魔法少女リリカルなのは~転生者は静かに暮らしたい~   作:レイブラスト

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転生者達の最後の1人がついに現れる。


EP03

僕が彩愛ちゃんと出会い、シュロウガを貰ってから4ヶ月が過ぎた。彩愛ちゃんとは友達関係を継続させており、いつも仲良く遊んでいる。転生者云々の話はとっくにしなくなった。何か失礼だしね。でも相変わらず、彩愛ちゃんの両親は僕と彩愛ちゃんがくっつくことを願ってるらしく、お父さんとお母さんも一緒になって言っている。しかもフェアリーまでからかってくる始末だ。お蔭で小さなことでも意識しちゃって、彩愛ちゃんといる時はほとんどドキドキされっぱなしだ。……だけどそれは彩愛ちゃんも同じだし、何より彼女のことは嫌いじゃない。むしろ好きって方向に傾いてきている。向こうがどう思ってるのかは知らない。知るのも、ちょっと怖い。僕のこと嫌いじゃないよね? だ、大丈夫だよね!?

 

「っ! 智哉君、あれ!」

 

「えっ! どれ!?」

 

っと、回想に夢中でボーっとしていた。今は彩愛ちゃんと散歩してるんだった(デートとも言う)。彩愛ちゃんが指した方向を見る。

 

「ちょっと何するのよ! 離しなさいよ!」

 

「やめて! 離して!」

 

「うるせぇガキだな! 静かにしろ!!」

 

「…………」

 

えっと、状況を整理しよう。まず目の前に明るい茶髪の女の子と薄い黒髪の女の子がいて、何かスーツ着た男達に誘拐されようとしている。

 

誘拐されようとしている。大事なことなので(ry

 

「あの2人って、アリサ・バニングスと月村すずかだよね? どうしよう……助けた方がいいかな?」

 

「と言われても、シュロウガを使うには許可いるし、僕原作に関わるのは……でも放っておけないのは事実だし……」

 

そうこうしている内に2人は車に乗せられ、連れて行かれてしまった。

 

「仕方ない。原作に関わるリスクは承知の上で、助けるか」

 

その為にまずお父さん達に連絡を取ろうとし、彩愛ちゃんはフェアリーを起動しバリアジャケットを纏おうとした―――が。

 

『? マスター、前方に生命反応あり。人間、それもマスター達と同い年の子供のようです』

 

「え?」

 

「何だって?」

 

作業を中断し前を見ると、白髪に遠目なんでよくわかりにくいが、おそらく赤と青のオッドアイの少年がいた。

 

「「……転生者だな(ね)」」

 

それも典型的な踏み台の外見してるし。

 

「まあ彼が踏み台かどうか決めつけるのは早いから置いといて、彼がいるんなら僕らは必要ないね」

 

「そうかな?」

 

『そうですよ。折角のデートなんですから』

 

「いやそれは……そうだけど……」

 

フェアリーが余計なことを言うもんで、一緒に真っ赤になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さん初めまして。俺は西神久数。訳あって踏み台という転生者をやってます。

ここに至るには色々あって、まず前世で俺はアニメオタク、それも俗に言うキモデブみたいな出で立ちと言動をしていたんです。一応、勉学に励みましたしボランティアもしたんですけどね。で、ある日。サークルの仲間と横断歩道を歩いてたらトラックが信号無視で突っ込んで来まして。咄嗟にみんなを庇って俺だけ轢かれて、そのままポックリいっちゃいまして……それで気がついたら、この体に魂が憑依していた、という訳なんですよ。自分でも信じられないんですけどね。

それで調べて行く内に、この世界が以前俺が見ていた『魔法少女リリカルなのは』という世界だということがわかりまして。しかも憑依した人物は、ルックスや所持していたデバイスの意見からして、俺と同じ重度オタクで踏み台転生者と呼ばれる人物だったようで。ちなみに俺の、性格には前の持ち主の特典ですが、全部で6つありまして。1つ目が容姿の変更。2つ目が王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)。3つ目がデバイス『セイバー』(Fateというゲームのキャラクターで、通常はアクセサリーの形をしてますが、自由に肉体つきで人間の姿になれます)。4つ目がニコポ。5つ目がナデポ。そして6つ目が魔力ランクSSS。

 

いやぁ、ここまで来るといっそ清々しいですね。それにしても、何故ニコポとナデポが別々なんでしょうか。あ、神様がケチったんですね、きっと。

ともかく、リリカルなのはの世界で生きてくことを強いられた俺ですが、折角ならいっそのこと踏み台として生きて散りましょうって考えたんです。だって、デブではないと言え、今の俺は白髪オッドアイ。どう見ても化け物でしょ。なら嫌われまくろうと考えた次第で。

そんでもって今は絶賛散歩中です。

 

『大変です、久数! 女の子が誘拐されようとしています!』

 

っ、セイバーさんが教えてくれたことに驚きながら見ると、アリサ・バニングスさんと月村すずかさんという少女が車に乗せられて連れていかれました。

 

「ついにこの日がやって来ましたか……セイバーさん、車の位置を察知できますか?」

 

『既にやってます。現在位置は、ここです』

 

「さすが仕事が早いですね。では、行きますよ!」

 

『はい!』

 

ここで上手く立ち回り、俺は踏み台として一歩歩み出すんです―――!

 

 

 

 

 

 

でも、踏み台って……どんなこと言えばいいんでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

『ここです、久数』

 

セイバーさんが指定した場所は、海辺の大型倉庫でした。なるほど、確かにここならうってつけですね。

 

「人数はわかりますか?」

 

『先ほどの女の子が2人に、成人男性が6人程います』

 

「ありがとうごさいます。すみません、何から何まで」

 

『そう畏まられると、私も困るのですが……』

 

そんなこと言われましても。特典さえなければ何の個性もない化け物ができることなんてたかが知れてますから。才色兼備なセイバーさんを敬わなくてどうすると言うんですか。

 

「とにかく行きますよ! セイバーさん、実体化を!」

 

『了解しました!』

 

途端に人の姿になるセイバーさん。思わず見とれてしまいます。俺なんかが失礼ですね……気を取り直し、俺もバリアジャケットを纏います。デザインは案外普通で安心しました。さて、武器を王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)から取り出して……あら?

 

「何故に重火器ばかりなので?」

 

出てくるのは拳銃やロケットランチャー等、近代兵器ばかり。……これはあれですね。私がミリオタだからですかね。

 

「……さすがに殺人はまずいです」

 

ごもっともです、セイバーさん。

 

「ならこれで」

 

今度は手頃な近接武器(と言っても警棒ですけど)を取り出します。これならいいでしょう。

 

「では……突入!」

 

バゴッ! という音と共に、扉を壊して倉庫に入る。どれ、人数は……あれ? 男性が2人しかいない。奥にいるんですかね?

1人は驚いた様子でこっちを見ていて、もう1人は特に気にしてない様子で漫画……北○の拳を読んでます。何故に北○の拳? まあ俺もあれは大好きだったんですけどね。

 

「な、何者だお前等は!?」

 

「どうしたんすか、兄貴?」

 

「侵入者だ! 見てわかれ! とにかく、ここを知られたんだ。1人はガキだが、とっとと始末するぞ!」

 

「えー? 嫌ですよ。折角今、ラ○ウとの戦いのクライマックスなんですから。我が生涯に一片の悔いなし! の直前なんすよ」

 

「どうでもいいわんなもん! 第一俺その漫画よく知らねーんだよ!!」

 

「えっ!? 北○の拳知らないんですか!?」

 

あ、思わず口に出してしまいました。ん? 本を読んでた方がこちらを向きましたね。

 

「君、北○の拳読んだことあるの?」

 

「は、はい。全巻一気読みしました」

 

「マジで!? 凄いなぁ。ちなみにどの場面が好き?」

 

「そうですね……サ○ザー戦のクライマックスですかね」

 

「ああ! 彼が最後に『お師さん……』て言うとこだったね」

 

「あの場面がもう感動しちゃいまして! 読みながら泣いちゃいましたもん」

 

「わかる! 非常にわかるよ!!」

 

話は弾み、北○の拳における数々の名場面について語り始めようとした―――その時。

 

「いい加減にしろ! 何お前等仲良く北○の拳で意気投合してんの!? 敵だろソイツ!!」

 

「何言ってんすか。俺の中じゃこの子は仲間っすよ」

 

「うるせぇ! とにかく下がっとけ!!」

 

あまりの剣幕に「はいはい」と苦笑いしながら下がる。もう少し話していたかったのに……

 

「あの、久数」

 

「どうしたの、セイバーさん?」

 

「残りのメンバーがこちらに向かっています。先ほどの声を聞いたのでしょう」

 

あちゃあ、失敗しました。こうなるなら話してる間にセイバーさんに2人を助けるように言えばよかったですね。だって今の今まで唖然としてましたもん。無理もないですけど。

 

「どうしたんだ、さっきの声は!」

 

「何か北○の拳がどうのって」

 

「その話はいい! それより侵入者だ!! 数は2人だ、やっちまえ!」

 

「頑張ってくださいね~。俺は読書してますから」

 

「テメェも少しは手伝えよ!!」

 

何てことでしょう。6人中5人が俺達2人を襲おうとしています。しかも全員ナイフまたは拳銃持ち。ふむ……

 

「セイバーさん。申し訳ありませんが、3人程倒してくれませんか? 体格差から言って、今の俺では2人が限度なので」

 

「わかりました。では!」

 

言うが早いか、セイバーさんは不可視の剣を引き抜くと大地を蹴って相手の懐に飛び込み、柄の部分を使って素早く男性2人の鳩尾を突き、更に足払いをして地面に倒し頭を強打させ意識を刈り取り、残る1人を睨みます。

 

(さすがです。こちらも負けてられませんね……!)

 

流れるような戦闘に心を奪われた男性2人に、俺は一気に近づくと警棒で脛を思い切り殴りつける。悶絶してるところに、下顎へのダブルアッパーカットを決めダウンさせます。本を読んでた人は、逃げたのか帰ったのかいませんでした。

 

「こんなところですね。……セイバーさん、その人を見張っておいて下さい。俺は2人を助けますから」

 

そう伝え、月村さん達へと近づいていく。そこでわかったことですが、バニングスさんは今にも泣きそうな顔で、月村さんは泣いてました。余程怖かったんでしょう。

 

「大丈夫、安心してください。もう怖くありませんから」

 

できる限り優しく声を掛けたんですが……

 

「おい、お前……バニングスはともかく、ソイツを助けたところで何か価値があるっていうのか?」

 

「? どういうことです?」

 

「お前、ソイツがどんな化け物なのか知らねぇのか!?」

 

「化け物……?」

 

月村さんが? 何故?

 

「っ!? や、やめて! それ以上、言わないで!!」

 

「ソイツは『夜の一族』って言う吸血鬼……人外の家系に生まれた、化け物なんだよ!!」

 

「!! あぁ……」

 

「すずかが……!?」

 

月村さんが更に泣きじゃくり、バニングスさんが驚愕の視線を月村さんに向けます。……よくわかりませんが、気に入りませんね。

 

「それがどうかしたんですか?」

 

「「え?」」

 

ほぼ同時に、月村さんと男性が驚いた声を上げました。

 

「……セイバーさん。ソイツを気絶させて下さい」

 

「……はい」

 

素早く男性の後ろに回り込むと、セイバーさんは手刀をうなじに叩き込み、一瞬で気絶させました。それを確認すると、俺は縄を解いていきます。

 

「これでよしと。ケガはありませんか?」

 

「ええ……でもどうして、助けてくれたの?」

 

「そうだよ……私なんて、化け物なのに……怖くないの?」

 

そんなことを言われましても、返答に困るんですが……そうですねぇ。

 

「順番に話していきましょう。まず月村さんは、化け物なんかじゃありません。化け物なんてのは、俺のことを言うんです」

 

「え?」

 

「俺の髪と目、よく見てください。白髪に、左右の色が違うでしょう? 色素の低下と先祖返り、それに虹彩異色症が併発したんです。漫画ですよね。お蔭で俺は物心ついた時から、化け物と罵られてきたんですよ」

 

これは本当のことです。俺は今現在いじめられてるし、不自然さをなくす為に遺伝上の問題ということにしたそうなんです(セイバーさんから聞きました)。ちなみに、この世界は原作アニメでのオレンジや紫などの髪はギャップがあるので、ある程度自然な色に変化しています。月村さんなら黒、バニングスさんなら茶色といったように。なので、俺の白髪は本来銀髪だったのを神様が変えてくれたんでしょう。感謝感謝。

 

「それに比べたら、月村さんは恵まれてます。バニングスさんという友達がいますし、彼女は話を聞いた後でも貴女のことを侮蔑していませんよ」

 

「当たり前よ。すずかは大事な友達だもの。夜の一族なんて知ったこっちゃないわ」

 

「アリサちゃん……」

 

「ほらね? 俺や彼女からしてみれば、貴女は化け物ではありません。普通の人間なんです」

 

さて、ここからが本番。いよいよ踏み台としての真骨頂を見せる時です。

 

「それと、何故貴女達を助けたかという理由ですが、理由は単純。……貴女達のことが、好きだからです」

 

「「えぇ!?」」

 

驚いた表情になりました。まあ、そうですよね。

 

「2人は知らないかもしれませんが、俺は外出した際に貴女達の姿を何度か見かけているんです。名前も、2人の会話から偶然知りました」

 

これも本当です。家にいることが辛かった時は、気晴らしに色々なところへ散歩に出かけることがあります。それで何度か見かけたという訳です。

 

「何度か姿を見ている内に、俺は2人に惹かれていきました。……いつぐらいでしょうかね。明確に好きだとわかったのは…………滑稽でしょう? こんな化け物が、月村さんとバニングスさんを、同時に好きになるなんて……でも、俺にとっては本気だったんです。だから今、貴女達が捕まった前で良いところを見せれば、俺のことを好きになってくれるかなと……その為にセイバーさんにまで協力してもらって……そんなことで、好きになってくれる訳でもないのに」

 

知らず知らずの内に、俺は本音を口にしていました。踏み台ってこんなことを言いますかね……?

 

「すみません、長々と。ただ自分の気持ちを言いたかっただけなので……では、俺はこれで―――」

 

「待ちなさいよ」

 

立ち上がろうとしたら、バニングスさんに呼び止められました。はて?

 

「何ですか?」

 

「アンタは私達の名前を知ってるみたいだけど、私達はアンタの名前を知らないわ」

 

ああ、そういうことでしたか。

 

「俺は西神久数と言います」

 

「西神ね。なら西神。いきなり悪いけど、アンタはいくつか間違ってるわ。まず1つに、アンタは化け物じゃない」

 

え……

 

「アンタは、私達を助けてくれたばかりか、すずかを、友達を慰めてくれた。それも、ただ好きだからって理由で。こんな真っ直ぐな思いを持った人が、化け物な訳ないじゃない」

 

「……私、貴方が、西神君が慰めてくれた時……凄く嬉しかった。西神君に救われたようで……それに、髪の毛も瞳の色も、変じゃない。か、カッコイイと思う……」

 

そう言って月村さんは顔を赤らめ、バニングスさんも何度か見た後赤らめました。

 

「そ、それでだけど……私達、アンタのことをよく知らないから、いきなり恋人同士になるのはアレで……だからその、ま、まずは友達から、始めていかない?」

 

「え? それって……」

 

「い、一々聞き返さないでよ! アンタのことはき、嫌いじゃない。そういうことよ!」

 

「ですが……」

 

「大丈夫だよ。最初は不安かもしれないけど、それは私達も同じ。だから、一緒にがんばろ?」

 

「っ!!」

 

「それに、一夫多妻制を認めてる国もあるし……ね、アリサちゃん?」

 

「な、なな、何でその話が出てくるの!?」

 

「…………」

 

不思議なものです……踏み台として嫌われようと思ってたのに、逆に好かれるなんて……こんな化け物が……

 

「久数」

 

「セイバーさん……」

 

「貴方は化け物ではありません。心優しい、普通の人間です」

 

俺の心境を知ってか知らずか、セイバーさんは俺を真っ直ぐ見つめ、微笑んでくれた。

 

「っ! う…あぁぁ……!!」

 

気がついたら、俺は泣いてました。何度拭っても、涙が溢れて止まりません。

 

「こ、こんな俺でも、友達に、なって……くれるんですか…?」

 

「うん。これからよろしくね、久数君」

 

「だからもうそんな顔はしないでよ。……久数」

 

「は、い……すずかさん、アリサさん……!」

 

この瞬間、この世界で俺に初めて友達ができました。




人を見た目で判断してはいけない。今回出てきた転生者はそれをコンセプトにしました。
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