特殊感染者たちの物語   作:悪役好き

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In High school.


Hunter

 俺は子供の時から、自分のしたいことを自由にしてきた。

 父と母が長く苦しい不妊治療の末、授かったのが俺だと聞いた。二人の年齢のこともあって、俺は一人っ子として生まれ、甘やかされて育てられた。

 腹が減ったと言えば嫌いな物は抜かれた食事が出てきて、あれが欲しいといえばその日の内か次の日の朝には叶った。当然、そんな我侭放題で育てられて限度を知らない子供に協調性が育つはずもなく、友達なんてのは一人もいなかった。

 遊具を独り占めし、気に入らないことがあればすぐに怒り、殴る蹴るの喧嘩も日常茶飯事だった。それでも両親は俺をたしなめることもせず、ただただ泣かせた子供の親に頭を下げて謝るばかりだった。

 ハイスクールまでそうやって生きて、気がつきゃ周りにはクレイジーな連中しか寄り付かなくなった。

 

 

「おい、ハンター。今日はどうすんよ?」

「あーそうだなぁ。タルいなぁ」

「ヤク持ってきたけどやるか?」

「あーそれもいまいち飽きた」

 ハイスクールの屋上にいわゆる不良と呼ばれる学生たちは集まり、会議をしていた。その日その日でたいてい何か面白いことをしようというのを相談し、実行していた。その中で、ハンターと呼ばれている男子はつまらなさそうに口を尖らせていた。

「ポルノでも見るか?」

「はっ、ポルノなんて童貞野郎が見るもんだろ。ヤリたきゃ女連れてくりゃいいじゃん」

「この前は面白かったよな。カップルの男の方ボコして女の方ヤリまくって。最後あいつ自分から腰振ってたぜ」

「見た目通りにビッチだったってわけだ」

 ゲラゲラと下卑た笑いを催している学友を見ても、ハンターは何も面白くなかった。もっと面白いことがいい。もっと面白いことが起こればいい。

「つまんねーって顔してんなハンター」

 隣に座ったのは、この学校中でもとびきりの悪名を響かせている友人とでも呼べそうな存在のダニエルだった。

「ああ、最高にクールなこと起こんねーかなって、さ」

「クールねぇ……。そういや、聞いたか? なんでもゾンビが出てるらしいぜ」

「は? ゾンビ? 意味ワカンネー」

 クルクルパー、と手でアクションをしてみせればダニエルもふっと笑った。

「墓から這い出てコンニチワってか。それこそガンで頭吹っ飛ばしたら楽しそうだけどな」

「なんか聞いたんだけどよ、隣の州はゾンビで溢れかえってるらしいぜ」

「じゃゾンビ狩り行くか?」

 ハンターはにやっと笑った。

「ハンター? ゾンビとかお前信じてんのかよ! 笑えるぜ!」

「頭イカれてそうな出来事信じるなんてマジオカシイんじゃねーの?」

「うるせーな。『狩人』がゾンビ狩るのは何もオカシかないだろ?」

「違いねぇや!」

 ハンターとはもちろんあだ名である。なんでも欲しい物は力ずくで奪い取る。魅力的な物を持っている奴がいれば、「狩っ」て手に入れる。幼い頃に中途半端に身につけさせられた格闘技の技を悪用し、素早い身のこなしで立ち回り、急所を的確に狙って殴ったり蹴ったりして物を奪っていく様子はまさに「ハンター」だと誰かが噂したからその名が生まれた。

「いつ集合?」

「あー……アレだ。チャリ乗ってハイウェイの入り口で集合な」

「オッケー、俺親父のショットガン持ってくぜ」

「お前マジで言ってる?」

 妙なテンションでわいわいと騒ぎながら、ハンターたちはこの計画を練るので盛り上がっていた。

 

 

 彼は、今では後悔しているのだろうか? 計画を立ててしまったことを? そもそも友人のダニエルからこの話を聞いてしまったことを?

 いいや、後悔などしていないだろう。なんせ、彼は本物の「ハンター」になれたのだから。

 

 

「全員集まったかー?」

 そこにはハンターを含め、5人の少年たちが集っていた。

「うお、お前マジでショットガン持って来てんのかよ」

「いーだろ?」

「今時そのガンはダセェよお前、何十年前のアンティークじゃねぇかんなもん」

「いーじゃねーか。レトロ趣味なんだよ俺」

 ハンター以外の四人はわいわいとお互いの装備を見ては貶したり褒めたりと非常にやかましい。この中で冷めているのはハンターだけであった。

「おら、行くぞテメーら」

 ハンターがそう言うと、他の四人もそれぞれバイクにまたがり、バイクのない者は後ろに乗せてもらって出発した。

 深夜のハイウェイはそれほど車もなく、せいぜいトラックのドライバーがちょいちょいいたくらいでかっ飛ばし放題だった。スピード違反といえば違反なのだが、目的の州に近づくに連れて車の影も少なく、彼らのスピードも増していった。

「うおーやべぇ!! 超ヤベェってこれ!!」

「……!? ストップ!! テメェら止まれ!」

 ハンターの言に驚いた仲間たちは、慌ててブレーキをかけた。超スピードからのいきなりのブレーキであったため、止まるまで大分時間を有したがなんとか全員無事に止まれた。

「んだよ! ビビったのか? ハンター」

「違ぇし。……見ろよ、アレ」

 ハンターが指さした先には、非常に厳重な柵が築かれていた。幸い、見張りの男性たちはこちらが暗がりなのもあって気づいていないようだった。

 ハンターたちはすぐさま来た道をいくらか戻り、見つからなさそうな位置まで来ると、寄り添い合って話をし始めた。

「どういうことだよアレ?」

「分かんねぇ、あそこ境よりちょっと手前だよな?」

「え? 柵ある上にあの見張り銃持ってるぜ? ……マジ?」

 上がりに上がったテンションも、あっという間に生じた理解不能な事態からの疑念のせいで下がっていった。そして、これは本当にまずいのではないか、という尻込みするような空気と、ゾンビが本当にいるのかもしれないという期待から一同はアンビバレンツでおかしな感情が胸の内に湧いていくのを感じていた。

「どうする?」

「……ハイウェイから一旦降りる。そんで下から行こうぜ」

 ハンターはハイウェイの下を指さした。真っ暗な中でも、ごくかすかに水の流れていくせせらぎの音がした。

「下? 下川だぜ? 中洲もあるし浅そうだけど……」

「濡れるのとかマジ嫌なんだけど」

「じゃあお前一人で帰れよ」

「……行くよ」

 濡れた状態で夜風に当たるのが気持ち悪いし、ヒルがいそうでヤダという意見も出たが、仲間外れにされそうだと知ると結局付和雷同してついて来ることになった。

 道を更に戻り、一番目的地に近いところで一旦降り、ハイウェイに沿ってなるべく州に近づいてみる。案の定川を越えることになったが大した深さもなく、せいぜいコケたアホが膝のあたりまで濡れたくらいだった。

「うーわ、つめてぇ」

「馬鹿じゃねーのお前、ウケるわ」

「るせぇな」

 なるべく騒がないように、としたものの楽しいことがあればつい声を出してしまうのが性とでも言うのだろう。だがハンターはそいつらを睨みつけた。

「あんだよ」

「黙れ」

「……そんな睨むなよ、悪かったって」

 ハンターは一応前を向き、目的地を目指すことに専念した。後ろから「何マジになってんだアイツ」と半分呆れたような小声が聞こえたがひとまず無視した。

 思えば、幼い頃から欲しい物はなんでも手に入った。今でも両親は金をいくらでもくれるし、欲求はすべて満たしてくれる。それでもやはり、一人息子を甘やかしすぎたと今更ながら悟ったのだろうか、ハンターの行動に口うるさく言うようになってきた。内容としてはありきたりな物だ。勉強しろ、悪い奴と付き合うな、お前の将来のためなんだ、こうしろああしろ、ああしてはいけませんこうしてはいけません――――。

 うるせぇ。

 うるせぇんだよ。

 俺に逆らうな。俺が大事なんだろ? 黙って言うこと聞いてろよ。

 イライラしながら考え事をしていると、ぐ、とパーカーのフードを誰かに掴まれた。

「テメッ…………!」

「シッ」

 フードを掴んだのはダニエルだった。何事かと思い怒鳴ろうとすると、人差し指を唇に当てるポーズを取った。よくよく見ると、柵が前方にそびえていた。どうやらハイウェイにあったのと同じ柵のようだった。

「……抜け穴の一つや二つあるはずだから、それ探そうぜ」

 ダニエルはそっとフードから手を離して言った。ハンターもそれに従うことにし、他の連中と一緒に探すことにした。

「どうする、二組に別れるか?」

「……そうしようぜ」

 結局、ハンターとダニエルをそれぞれリーダーとして二組に分け、柵の向こうへと行ける抜け道を探すことにした。

 探し始めて、わずか数分でそれは見つかった。好都合なことに人もいないようだった。

「じゃあ合図送るぜ」

 仲間の一人が、ダニエルたちが向かった方へ懐中電灯を照らし、点滅させた。見つけたら、あるいは何かあったらの合図として採用したそれにすぐさま返事がきた。一分も経たない内に、すぐにダニエルたちと合流出来た。

「……行くぜ」

 五人の少年は、次々と穴をくぐり抜けていった。

 

 

 入ってどれほど歩いただろう?

 単調な道と生い茂った草ばかりで、一向に人影なぞ見えなかった。

 念のために全員銃はいつでも発砲出来るようにしていたが、長く続く緊張状態を維持しきれず、すっかり馬鹿騒ぎに興じていた。

「んだよ、ゾンビとかいねーじゃん!」

「ゾンビどころかこの先マジ人いんのかよ?」

「方向間違ってたらウケるな!」

 ぎゃはははは、と爆笑を響かせながら歩いていたが、ハンター一人だけはただひたすらに押し黙っていた。

「……ハンター、お前さっきから何も喋ってねーけど」

「……」

「実はもうゾンビってる?」

「ゾンビってるって何だよ」

 思わず吹き出したが、すぐさまハンターはまだ無言になってしまった。

「……腹でもいてぇの?」

「ダン、お前分かんねぇの?」

「何が?」

 懐中電灯で照らされているダニエルはきょとんとするだけだった。

 ハンターは上手く説明出来る自信がなかったから何も言おうとしなかったが、彼はひしひしと感じていた。

 間違いなく、この先には何かがいる。本能が引き返せと叫んでいる。

「……あっ」

 思わず仲間の一人が声を上げた。そこには後ろを向いている男性がいた。

「……あれ、ゾンビかな?」

 懐中電灯の光と声で気づいたのだろう、そいつはこっちを振り返った。

「……えっ」

 光に照らされたそいつは、顔が赤かった。いや違う。顔が赤いんじゃない。あれは……。

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 そいつは全力で叫びながらこっちに向かって走ってきた。

「うわ何だよアイツ!?」

「おい、ヤベェぞマジで! 撃て! 撃っちまえ!」

 誰かがそう言ったが、誰も銃を撃とうとしなかった。あまりのことに、パニックになり、仮にも人型をしている奴を銃で撃つなんてこと出来なかった。

 すぐさまソレは一番前を先導して歩いていたハンターに掴みかかり、殴りつけてきた。

「痛ってぇ!! テメ、本気で殴りやがったな!?」

 ハンターは痛みにすぐさま我を取り戻し、クレイジー野郎共と一緒に戦ってきたバールをすぐさまバックパックから抜き出してそれでそいつを殴りつけた。

「ウア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!! ア゛ア゛ア゛!!」

「ルッセーんだよ!!」

 断末魔のような悲鳴を上げ続けるそいつを殴っていると、立ち向かっているハンターの様子に勇気づけられたのか、仲間たちも鉄パイプや金属バットなどでリンチし始めた。

「死ね!」

「俺らに逆らおうとか舐めてんじゃねーぞコラ!!」

 やがてそいつは微動だにしなくなり、顔をぐしゃぐしゃに歪めて事切れたようだった。

「……」

 改めて静寂が訪れる。

「……なぁ、帰ろう」

 仲間内で一番のビビリがそう言った。

「は? 何言ってんだお前」

「だって見ろよコイツ」

 ビビリが懐中電灯で先程の奴を照らすと、確かにそれは人の形こそしていたが、目が白く濁り、赤く見えた顔は血で濡れていた。特に口周りが。しかもその赤は服にも汚らしく飛び散っていた。

「やばいってコレ。しかもコレゾンビじゃなかったとしたら俺ら人殺しやったってことだろ?」

「ゾンビだよ。ゾンビ」

「じゃあなおさらやばいじゃん。……なぁ、帰ろう」

 ビビリはもう涙声になりながら言った。

「……ハンター、これはヤバいって。帰ろうぜ」

「……仕方ねぇな」

 ハンター自身もカッコつけてはいたが、実際のところかなりビビっていた。

「……ん? ハンターお前、血出てる」

「え? マジ? どこらへん?」

「口んとこ。切ったんじゃね?」

「マジか。うわいてぇ」

 ぐいっ、と乱暴に口元を拭い、ハンターたちは引き返し始めた。

 

 

「……なぁ、ここどこだよ」

「途中だろ」

 また暗闇の中を、懐中電灯の明かりと月明かりだけを頼りに手探りしているかのようにのろのろと歩くハメになった一行だったが、一向に見慣れた場所に辿りつけていなかった。それもそのはず、道中には草むらと舗装されているんだかいないんだかよく分からない道くらいしかなかったのだから、目印すらないままに歩いていて道の覚えようがなかった。

「……ハイウェイってどこだよ?」

「あれだろ……あれ、違うな。あれ、ハイウェイどこだ?」

 おまけに、頼りにしていたハイウェイの柱もいつの間にか傍から消えており、柵のところまでたどり着いている気配すらなかった。

 さすがにこれはマズいと彼らも感じていた。ひょっとしたらゾンビに食われるかもしれない。そもそも近寄ってきていてもこの暗さでは分からない。

「……帰りてぇよ……! もういやだ…………!」

「おい馬鹿騒ぐな!」

 突然、ビビリが大声を上げて泣きじゃくり始めた。泣きたいのは誰も同じような物だったが、それをじっとこらえていた。

「もうやだぁ! 俺たちはここだー! 見張りのおっさん助けてぇぇ!!」

 非常に情けない声をあげて大声を出しまくる馬鹿に辟易した他のメンバーは、とっさにビビりの口を塞いで黙らせた。

「黙れ馬鹿! さっきのゾンビが来たらどうすんだよ!?」

「うあああああああー!!!」

 だが精神が限界を迎えてしまったらしい彼は、ただただ泣き叫ぶばかりでパニックに陥り、人の話を聞こうとしない。ハンターがいっそこの馬鹿を殺してやろうかとまでに思いつめた時だった。

 ――――おーい…………

 遠くから声が聞こえた。それはまともな人間の声だった。

「! 俺たちここですー!! ごめんなさあああい!!!」

 ビビリはより一層泣き声をあげた。ようやく聞けたまともな声に、思わずハンターたちの手も緩んだ。その途端、ビビリは声のする方向へと走って行ってしまった。

「おい、危ねぇって……」

「ごめんなさぁい!! ごめんなさぁい!!」

 ――おーい……

「ごめんなさぁい!!」

 ――おーい……

 声は徐々に近づいてくる。よかった。そう思ったその時だった。

 ビビリの手に持っていた懐中電灯が何かを照らした。どうやらそれは丸く突き出た腹のようだった。なんだ。太ったおっさんかと皆力が抜けて笑い、ビビリも涙で顔をぐちゃぐちゃに歪めながら懐中電灯をおっさんの顔あたりに当てた。

 光が照らしたのは――

「見つケたよ」

 ――水泡がいくつも浮いた顔。明らかに、人じゃなかった。

「う、わああああ」

 ビビリがそれ以上叫ぶ前に、デブのおっさんは何かを彼に吐きかけていた。黄色く濁ったそれで体中覆われてしまったビビリは泣き叫び、手でこすってそれを落とそうとしたが、体中を濡らしてしまったそれはなかなか落ちきらなかった。

「げほっ、げほっ、うえええっ、げぇっ」

 どうやら叫ぼうとして大口を開けていて、その口の中にまで入ってしまったらしい。ビビリは必死に吐いていた。

「逃げなクテいいノカな?」

 妙に愛想のいい笑顔を浮かべて、くぐもった声でそいつがそう言った。

「何の」

 ことだ、と続けようとしてハンターは気がついた。自分たちが来た方向からたくさんの誰かが走ってくる音がする。

 ふと見ると、もう太った男はどこにもいなかった。

「やべぇ、走れ!!」

 慌ててハンターたちは音とは真逆の方向に全力で駆け出した。明らかに足音は一人や二人のものではなかった。

「ま、待ってくれよぉ! 置いていかない……」

 ビビリの言葉は最後まで続かなかった。すぐにゾンビ共のであろう雄叫びにかき消され、わずかに悲鳴がその合間に聞こえたような気がしたが、大分遠ざかった頃にはもう何も聞こえなかった。

 

 

 周囲を警戒し、わずかな音も聞こえないかと早歩きをしながら耳を澄ませる。もう騒ぐ元気も勇気も、体力もなかった。

 すでに残った4人は全員銃を構えながら歩いており、いつでも発砲出来るように弾の装填も済ませていた。

 懐中電灯をなるべく遠くへ、上の方に向けて照らし見失ったハイウェイを探し続けた。一応期待せずに腕時計を見てみると、まだ深夜の一時で夜は明けてくれそうにはなかった。

 誰も一言も発しないまま、歩き続けた。時折一瞬だけ後ろに向けて懐中電灯を照らし、先程の奴らが追いかけてきていないか、ひょっとしたら助かったビビリが来ていないかと見たが、幸か不幸か、後ろから近づいてくる者は誰もいなかった。

 時折背の高い草むらがあり、それが顔に触れる度に背筋がぞわりとする。妙に湿った肌触りは不愉快なだけだった。

 せめて明かりがあれば……。今までたむろしていた繁華街の明かりが、目に突き刺さってくるウザい光が、あんなにも恋しく頼もしい物だとは知らなかった。

 帰りたい。

 四人の心を占めているのはその思いただ一つだけだった。

「おい、あれ!」

 嬉しそうな声をあげて、ダニエルが指さした。その先には煌々と明かりが灯っていた。位置も非常に高い。きっと見失ったハイウェイだろう。

 四人は思わず小走りでその明かりへと近づいた。よかった、これで帰れると皆ホッとしていた。だから気づかなかった。乱れてちゃんと前を照らしていなかったから、気づけなかった。

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」

 前方には、ゾンビの集団が待ち構えていた。まるでハイウェイは罠であったかのように。

 

 

「……ー! ハンター!!」

 ふと気がつくと、自分は呆然となって座り込んでいた。ダニエルが必死にハンターを揺すり、泣いていた。

「……ダニエル?」

「早く返事しろよな! この間抜け野郎!! 死んだかと思ったじゃねぇか!」

 その悪態が、恐怖から来ているものだと、ハンターにはよくわかっていた。ゆっくりと周りを見ると、ゾンビの死体が大量に転がっていた。自分の手元を見ると、血でヌルッと滑る銃をしっかりと握っていた。きつく握りしめて手が痛んでいたが、それでも自分の手は銃を握ったまま離そうとはしなかった。

「な……に」

「覚えてねぇのか?」

 ハンターが辺りを見渡すと、ゾンビどもの死骸に紛れて、仲間二人の死体らしきものも転がっていた。体中ひどく食いちぎられていて、内臓はあたりにバラ撒かれていた。

「う……ゲェッ!」

 ハンターが思わず嘔吐すると、ダニエルはその背中をさすってやりながら先ほどの様子を教えてくれた。

「ゾンビ共がたくさんいたのは覚えてるか? そいつらを俺たちで撃ちまくったんだよ。あいつらは途中で弾切れ起こしたり、捌ききれなくなって餌食になっちまったけど……それでも俺たちが運良く残れたのは奇跡だ。それに、ハイウェイも見つかった」

 ふとハイウェイの方を見上げると、上から何人かの人がこちらを覗きこみ、巨大なサーチライトでこちらを照らし、はしごをつたってこちらに降りてくるのが見えた。

「……俺たちだけでも、帰ろう。ハンター」

「……ああ」

 ダニエルに助け起こされながら、ハンターは家へと戻る道を辿るため、ハイウェイからやってくる警備の人々の元に向かった。

 

 

 結局、あの後警察にこっぴどく叱られ家に帰るなり父親には殴られ母親には泣かれ、ハイスクールは一時休学することになった。ダニエルも似たような感じだったらしい。

 だが、一つだけ気になることがある。その日の夜、風呂に入った時に気づいた。確か一人目のゾンビと対峙し殴られた時、確かに口の端か何か切ったはずだったのだが、身体のあちこちにあったのは打撲傷くらいな物で、切り傷の類は一切なかった。

 思うのだが、あのときついていた血は、自分の血ではなくてあのゾンビの浴びていた返り血か何かではないのだろうか? それに、よく思い出すと、あのゾンビは頭から血が垂れているような濡れ方をしていた。つまり、頭部に傷口があったかもしれず、その血は返り血のみならず、あのゾンビ自身の血が混ざっていたのではないだろうか? そしてそれが飛び散る勢いで自分の顔につき、一部が口の中に入ってしまっていたとしたら?

 最近、妙に爪が早く伸びる上に硬い。それに、よく腹が空く。

「緊急ニュースです。現在病気で封鎖されている○○州ですが、近隣の州でも似たような症状を発症する人が確認されています。政府は……」

 

 腹、減った。

 




勝手にちょっと妄想してみました第一弾。

ちなみに、ハンターって機会があれば死体をまじまじと身近で見てみると分かるのですが、実は浮浪者っていうか、なんか汚らしいおっさんです。実際は。

無精髭だわすきっ歯だわ肌たるんでるわで色々夢がぶち壊されます。

今回は巷でよく妄想されてる美?少年系ハンターでやってみました。おっさんでもいいけど果てしなくすごい悲惨な人生になりそうだw

ちなみに個人的にはSmokerが大好きです。彼のお嫁さんになりたいくらい好きです。
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