何が起こったのか分からなかった。ただ確実に分かることは手が切られて映司が映司ではない何かになったことだ。
それは予想してなかった出来事で、普通が続くはずだった日常がなくなった事を痛感した。
いや、壊したのを実感したと言う方が正確かもしれない。
『悲劇を始める…?どういうことだ…?』
俺は失った手を押さえながらジルクの話した言葉を聞き返す。傷口からはは鮮血が流れ出て生温かい感触が手に伝わる。
『悲しいなぁ〜君の手が無くなっちゃったよ…くくっ…悲しいねぇ』
ジルクはこちらの話に応えずに切り裂いた響也の手を弄りながら面白そうに話しかける。顔は仮面で覆われているので表情はわからない。
『ねぇ‼︎あんたはなんなの⁈』
風華も起こったことを把握できずに戸惑った様子で質問をする。
『いきなり質問攻めかぁ?悲しいねぇ、でも映司くんがどうなったのかは君はわかってるんじゃないのぉ?』
そう言ってジルクは響也の方に体を向けて指を指す。
『……死んだってことか……?』
物騒な言い方だがその可能性は高い。映司の意識を確認できない以上死んでしまったと仮定するのが戦場での考えだ。
『う〜ん…ほぼ正解だね〜…正確には俺様が喰ったが正しいかな…』
映司は死んでしまったらしい。遠征で出会った奴でいい人だった気がする。
でもそうなるとまた新たな疑問が出てくる。
『そろそろ雑談はここらへんにして、早く悲劇を始めようぜ〜』
ジルクは悲劇を始めたいらしく話は終わりにしたいらしい。
『最後に一つ質問だ…お前は悪魔か?』
俺のした質問は単純な疑問を繋げて出た答えを聞いた。これは映司が俺を倒すために何かと契約を結んで失敗した代償が自らの命であった。そしてそんなものを要求する奴は悪魔しかいない。
『悲しいなぁ…なんで分かっちゃったの?君が察した通り俺様は悪魔だ』
『そうか……』
響也の表情が暗くなる。その表情は悲しに押しつぶされた顔だった。
『あはははっ‼︎いいねその顔…俺ら悪魔に誰か殺されたかぁ⁈あははっ悲劇だね〜‼︎悲しいねぇ‼︎』
『……黙れ……』
響也は怒りを込めた静かな声を放った。
『聞こえないなぁ〜‼︎ああ愉快愉快‼︎がっ‼︎ぶぇっぇぇぇぇーーー‼︎』
響也を笑うジルクの顔面を殴ってぶっ飛ばす。顔の仮面が軋んでそのままグラウンドの端まで吹き飛ぶ。
『今のは映司の分だ…』
握った拳を前に出す。強く握る拳に涙が落ちる。
『舐めるナァァァァ‼︎』
土煙の中からジルクが声を上げて立ち上がる。
その姿は変わり人の形が歪になっている。それは悪魔と呼ぶに相応しい姿になりつつあった。
『いいぜいいぜ…それでこそ悲しみがいがあるなぁ〜悲劇の始まりだ‼︎』
体が更に変形して新たに手や角が生え魔力を纏う。
その瞬間ドス黒い魔力が辺りの地面を満たす。しかし響也は何かに気づき大きく飛び上がる。その後魔力は大きな虎鋏のような形になり響也がいた場所を挟む。
ジルクは飛び上がった響也を追撃する。魔力を変化させて作った弾丸を放ち、四方から弾幕となって降り注ぐ。
『ははっ‼︎悪魔風情が調子に乗るなよ‼︎』
手から魔法陣が現れて剣が出てくる。剣を手にすると無くなっていたはずの右手が生え。瞬間、響也の雰囲気が変わった。
迫る弾幕に剣を振り、周りの弾丸を全て相殺する。
更に生成した手や触手が響也を狙う。
『やっぱ戦いはこうでなきゃな‼︎』
響也は足に力を入れ蹴り出す。触れられない大気を足場に蹴り上げ加速、一気にジルクに迫る。
『おい…うそっ…⁉︎』
物理法則無視の離れ技に驚嘆する間も無く斬られ、その場に仰向けに倒れた。肩から斜めに入れられた斬撃の後には脈を打つように血が噴き出した。
『なんだ、つまらない、のもっと骨のある奴かと思ったのに』
がっかりしてため息をつく。それは玩具を遊んで壊してしまった子どものようだ。
『死ねないなこの命令を完遂するまでは』
『きゃぁぁぁ‼︎』
風華の悲鳴が聞こえ振り返るとそこには ジルクが風華を抱えて何かをしようとしていた。
『”召喚陣展開”‼︎呼び出すのはあの方を…こいつと俺の命を引き換えに‼︎』
足下に魔法陣が現れ2人から魔力を吸い上げ魔法陣が大きくなる。
『あの方が来たらお前は終わりだ』
魔力がさらに集まり魔法陣から何かが出てこようとする、得体の知れない何かが。
”それ”は黒いノイズのようなもので構成されおり人間の形をしていた。
『おぉ、我らが主ようこそおいでで、この度は私の力不足で……』
謝罪の言葉を口にしている途中ジルクは倒れた。おそらくあの傷の状態で魔力を消費したため体がもたなかったのだろう。
力尽きたジルクを”それ”はノイズを侵食させて取り込んだ。
『ちょっとヤバいんじゃないか?これ』
響也は焦るなぜなら”それ”は自分の体を触手のように伸ばしてきたからだ。
ノイズは触手のように伸びこちらに迫る。とっさに触手を切り落とすと切り落とした触手は破裂してノイズを撒き散らした、急いで逃げ間合いを取る。ノイズがかかった地面はノイズになり崩れた。
”それ”はノイズでさらに攻撃を重ね響也を攻めていく。
『くっそ!』
ノイズの攻撃は千変万化で対処のみでこちらが攻撃する隙を与えなかった。
わかったのはノイズに触れたら終わり、あいつと同じノイズになって取り込まれると思う。剣で斬れるは斬れるけど、どこを斬るかなんだよな。
思考を張り巡らせているとノイズが前方に押し寄せ囲むように目の前まで迫っていた。
『あ……』
もう遅かった。ノイズ周囲の地面ごと響也を飲み込み、黒く煤けた大地が広がった。
『ふぅ、終わったぁー』
人の形をしたノイズが喋った、しかもノイズが取れ綺麗な女性が現れた。
『出てきた途端これだからな。これだから転送は嫌いなんだよ。まぁ、こっちに進出するとしてはいい始まりかな?』
綺麗な女性は体のラインを強調する着ており窮屈そうな胸のチャックを開き長い髪を縛りながら1人で喋っている。
『しっかし、取り込んだ一人が神器だったとはね、おかげで手間が省けたよ』
『じゃあその神器返してもらえるかな?』
声と共に一閃が女性に向けて斬り込む。女性は首を狙った斬撃をかわし振り返りで打たれた突きも紙一重で避けた。
『残念でした〜どうやってあれを避けたのか知らないけどこれじゃ助からないよ』
『がっ……確かに入ったと思ったのにな』
女性の手は響也の腹に入り血塊を吐く。
『私を殺せなくて残念残念〜♪』
『まぁ目当ては命じゃないから良いんだけどね』
女性の腹に手を置き魔力を込めた掌打を入れる。魔力の衝撃は腹から響き魔法陣が現れて体を覆う。魔法陣に当てられた体は硬直し動けなくなる。
『はい捕獲完了』
拘束され動けないでいる女性に手をかざす。すると腹が裂け剣の柄が出てくる。その柄を握り剣を女性から引き抜いた。剣は白銀の刀身に不思議な模様を形取った鍔が目を惹く剣だった。
『どうして私に干渉できるの⁈それよりそれを早く返して‼︎私その剣は私達が貰うんだから』
魔力の拘束を解こうと暴れる。そんなことをしても解けることもなくまた、腕が伸ばされる。先ほどと同じように手をかざして今度は県ではなく三角錐の結晶のようなものを取り出した。
『これがお前の神器か、面白いねこれ』
『そ、それを返せ‼︎神器の保有に失敗しそのうえ私の神器まで奪われたとなると本部に顔が立たなくなる‼︎』
『……いいよそんなのだって無駄じゃん』
必死で論を重ねていたのに彼はあっさりきった。無駄だと。今まで積み重ねてここまで来たものを無駄だと。許せなかった。
拘束が解けていることに気付き何も考えず衝動で殴りかかる。
拳は届く前に顔に熱い痛みが走った。
あいつは私に向けて持っていた剣を投げてきた。
『そういうことかよ……いいよ、なら死ねぇぇぇぇ‼︎』
剣を拾い上げて斬りかかる。けれども奴の出した剣に弾かれる。
『そういうことじゃないんだけど…』
『うるせぇぇー‼︎死ね‼︎』
『うん、じゃあね…』
悲しそうな目をしてその場を背にする。
それを好機と私は攻めに踏み込んだ。
ばちゅん。
空間が裂け口が開いて女性を食べた。空間は何事もなかったのように閉じ、後には血の跡とむせ返るような血の匂いが漂った。
どうでしたでしょうか?つたない文章でしたが楽しんでいただけましたかね?4話も読んでくれたら嬉しいです