かります! ですから早く―――」
「黙れ! この死に損ないが!!」
「ぐあ!?」
どうにか久数を離そうともがくも、最後の足掻きと必死でしがみつく彼は離れなかった。
「……そうか。それが君の覚悟だと言うなら、僕はそれに応えよう」
「智哉君!?」
「ま、待って下さい! マスターが! マスターが!!」
2人の声を余所に、シュロウガは2人を抱えると全力で離脱して行った。
「良かった……」
「いい加減離れろ! 踏み台が!!」
「がっ!」
ついに久数は振り放されてしまった。
「どこまでも邪魔ばかりしやがって……死ねぇ!」
メサイアをハルバード形態にし、カートリッジを装填すると誠一は勢いよくソレを振るい斬撃を発生させた。
(申し訳ありません、すずかさん、アリサさん。俺は、ここまでみたいです……ケーキ、渡してあげられなくてごめんなさい……)
久数の姿は、爆炎に飲まれた。
「……死んだか?」
『生命反応なし。完全に死亡を確認しました。後、もう少しでハッキングが解けます』
「そうか。なら、撤退するとしよう(逃げた3人については放っておけばいいだろう。どうせ周りに知らせたところで証拠は無いし、いざとなれば上川を殺して他の奴らをギアスに掛ければ済む話だ)」
結界を解除すると、誠一はその場から立ち去った。
独善、ここに極まる。
ついに白崎は本性を剥き出しにし、邪魔者を排除せんと襲いかかりました。ちなみにギアスを使わなかったのは「あの程度の奴らに遅れを取る筈がない」と高をくくっていたからです。
そして何故あそこで智哉は撤退したのか? 久数は本当に死んでしまったのか? それらの謎は次回明らかとなります。