「いらっしゃいませーってお久しぶりです!!」
入って来たのは妙齢の女性だった。
「久しぶり!今回もアレを一瓶お願いしたいんだけど」
「『誰でも邪気眼くん』ですね、少々お待ちください……どうぞ」
「いやぁ、カラコンみたいに線でバレないし色がド派手だから印象操作に便利だし、やっぱりこれが最高!はい18万」
「毎度ありがとうございます!」
嬉々としてお金を受け取った彼女に、客は少し眉根を寄せながら言った。
「でもさ、やっぱ左右同じ色になるやつも開発した方が良いと思うのよ…どうしてオッドアイに拘るかな…」
「いやぁ、そこはうちの経営方針的にアウトというか…ああ、でも深紅と金と銀なら可能かもしれませんね、検討してみます。」
「いや赤はマズいでしょ赤は!!!!」
不思議そうな表情をする彼女に、何を言っても無駄だと思ったのかため息をつく。
「あ!同シリーズの新作がございますよ!!」
「ここのシリーズってイマイチどの辺が
彼女はサンプルなのか包装が特にされていない竜のマークが描かれたシールが貼られた15センチほどのプラスチック板と、デザインパターンと書かれた薄いファイルを取り出した。
「はい!その名も、『疼いちゃう腕』です!
デザインはなんと選べる20種類!!カラーは黒、金、銀、深紅の全4色ございます!!!
また、お値段とお時間が掛かってしまうのですが、オーダーでお好きな柄を作成することも可能です!!」
「疼く…というと、これを貼ると痛くなるってこと?」
「うーん、ちょっと違って、まさに疼くって感じです」
「それは…何の意味があるの?」
怪訝そうな顔で尋ねられて、彼女にしては珍しく答えずらそうに商品説明をする。
「えっと…それはある特定の人々にとってのカッコよさであるといいますか…他にも貼っている最中、任意で絵を脈動させることもできますね」
「ああ、なるほど。念能力の偽装に使えるって訳ね」
「んーーそういうご使用方法も可能ですかね…」
眉根を寄せる彼女に、客は小首を傾げた。
「え、じゃあ普通はどうやって使うの?」
「それはちょっと、私の沽券に関わるので実演はできないのですが…ご想像にお任せします」
「またそれ?前に何か紹介したときも言ってなかった??
…ところで、これって貼ったり剥がしたりできるの?」
「粘着力は弱くなってしまうので限度がございますが、何度かは可能ですよ。剥がした後に付属のプラスチック板に貼っていただければ……」
「ふぅん…じゃあ可愛いのあったら一個もらおうかな…」
「可愛い柄ですか…綺麗、でしたらまだ用意があるのですが…。鳳凰、魔方陣タイプE、架空紋章タイプB、この辺りが比較的可愛いと言えますかね…」
彼女はそう言ってファイルから3種類の模様の印刷された紙を取り出した。
「…魔方陣?待ってこれ、オーダーで神字って入れられる!?」
「はい?可能ですよ。オーダーは500万から承ります。神字ですので通常のオーダーより更にお時間が掛かってしまうのですが、それでもよろしければ…」
「大丈夫、それくらいなら問題ないわ。支払いはカードでも大丈夫かしら?」
「大丈夫ですよ、ただ値段は図案の完成次第なので代金引き換えの形になります…。前金として300万いただきたいのですが。」
「分かったわ」
大抵の常連客にとって、カード限度額という言葉はあってないようなものだ。
「ではここに希望のデザインをお書きください。当方の守秘義務はこの図案に関しましても発生いたしますのでご安心くぁ…あ、失礼しました」
ペンと紙を手渡し、常連客の前ということもあってか呑気にあくびを一つする彼女に、客は心配そうに言う。
「ねぇ、ぶっちゃけさ…自衛手段ってちゃんとあるの?念能力、ほとんど商品に使っちゃってるんじゃない?」
「私の念能力による商品だとは一言も言っていないのですが…まぁ、ご心配には及びませんよ。盗難対策はばっちりですし、最悪私がとりあえず生き残る方法ならありますし…」
「そうなの?」
「そうですねぇ…お姉さんは常連さんですし、今まで一度も盗もうとしたことがないので少しだけお教えしますが…色々と制約を付けて、この店から盗むのはほぼ不可能になっているんです。」
「なら良いけど…気を付けるのよ?よし、これで完成ね」
「確かに承りました。仕上がりのご連絡はいかがなさいますか?」
「そうねぇ…ここにお願い」
彼女は図案の右上の方に小さく番号を書いた。
「承知いたしました。次回受け取りの際に連絡先の削除はご希望ですか?」
「あーいいよ、多分また使うし」
「そうですか?ではそのように。」