鈴の音が鳴り、着物姿の女が訪れた。
「いらっしゃいませーってあっ毎度ご来店ありがとうございます」
その言葉に女性は表情の読めない淡い笑みで答えた。
「店主さん、いつも通りあるだけ持ってきてくださいませ。全て買い取ります。」
「私が店主とは一言も言っていないのですがねー」
「貴女以外が働いているのを見たことが無いのですが…?」
「私が接客を任されているだけかもしれませんよ?」
「そうなのですか?」
「言う訳ないじゃないですか」
軽口を叩きつつも手は止めずに、店内のあちらこちらから様々な商品を探してはカウンターへと運んでいく。
ホルマリン付けの右手。コーティングの施された眼球。宝石の詰められた髑髏。瓶いっぱいに入った何人分とも知れぬ爪。ガラスの小箱に入った指。
どれも禍々しい念を放っている。
「これで全部ですね」
「これだけですか?」
少し不満そうな女性に、彼女は眉根を寄せた。
「無茶言わないでくださいよー、念かかってるってだけで希少なんですよ??分かってます??」
「分かっておりますよ、そうではなく、世界七大美色の青が手に入ったと聞きました」
「念がかかってなきゃ七大美色だろうとうちの管轄じゃありませんよ」
「ですから、念のかかったそれが入荷したと、きいたのですが?」
できの悪い子に言い聞かせるかのように尋ねる女性に、彼女はため息をつく。
「はー…どこからその情報手に入れて来たんですか」
「それを教えれば売る、と?」
鋭くなる眼光に、彼女は降参だ、というかのように首をすくめた。
「嫌な予感がするから聞きたくありません。てかあれ偽物ですけどそれでも欲しいんですか?」
「そうですか、で、幾らです。」
「買うんですか?」
「偽物でも念を纏っていたのでしょう?」
「まぁそうですね」
「それに、分かりませんよどうせ。さぁ早くお会計をお願いいたします。」
忠誠心のかけらもない言動に、彼女は再びため息をついた。
「えーっと300万、700万、7億5千万、500万、200万で…あーどうしよっかなこれはー5億。で合計12億6700万のところを…ああ、まぁ12億6700万です」
「下げてはくださらないのですか?」
「下げなくても買い取るんでしょう?」
「買い取りますよ」
「購入を迷っていない人にセールストークしてもしょうがないじゃないですか」
「そんなものでしょうか」
「そんなものですよ。」
女性は懐から小切手を取り出すと、さらさらと金額を書いた。
「ではこちらを」
「お買い上げありがとうございます、領収書をどうぞ」
渡された領収書に目を通してから懐にしまい、きびすを返そうとする女性を引き止める。
「今日も個人的なお買い物はしていかないんですか?」
「必要ありませんので」
「…またのご利用をお待ちしておりまーす」
断り去って行く背中に声を投げかけた。
基本的に値段は筆者が元となる商品をぐぐってトップに出てきたもの×100くらいというアバウトな設定なのですが、人体なんてそもそも売ってないので今回はいつも以上にテキトーです。
緋の目があるんだから青もあるだろ(投げやり)