「いらっしゃいませ!」
来店を告げる鈴と共に、カウンター内の店員と思しき女性が、椅子に座ったままではあるが愛想良く客を迎える。
男性は恐る恐る足を進めると、彼女に尋ねた。
「あの、その…ここは…店、ですよね?」
室内には、家具から家電、ゲーム機、日本人形など、統一感のないものが整列されて置かれていた。
それだけならまだ変わったセレクトショップと言うこともできなくはないが、異質なのは、ほとんどの商品から念が感じられることだ。
「あ、当店のご利用は初めてですか?」
「はい…」
「それじゃ、説明が必要ですね…よいしょ」
彼女は椅子から立ち上がり、カウンターの外へ出た。
「…ゴホン、ようこそいらっしゃいました。当店では見ての通り、念の籠った様々な品を取り扱っております。
しかしただの念の籠った品ではありません。このように、ここにあるのは一般的に美術的価値がないものがほとんどです。」
そう言われて彼が目を向けてみれば確かに、店内には装飾品や絵画が見受けられない。
「つまり、念が籠ってはいるけれど価値の低いものを収集して売っている、という訳ですか」
随分ニッチな産業に思われるが、まぁマニアというのは何処にでもいるものである。彼は、なるほどそれで念能力者にしか分からない入り口を設けているのか、と納得した。
「それだけではありませんよ、当店オリジナルブランドも数多く取り揃えております。」
「オリジナルブランド?」
「はい、例えばこちらをご覧ください。」
そういって彼女は近くの棚にあった新品のトランプを手に取って見せた。
「こちらは、『念能力者が本気でスピードをやっても壊れないトランプ』です」
「…えっと?」
「ですから、『念能力者が本気でスピードをやっても壊れないトランプ』です。」
怪訝な顔をする彼に、彼女は口を尖らせて続けた。
「念能力者同士でトランプで遊ぼうってなったときにですよ、普通のトランプでつい遊びに本気になってしまったら一回で駄目になりますよね?」
「そ、そうですね?」
「トランプは賭け事でもない限り使い捨てるものではないのに、つい遊びに本気になってしまった…そして、トランプが木っ端微塵!大変!次はポーカーをやろうと思っていたのに!そんなことはありませんか?
そんなときにこちら!『念能力者が本気でスピードをやっても壊れないトランプ』!
耐久力抜群!貴方の楽しい時間をサポートします!もう一々買い直す時代は終わったのです!
毎回買い直しor常にストックを持ってなきゃ遊べないそこのアナタ!
このトランプでLet's enjoy!
…どうです?今なら初回来店ということで通常価格54000ジェニーから50000ジェニーになりますが」
「そのトランプって…逆にどのくらいで壊れるんですかね?」
「おっ、ご購入をご希望ですか?……そうですねぇ、使用目的が楽しくゲームすることである限りは、基本壊れませんよ」
「………なるほど、では一つください」
「ありがとうございます!他のものもご覧になりませんか?」
「いいえ、今日は結構です」
彼女は五万ジェニーを受け取ると、カウンターの裏側に手を伸ばし小さな紙袋を一枚取り出し、中にトランプを入れた。
「領収書は?」
「結構です」
紙袋を男に手渡し、彼女は笑顔をみせた。
「では、またのご来店お待ちしておりまーす」
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