「あっれー、ワタさんどこいったー?」
素っ頓狂な声がひとつ。
「渡瀬さんならもう出たよ」
「えーマジで? チョーガックシだよ。せっかくの大阪なのにさー」
「・・・いい加減飲みに連れ回すのもほどほどにな」
「だってさー、ワタさん女の子に人気なんだもん。全然喋らないくせに」
この軽い男は本木裕也。
見た目もこの伝統の誇るチームでは珍しいぐらいに軽い。
喋りもうまいのでファンの人気もそこそこ高い。
「あー調子狂ったぜ全く・・・しゃーねえフジ、飯行くぞ」
「ありがとうございます! ゴチになりやす!」
まだ21歳の藤川は一軍入りしている中では最年少。
度々ムードメイカーの本木に連れ回されているようだ。
何分このチームは野球界でも多種多様なメンツが並ぶので、新人はかなり居心地が悪いと思う。
本木の場合、それを知っているから若手に絡む。
・・・年下には偉そうに出来るので本人の息抜きにもなるからだろうが。
「全く・・・あいつもちいとは落ち着いたらどうなんだ」
「村ちゃん、そこで近頃の若いモンは・・・ってつけたら立派な」
「まだ29です! 9月まで30にはなってないんです!」
「時がすぎるのはあっという間だよ」
「あーあー聞こえない聞こえない」
人間いつまでも若くありたいものだと思う。
「はぁ・・・渡瀬さんみたいなかっこいい三十路になりたい・・・」
「お前鏡見てこいよ」
「ジャガイモ面なのはわかってます! 心のほう! ハートですハート!」
榊英雄。
三冠王2回という強烈な実績を携えてガリバーズにやってきた一塁手。
34歳にして未だ4番を貼り続けるチーム一の毒舌王である。
「先生・・・女の子にモテるにはどうしたらいいですか?」
「もう諦めたら?」
「ブサイクには未来はないとですか」
「つか嫁さんいるじゃん」
「姉さん女房でもう10年も一緒にいると若いエキスが・・・」
「へぇー、色々あるんだね。
最近の携帯って録音出来るって知ってた?」
「さぁ飲みにいきましょう! 今日はおごっちゃいますよ!」
「いやぁ悪いね村ちゃん、2人もおごってくれるなんてさ」
「・・・河合さんはひどい人だ」
「村ちゃんの奥さんとウチのかみさんって高校時代からの親友で」
「河合さんマジ神様」