対戦開始
『ハァ……ハァ……』
風華の荒い息がグラウンドで音を立てていた。
午前中に的を壊せなかったため風華はグラウンド10周走っていた。
『おーい頑張れー‼︎』
響也が声援を送るがその声は聞こえて風華は疲れ切っていて聞こえていないだろう。
午後は対者での対戦をする予定であったかが対者が走らさせているため俺は暇になっていた。
『ちょっといいか?』
後ろから低い声で呼びかけられて振り向くと、そこには180センチほどの男がこちらを見下ろしていた。
『なんすか?』
威圧感がすごい瞳に柔道選手のような体格。第1印象で失敗しそうな雰囲気がとてもでている。
『なぁ、俺と対戦してくれないか?』
『別にいいけど……対者とは?』
対者と対戦するのが午後の予定であったから他の人と対戦することはなかったはずだったはずだが……。
『そうか!助かった‼︎俺の対者は体調崩して今日は来てないんだよ。あ、俺は蕗沢映司だよろしくな‼︎』
映司そう言って顔を輝かせながら手を出した。
『ああ俺は日野響也だよろしく』
俺も自己紹介して握手をした。
『それじゃあ”やりますか‼︎”』
なんで対者の私をほっぽって知らない人と対戦してるのよ‼︎普通対者の私が走り切るのを見てるのがパートナーとしての最低限の約束ってもんでしょ⁈でも響也の実力も全部把握しきれてなかったしこの機会に丁度いいかもしれないわね……。
『えっと…対戦の内容は遠征の午後の内容の対戦と同じ、神器の模倣品である剣による勝負です。勝敗は相手が戦闘不可能になるか、武器の使用が不可能にするです‼︎それではケガなく楽しくし勝負しよう‼︎』
水月先生が対戦について説明する。
『それじゃあ行きますよ〜はじめぇ〜‼︎』
『一気に行く‼︎』
水月先生の合図とともに映司が俺の間合いに踏み込み腹を狙って大きく横に薙いだ。響也は剣を縦に構え防ぐが映司の力負け後ろに吹っ飛ぶ。
『いってぇぇ……とんでない力だな…』
剣で防いだとはいえ衝撃で手が痺れる。いくら体格差があっても馬鹿げた力だ……。
『凄いな‼︎魔力を込めた一撃なんだけどな…まさか防がせるとは…すごいな本当に成績下位者か?』
魔力を込めた攻撃は普段の攻撃の威力を何倍にも上げる。実技の弱い生徒たちのはずなのに魔力を込める芸当ができるなんて……。
『そりゃお互い様じゃないか?あと対者が成績悪かっただけで俺はそんなに悪くないからな‼︎』
そんな話をよそに映司は剣を振り次々と攻めてくる。
『守ってばっかじゃ勝てないぜ⁉︎』
映司の言う通りだ。剣撃を防いではいるが少しづつ押されてきている。しかも一撃一撃に魔力を込めている。これでは負けるのは時間の問題だろう。
『くっ……仕方ない…』
そう言って響也は間合いをとり剣を地面に置く。
『なんだよ……もう降参か?それじゃあ…終わりだ‼︎』
映司は笑みを浮かべ、大きく踏み込んで真っ直ぐに剣を振り下ろす。しかし、映司は気付かなかった。響也が歯を見せ微笑したことに。
『がっ…‼︎』
空気を切り裂く一閃が映司の剣をなぎ払ったと思うと、響也は映司の後ろにいて、笑みを浮かべた映司の顔は痛みに歪んだ顔に変わり倒れた。
『ふぅーっ‼︎危なっ‼︎倒れたからこれは戦闘不可能でいいよね?よし勝った‼︎』
一人で勝利に喜ぶ響也を横目に生徒たちは何が起こったのか分からずとまどっていた。その中、目を覚ました映司がみんなの疑問については投げかけてきた。
『今…どうなったんだ?』
負けたことはどうでもいい。どうやって負けたかが知りたかった。
『あれは一閃突破って言って相手の武器を弾いてその隙に相手のふところに入り斬る、それを使った。まぁ今回は柄で腹を突いたんだけど大丈夫だった?』
『スゲえな…おま……』
『響也ーーーーっ‼︎』
映司の言葉よりも早く風華が響也に抱きつき胸を押し付けてくる。
『やっぱ響也はすごいよ‼︎さすが私を助けてくれただけあるね‼︎対者として鼻が高いよ‼︎』
『やめろ〜‼︎ないに等しい胸を擦り付けんな‼︎お前みたいな胸なんかお呼びじゃねえんだよ‼︎いってぇぇ〜腕がぁぁ〜‼︎』
『ああ⁉︎胸がなんだってぇ⁉︎』
『すみませんでしたぁ‼︎』
『ちょっ……あの…』
対戦相手の映司をよそに言い合いが続く……。
ほどなくしてい遠征1日目の課程が終了した。
遠征1日目終了後の夜。夕食も終わり就寝の時間を迎えていた。
『やっぱ無理するもんじゃないな』
響也が自分の部屋で休みながら体を見る。いくら映司の攻撃を防いでたとはいえあと攻撃を無傷でやり過ごすことはできなかった。その証拠に身体のあちらこちらにあざがあった。
寝ようにも体が痛んで寝れないので夜風にあたりに宿舎を出た。
夜のグラウンドは静かで星がよく見える空だった。そんな空を眺めながらグラウンドを歩いて行くと風華の姿が見えた。普段ポニーテールにしている髪を下ろしており、月明りに照らされた風華はとても綺麗だった。
『あ響也だおーい‼︎』
グラウンドにいた風華が俺に気付いて手を振ってこっちにやってきた。
『今日は星が綺麗だね……ところでこれからどうするの?』
そう言って俺に抱きついていた。
『抱きつくな‼︎暑苦しいから離れろ‼︎あと、なんだろうな…わかんないな』
これからの事について聞かれて曖昧な答えを返してしまった。
『私との約束は守ってくれるよね…?』
『…なんのことだろうね…?』
自分の定に不安を感じつつも響也と風華は星を眺めながら話をした。
『おおう‼︎なに2人でイチャイチャしてんな⁈響也さんよぅ⁉︎』
聞いた覚えのある声がして振り向くと鎧を纏い槍を持った映司がいた。鎧は騎士の様な鎧で、槍は穂先の広い1.5メートルくらいの長さだった。
『…コスプレか?じゃないよなこんな夜にどうした?』
響也は鎧姿の映司を軽蔑した目で見ていると。
『色々あるが一つは響也、お前をぶっ飛ばすことだ‼︎』
『対戦で負けたのが悔しいのか?』
思い当たる節はそれしかない。映司の反応はあからさまだった。
『いくら何でも武器を持ってない奴を倒しても面白くないだろ?』
『……死ね…』
響也の投げかけを無視して槍を構えて冷たい声で槍で突いた。
とっさに風華を抱えて後ろに飛び退く。さっき響也達がいた場所に槍が降ろされ地面を刳る。
『避けたか…次は仕留める』
映司は再び槍を構えて響也達に向かって踏み込む。
『風華は逃げて先生に助けを呼んでもらえ。それまでこいつは俺がどうにかするから』
『何言ってんの?もう連絡はしたし私もそれなりに強いし』
『ま、いいか俺たちが負けるはずないしな。一応後ろで援護な』
『了解』
風華に指示を出して映司に集中する。と同時に映司の槍が響也の胴を狙って槍を放つ、何本も連続で絶え間なく。
単調な槍の動きを避けることはそれほど苦ではなく響也は風のように避ける。
『どこまで避けられるかなぁ?』
映司はさらに速度を上げて突く。しかし先程と比べて突きは速いが精度が落ちており響也は先ほどと変わらい動きでそれをかわす。
『どうした‼︎そろそろ降参するか⁈』
『はっ‼︎バカ言え‼︎そんなことしなくてもお前が先に死ぬんだからな‼︎』
そう言って槍を乱雑に振り回して薙ぎや突き上げなどの攻撃も混ぜてきた。
それでも響也は軽々と避け、逆に下方に突いた攻撃を踏み付けて槍を封じた。
『これでもまだ続けるか?』
余裕の表情を見せて負けを促す。
『クソがぁぁぁ‼︎』
怒りに歪んだ顔を向ける映司。しかしその顔は対戦で負けたことよりも別の理由があるような顔でもあった。
『俺はお前を倒す‼︎それが契約にもなってるからだ‼︎』
『契約とかなんとか言ってるけど、この状況でどう倒すんだよ?』
『それはな……』
映司は槍を放して拳を握ってこちらに向かってきた。
『こうだ‼︎』
拳は響也の顔を狙って放たれ、顔面を殴りつけた。だが、 響也は顔色ひとつ変えなかった。
『それで終わりか?じゃあ次は俺からだな…』
そう言うと大きく振りかぶって拳を打ち出した。しかし拳は映司には当たらずに吹き飛んだ。
『スキありーー‼︎』
後ろにはずの風華が飛び蹴りを入れて映司を蹴り飛ばした。蹴りは映司の顔に入り後ろへ倒した。
『何してんだよ⁈後ろに引っ込んでろって言っただろ?』
『いいじゃん倒したのには変わりないんだからさ』
堂々と結果論で締める風華。まぁ別に倒せたからいいか。
『おい、大丈夫か?』
飛ばされた映司に手を差し出した。いくら襲ってきたとはいえ知り合った仲だ無視はできない。
『負けたか……やっぱ勝てなかったか…』
映司は地面に腰掛けてうつむいたまま小さな声で言った。表情は暗く抜け殻のような顔だった。
『明日また相手してやるから落ち込むなって』
俺は映司を気遣ってあるかもない事を言う。明日って対戦ってあったかな?
『でも……』
映司の兜が顔を覆って仮面のようになる。
その瞬間響也が差し出した右手が斬り裂かれて手が宙を舞った。
『え?』
状況が飲み込めず間の抜けた声がでる。
『くくくっ……あはははー‼︎悲しいなぁ…悲しいよ……』
映司は顔を伏せたまま気味の悪い笑い声をあげながらゆっくりと立ち上がる。
『ここからは悲劇の始まりだぁ…ジルク様がお前に悲しみをやるよぉ』
そこには映司の面影はなく、悲しみを纏った悪魔がそこにはいた。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。それでは次の話で。