予想外に文字数膨らんで、12000字超えるところだったよ。
ほんと、文字数が多すぎてパソコンが処理落ちするし、FGOのデータが消えるし。
それでも僕頑張ったよ……。みんな、感想で褒めて褒めて?
というわけで、長いです。とりあえず、勝負所は書き終わりました。一気に書いたので、表現がおかしい点が多々あるかもなので、そういうのは指摘してくださるのと嬉しいです。
一夏が友人たちと合流してすでに四時間が経過していた。
空は夕焼けに赤く染まっており、一夏はそろそろ帰る必要があった。夕飯を用意してくれる親のいない彼は、自分で用意する必要がある。しかも彼は、家事に関して妙なこだわりがあるため、適当にコンビニ弁当ということはしない。自分で夕飯を作るので、その分早く帰宅する必要があった。
そういった一夏の事情を察した弾は、率先して話を切り出す。
「そろそろいい時間だし、帰ろうぜ」
「そうね、私も家の手伝いをしなきゃだし」
鈴の家は、中華料理店を経営しており、鈴はそこの看板娘だ。忙しくなるディナータイムのころには帰る必要があった。
弾の家も食堂を営んでいるので、事情は同じく帰らなければいけなかった。
「そうだな、帰るか」
そう言って、三人は同じ帰り道を仲良く歩き始めるのだった。
一方そのころ、アナハイムの地下機密区画の一室には、極秘裏の取引が始まろうとしていた。
「お待たせして申し訳ございません。代表代理のスベロア・ジンネマンです」
「こちらこそ、わざわざお越しいただいて申し訳ない。ビスト財団の頭首、カーディアス・ビストです」
「これはこれは。頭首自らお出迎えとは恐れ入ります」
「財団の命運を託そうというのです。さあ、中へどうぞ」
促され、カーディアスに続いてジンネマンとその後ろの女性二人も部屋に入る。
カーディアスが奥の席に腰かけ、その傍らに護衛兼秘書のガエルが立っている。
ジンネマンはその向かいのソファーに腰かけ、その後方に女性二人が立った。
「早速で申し訳ありませんが、その『箱』とやらはどこに?」
「渡すのは『箱』そのものではございません。お渡しするのはその『鍵』です」
その言葉に、ジンネマンは顔をしかめる。
「『鍵』...ですか」
「作用。...ご不満かな?」
「不満というより分かりません。そもそも私らは、その『箱』とやらの正体すら知らないのですから」
「あなた方の上層部が『箱』の価値を認めたのでは?」
「目の前にぶら下げられた餌には、喰いつかずにいられないのが、我々の現状です。それがもし毒入りだったりしたら、上はさぞがっかりするでしょうな」
しばらく、静寂が部屋を包んだ。
重い空気をまとったそれを先に破ったのは、カーディアスだった。
「あなたがたは、ニュータイプの存在を信じますかな?」
「ニュータイプですか。そうとしか言えない、
「
カーディアスはおもむろに立ち上がると、壁に向かって歩き始める。
「本来ニュータイプという言葉は、かつてジオン・ダイクンが提唱した新たな人の形だ。『宇宙に進出した人類は、その広大な空間に適応するため、あらゆる潜在能力を開花させ、他者と誤解なく分かりあうことができる』。このニュータイプ思想は、人類の革新、無限の可能性...まさしく
彼の一人語りは続く。
「その一方で、ニュータイプを研究する公的な研究機関も作られたが、あれはニュータイプの兵器的側面のみを利用しようとするマッドサイエンティストの実験場だった。ISの発表から始まった混乱は政府を大きく疲弊させたが、最終的な勝利を約束する強い味方が彼らにはあった。何かお分かりかな?」
突然の問いかけに対しジンネマンの後ろに控えていた女性の一人、オータムがポツリとつぶやく。
「
「さよう」
カーディアスはうなづくと話を続ける。
「人々は明確な定義を持たず、可能性しか示さないニュータイプに飽きた。いつしかその言葉は忘れ去られ、優れたISパイロットという、ジオン・ダイクンの唱えたものからは遠く離れたものとなってしまった」
カーディアスは壁に向けていた目線をジンネマンたちに戻し、さらに続ける。
「『ラプラスの箱』には歴史を正す力がある。いや、本来あるべき歴史に戻すといったほうが正しいか。ただし、誰にも扱えるというものではない。あれは使い方を誤れば、世界を滅ぼしてしまうものだ」
「だから、鍵を渡して試そうと?」
「もしもあなた方が一つのことにこだわるような者たちなら、『箱』がその中身を明かすことはないでしょう」
「...一つとは?」
「復讐」
カーディアスがそう答えた瞬間、部屋を振動が襲った。
その振動は、少し離れたガランシェールでも観測していた。
振動を感じ取ったマリーダは、すぐに状況を確認しようとする。
「今のはなんだ!」
『敵襲のようだ!キャプテン達を探して離脱する!』
「町中で仕掛ける気か⁉』
『仕方ない!』
「....了解した!」
「ハッチ、開きます」
ガランシェールの後部ハッチが開きマリーダがISを展開する。
「マリーダ・クルス、キュベレイ、出る!」
発進したマリーダはすぐに周辺をチェックする。アナハイム施設周辺に複数のIS反応が確認できた。
マリーダは機体をアナハイムへ向ける。
敵はまだマリーダには気づいていないようだった。
「....ファンネル」
マリーダは先制攻撃を仕掛けるためファンネルを射出すると、気づかれないように敵機を捉えさせる。
「....ッ!」
その瞬間、無数の光条がラファール・リヴァイヴを襲った。
センサー類、武装、スラスター。戦闘に必要なもののほとんどを破壊され墜落していくラファール。
墜落した機体は住宅街の一角に突っ込み、建物を破壊する。
突然僚機がやられたことに驚きつつ、マリーダに気づき迎撃態勢を整える。
マリーダもビームを撃ちつつ接近していく。
戦闘はまだ始まったばかりだ。
そもころ一夏達は、弾の家が営む五反田食堂の前で燃える空を見ていた。
同じく空を見上げていた鈴が一夏に質問した。
「あれって、アナハイムのあたりよね。火事?」
「いや、違う。あれは...」
ただ事じゃない。
その言葉は声に出なかった。
「双眼鏡持ってきた!」
家の中から持ってきた双眼鏡をのぞき込む弾。
その顔は次第に唖然と、そして真っ青になっていく。
「うそだろ、ISが戦ってる。戦争やってるんだよ、あれ」
「戦争...」
その言葉を聞いた一夏は、あまり驚かなかった。
ただ冷静に自分が何をするべきか考えていく。
「....弾。すぐにみんなを連れて避難するんだ。いま向こうで戦ってるの、どこの機体だ?」
「えっと、一機はよくわからない機体だったけど、あとは茶色いリヴァイブだったから。たぶん、IS委員会か自衛隊だと思う」
「なら、めったなことにはならないはずだ。鈴やみんなを連れてここから逃げろ」
その言葉を聴いていた鈴は疑問を感じ、一夏を問いただす。
「逃げろって、一夏はどうするのよ...?」
一夏は視線をそらし、燃える空の方を見ながら答える。
「助けたい人がいるんだ。その人を助けたら、俺も行くから。それじゃ」
一夏はすぐに走り出す。
その足は、いまだ燃え盛る炎の方へ向いていた。
「待って一夏!私もーーー」
「っ!駄目だ!」
一夏を追いかけようとする鈴を弾が慌てて羽交い締めにする。
「離してよ弾!一夏がっ!」
「駄目だって!」
そうこうしているうちに、一夏の背中は遠ざかり、完全に見えなくなってしまった。
「ーーっ!離せって言ってんでしょうが!」
「いてっ!」
鈴は無理矢理に弾を引き剥がすと、弾の頬を叩いた。
「なんで邪魔するのよ!一夏が死んでもいいって言うの!」
「んなわけねぇだろ!でも危険な場所に女の子一人で行かせるわけにはいかねえだろ!お前に何かあったら皆悲しむんだよ!お前が一夏を心配しているように!」
弾は怒っていた。
それはこんな状況でも一夏に嫉妬している自分に対してだ。
そもそもなんで一夏に嫉妬しているのか。それすらも分からない。分からないふりをしている。
脳裏には漢字一文字、恋という言葉が浮かんでいるが、弾は努めて気づかないふりをした。
「だ、弾?」
震える鈴の声で、弾は我に返る。
日ごろおちゃらけている弾が怒ることはあまりない。
付き合いの深い一夏や鈴でも、彼が感情的になっているのは数えるほどしか見たことがない。
それゆえに、鈴は弾の急変に縮こまっていた。
「...悪い」
弾は自分の心を鎮めようとする。
これではただの八つ当たりだ。
今やるべきことは別にある。それ以外は、後回しだ。
「わかってくれ。...ほら、避難するぞ」
弾は鈴の腕を掴み、引っ張る。
だが、鈴はかたくなに動こうとしない。
「鈴...」
「分かるよ。弾の言うことも分かる。でも、それでも私は行きたいの!一夏を助けたい!」
「......」
弾だってわかっていた。鈴の気持ちだって痛いほどに分かる。
鈴が一夏を助けようとするのは、好きだからというだけではないだろう。
友達だから、困っているのはほっとけない。彼女はそういうやつなのだ。
走っていったのが一夏ではなく弾だったとしても、彼女は同じことをしようとしただろう。そして一夏も。
必死に自分を引き留め、追いかけてきてくれるだろう。
それが二人のいいところであり、羨ましいところだった。
ならば、自分はどうすればいい。このまま一夏を見捨てて、鈴を無理矢理連れていくのか。
一夏を追いかけて、大切な人を危険に晒すのか。
......弾は覚悟を決める。
「...なら、俺も行く」
「......え?」
「どうしてもお前が行くって言うなら、俺も行く」
「でも、危ないし...」
鈴の言葉に弾はおかしな気分になった。
さっきまで自分が止めたはずなのに、立場が逆転していた。
「お前がそれを言うのか?」
「それは、そうだけど」
「おれだって一夏が心配なのは同じなんだよ。それに、一人で残るぐらいなら、火の中に飛び込んだ方がましだ」
「...ありがと」
「...気にすんな。
「......そうね。
二人の放ったこの言葉には、どんな思いが込められていたのか。
それは二人にしか分らない。
それでも二人の間は、たしかな暖かな絆で結ばれている。
ふたりはそのまま、見えない親友の背中を追い、走り出した。
カーディアスの側近であり、護衛でもあるガエルはゆっくりと手に持った連絡用の受話器を耳から離す。
そしてカーディアスに対し、状況を伝える。
「...IS委員会です。すでに戦闘状況に発展している模様です」
「自衛隊はーーー」
「私たちは、騙されたということですかね?」
カーディアスの言葉に被せて喋ったのは、ジンネマンの後ろに控えていた金髪の女性。コードネーム・スコールだった。
「なるほど。本当の指揮官はそちらでしたか」
スコールはその質問には答えず、話し続ける。
「姫様を返していただきます」
「もとよりそのつもりだ」
スコールはスカートの下から拳銃を取り出すと、カーディアスに向ける。
「人が人を信じるのは本当に難しい。残念です、御頭首」
「同感だ、御令嬢」
銃声が響いた。
一夏は、空で繰り広げられる戦闘を視界にいれながら、アナハイムへ向かって走り続けていた。
瓦礫で道がふさがれたりしていたせいで、最短距離を走ることはできなかったが、それでもアナハイムの建物をしっかりと視界に捉えていた。
だがそれと同時に、周囲の建物の損壊具合も目に見えてひどくなっていた。
道の状況も悪くなる一方で、体力に自信のある一夏でも疲弊していた。
それでも、彼の足は止まらない。一夏の気合もあるが、なにより一夏の心を惹きつけるなにかのせいだった。もちろん、一夏はそれに気づいていない。ただ、オードリーを助けたい。その一心で走り続ける。
「オードリー...」
一夏は走る。心を引っ張る感覚に、無意識を委ねて。
ビスト邸の窓から、燃える町を見つめる人物がいた。
オードリー・バーンである。
やはり、こうなった。
オードリーの胸中には、そんな思いに満ちていた。
『箱』が
オードリーは窓からそっと身を離し、そのまま部屋を出る。
箱を赤い彗星に渡すわけにはいかないが、IS委員会に渡すわけにもいかない。
誰かの手に渡る前に、私の手で何とかしなければ。
オードリーは屋敷からでて、燃え上がるアナハイム工場へ向かった。
「まとわりつくな!」
マリーダは振り下ろされる近接用ナイフを右手に持つビームサーベルで受け止めると、逆の手でリヴァイブを殴り飛ばす。
態勢を崩したリヴァイブをさらに地面に蹴り落とす。
建物にめり込んだ敵機のファンネルで追撃をいれて無力化する。
今のが、確認できた限り最後の敵機だったはずだ。
周囲を見渡しても、機影はない。ハイパーセンサーにもIS反応は感知できず。
マリーダは一度呼吸を落ち着ける。
さすがに疲れがたまっていた。だが休んでいる暇はない。スコールたちを見つけて脱出しなければ。
マリーダはアナハイムへ向けて機体を向けた。
その瞬間、ロックオンアラートが鳴り響く。
マリーダはとっさにウイングバインダー閉じ、耐えようとする。
しかし、飛来した砲弾は途中で減速し、マリーダの目の前で閃光を放った。
対IS用閃光弾。
ISをではなく、パイロットを一時的に無力化するために開発された特殊弾頭である。
いかにISが全能でも、パイロットは生身の人間だ。突然目の前が光れば正常な判断はできなくなる。
その隙を狙って攻撃すれば、ISに確実にダメージを与えられる。
マリーダの視界が白一色に染まる。
そこへ何かによる攻撃が加えられ、機体が揺れる。
周りが見えない状況では姿勢維持もできず、マリーダは周辺の建物に突っ込んでしまった。
だが、ただでやられるほどマリーダは甘くなかった。
弾道から攻撃位置を特定、ファンネルを向かわせる。
詳しい位置までは分からないので、その近辺を制圧するように射撃する、
ハイパーセンサで命中を確認すると、ゆっくり機体を立ち上がらせ、その場所を確認する。
そこには、二人の一般人と、瓦礫からそれら庇う一機のジェガンの姿があった。
鈴と弾は、空で繰り広げられる戦闘に目を奪われていた。
「すごい...」
鈴は思わずといった感じにつぶやく。
弾の感想は、それとは少し違っていた。
たしかにすごい。だがそれ以上に、怖かった。
あの中で、人の命が燃えている。そのすぐ近くに自分達は立っているのだ。
足がすくんで、前に進まなかった。
そのとき、二人の耳が近くから聞こえる地響きを捉えた。
そこには、迷彩色に塗装された戦闘車両があった。
その車両の上に立った兵士が何かの発射筒が、空で止まっている白いISを狙って何かを発射する。
その次の瞬間、空が光った。
一瞬で夜が明けたかと思うほどに、まばゆい光がほとばしったのだ。
白いISは空中で完全に停止する。
そこへ、戦闘車両はミサイルポッドで追撃をかける。
墜落していくIS。
「やった...!」
落ちるISを眺めながら、上に立つ兵士がガッツポーズをとる。
だがその瞬間、無数の光線があたりを飛び交う。
そのいくつかは兵士のたつ車両を貫きーーー。
「---っ!やべっ!」
弾は慌てて鈴を物陰に引っ張り込むと、自らはその上に覆いかぶさる。
その直後、ビームに貫かれた車両が爆発する。
吹き荒れる爆風にまぎれ、誰かの断末魔が聞こえた気がした。
やがて爆風が収まり、ゆっくりと弾は半身を起こす。
ビームによる攻撃は止んでいる。
ほっと息をつく弾に、鈴の遠慮がちな声が届く。
「あの...弾?」
「え?...あ...」
今の二人を外から見れば、小柄は少女を押し倒す青年の構図だ。
危なかったとはいえ、女の子を押し倒してしまった。
「わ、わりぃ。今起きーーー」
弾は慌てて身を起こそうとするが、そこへ新たな危機が訪れる。
爆風のせいで、崩れかけていた建物の壁が崩落してきたのだ。
その中でもひときわ大きな破片が、二人めがけて降ってきたいた。
寝そべっている態勢からでは逃げられない。
鈴は現実から目を背けるようにに目をつむり、弾は鈴を自らの体の下に抱え込み歯を食いしばる。
しかし、いつまでたっても衝撃がやってこない。
鈴が恐る恐る目を開けると、一機のISが目に映った。
「ふう、ギリギリセーフ...。君たち、大丈夫?」
ISのパイロットが鈴たちに声をかける。
それに対して鈴と弾は惚けながらも自らの無事を示した。
「それはよかった。私はIS委員会所属の者よ。あなた達は民間人よね。どうしてこんなところに?」
その言葉に、鈴は我に返る。
「そうだ、早く一夏を連れ戻さなきゃ...!」
「一夏?この先にお友達がいるの?」
「えっと、はい。友達の男子が誰かを助けるとか言って、アナハイムに走って行っちまって。それを追いかけていたんです」
「アナハイムに一般人が...」
ISのパイロットは少し考えた後、冷静に判断を下す。
「とにかく、あなたたちは私が保護します。その一夏って子は私たちに任せて」
「そんなっ!私も一夏をーーー」
「やめろ鈴!これ以上は無理だ!」
「このくらいどうってことはないわ!」
「どこがだ!この人が助けてくれなきゃ、俺たちは今頃瓦礫の下だったんだぞ!死んでたかもしれないんだぞ!」
「死んでーーー」
その瞬間、鈴の肩が震え始める。
先ほどの恐怖を思い出しているのだろう。ゆっくりと膝をつき、自らの肩を抱きながら嗚咽を漏らす。
その肩を抱きしめながら、弾はISのパイロットに向かって、
「保護を、お願いします」
そう告げていた。
弾は震える鈴をなだめながら、先ほど車両があった場所に目を向ける。
燃え盛る炎。散らばる残骸。
その中に、偶然目に入ってしまった兵士の亡骸を見つけてしまい、弾は顔を歪めて視線をそらした。
その亡骸は、いまだ13歳の少年が見るには、あまりにもおぞましい光景だった。
その弾を見ながらISのパイロットもまた、悲しい表情をするのだった。
カーディアスとガエルは『箱の鍵』が置いてある格納庫に向かって走っていた。
「特殊部隊のようです」
「たかが十年の盟約など軽いものだ。もっとも、さきに約束を反故にしたのはこちらだが...。あれをやつらの手に渡すわけにはいかん。直接プログラムを消去し、ユニコーンをーーー」
その瞬間、ガエルがカーディアスを押し出し、後方に手に持った銃口を向ける。
その先には、特殊部隊所属を表す制服を着た男数名がこちらに銃を向けていた。
鳴り響く銃声。
ガエルの放った弾丸は男の眉間に吸い込まれていき、瞬時に絶命させた。
だが相手の放った銃弾も、ガエルの腹部を貫いていた。
「ぐっ!御頭首、お先に!」
「...すまん、ガエル」
カーディアスはガエルに背を向け走り出す。
背後から聞こえる銃声に一切振り向かず。
自らの腹部から来る激しい痛みに耐えながら。その身の熱を体外に流しながら。
一夏は何とかアナハイムに潜りこんでいた。
だがもちろん内部構造など知っているわけもなく、やみくもに走り回っていた。
そして、エレベータに乗り込もうとしたとき、ボタンを押してもいないのに勝手にドアが開いた。
その中には三人、人が乗っていた。
その中の一人と、目が合った。
即座に金髪の女性が手に持った拳銃を一夏に向ける。
「その子はいいわ」
もう一人の金髪の女性。おそらくリーダー格と思われる女性が制止し、銃を下ろさせる。
ほっとした次の瞬間、リーダー格の女性が一夏に向けて銃を放つ。
油断していた一夏はその場に硬直した。
だが、放たれた数発の鉛玉は一夏の顔のすぐ隣を通り去り、エレベーターのボタンを破壊した。
唖然としている一夏に向けてその女性は怪しい笑みを浮かべながら、
「頑張って生き延びなさい、織村一夏君♡」
そう言って、二人を引き連れ走り去ってしまった。
一夏はしばしその場で惚けていたが、しばらくしてからあわててオードリーを探して走り出した。
一夏はやがて、開けた空間に出た。
見たところ、格納庫のようだ。あたりを見渡していると、
一夏はそれに近づいていく。それは、一機の真っ白なISだった。その傍らでコンソールを操作する男の姿も見える。
一夏には、その男に見覚えがあった。
「あなたは...」
「っ⁉君は...」
その男は、カーディアスだった。
「彼女は...オードリーはどこです!」
「生きてはいよう。幾度も死地を乗り越えてきた方だ」
「まさか、置き去りに⁉このISを使って、一人だけ逃げるつもりだったんですか!」
「私では、このISは使えんよ。それに逃げたところで、長くはもたん」
そこで気づいた。カーディアスの腹部が赤く染まっていることに。
そのことに、一夏はどうしようもない怒りを抱く。
「---っ!何なんだよあんた!偉そうなことばかり言って、結局何にもできないんじゃない!」
一夏の糾弾は続く。
「オードリーは戦争を止めるために、あなたに会いに行った。あなたには、それだけの力があったんじゃないんですか!ここに来るまで、いろんなものを見てきた。町は滅茶苦茶だ!みんな明日の予定も、来週の予定だってあったはずなのに。あんなの、人の死に方じゃありませんよ!」
「...人は、動物とは違う」
不意に、カーディアスは語り始めた。
「人の死は、無駄であってはいけない。なのに我々人類は、無益な血を流しすぎた。そればかりか地球を食いつぶし、母なるこの星をを死滅させようとしている。いまこそ人は、自らを律し、尊厳を取り戻さねば。死した者たちの願いを、無駄にしないために」
その言葉を聴いたとき、一夏の口は自然と動いていた。
「”内なる可能性を以て、人の人たる力と優しさを世界に示す”...」
「”人間だけが神を持つ。今を超える力。可能性という名の内なる神を”」
カーディアスの言葉を聴いた一夏は、困惑に頭を抱える。
なぜ?この言葉を自分は知っている。この人のことを自分は知っている。あの屋敷も、あのタペストリーのことも。自分は...。
困惑の表情を浮かべる一夏を見て、カーディアスは一瞬、複雑な表情を浮かべる。
すぐにその顔は真剣なものになり、一夏に語り掛ける。
「ここまで来た、その気持ちが揺らがぬ自信はあるか?」
「...え?」
「彼女の背負っているものは大きい。これから先、お前が背負うものもまた大きい。その重圧に負けづ、彼女を支え続ける覚悟はあるか?」
一夏は想像しようとした。オードリーが背負っているもの。 今から自分が背負うもの。その重さを。
そして、諦めた。想像できるはずがない。自分は何も知らないのだ。分からないのに、覚悟なんかできるはずがない。それでも...。
「自信とか、覚悟とかよく分からない。それでも、おれは彼女の力になりたい」
「...ならば、これを持っていけ」
カーディアスは血だらけの手で一夏の腕を掴み引っ張ると、白いISの表面に触れさせる。
その瞬間、装甲継ぎ目が薄く発光したように見えた瞬間、一夏の脳内に膨大な量の情報が叩き込まれる。
「なんだ、これ。こいつの、使い方?」
困惑している一夏の体を、白い装甲が覆っていく。一夏は分かっていないが、現在このISは一夏に合わせて機体を調整している。内部のシステムから装甲まで、一夏の体格に合わせていく。俗にいう、パーソナライズとフィッティングである。
本来、ISは男である一夏に反応しない。にもかかわらず、この機体が一夏に反応したのは、一夏が特殊なのではなく、彼女の定めた条件を一夏が満たしていたというだけに過ぎない。
「...やはりか。もしやと思ったが、まさかな」
数奇な結び合わせに、カーディアスは嘆息する。複雑な心境だった。彼ならばと思う一方、なぜ彼がとも思ってしまう。
だが、もう後戻りはできない。『鍵』は反応した。ならばあとは託すだけだ。
「これでもう、こいつはお前の言うことしか聞かん。お前を相応しい乗り手と判断すれば、『ユニコーン』は無二の力を与える。『ラプラスの箱』への道も開けるだろう」
「『ラプラスの箱』...?」
「
「それは...」
「杏奈は...お前たちを置いて逝くことを、ずっと悲しんでいたよ」
「杏奈って...⁉」
一度、千冬姉に聞いたことがあった。
織村杏奈。
それが、自分たち姉弟を生んだ女性の名だと。
その母のことを知っているこの人は、やはり...!
「恨むだろう、杏奈。そしてお前と千冬も。...だが行け。恐れるな。自分の中の可能性を信じて、力を尽くせば、道はおのずと拓ける...っ!」
カーディアスの顔に脂汗が浮き始める。腹部の赤い範囲も目に見えて広がっている。
「そんな...いまさらそんなこと言って...。」
カーディアスが手元のコンソールを操作する。
すると、一夏の乗るISの足元の床が動き始め、上に向かって上がり始める。カーディアスとの距離がゆっくりと開いていく。
「...そんなっ!」
カーディアスのその表情に、一夏はその真意を悟る。
「一夏...。お前とはもっと...もっと...!」
その瞬間、カーディアスの上の天井が崩れる。
あわてて身体を動かそうとするが、フィッティング中のISは動かない。パワーアシストの働いていないISは鋼鉄の塊だ。13歳の子供に動かせるようなものではない。
落ちていく瓦礫。今この瞬間、死に直面しているというのに、なぜか満足そうにしているカーディアス。
私の望みは、叶ったよ。
そんな声を聴いたような気がした。
「っ!父さんっ!」
その瞬間、一夏の体は真っ暗な空間に入る。格納庫から出て、輸送用のシャフトに入ったのだ。
そのおかげというべきか、彼の死の瞬間を見ることもなかった。
「父さんって、俺...。あの人は...俺の...」
おぼろげな記憶。母の名前。そして何より、あの人から感じる懐かしさと安心感。
きっとあの人は...。
そして、一夏は託されたのだ。
あの人の最後の望み。最後の願い。最後の希望を。
背負わなければいけない。託された物の重みはまだ分からない。それでも一夏は進むことを決心した。
千冬姉は怒るだろう。それでも...。
「ごめん、千冬姉。...俺は、行くよ...!」
シャフトを抜ける。目の前にはカタパルトがあった。一夏はフィッティングの終わった機体を一歩進ませる。
可能性の獣が歩を進める。力強い足音を響かせながら。
機体をゆっくりと離陸させ、背中のスラスターを噴射する。
加速した機体はすぐにカタパルトを抜けると、燃え盛る空に飛んだ。
いま、ユニコーンは大空に飛び立った。亡き人の願いをその背に乗せて。
飛び立つ白い機影を、マリーダは視認していた。
「スコールたちか?いや、違う。不快な感覚がする...」
マリーダはその機体を敵と判断し、ファンネルを展開。先制攻撃をかける。
数十本のビームが白い機体に迫る。
着弾する直前、白い機体が反転。すべて回避しながらこちらに迫る。
マリーダは慌ててビームサーベルを展開し、迎撃しようとする。
だが白い機体は、マリーダの予測以上の加速性を発揮した。
一瞬で肉薄され、サーベルを持つ腕を抑えられる。その力も尋常ではなく、表面の装甲が少しへこんでいた。
そのままマリーダごと機体を押し出し、街から離れていく。
(こいつ、なんてパワーだっ!)
マリーダは内心毒づく。
現行のISではありえないパワーと加速力。それに加えて異質な全身装甲。アナハイムが秘密裏に開発していた最精鋭機に間違いないだろう。しかし、それにしたってありえない性能だった。
その時、目の前の機体から肉声で声が聞こえた。
「ここから...。ここから、出て行けぇーー!」
「っく!」
さらに白い機体が加速する。それと同時に、マリーダの体にかかる圧力も増す。そのGは、キュベレイのG軽減をもってしても苦しいレベルで、マリーダの息もつまってしまう。
やがて町を離れ、そのまま海に出てしまう。
(こいつ、いい加減にっ!)
ようやくGに慣れてきたマリーダは、目の前の白い機体を蹴り、離れさせる。
距離を取る両機。
たが、白い機体はどこか姿勢が安定していないように見えた。
「堕とせるっ!」
マリーダは相手は新兵と判断し、一気に決着をつけようとする。
ファンネルによる全方位攻撃。
まともに動けない奴に避けられる攻撃ではない。
これで終わったと思った。
しかし、放たれた無数のビームは白い機体に触れる直前で湾曲し、あさっての方向へ飛んでいく。
ありえない現象。ビームが湾曲するなど聞いたことがない。
困惑するマリーダに追い打ちをかけるかのように、目の前で異常な現象が続く。
白い機体の装甲が赤く発行しているように見えたのだ。正確には、装甲の継ぎ目から赤い光が漏れている。
そう思った瞬間、その装甲の継ぎ目から機体が変身し始める。
各装甲がスライドし、赤く発行している内部のフレームを露出させる。一部では中から追加の追加のスラスターを展開している部分もある。
頭部の形状も変化し、特徴的な一本角がV字に分かれる。
怪しく光るツインアイ。全身の赤い光と相まって、悪魔を連想させた。
悪魔に変化したユニコーンは、背中に生えたビームサーベルを引き抜き、マリーダに対して襲いかかった。
というわけで、いかがでしたでしょうか。
このあと、事後処理の話を1話投稿して 第1章 ユニコーンの日 は終わりとなります。
今まではガンダムUC重視でストーリ展開しましたが、ここから先はIS側も混ざってきます。ご期待ください。
次回はこんなに早いかは分かりません。なるべく早くしたいとは思いますが、私も忙しくなるのでどうなるか……。
催促は感想欄にお願いしますです。はい。