魔法少女リリカルなのは~転生者は静かに暮らしたい~   作:レイブラスト

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今回が最終回となります。


EPFINAL

「―――よし。記録終わりっと」

 

そう言うと、僕はパソコンから離れて背伸びした。

 

(今から10年前のことを記録するってのも、中々良いものだな)

 

僕が彩愛達と出会い、白崎の企みを暴いてから。その直後に起きた『Oガンダム事件』から実に10年が経過した。

僕達は現在20歳になっており、高卒で自動車関係の仕事に就いている。あの後、白崎君は管理局に連行され、管理局もリンディさんが言ってた通り地球から手を引いた(最も、地球に居ても厄介ごとに絡まれる可能性が物凄くあるが)。

なのはとユーノ、テスタロッサ一家に八神家は地球に残って魔法に関わらない生活を選ぶことにしたそうだ。そのせいか、僕達とは仲良しになっている。なのはは現在パティシエ関連の勉強を海外でしており、時折ビデオレターが届いていると聞く。……海外とパティシエと聞くと、どこぞのスキンヘッドな御方を思い出すのは何故だろうか? フェイトはデスクワーク系の仕事に就く予定で、アリシアは大工になるって言ってたな。アルフとリニスもアルバイトをしているとか。シグナムは博人が通っていた篠ノ之道場を継いで師匠になっており(保護プログラムが云々とか言ってた)、博人は続けて通っている。シャマルは医者として働いており、かなり人気があるようだ。はやての足はすっかり治り、就職の為に猛勉強をしているとか。

でも僕が就職する時はかなり辛かった。IS……インフィニット・ストラトスのせいで女尊男卑の風習が広まり、男性に限って就職氷河期に陥っていたからだ。それを解決してくれたのが、アリサとすずか。彼女達の口添えがあってお偉いさんを退けることができたのだ。彼女達は現在セイバーと共に久数と結婚しており、一所懸命に働いてる彼をサポートしているのだとか。

 

(こうして考えると、色々懐かしいなぁ)

 

僕達が大人になるのはあっという間に感じられた。でも今は違う。大人になってからの時間はゆっくりに感じられる。何故かって?

 

「どうしたの、あなた? もう夜の10時なのに」

 

ほら来た。僕の最愛の妻、彩愛だ。就職して少しした後に僕と結婚し、新しく買った家に一緒に住んでいる。

彼女のお腹には現在、小さな命が宿っている。僕との間にできた宝物だ。

 

「いや……君と会った日を思い出してさ」

 

「そう言えば今日で丁度10年目だったわね。何か、つい昨日のように感じられるね」

 

「そうだな」

 

原作に関わってなくて、本当に良かったと今でも思う。大好きな彼女と、大切な時間を過ごせるのだから。

 

「あ」

 

「どうしたの?」

 

「今、動いた」

 

「本当? どれどれ……」

 

お腹に耳を当て、鼓動を聞く。こうしているのも、幸せな時間の1つだ。

 

「相変わらず元気だな。やっぱり男の子か?」

 

「意外と女の子かもしれないよ」

 

『確かに、マスターみたいに元気一杯ですものね』

 

「「わひゃっ!?」」

 

突然フェアリーが話しかけてきたので揃って驚く。彼女は不意打ちで言ってくるから、少し心臓に悪いんだよね。

 

「いきなり話しかけないでよ、もう……」

 

『申し訳ありません。ですが、幸せそうな2人を見てると私まで幸せな気分になりまして。……もうすぐでしたよね? 予定日』

 

「ああ。絶対に、元気な子が生まれるさ」

 

ISの登場によって不安定な世界になってはいるが、僕達は僕達の人生を歩き続ける。『リリカルなのは』を通して僕達が経験した物語はとっくに終わった。しかし、『IS』の物語を紡ぐ道は別の人達の前に既にできている。ほら、丁度テレビでやっている。「世界で初めてISを動かした男子が現れた」と。

もう僕達の出る幕じゃない。出る必要もない。僕達はただ、今を生きていくだけだ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 ミッドチルダ

 

「はぁ……はぁ……! クソッ、逃げないと……!」

 

智哉達に全てを暴かれ、管理局に逮捕された白崎誠一は捕まってから1年後に脱獄していた。彼は逃げた足でスカリエッティの研究所にどうにか辿り着き、デバイスもないままに彼らと接触。死亡キャラを救いつつ原作通りに事を進めようとした。しかし、ゼスト隊とティーダ・ランスターは逮捕前に名前を口走っていたことで「逮捕はされたが念のため」という理由で秘密裏に護衛されていた。結果、彼らに関する事件は何一つ起こらず、誠一が何もせずとも死亡者は出なかった。

これには大いに焦った。彼はゼスト隊が全滅する場面でキーマンではないクイントのみを救うつもりであったが、それが根本からねじ曲げられたのだ。更にレジアス・ゲイスとのパイプを作ることも不可能になった。そこで仕方なく、スカリエッティに方針の変更を申し出た。それ自体には成功したものの、スカリエッティは「プランを大幅に変えることには賛成だしこれからやる。だけど、君の言葉からは熱意どころか何も感じない。これ以上君と居ても無駄だから、もう出て行ってくれないかな?」と言われ、反論したら戦闘機人をけしかけられたので基地から逃げ出した。

 

そして現在。スカリエッティはテロを起こさず、敢えて真実を語ることで管理局上層部を一掃。管理局は一新され、スカリエッティや彼の娘達も周囲に受け入れられた。

 

「奴らが追って来る……! また捕まるのは嫌だ!!」

 

だが誠一だけは必死に逃げていた。管理局から、スカリエッティから。実は現時点で管理局は先の暴露事件で有耶無耶になっており、追跡は行われてなかった。スカリエッティも既に興味を失っており、完全に放置していた。それでも彼は、何者かから追われていると思い常に逃げ惑っている。手にはスカリエッティのところから逃げ出す時に退職金代わりに奪った剣型デバイスがあるが、とっくにボロボロになっていた。

 

「っ!? どこだ!? 居るのはわかってるんだぞ! 俺が返り討ちにしてやる!!」

 

そう言って壊れかけたデバイスを何度も振るう。彼の瞳には、何も映っていない。あるのはただ逃げることと、どうにか原作通りに進めること。しかしStrikerS以降の原作はもう壊れた。他でもない、自分の手で壊したのだ。

 

「俺は生きる……! 生きて、原作を守るんだ……!」

 

自分の中の歯車が狂っているのに気づかず、彼は歩き続ける。かつて彼が目指していた平穏を求めて、永久に―――




という訳で、この作品もこれで終わりとなりました。智哉と彩愛と久数達は幸せな人生を送ることができ、白崎は廃人となってミッドを彷徨う羽目になりました。
彼らの物語はここで幕引きですが、世界は動き続けます。新たな物語……「ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~」を軸として。

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