あったらいいなが揃ってる(仮)   作: ラズ

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文を書くのが久々過ぎて…




「すんませんちょっと雨宿りさせてください!」

「いらっしゃいませ、どうぞ、構いませんよ」

 

 息を切らしているびしょ濡れの男と対照的に、彼女は緩やかな口調で応答した。

 彼女はカウンターの奥の棚からタオルを取り出し、男に差し出す。

 

「どうぞお使いください」

「え、いや悪いっすよ」

「では悪いと思うのなら店内を見て行ってくださいな」

 

 慌てて拒否する男に対して、彼女は微笑みながらいたずらっぽく告げた。

 

「あー…じゃあ、傘とかありますかね?」

「はい勿論。いくつかお持ちしますので暫くお待ちください」

 

 暫く、と言ってもそこまで広くはない店内なので彼女は1分も経たずに戻って来た。

 

「まずこちら、『科学的に証明できるからかさ小僧』です。自立歩行型ですね。」

「は?!」

「えっと、ですからこのように、柄を下に向けて立たせると勝手に付いて来ます。

 起動時のみ大きな目のマークが浮かぶのがチャームポイントです。ジャンプ力の調節ができるので、足の速い人にも対応しています。最高時速80kmですね。」

 

 彼女は店内を少し歩きながら、実際に傘に後ろを歩かせてみせた。

 

「80km/h!?」

「ええ、80km/hです!公道を走らせても渋滞が起きませんよ!エンジンを搭載しているので多少重量があるのが難点ですが、それを上回る性能の良さです!」

 

「そ、そう……ってここ今気付いたけど念籠ってる商品ばっかりだね!?」

「…あら?初回の方でしたか。来店が初の方は皆さん警戒してらっしゃるから、前にいらっしゃったことがある方なのかと思っていました。」

「いんや初めてだよ。割と焦ってたから気付いてなかっただけ」

「それは…どうぞご自愛ください」

 

 彼女は少しだけ哀れみの籠った眼差しを男に向けた。念に気付かない念能力者など死、まっしぐらであるからだ。

 

「待って!どういう意味!!!大丈夫普段はここまで気付かないとかないから!!!たまたまだから!!」

「そうですか」

 

「…他の見せて」

 

 彼が少し低い声で言うと、彼女は口角を上げたまま頷いた。

 

「続いてこちら、『めっちゃかっこいい傘』、です」

「は?かっこいい傘…?」

 

 その外見はデザイン性に優れている訳ではない、普通の傘である。

 

「傘を開くスイッチを押しながら、攻撃の意思表示となるようなワードや銃声の擬音語を口で言うと銃弾が飛び出す仕組みとなっております。ハイテンションで言うほど威力が上がる仕組みになっていますね。

 また、ウルトラ、スペシャル、アルティメット、スーパー、ハイパーなどの言葉は重ねれば重ねるほど威力があがります。

 お試しになられますか?」

「は?試すって何処で?」

「当店では『顔がちゃんと苦しんでくれる人型の的』を用意しておりますよ!」

「いややらないけど…他にないの?」

 

「お気に召しませんか…残念です。ではこちら、『有機ビニール笠』です」

「有機…?食べられる、的な?」

 

 彼も大分この店に慣れて来たようで、一見普通のビニール傘に見えるそれを見てそう言った。

 

「いえ、食用はオススメしていませんが…一応、少しなら食べることも可能ですかね…?

 これは、増殖する性質があるので…勝手に増えます」

「勝手に増える」

「長時間の買いもので傘の盗難にあっても、増えているから自分の分がありますよ、というのが売りですね!」

 

「え、その勝手に増えてくのってとめられないの??」

「止まりませんよ?」

「困るじゃんそんなの!」

 

 不思議そうな顔で彼女は続ける。

 

「困りますか…?むしろ他のビニール傘と区別がつかないので、街のどこにこのビニール傘が潜んでいるか分からない、というちょっとハラハラドキドキな展開になるのですが。貴方の家のビニール傘、新しく買った記憶がないのに一本増えていたらこれかも…なんて!」

「いやそんなのいらないし!!もっとまともなのないの?」

 

「まとも、ですか…」

 

 彼女は初めて困った顔をした。

 正直この店ではまともなものがあるとすれば彼女の私物くらいである。

 

「あ、ちょっと呪われている傘があります!あれはかなり普通です!」

 

 彼女はそう言って新たな傘を持って来た。

 

「いやいやこれちょっと呪われてるって感じじゃないじゃん!ガッツリ死者の念じゃん!!!」

「名前を言ったり家に持ち込まなければ大丈夫です!雨が上がったのちに適当にその辺のコンビニに放置していただければ貴方が呪われることはありませんよ!普通です。」

 

 至極当たり前のように言う彼女に、彼はため息をついた。

 

「もういいよ…急な雨だったし、そんなに困ってた訳じゃないんだ…ありがとね」

 

 彼はそう告げると帰って行った。




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