近頃は私生活が忙しかったため、執筆時間があまり確保できず、
気がついたらかなり遅くなってしまいました。申し訳ございません。
今後も以前のようなペースで投稿できないかもしれませんが、
なんとか完結まで持っていけるよう頑張ります。
また、あまり重要ではありませんが、アテムが穂乃果を呼ぶ時の呼称を、苗字呼びから名前呼びに変更しました。
居候しているのに苗字呼びもおかしいですしね。
ここで、前回の話を投稿した直後に判明した新規カードを見たガイアくんの反応をご覧ください。
素ガイア「ま、まだ融合素材になれるし……」
疾風ガイア「ま、魔デッキのコストになれるし……」
会いたかったぜ、凛!
●凛、襲来!
昼休み。
数回の授業の後に訪れる至福の時間を楽しみにしている学生は少なく無いだろう。
親または自分で作ったお弁当の見た目と味を楽しむ者もいれば、低価格な学食へと向かう者もいる。購買のパンやおにぎりを購入し、思い思いの場所で食べる者もいるだろう。
そして、この音ノ木坂学院にもそんな時間を心待ちにしていた男がいる。
「昼休みだぜ、Yeah!」
ヒトデ頭の自称デュエルキング、アテムだ。
昼休みを告げる鐘が鳴ると即座に教室を飛び出し、購買でパンを購入するというのが彼の日課であり日々の楽しみなのだ。
今日もまた、チャイムが鳴った瞬間に奇声を上げて教室から消えていた。
「…………ハァ。まだ授業終了って言ってないんだけどなぁ。南さん、号令お願いします……」
未だにアテムの奇行に慣れていない新任地理教師、
「申し訳ありません、明智先生。アテムくんは後でブレイブクロー・レヴォリューションしておきます…………起立、礼!」
『ありがとうございました!』
今日は何m飛ぶのかな、そんなことを考えるクラス一同であった。
◆
昼休み開始から5分後。
「アテムくん、帰ってこないね」
あらかじめ購入していた菓子パンを頬張りながら穂乃果が呟く。
いつもは教室を飛び出して3分で戻って来るはずの彼が未だに戻ってこないというのは珍しいことだ。
もっとも、珍しいというだけでこういうことは稀に起こっていた。
「大方、残っていたパンを賭けてデュエルでもしているのでしょう。アテムさんに勝てる生徒はまずいないのですから、譲ってあげても良いはずなのに」
「それでもデュエルで決着をつけるのが決闘者って生き物なんだよ、海未ちゃん」
海未の呆れ声に対し、ことりが反応する。
確かに、今では物事を決める際にデュエルを用いるのは一般化されつつある。デュエル以外では女子校同士の揉め事が起きた場合はスクールアイドル同士がライブまたはデュエルをする場合もあるのだとか。
「それもそうですね。では、穂乃果は数学の教科書を出して下さい。最近勉強をサボっているのはわかっています。ライブも一段落したことですし、この昼休みを使って授業の復習です!」
「そ、そんな~! ことりちゃん助けて!」
「ごめんね穂乃果ちゃん、私デッキ構築で忙しいから♪」
少しでも穂乃果の成績を向上させたい海未と、逃げようとする穂乃果。
それを横目にデッキ構築を始めることり。
今は教室にいないアテム。
(南さん、いつもデッキ構築してるね)
改めて『μ’s』の問題性を考えるクラス一同であった。
◆
一方、購買へと向かっていたアテムは、その道を1人の少女によって遮られていた。
アテムと少女が対峙している場所は、購買や学食が並んでいる棟へと続く唯一の道であり、ここを通らなければ購買へと辿り着けない。
「お前はなぜ俺の行く手を遮るんだ。昼休みという至福の時間を邪魔するとはいい度胸だぜ。焼きそばパンを買いに行かせろ!!」
――グゥ~
「そうはさせないよ! アテムせんぱいのせいでかよちんは今日、学校を休んだんだ! だから凛が仇を討つんだにゃ!」
――クゥ~
譲れない思いを胸に、2人は睨み合う。『凛』という少女はアテムに対して相当敵意を持っているらしい。アテムは彼女のことを知らないが、昼食の邪魔をされている以上、既に倒すべき敵だと認識していた。
「……2人とも、お腹が空いているのなら先に食べてくればいいのに」
既に購買でパンを確保した真姫はアテムの後ろに呆れ顔で立っている。本当はさっさと昼食を済ませたかったのだが、クラスメイトの尋常では無い怒りを見てしまっては立ち去る気分にもなれなかった。
「どうしても退かないというのなら仕方ない。こいつで決着をつけるぜ!」
「最初からそのつもりだよ! 今日はこの熱き思いを籠めたデッキで、せんぱいをボコボコにしてやるにゃ!」
互いにデュエルディスクを取り出し、デッキを挿し込む。
多くの生徒から距離を置かれながらも、戦いの火蓋が切って落とされた。
『デュエル!!』
アテム:LP4000
凛:LP4000
●アテムVS凛
「先攻は俺だ! 俺は《翻弄するエルフの剣士》を通常召喚! 更に装備魔法《融合武器ムラサメブレード》をこいつに装備する! 装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップするぜ!」
デュエル開始と同時、初期手札5枚を確認したアテムは、一切の迷いもなく流れるような動きで2枚のカードを繰り出す。数多くのデュエルの経験から、カードを一目見ただけで今すべきプレイングを把握しているということだろうか。
《翻弄するエルフの剣士》
☆4 地属性 戦士族 ATK1400 → ATK2200
(なるほど、《翻弄するエルフの剣士》は攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない。そこへカード効果では破壊されない《融合武器ムラサメブレード》を装備することで、弱点を補っている。単純ながら強力なコンボ……流石はアテム先輩ね)
アテムが使用するカードはかなり古く、今ではあまり活躍の機会がないものも多い。だが、彼は様々なコンボによりその力を何倍にも高めている。真姫にとっても、勉強になることが多かった。
「俺はこれでターンエンド。さあ、お前のターンだぜ?」
「『お前』じゃねぇ、星空凛だにゃ! 凛のターン、ドロー!」
余程アテムのことが嫌いなのか、荒れた口調で凛はカードをドローする。
「凛はカードを1枚伏せて、
「俺は3枚だ」
(《手札抹殺》か。1ターン目から使うということは、墓地肥やしが重要なデッキと考えられるけど、一体彼女はどんなデッキを使うのかしら?)
デュエルに参加していない真姫には、プレイヤーの墓地を確認することはできない。だが、凛がニヤリと笑った様子を見て、彼女の準備が整ったことを悟った。
「ここで、凛は今伏せた通常魔法《戦士の生還》を発動! 墓地から戦士族モンスター1体を手札に戻すよ! 凛が手札に加えるのは、《
(なるほど、星空さんのデッキは【
「凛の本気を思い知らせてやるにゃ! 凛は今手札に加えた《BK スイッチヒッター》を召喚!」
《BK スイッチヒッター》
☆4 炎属性 戦士族 ATK1500
現れたのは、頭巾を被ったボクサーのような人型モンスター。左右の拳を交互に繰り出す
「このカードが召喚に成功した時、墓地の「BK」を特殊召喚する! 来て、グラスジョー!」
《BK グラスジョー》
☆4 炎属性 戦士族 ATK2000
続いて現れる
「これでレベル4のモンスターが2体、来るか……!」
「このデッキのエースを見せてやるにゃ! 凛はレベル4のスイッチヒッターとグラスジョーでオーバーレイ!
2体の「BK」でオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
2体のモンスターが赤い球体となって飛び上がる。それは凛の眼前に出現した
「魂に秘めた炎を、拳に宿せ!」
――ランク4! 《BK 拘束番兵リードブロー》!!
《BK 拘束番兵リードブロー》
★4 炎属性 戦士族 ATK2200 ORU 2
これまた、ボクサーの如きモンスター。だが、その両腕と首は巨大な拘束具で動きを封じられている。まるで、強すぎる力を押さえつけるかのように。
「攻撃力2200か。そいつの攻撃力じゃあ、俺のモンスターには通用しないぜ?」
攻撃力は今の《翻弄するエルフの剣士》と同じ。自身の効果で攻撃力1900以上のモンスターでは破壊できないため、このまま戦闘を行なえば破壊されるのはリードブローのみ。そう考えるアテムであったが――
「気を付けて、アテム先輩! そいつにオーバーレイ・ユニットを使わせてはダメ!」
「もう遅いよ! 凛は手札から《BK シャドー》のモンスター効果を発動! リードブローのオーバーレイ・ユニットを1つ使い、このカードを特殊召喚するにゃ!」
《BK シャドー》
☆4 炎属性 戦士族 ATK1800
リードブローの周りを浮遊していた球体が地面に吸い込まれ、その中から1人のボクサーが姿を表す。
いや、それだけではない。
オーバーレイ・ユニットが取り除かれた瞬間、リードブローを押さえつけていた拘束の一部が外れたのだ。それと同時に、リードブローに更なる変化が起きる。
《BK 拘束番兵リードブロー》
ATK2200 → ATK3000 ORU 2→1
「攻撃力が上がっただと!?」
「そうよ。リードブローは自身のオーバーレイ・ユニットが使われた時、攻撃力を800上昇させる。しかも、それだけじゃないわ。シャドーの特殊召喚の際にオーバーレイ・ユニットを取り除くのは、『コスト』ではなく『効果』によるもの。しかもタイミングは同時。つまり――」
真姫が語る目の前で、凛の手にいつの間にか1枚のカードが新たに加えられている。それは、「BK」と名のついたモンスター。
「西木野さんの言う通り。凛が取り除いたのはグラスジョーは、カード効果で墓地に送られた時、グラスジョー以外の「BK」を墓地から手札に加えることができる。
この効果で、凛は《BK ヘッドギア》を手札に戻させて貰ったにゃ!」
(くっ……! これで奴の手札は4枚。ここまで動いているというのにあれだけ残っているとはな。だが、それでも《翻弄するエルフの剣士》を破壊することはできない)
高攻撃力の下級モンスターと、攻撃力3000のエクシーズモンスター。2体のモンスターを目の前に威圧されるが、まだ突破はできないはず。
だが、そのアテムの予測を眼前の少女は容易く突破する。
「ここで、凛は速攻魔法《月の書》を発動! 《翻弄するエルフの剣士》を裏守備表示に変更!」
「裏守備表示だと!?」
淡い光を放つ書物。その輝きをその身に受けた剣士は、1枚のカードへと姿を変えてしまった。同時に、装備されていた《融合武器ムラサメブレード》が
(やられたわね。《融合武器ムラサメブレード》は『効果』で破壊することはできない。でも、装備対象が裏守備表示になれば、対象不在となり『ルール』で破壊される。星空さん、やはり彼女は強い……!)
「バトルにゃ! 凛は《BK シャドー》で裏守備表示になった《翻弄するエルフの剣士》を攻撃!」
静かに、かつ鋭い動きで接近するシャドーの拳が、剣士の身体を跳ね上げる。シャドーの攻撃力は1800。対する剣士の守備力は1200。元々持っていた破壊耐性をギリギリですり抜ける。
「くっ……!」
「これでフィールドはがら空き! リードブローで
リードブローは拘束がまだ残っているとは思えない機敏な動きを見せ、アテムへと迫る。防御手段は無く、彼はその一撃をまともに受けてしまう。
「ぐぁああああ!?」
アテム LP4000 → LP1000
腕を交差させて衝撃を減らそうとしたものの、それは意味を成さず、数m後ろへと跳ね飛ばされてしまう。
たったの一撃で4分の3ものライフポイントを削る攻撃力。なんという威力であろうか。
だが――
「ここで、俺は手札から《冥府の使者ゴーズ》のモンスター効果を発動するぜ!」
「にゃっ!?」
ここで簡単に屈するアテムではない。
「自分フィールドにカードがない状態でダメージを受けた時、こいつは手札から特殊召喚できる!
来い、ゴーズ!」
《冥府の使者ゴーズ》
☆7 闇属性 悪魔族 ATK2700
通常、最上級モンスターを召喚するためには2体のリリースが必要。だが、このモンスターはやや厳しい条件を満たせば特殊召喚でき、その攻撃力は2700。中々に高い。
「更に、そのダメージが戦闘によるものならば、受けたダメージと同じ攻撃力と守備力を持つ「冥府の使者カイエントークン」を特殊召喚するぜ!」
「冥府の使者カイエントークン」
☆7 光属性 天使族 ATK3000
これで、アテムのフィールドには高い攻撃力を持つ2体の最上級モンスターが並んだことになる。通常ならば心強いが、アテムも真姫も安心することはできなかった。
(ゴーズを出せたとはいえ、未だ奴のリードブローはオーバーレイ・ユニットを残している。次に効果を使われたら攻撃力は3800になる……!)
(アテム先輩の残りライフは1000。中途半端な攻撃力のモンスターを出してしまったらそこで終わる……!)
「凛はバトルフェイズを終了して、メインフェイズ2に移るにゃ。そしてここで、手札から《BK スパー》の効果を発動するよ!
このカードは、自分フィールドに「BK」が存在する時、手札から特殊召喚できる!」
《BK スパー》
☆4 炎属性 戦士族 ATK1200
両腕に赤い防具のようなものを装備した細身のボクサー。戦闘能力は無さそうだが、『
「スパーを自身の効果で特殊召喚『した場合』、凛はバトルフェイズを行えなくなるけど……」
「バトルフェイズは既に終了している。『する場合』と書かれていないから、バトル終了後でも効果を使えるということか。流石だな」
アテムも思わず感心する、カードテキストを利用した特殊召喚。しかも、それだけではない。
「これで凛のフィールドには再び2体のレベル4「BK」が並んだにゃ! 凛はシャドーとスパーでオーバーレイ!
2体の「BK」でオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
――2体目の《BK 拘束番兵リードブロー》!!
《BK 拘束番兵リードブロー》
★4 炎属性 戦士族 ATK2200 ORU2
「2体目だと!?」
「驚くのはまだ早いにゃ! 2体のエクシーズモンスターが並んだことで、凛は
2体目のリードブローに驚愕するアテムだが、凛はそのような暇など与えないと言わんばかりに、カードを繰り出す。
その魔法カードが発動された瞬間、2体のリードブローからオーバーレイ・ユニットが1つずつ床へと吸い込まれて行く。
「《エクシーズ・ギフト》は、自分フィールドに2体以上のエクシーズモンスターが存在する時に発動できて、オーバーレイ・ユニットを2つ、『効果』によって取り除くことで2枚ドローする。
この効果で、凛は2体のリードブローから1つずつオーバーレイ・ユニットを使うにゃ!」
凛が効果を説明する中で、2体のリードブローの拘束が外れていく。片方は最後の拘束が無くなったことで、真の力を取り戻す。
《BK 拘束番兵リードブロー》
ATK3000 → ATK3800 ORU 0
《BK 拘束番兵リードブロー》
ATK2200 → ATK3000 ORU 1
「言い忘れてたけど、リードブローは自分フィールド上の「BK」が破壊される時、オーバーレイ・ユニットを身代わりにすることができるにゃ」
「そんな効果まで持っているのか……!」
片方のリードブローには、まだ1つオーバーレイ・ユニットが残っている。使いきった方でさえ攻撃力は3800。
一度は確実に破壊を無効にし、高い攻撃力を維持する。非常に厄介なモンスターだと、アテムがカードを握る左手に思わず力を籠めてしまう。
「凛はカードを1枚伏せて、ターンエンド! 突破できるなら、してみるといいにゃ!」
「やってみせるぜ! 俺のターン、ドロー!」
僅かな焦りを抱きつつも、アテムはデッキからカードの剣を抜き放つ。突破口を切り開くことを信じて。
(くっ。これだけでは駄目だ。もったいないが使うしかない!)
「俺は手札から
3000という高い攻守を持つ『カイエントークン』だが、アテムはそれをコストとして除外した。
(攻守3000のトークンを除外か……。少しもったいないけど、星空さんのフィールドにリードブローがいる以上、やむを得ないわね)
「よし! 俺は手札から魔法カード《悪魔への貢物》を発動! フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を『墓地に送る』! 俺が対象に選ぶのは、オーバーレイ・ユニットを残しているリードブローだ!」
地面から伸びる異形の腕が、未だオーバーレイ・ユニットを残すリードブローの足を掴む。『破壊』への耐性を持つモンスターであるが、この魔法の前には為す術もなく、そのまま地面の中へと引きずり込まれてしまった。
「むぅ。『墓地に送る』のは『破壊』とは違うから、リードブローの効果が使えないにゃ……」
「それだけじゃないぜ! 対象モンスターを墓地に送ったことで、俺は手札からレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚する! 来い、《クィーンズ・ナイト》!」
《クィーンズ・ナイト》
☆4 光属性 戦士族 ATK1500
相手モンスターを贄として現れるのは、赤き鎧の女騎士。右手に持つ盾にはスペード、ハート、ダイヤ、クラブ。4つのスートが描かれている。
「更に俺は魔法カード《ギャラクシー・クィーンズ・ライト》を発動! レベル7のゴーズを対象として、《クィーンズ・ナイト》のレベルをゴーズと同じにする!」
《クィーンズ・ナイト》
☆4 → ☆7
(これでレベル7のモンスターが2体! 来るわね、アテム先輩の切り札!)
「条件は整った! 俺はレベル7の《冥府の使者ゴーズ》と《クィーンズ・ナイト》でオーバーレイ!」
2体のモンスターが、それぞれの属性を表す紫と黄の球体となって、オーバーレイ・ネットワークという名のフィールドを形成していく。
「幻想を彷徨いし魂よ、今こそ秘められし魔術を解き放て! エクシーズ召喚!」
――降臨せよ、ランク7! 《幻想の黒魔導師》!
《幻想の黒魔導師》
★7 闇属性 魔法使い族 ATK2500 ORU 2
漆黒の魔導師がフィールドに降り立ち、右手に持った杖を掲げる。アテムのエースモンスター《ブラック・マジシャン》と酷似した姿は、真姫に少しの安心感をもたらした。
「ここからが本番だ! 俺は《幻想の黒魔導師》のオーバーレイ・ユニットを1つ使うことで効果発動! デッキから魔法使い族の通常モンスターを特殊召喚する!
来い、我が最強の僕!」
――ブラック・マジシャン!!
《ブラック・マジシャン》
☆7 闇属性 魔法使い族 ATK2500
彼がデュエルをすれば必ず出てくることから、真姫たちの中ではこの黒衣の魔術師こそがアテムを象徴するモンスターであると認識している。
もっとも、毎回呼び出される方はどう思っているのかはわからないのだが。
「バトルだ! 俺は《ブラック・マジシャン》でリードブローを攻撃! そして、この攻撃宣言時に《幻想の黒魔導師》の効果発動!
相手フィールド上のカード1枚をゲームから除外する! 俺が選択するのは当然リードブローだ!」
待機している黒魔導師が呪文を唱えると、リードブローの背後に突如異空間が発生する。
オーバーレイ・ユニットを持たない……、いや、持っていたとしても『除外』という除去を防ぐ術はリードブローには無い。
「ただではやられないよ! 凛は罠カード《ピンポイント・ガード》を発動! 墓地からレベル4以下のモンスターを守備表示で特殊召喚するにゃ!
凛が特殊召喚するのは、グラスジョー!」
《BK グラスジョー》
☆4 炎属性 戦士族 DEF 0
再び姿を表す、緑の身体の巨漢。その守備力は0。
「グラスジョーは攻撃対象になった時に破壊されるけど、《ピンポイント・ガード》で特殊召喚されたモンスターは、このターンの間は戦闘でもカードの効果でも破壊されないにゃ!」
見えない壁で攻撃を防ぐグラスジョー。だが、あくまで守られるのはグラスジョーのみ。隣に立つリードブローは為す術もなく除外される。
「これ以上攻撃する意味は無い、か。俺はバトルを終了してメインフェイズ2へ移る。
そして魔法カード《馬の骨の対価》を発動するぜ。このカードは、自分フィールドに存在する効果を持たないモンスターを墓地に送ることで、カードを2枚ドローする。俺は《ブラック・マジシャン》を墓地に送ることで、新たに2枚のカードをドロー!」
エースとは、何も攻め手だけに用いられるわけではない。例えばアテムの操る《ブラック・マジシャン》の場合、その高い攻撃力を活かした攻撃、通常モンスターであることを活かした《馬の骨の対価》のコストなど、攻防共に変幻自在の活躍をすることができるのだ。
(よし! 《凡骨の意地》のように城之内くんに似てるからデッキに入れてみたが、やはりこれは中々にいいカードだぜ!)
「俺は
《クリバンデット》
☆3 闇属性 悪魔族 ATK1000
黄色い布を被り、左目に黒い眼帯を着けた小さく丸っこい悪魔。アテムが何度か使用する《クリボー》に似ているが、目つきは若干鋭い。
「更にエンドフェイズに移行して、《クリバンデット》の効果発動!
こいつは召喚したターンのエンドフェイズに生け贄に捧げることで、デッキの上からカードを5枚めくり、そのうち
…………俺は、《
《クリバンデット》は自ら墓地に潜り、1枚の魔法カードをアテムへと差し出す。カードを探し当てる様はその名が示す通り、まさに『
(せんぱいが手札に加えた《龍の鏡》は確かフィールド・墓地のモンスターを除外してドラゴン族融合モンスターを融合召喚するカード。
墓地には《ブラック・マジシャン》と《クィーンズ・ナイト》……、2体の通常モンスターを素材として要求する《始祖竜ワイアーム》を出すつもりかにゃ?)
「凛のターン、ドロー! 凛は《BK ヘッドギア》を召喚!」
《BK ヘッドギア》
☆4 炎属性 戦士族 ATK1000
現れたのは、頭部に防具を被ったボクサー。攻撃力はこれまで彼女が出したモンスターの中でも低い方だが、『
「ヘッドギアが召喚に成功した時、デッキから「BK」を1体墓地に送ることができるにゃ!」
デュエルモンスターズにおいて、『墓地は第2の手札』と言われることが多々ある。
何が引けるかわからないデッキと違い、墓地は何のカードがあるのか明白だからだ。そのため、デッキから特定のカードを墓地に送るという効果は非常に強力だとされている。
特に【BK】がどのようなデッキか、ある程度把握していた真姫は大きな警戒心を抱いた。
(ッ! まずいわね、星空さんの前のターンに使わなかったから手札にも墓地にも無かったのでしょうけど、ここで墓地に送るなら十中八九《BK カウンターブロー》!
あのモンスターは「BK」がバトルを行なうダメージステップに手札か墓地から除外して、そのモンスターの攻撃力をターン終了時まで1000ポイントアップする。
このままじゃ、アテム先輩が負ける……!)
もしやあの伏せカードでカウンターを仕掛けるか?
そう考える真姫だが、アテムは
その間に、凛のデッキからは真姫の予想通り《BK カウンターブロー》が墓地に送られてしまった。
「何もないなら、このままバトルにゃ! 凛はグラスジョーで幻想の黒魔導師に攻撃! 発動するカードはあるかにゃ?」
「……ないぜ」
「だったら、凛はダメージステップに入って、墓地のカウンターブローの効果発動! このカードを除外することで、グラスジョーの攻撃力を1000ポイントアップさせるにゃ!!」
《BK グラスジョー》
ATK2000 → ATK3000
カウンターブローの力を受け、より強大となったグラスジョーの拳が黒魔導師へと迫る。
この攻撃で破壊し、ヘッドギアの攻撃を通せば残りライフ1000ポイントのアテムは敗北する。
召喚成功時にも、攻撃宣言時にも、ダメージステップに入っても
「これで凛の――」
――
『え!?』
凛も真姫も、そう思っていた。
「……この
だが、その発動タイミングは攻撃宣言時でも、ダメージステップ開始時でもない」
(ッ! あった、ダメージステップ内の『ダメージ計算時』! このタイミングでのみ発動できるカードが!)
「速攻魔法発動、《禁じられた聖典》!!」
聖典から発せられる光が、フィールド上の全てのカードを包み込む。するとどうだろうか。カウンターブローの効果を受けたはずのリードブローの拳撃の威力が弱まっていくではないか。
「こいつは『ダメージ計算時』という特殊なタイミングでのみ発動できる速攻魔法。その効果により、ダメージステップ終了時まで《禁じられた聖典》以外の全てのカード効果は無効化され、互いのモンスターは『元々の攻撃力』で戦闘を行なわなければならない。
つまり、グラスジョーの攻撃力は元の2000に戻る!」
《BK グラスジョー》
ATK3000 → ATK2000
攻撃力を上昇させ、強力な一撃を見舞う「BK」モンスターだが、元々の攻撃力に戻せば怖くはない。
黒魔導師はグラスジョーの拳を杖で弾き飛ばすと、その隙を見逃さず、狙いを定めた。
「やれ、《幻想の黒魔導師》! グラスジョーを迎撃せよ!」
――
「くうっ……!」
凛 LP4000 → LP3500
これで、凛のフィールドに存在するモンスターは攻撃力1000のヘッドギアのみ。黒魔導師を倒すには至らない。
「凛はバトルフェイズを終了して、メインフェイズ2へ移行! 墓地のスパーを除外して、《炎の精霊 イフリート》を特殊召喚するにゃ!」
《炎の精霊 イフリート》
☆4 炎属性 炎族 ATK1700
全身を炎で纏った真紅の精霊。もしこれがソリッドビジョンで無ければ辺り一面燃えていただろう。
(これでレベル4のモンスターが2体。来るわね……!)
「凛は、レベル4のヘッドギアとイフリートでオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」
赤き球体となって飛び上がる2体のモンスター。これにより形成されるオーバーレイ・ネットワークから現れるのは、新たなる
「熱き魂を秘めし帝王! 紅蓮の拳で新たな世界を切り拓け! エクシーズ召喚!」
――ランク4! 《
《No.79 BK 新星のカイザー》
★4 炎属性 戦士族 ATK2300 ORU 2
燃え盛るような真紅の身体。背中に取り付けられた翼の如き装甲。両手に構えるカイザーナックル。
新たな「BK」エクシーズモンスターが、雄叫びを上げる。
「新星のカイザーの効果発動! 1ターンに1度、手札か墓地の「BK」1体をこのモンスターのオーバーレイ・ユニットにするにゃ! 凛はリードブローを選択!」
役目を終え、墓地に眠るリードブローの魂が、新星のカイザーへと力を与える。まるで、帝王に力を捧げる民草のように。
「新星のカイザーの攻撃力は、オーバーレイ・ユニットの数×100アップするにゃ! 今、新星のカイザーのオーバーレイ・ユニットは3つ! よって、攻撃力は300ポイントアップ!」
《No.79 BK 新星のカイザー》
ORU 2 → 3 ATK2300 → ATK2600
「凛は
(……妙ね。前のターンに《幻想の黒魔導師》の効果を使われたというのに、星空さんは警戒する素振りを見せていない。
あの
未だオーバーレイ・ユニットを残す《幻想の黒魔導師》に反撃され、顕在だというのに、凛は既に余裕の表情を取り戻している。
真姫の予想通り、何かしらの対抗手段があるということか。
「俺のターン、ドロー! このまま《幻想の黒魔導師》の効果発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで――」
「そうはさせないにゃ!
(ッ! しまった! 【BK】にはあのカウンター罠があった!)
「《エクシーズ・ブロック》は自分フィールドのオーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、モンスター効果の発動を無効にして破壊する! 凛は新星のカイザーからオーバーレイ・ユニットを1つ取り除くことで、《幻想の黒魔導師》の効果を無効にするにゃ!」
《No.79 BK 新星のカイザー》
ORU 3 → 2 ATK2600 → ATK2500
魔法陣の中から新たな仲間を呼びださんとする黒魔導師を、突如発生した光が包み込み消滅させた。
もしも凛のフィールドに存在するエクシーズモンスターがリードブローであったならば、攻撃力が3000に上昇していたことだろう。
「くっ! ならば今度はこいつで行くぜ! 魔法発動、《龍の鏡》! こいつは、フィールドか墓地のモンスターをゲームから除外することで、ドラゴン族の融合モンスターを融合召喚する!」
(ふふん。せんぱいの切り札は倒したにゃ。先輩に残されているのは、《龍の鏡》で《始祖竜ワイアーム》を出すことだけ!)
(でも、星空さんが出した新星のカイザーは、破壊された時に発動される効果がある。このまま持久戦に持ち込まれたら……!)
今、2人の頭の中でイメージされている《始祖竜ワイアーム》というのは、通常モンスター2体を素材とする融合モンスター。
《始祖竜ワイアーム》
☆9 闇属性 ドラゴン族 ATK2700 DEF2000
このモンスターは高めの攻撃力に加え、通常モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されず、モンスター効果を受け付けないという2つの強力な耐性を持つ。
とはいえ、耐性だけでデュエルの勝利することはできない。今、凛の手札は無く、フィールドに新星のカイザー以外のカードは存在しないが、もしも凛がワイアームを突破するカードを引き当てれば、それで終わりだ。
「疾風の速さで駆け抜ける騎士よ! 呪われし竜に跨りて、新たな力を生み出さん! 融合召喚!!」
それは、
だが、真姫は大事なことを忘れている。
――来い、レベル7! 《竜騎士ガイア》!!
この男は、常識に囚われる決闘者ではないことを。
《竜騎士ガイア》
☆7 風属性 ドラゴン族 ATK2600
今では2種類の派生形態が存在する《暗黒騎士ガイア》。その元祖であるモンスターが、呪われし竜と融合し、新たなガイアとなる。
馬から竜に乗り換えただけと言ってはいけない。
「《始祖竜ワイアーム》じゃなくて、《竜騎士ガイア》……!? でも、素材になったモンスターをいつの間に……!」
「星空、相手の墓地はちゃんと確認しておくものだぜ。素材モンスターを墓地の送るチャンスは2度あったことを忘れたか?」
「あっ……!」
アテムに言われて思い出す。《手札抹殺》と《クリバンデット》の2枚。なるほど、この2枚のカード効果により、既に墓地へ送られていたということか。
「でも、《竜騎士ガイア》には驚いたけど、それはプレイングミスだにゃ! ワイアームよりも攻撃力が低くて、効果も持たない融合モンスターなんて怖くも――」
――この俺がプレイングミス? とんだロマンチストだな!
「え?」
「デュエルモンスターズには、不要なカードは存在しない。例えそれが1枚では弱くても、組み合わせることで無限の可能性が生まれるのさ!」
呆気にとられる凛に構わず、アテムは1枚のカードを魔法・罠ゾーンへと差し入れた。
それは、5000枚を超える種類のカードの中でも知名度が低いであろうカードのうちの1つ。
「俺は手札から、永続魔法《
聞き慣れない魔法カード。だが、その絵には槍を突き出す《暗黒騎士ガイア》が描かれている。
ということは、《暗黒騎士ガイア》に関連したカードのためのカードだろうか。
「この永続魔法が存在する限り、《暗黒騎士ガイア》と《疾風の暗黒騎士ガイア》、そして《竜騎士ガイア》が守備モンスターを攻撃した時、貫通ダメージを与えるぜ」
「何を言っているの? 新星のカイザーは攻撃表示。貫通ダメージを与えることなんて…………ッ! まさか!」
アテムの言動を不審に思ったが、彼が今言ったばかりではないか。
相手の墓地は確認しておくべきだと。
「気付いたようだな。俺は墓地の《ADチェンジャー》のモンスター効果を発動! 自分のメインフェイズに、こいつを墓地から除外することでフィールド上のモンスター1体の表示形式を変更する! 俺が対象に選ぶのは、当然お前のモンスターだ!」
《ADチェンジャー》
☆1 光属性 戦士族 ATK100 DEF100
右手に『A』と書かれた赤い旗を、左手に『D』と書かれた青い旗を持つ戦士。
そのモンスターが右手を下げ、同時に左手を上げると、新星のカイザーが膝をつき、表示形式を守備表示へと変えてしまう。
『
《No.79 BK 新星のカイザー》
ATK2600 → DEF1600
「バトルだ! 《竜騎士ガイア》で、守備表示となった新星のカイザーを攻撃!」
――ダブル・ドラゴン・ランス!!
両手に構えた2つの赤い槍が、新星のカイザーを貫いた。《螺旋槍殺》の効果を受けているため、その衝撃はモンスターを貫き、プレイヤーにも影響をおよぼす。
「んにゃ!?」
凛 LP3500 → LP2500
「まだだ! 《螺旋槍殺》の効果を受けた《竜騎士ガイア》が相手に貫通ダメージを与えたことで、更なる効果が発動される!」
「でも、凛だって新星のカイザーが相手に破壊されたことで、もう1つの効果を発動! 破壊された時に持っていたオーバーレイ・ユニットの数まで、墓地からレベル4以下の「BK」を特殊召喚するにゃ!
来て、《BK グラスジョー》! 《BK シャドー》!」
《BK グラスジョー》
☆4 炎属性 戦士族 ATK2000
《BK シャドー》
☆4 炎属性 戦士族 ATK1800
フィールドに舞い戻る2体のボクサー。
「レベル4のモンスターを2体復活させたか……! だが、まだ俺にも《螺旋槍殺》の効果処理が残っている! その効果により、俺はデッキからカードを2枚ドローして、1枚捨てる!」
今、アテムの手札は0。よって、引いた2枚の中から1枚を墓地に捨てることになる。
先の指摘を受けたからか、凛はこの効果で墓地に送られたカードを、デュエルディスクの墓地確認機能を使ってすかさず確認した。
「ッ! 《超電磁タートル》……!」
《超電磁タートル》
☆4 光属性 機械族 ATK 0 DEF1800
墓地へ送られたこのカードは、相手のバトルフェイズ中に墓地から除外することで、そのターンのバトルフェイズを強制終了させる効果を持つ。
この効果はデュエル中に1度だけしか使えないものの、使えばほぼ確実に1ターンは凌ぐことができる。
「俺は
それなりに高い攻撃力を持つ《竜騎士ガイア》と、優秀な防御能力を持つ《超電磁タートル》。更には1枚の伏せカード。
簡単に突破されることは無いであろう布陣を見せつけられた凛。
彼女の額からは一筋の汗が流れていた。
(これは少し面倒なことになったにゃ。でも、凛のフィールドにはレベル4の「BK」が揃っているし、3体目のリードブローを出して様子を見る!)
「凛のターン、ドロー! …………ッ!」
手札0。
この状況で引き当てたカードを確認した凛は、表情を変える。それは、希望を手にした者にだけ許される歓喜の表情。
「凛が引いたのは――」
――《
「ッ! ここで、七皇の剣を引き当てたですって!?」
「何もないなら、このままメインフェイズに移行! このカードは、通常のドローで手札に加えた時、これを公開してメインフェイズ1の開始時に発動するにゃ!
その効果により、凛はエクストラデッキからオーバーハンドレッド・ナンバーズを特殊召喚する!」
――現れよ、ランク4! 《No.105 BK 流星のセスタス》!
《No.105 BK 流星のセスタス》
★4 炎属性 戦士族 ATK2500 ORU 0
流星を思わせるフォルムの新たな「BK」の名を持つエクシーズモンスターが、召喚条件を無視して特殊召喚される。
だが、召喚条件を無視した以上、そのオーバーレイ・ユニットは無い。
「攻撃力2500のモンスターをいきなり召喚したか。だが、オーバーレイ・ユニットを持たないエクシーズモンスターでどうやって俺のモンスターを――」
「甘いにゃ! 七皇の剣の効果には、まだ続きがある! それは特殊召喚した「No.」を素材として、ランクが1つ上の「
「魔法カード1枚で、エクシーズモンスターの進化形態を呼び出すだと!?」
ことりが使用するデッキ、【
呼び出されたばかりのセスタスは、即座に新たなモンスターに生まれ変わるために、その身を赤い光へと変え、飛び上がる。
「闇を飲み込む混沌を! 光を以て貫くにゃ! カオスエクシーズ・チェンジ!」
光は、鉄の扉の鍵穴を破壊すると、その内に秘められし
――現れよ、ランク5! 《CNo.105 BK 彗星のカエストス》!!
《CNo.105 BK 彗星のカエストス》
★5 炎属性 戦士族 ATK2800 ORU 1
また、通常はエクシーズモンスターの周りを回りながら浮遊するはずのオーバーレイ・ユニットが、今は結晶のような形となってカエストスの前に浮かんでいる。
「くっ! なんという
「驚くのは、まだはやいにゃ! カエストスの効果発動! カオス・オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、相手モンスターを破壊して、その攻撃力分のダメージを相手に与えるにゃ!」
カオス・オーバーレイ・ユニットの力で威力を増したカエストスの瞳が《竜騎士ガイア》へ照準を定める。
その拳を振り抜くと、莫大なエネルギーが一直線に突き進む。モンスター、そしてアテムをも貫くために。
「甘いぜ! 俺は永続罠《ディメンション・ゲート》発動! 自分フィールドのモンスターを除外する!」
異次元へと続く穴が《竜騎士ガイア》を飲み込み、姿を消した。対象を失ったカエストスの一撃は、そのままアテムの後ろへ通りすぎていった。
「これでもうカエストスの破壊効果は使えない。そして、俺の墓地には《超電磁タートル》がいる。
少なくともこのターンは攻撃を防げる!」
「……確かにせんぱいの言う通り、このターンで倒すことはできない。でも――」
――反撃の手段は少しでも奪う!
「ッ! そうか、奴のフィールドにはレベル4のモンスターが2体……!」
「その通り! 凛はレベル4のグラスジョーとシャドーでオーバーレイ!
2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
不敵な笑みを浮かべ、凛は1枚のエクシーズモンスターをエクストラデッキから取り出す。それは、狂気に染まった新たな王。
「猛りし魂に取り付く呪縛の鎧!」
――現れよ、ランク4! 《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》!!
《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》
★4 闇属性 悪魔族 ATK 0
「1回のデュエルで5回ものエクシーズ召喚……、だがここに来て攻撃力0だと?」
攻撃力が皆無のエクシーズモンスターに対し、若干の違和感を持つアテムだが、『覇王』を語るだけあって底知れない力を秘めているように感じられる。
このアテムの警戒を本物だと証明するかのように、凛は『覇王』に命令を下した。
「ラプソディ・イン・バーサークの効果発動! 1ターンに2度まで、オーバーレイ・ユニットを1つ使う度に相手の墓地のカードを1枚除外する! 除外するのは《超電磁タートル》……、そして《ギャラクシー・サイクロン》!」
「くっ! メインフェイズに《超電磁タートル》を除外されては、効果を使えない!」
バトルフェイズに自身を除外して戦闘を強制終了する強力な効果も、メインフェイズに除外されては効果を発動することもできない。《超電磁タートル》の弱点を的確に射抜かれたアテムは、思わず歯噛みする。
「そして、ラプソディ・イン・バーサークの更なる効果! このカードを自分フィールドのエクシーズモンスターに装備して、その攻撃力を1200ポイントアップさせるにゃ!
装備対象は当然、カエストス!!」
鎧へと姿を変えた『覇王』が、カエストスに纏わり付くと、狂気に染まったかのようにカエストスが持つ
《CNo.105 BK 彗星のカエストス》
ATK2800 → ATK4000
「そんな効果まで……! このために《ギャラクシー・サイクロン》を除外したのか!」
《ギャラクシー・サイクロン》は、手札・フィールドからの発動だけでなく、墓地でも効果を発揮できる通常魔法である。
普通に発動した場合の効果は、フィールドの
そして墓地で発動した場合の効果は、表側表示の魔法・罠の破壊。
1枚で2枚分の働きができる稀有な魔法カードとして、非常に有用という評価を受けている。
だが、発動前に除外されては何の意味もない。
「これでラプソディ・イン・バーサークを破壊される心配は無くなったにゃ! バトル!
バーサーク・カエストスで
「そうはさせないぜ! この瞬間、《ディメンション・ゲート》のもう1つの効果発動! 相手が
更に、《ディメンション・ゲート》は墓地に送られた時、このカードの効果で除外したモンスターを特殊召喚することができる!
戻って来い、《竜騎士ガイア》!」
《竜騎士ガイア》
☆7 風属性 ドラゴン族 DEF2100
槍を交差させ、ドラゴンの翼を畳み、防御耐性になるが、4000ポイントという莫大の攻撃力の前ではこの程度の防御は紙同然だろう。
「カエストスが相手モンスターを戦闘で破壊して墓地に送った時、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手に与える! 《竜騎士ガイア》の攻撃力は2600! つまり発生するダメージは1300!」
(まずい! この攻撃を受けたら残りライフ1000のアテム先輩は負ける!)
「まだだ! 俺は墓地の《ダメージ・ダイエット》を除外して、効果発動! このターンの間、俺が受ける効果ダメージは半分になる!」
淡い光の膜がアテムを包む。これにより、発生するダメージは650となる。
「それでも戦闘破壊は発生する! カエストス! その拳で《竜騎士ガイア》を貫くにゃ!」
――バーサーク・エクスプロージョン!!
狂気に染まり、禍々しき力を宿したカエストスの拳が、ドラゴンと騎士を纏めて貫いた。
「ぐぅっ……!!」
アテム LP1000 → LP350
守備表示のため戦闘ダメージは発生せず、効果ダメージも半分。にも関わらず、アテムを襲う衝撃は今までで最も大きい。これが
「凛はこれでターンエンド。今度こそ、せんぱいには墓地で発動するカードはない。次がせんぱいのラストターン!」
(……アテム先輩の残りライフは僅か350ポイント。手札は無く、フィールドには最早意味を成さなくなった《螺旋槍殺》のみ。
対する星空さんのフィールドには、ラプソディ・イン・バーサークの効果で攻撃力を4000まで上げたカエストスがいる。オーバーレイ・ユニットは持っていないけど、モンスターを破壊した瞬間に効果ダメージを与えられるから、守備表示で凌ぐことも不可能。
次のドローで全てが決まる。けど、先輩の体力はもう……)
真姫の視線の先に立っているアテム。3000ポイントもの
立っているのもやっとなのだろう、デュエルディスクを装着した左腕は垂れ下がり、右手で腹を押さえている。
残りのライフポイントなど関係なく、次のターンで勝たなければ気を失ってしまうに違いない。
(腹へったぜ……。今まで持ち堪えたが、もう限界だ)
だが、真姫の心配を余所に、アテムは全く別の苦しみを抱えていたのであった。
(そういや、今朝は白パカとデュエルしたっけ。昨日と同じく激しい戦いだったせいか、午前中居眠りしようとしていたな。
だが、腹の虫が鳴ったせいで眠れなかった。あんなことになるなら、穂乃果みたいに『ランチパック』を買っておくべきだったぜ)
実を言うと、アテムの腹はこのデュエル中にも何度か鳴っていたのだが、偶然にも爆発音に紛れて当人以外には聞こえていなかったのだ。
(俺の優雅なランチタイムのためにも、このターンで奴を倒す!)
「流石だぜ、星空。俺をここまで追い詰めるとはな」
「別に褒められても嬉しくないにゃ。凛はかよちんの仇を取るためにも、絶対にせんぱいに勝つ! さあ、最後のカードをドローして!」
「そうさせて貰うぜ。だが、これは俺の勝利のためのドローだ!」
鋭い眼光が、凛を射抜く。追い詰められているというのに、こんな表情が出来るのか。…………本当は空腹が限界なだけだということは勿論知らない。
「俺の――」
――ターンッ!!
渾身の力を籠めたドロー。そのカードは希望か、絶望か……。
「俺は魔法カード《天よりの宝札》を発動!」
「またドローソースを!?」
「このカードは、自分の手札・フィールドのカードを全て除外することで新たに2枚のカードをドローする。今、俺の手札は無く、フィールドには《螺旋槍殺》のみが存在する。よって、俺は《螺旋槍殺》を除外することで、カードを2枚ドローするぜ!」
かつては手札とフィールドの両方を除外するという発動条件だった《天よりの宝札》だが、今では除外する枚数は最低1枚でいい。
それでも使いにくいカードであることには変わりないはずだ。それを見事に使いこなすアテムの手腕は流石だと言うべきか。
「…………フッ」
(先輩が笑った……、どうやら引き当てたようね、この戦いに決着をつけるカードを)
――俺は、墓地の光属性モンスター《クィーンズ・ナイト》と、闇属性モンスター《クリバンデット》をゲームから除外する!
「光と闇!? その召喚条件は、まさか!?」
かつて、デュエルモンスターズを
現れるのはその双璧の1つ、『世界の始まり』の名を冠する剣士――。
「闇を斬り裂き、光とともに降臨せよ!」
――レベル8! 《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》!!
《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》
☆8 光属性 戦士族 ATK3000
右手に片刃の剣、左手に盾を持つ、蒼と金の鎧を纏う屈強な剣士。
凛が操る「
そう思わせる威厳・風格を醸し出していた。
「ここで開闢の使者!? でも、まだにゃ! そのモンスターは1ターンに1度、フィールド上のモンスターを除外することができるけど、発動したターンは攻撃できない!
次のターンで逆転のカードを――」
――そいつはどうかな?
「!?」
「《天よりの宝札》で手札に加えられたもう1枚のカード。これが俺に勝利をもたらす! 魔法カード《一騎加勢》を発動!!」
デュエルディスクに挿し込まれる1枚の魔法カード。それは、ただ一騎にて勝負を決するための最後の力。
「このカードは、自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を、発動ターンのみ1500ポイントアップさせる! カオス・ソルジャーの攻撃力は3000! よって――」
《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》
ATK3000 → ATK4500
「こ、攻撃力4500!?」
「カエストスの攻撃力を上回ったわ!」
アテムがよく知る『あの竜』に匹敵する、まさしく究極の力。
一気呵成とは、『ひといきで物事を成し遂げる』という意味を持つ言葉だが、この力を示すに相応しい言葉ではなかろうか。
「バトルだ! 行け、カオス・ソルジャー! カエストスを斬り裂け!」
アテムの宣言と同時、カオス・ソルジャーは左手に持つ盾を投げ捨て、カエストスへと突き進む。
防御手段を自ら失うという、一見無謀な行為。だが、これでいい。
――開闢双破斬!!
ただ
「ふにゃっ!?」
凛 LP2500 → LP2000
狂装覇王の力を得たカエストスが消滅した余波がフィールドを包み込み、辺りに煙が充満する。
それも一瞬のこと。カオス・ソルジャーが剣を横薙ぎに振るった瞬間に煙は霧散し、
「カオス・ソルジャーの効果発動! このカードが相手モンスターを破壊した場合、もう1度だけ続けて攻撃ができる!
これで終わりだ! プレイヤーへ
――
「そんにゃああああ!?」
凛 LP2000 → LP 0
振るわれる2度目の剣戟。
時空をも斬り裂く攻撃を直接受けた凛は、叫び声を上げながら崩れ落ちるのだった。
●今更だけど女子校で焼きそばパンって買えるのだろうか。
「星空さん、大丈夫?」
「うぅ、負けたにゃ~……」
あと一歩のところまで追い詰めたのに、逆転の末に敗北。
真姫もアテムとのデュエルでは似たような経験が何度もあった。そのため、目の前で膝をついて半泣きになっている凛には同情せざるを得なかった。
――反則に近い運命力を持っているのだから、仕方ないのかもしれない。
そんな慰めの言葉をかけようとは思わない。
だから、聞くことにした。なぜあれ程までにアテムを恨むのか。
「さっき先輩のせいで小泉さんが授業を休んだって言っていたけど、どういうことか教えてくれない?」
凛は語った。
今朝、飼育係である小泉花陽が飼育小屋の前を通りがかったところ、アテムがアルパカとデュエルをしていたのだと。
しかも、そのアルパカは人の言葉を話していたという。
元々メンタル面で若干の弱さを持つ花陽には、その理解不能な光景に大層ショックを受けたそうだ。
その結果、なんとか教室には戻れたものの、授業を受ける精神的余裕は残っておらず、早退してしまったということである。
「……ごめんなさい、星空さん」
「どうして西木野さんが謝るの?」
「だって、アテム先輩は一応『μ’s』の仲間だもの。身内がやらかしたのならメンバーが謝るのは当然でしょ?」
以前の自分なら言うこともなかったであろう言葉が、すんなりと発せられた。
これも、『μ’s』という仲間のおかげだろうか。
まあ、その仲間のせいでクラスメイトが欠席してしまっているのは大問題の気もするが。
「ところで、西木野さん。いつの間にか、せんぱいが何処かに行ったみたいなんだけど」
「え?」
言われて辺りを見回してみる。
確かに、アテムが何処にもいない。デュエルが終わって大した時間は経っていないはずなのに。
「
『えっ』
顔を上げると、当のアテムは焼きそばパンを頬張りながら立っていた。両手には、他に購入したのであろうパンの袋が握られている。
どうやら、デュエルが終わった瞬間に購買まで行ってきたようだ。
「とりあえず、その焼きそばパンを飲み込んでから喋りなさいよ」
凛はポカンと口を開けて固まっている。
やはり、慣れていない人にとっては彼の突飛な行動に付いていくことは困難なのだろう。
「んぐっ……悪いな。あまりにも腹が減っていたから、買ってすぐに食べ始めてしまったぜ」
「普通に行儀悪いから、それ」
「次からは気をつけるぜ。
そうだ、星空の分も買っておいたぜ。俺の奢りだ」
そう言ってアテムが凛に差し出したのは、焼きそばパンとメロンパン。両手に握っていたパンの袋のうちの2つだ。
「いいの?」
空腹が限界に近かったためか、言われるがままに受け取るが、凛は疑問の言葉を投げかけた。
無理もない。たった今争ったばかりの相手に奢るなど、普通は考えられない。
「ああ。確かにお前は俺の優雅なランチタイムの邪魔をした。だが、星空のデュエルの腕は素晴らしかった。このパンはその礼とでも思ってくれ」
「は、はぁ……」
「じゃあ俺は教室に戻るぜ。またな、西木野! 星空!」
一方的に捲し立て、アテムは走り去る。後に残されたのは、どうしていいのかわからないと言いたげな凛と、ほんの少しのため息をつく真姫だけだ。
「星空さん。アテム先輩の自由奔放なところは気にし過ぎたらダメよ。そんなことよりも、そのパン早く食べたほうがいいわ。昼休みの残り時間も少ないしね」
「う、うん」
アテムの奇行に、大した反応もしない天才・同級生の姿を見て、
――自分もいつかこれに慣れる日が来てしまうのだろうか。
そんな不安を抱かずにはいられない、一般少女・星空凛であった。
余談だが、昼休みが終わる直前。とある女子生徒の叫びと男子生徒の絶叫、及び吹き飛ぶ音が校内に轟いたのだとか。
「2749mね」
(絶対に慣れたくないにゃー)
●オマケ
アテムと凛がデュエルをしている頃、教室では。
「これをXに代入して…………あれ? 海未ちゃんどうしたの?」
「私の役割が奪われている、そんな気がします」
「ああ! それって解説役?」
危機感を抱く海未。そして、
「デビル・イーグルのために《
(事故ると思うよ、南さん)
デッキ構築に勤しむことりの姿があった。
というわけで、今回は繋ぎの話。凛が初めて長く喋りました。
独特な口調のため、上手く再現できたかどうかわかりませんが、
おかしいところがあればバンバン指摘していただければ幸いです。
アテムさんのデッキは本当にカード消費が激しいですね。
《幻想の黒魔導師》や《永遠の魂》のようなサポートもありますが、
ご都合ドローソースを入れないとすぐに手札がなくなってしまいます。
やっぱり最近のデッキはインフレが凄いなぁ。
そして、凛は今回【BK】を使いましたが、本来の彼女のデッキではありません。
次回、茶番フェイズを挟んでタッグデュエルを行なうため、そこでお披露目となります。
今後ともよろしくお願いします。