《天帝アイテール》、《天帝従騎イデア》、《汎神の帝王》、どれも強力な効果でちょっと困惑しています。
また真姫ちゃんにデュエルさせたくなるじゃないですかー。
セレナをリリースしてアイテール召喚とかやりたいなぁ。
それはさておき、長きに渡るデュエルも後半戦。
今回はBGMとして、遊戯王DMより『友情のデュエル』を流しながら執筆していました。
デュエルを通してキャラが変わりつつある少女たちの活躍を是非ご覧ください。
効果説明+心理フェイズを書くとやっぱり文字数多くなりますね。
●アテム&真姫VS花陽&凛 ③
(かよちん、強くなったね)
星空凛は驚いていた。
何に対してと聞かれれば、それは幼なじみである小泉花陽の変化に他ならない。
可憐な容姿と、綺麗な声。
凛にとって花陽は、誰よりも可愛らしい女の娘。
しかし、彼女は常日頃から何事も一歩引いた行動を取ることが多かった。
小学生時代、クラスメイトと『将来、何になりたいか』という話をした時も、『アイドルになりたい』という夢を自ら語ろうとはしなかった。人気アイドルの歌や踊りは全て覚えているほどアイドルが大好きなはずなのに。
デュエルでもそうだ。
花陽は大型モンスターを次々と芋づる式に展開する【植物族】を操り、凛よりも高い実力を持っているはずだった。
だから試しに近所のショップで開催されている大会に出てみてはどうかと誘ったことがあるのだが、『知らない人と戦うのは怖い』『あっさり負けたらどうしよう』と、拒み続けていた。
アイドルも、デュエルも。
花陽が勇気を出して一歩を踏み出せば、なんだってできる。
幼い頃から一緒に過ごして来た凛が言うのだから間違いない。
そんな彼女が今、自分とタッグを組んでデュエルをしている。
しかも相手の片方は、奇行を繰り返すヒトデ頭の不審者、アテム。今までの花陽なら彼とデュエルをするなんて、絶対にありえない。
だが、彼女はデュエルが進めば進むほど大きな声を出し、いつも通りにデュエルを展開している。いや、少し押され気味ではあるものの、いつも以上の実力を出しているのではないだろうか。
(凛だって、負けてられないよね)
訪れる3巡目、第9ターン。
アテムたちのフィールドには攻撃力2800の最上級モンスター《冥帝エレボス》がフィールド魔法《真帝王領域》に鎮座している。
魔法・罠ゾーンにも、1ターンに1度モンスターが破壊されればカードを1枚ドローする永続魔法《補給部隊》と、墓地の「帝王」カード2枚をデッキに1枚ドローする永続罠《真源の帝王》。更に正体不明の
一方、自分たちのフィールドには3つのカウンターが乗せられたフィールド魔法《
(凛の手札も、モンスターが1枚だけ……)
カードの枚数で多くの差がつけられ、諦めてしまってもおかしくないこの状況。
しかし、花陽が変わろうとしている今、自分が諦めるわけにはいかない。
何より自分たちのフィールドには2人の絆を象徴する《閃珖竜 スターダスト》がいるのだ。
「凛のターン、ドローッ!!」
たとえ相手が誰であろうと、必ず勝利を掴んでみせる。
●金色の星
(星空さんのあの表情、キーカードを引いたわね……!)
デッキからカードを引き、それを手にした凛の口元が緩んだ。あれは、求めるカードを引き当てた時のもの。
(でも、私の伏せカードのうち1枚は、《神風のバリア -エア・フォース》。
相手が攻撃してきた時、相手の攻撃表示モンスター全てを手札に戻す罠カード。
『破壊』ではなく『手札に戻す』効果なら、スターダストの効果でカウンターすることはできない。何を出そうと無駄よ!)
「凛は魔法カード《思い出のブランコ》を発動! 墓地から通常モンスター1体を特殊召喚する! 凛が復活させるのは、チューナーモンスター《ギャラクシー・サーペント》!
更に《チューニング・サポーター》を通常召喚!」
《ギャラクシー・サーペント》(チューナー)
☆2 光属性 ドラゴン族 ATK1000
《チューニング・サポーター》
☆1 光属性 機械族 ATK100
凛が前のターンで発動した《調和の宝札》により墓地に送られていたモンスター、星海を彷徨うと言われる、神秘的な銀河の蛇がフィールドへと舞い戻る。
そしてもう1体は、鍋を被った小さな人型の機械。隣に浮かぶ蛇をチラチラと見ていることから、『チューニングをサポートする者』という名の通り、早くチューニングして欲しくてたまらないようだった。
「ここで、凛は《チューニング・サポーター》の効果を適用するよ! このカードはシンクロ召喚の素材とする時、レベルを2として扱える!」
《チューニング・サポーター》
☆1 → ☆2
「つまり、レベル4のシンクロモンスターを召喚できるということね」
「その通りにゃ! 凛はレベル2の《チューニング・サポーター》に、同じくレベル2の《ギャラクシー・サーペント》をチューニング!!」
2つの光輪へと姿を変えた銀河の蛇の間を、《チューニング・サポーター》が通過する。やがて2つの光球へと変わると、光差す道を作り出す。
「集いし波動の粒子よ! 凛たちを新たな地平へ
――レベル4! シンクロチューナー《波動竜フォノン・ドラゴン》!!
《波動竜フォノン・ドラゴン》(チューナー)
☆4 闇属性 ドラゴン族 ATK1900
フォノンとは、音響粒子を意味する単語。そして、チューナーはモンスターを調律し新たな姿へと昇華させる存在だ。
全身から音波を発生させ続けるその竜は、レベルも身体も小さいものの、大きな可能性を感じさせるには十分であった。
「チューナーとして扱うシンクロモンスターだと!? 西木野、あれは一体……!?」
「いや、私も初めて見るわ。シンクロチューナーなんて初耳よ!」
真姫でさえ、初めて見るモンスター。シンクロモンスターでありながら、チューナーとしての特性も併せ持つ未知の存在に、2人は驚きを隠せない。
「シンクロ召喚に成功したことで、《チューニング・サポーター》と《波動竜フォノン・ドラゴン》の効果発動! まずはフォノン・ドラゴンの効果処理!
このカードはシンクロ召喚に成功した時、レベルを1~3の任意の数値にできる! これにより、フォノン・ドラゴンのレベルを2に変更!
そして《チューニング・サポーター》の効果で1枚ドロー!」
《波動竜フォノン・ドラゴン》
☆4 → ☆2
「手札補充に加えてレベルの変更……。わざわざレベルを変更したということは、まさかシンクロモンスター同士で!?」
「そのまさかにゃ! 今から見せるのは、シンクロを超えたシンクロ!
凛はレベル8のシンクロモンスター《閃珖竜 スターダスト》に、レベル2となったシンクロチューナー《波動竜フォノン・ドラゴン》をチューニング!!」
宣言と同時、辺り一面に吹き荒れる烈風。
気を抜けば吹き飛ばされてしまいそうな嵐の中、中心部に立つ凛と花陽は何事もないように立ち続けている。いや、それだけではない。
凛のデュエルディスク……、正確にはエクストラデッキへと風が吸収されていくではないか。
「星流れる痕に紡がれる全ての想い! 絆と共にこの世界を満たさん!」
――アクセルシンクロ!!
やがて、光が爆発する。内より現れるのは真の閃珖、
――光来せよ、レベル10! 《真閃珖竜 スターダスト・クロニクル》!!
◆
海未たち3人の前に姿を見せた、光の翼を纏いし
シンクロモンスター同士でシンクロ召喚を行なうという、前代未聞の召喚には当然誰もが驚いた。
だが、それ以上に彼女たちを驚かせたのは――
「……気のせいでしょうか。一瞬だけですが、星空さんが消えたように見えたのは」
「多分、気のせいじゃないと思う。私にもそう見えたもん」
そう、シンクロ召喚特有の『光の道』が現れ、スターダスト・クロニクルが出現する間のほんの一瞬だけ。凛の姿が消えたように見えたのだ。
本当に消えたわけではないはずだ。おそらくアレはコップに沈めたコインのように『光の屈折』が起きただけのはず。
しかし、それでも『光の屈折』を起こすほどの召喚エネルギーを凛は発生させたことになる。
「…………そんな、どうして星空さんがアクセルシンクロを?」
信じられない、とでも言いたげなことりの表情。
確かに、凛が見せたシンクロ召喚には信じられないほどの衝撃を受けた。
だが、ことりの表情・口調は、海未や穂乃果のものとは何かが違うように感じられた。
「ことり、どうかしたのですか?」
「え? いや、凄くかっこいいシンクロモンスターだなって驚いちゃっただけだよっ。ほら、そんなことより星空さんがバトルフェイズに移るみたいだよ?」
やはり、様子がおかしい。とはいえ、今はデュエル中。目を離しすぎるのも良くないだろう。
ほんの少しの疑念を抱きながらも、海未は視線を戻した。
◆
「
《真閃珖竜 スターダスト・クロニクル》
☆10 光属性 ドラゴン族 ATK3000
混沌に包まれた空間、そして仄暗い帝王の領域も、スターダスト・クロニクルが放つ圧倒的な輝きの前では全てが照らされていた。
始まりの帝王である《冥帝エレボス》でさえ、その身を震わせている。きっと、それは攻撃力が僅かに及ばないという理由だけではないだろう。
「さあ、バトルにゃ! 凛はスターダスト・クロニクルで、エレボスを攻撃!」
――
金色の光が巨大な奔流となり、エレボスへと突き進む。2体の攻撃力の差は200ポイント。巨躯の帝王であっても、僅かに及ばない。
また、凛たちのフィールドにはスターダスト・クロニクルだけでなく、攻撃力1800の《森羅の姫芽宮》も残されている。
残りのライフポイントが1900である以上、この攻撃は通すわけにはいかない。
「罠カード《神風のバリア -エア・フォース-》を発動! 相手が攻撃してきた時、相手の攻撃表示モンスター全てを手札に戻す!」
《聖なるバリア -ミラーフォース-》によく似た名前と効果を持つカードが、スターダスト・クロニクルの放った一撃を吸い込み、竜巻の如く巻き上げる。
やがて上空へと打ち上げられた光は、凛たちのフィールドへと降り注ぐ。
「さっすが真姫ちゃん! シンクロモンスターもエクシーズモンスターも、手札じゃなくてエクストラデッキに戻る!」
「エクストラデッキに戻してしまえば、再召喚まで時間がかかります! これなら――」
戦闘とカード効果への破壊耐性を持っていた《閃珖竜 スターダスト》の進化形態であろうと、破壊以外の除去の前では無力のはず。
彼女たちのそんな希望は――
――この瞬間、スターダスト・クロニクルの効果発動!
『ッ!?』
立ちはだかる《閃珖竜 スターダスト》によって掻き消された。
「これが、スターダスト・クロニクルの効果『
スターダスト・クロニクルは墓地からシンクロモンスターを除外することで、ターンの終わりまで他のカード効果を受け付けない!!」
「なっ!? あらゆるカード効果への完全耐性ですって!?」
《混沌空間》
カオスカウンター 3→4
3000もの攻撃力を持つだけでなく、『除外』や『エクストラデッキに戻す』カード効果まで受け付けないとは、まさに『無敵』と言っても過言ではない。
これが、シンクロを超えた先にあるシンクロが示す力ということか。
「でも、カード効果を受け付けないのはスターダスト・クロニクルだけ! 《森羅の姫芽宮》には退場してもらうわ!」
あくまで、カード効果を受け付けないのは《閃珖竜 スターダスト》と違い、発動した自身のみ。
守りきれなかった姫は、花陽に手渡されながら凛のエクストラデッキへと戻っていった。
だが、エア・フォースの効果を受けなかったスターダスト・クロニクルの攻撃は止まらない。
「姫芽宮がバウンスされたことで、このターンで西木野さんたちのライフを削り切ることはできなくなったけど、攻撃が無効になったわけじゃない! もう1度攻撃だよ、スターダスト・クロニクル!」
帝王としての
抵抗も虚しく、帝王は
●聖なる混沌
「エレボスが……! でも、モンスターが破壊されたことで《補給部隊》の効果を発動! カードを1枚ドローするわ!」
「ふふん! スターダスト・クロニクルを召喚した凛に怖いものなんて何もないにゃ! カードを1枚伏せてターン終了だよ!」
凛がそう言いたくなるのも当然か。エレボスが消えた今、アテムたちのフィールドにモンスターは存在しない。
リリース、そして各種召喚法を駆使しなければ攻撃力3000のモンスターを戦闘で破壊することは困難であることくらい誰にでも理解できる。
また、モンスターを除去するカードを引き当てたとしても、スターダスト・クロニクルには墓地のドラゴン族シンクロモンスターを除外することであらゆるカード効果から自身を守る能力『
凛たちの墓地には《波動竜フォノン・ドラゴン》がいるため、あと1ターンは効果を発動可能。
アテムの攻め手を失わせ、花陽が勝負を決める。そのような状態になっても不思議ではなかった。
「シンクロモンスター同士のシンクロ召喚により、スターダストを進化させるとは流石だな、星空。だが、勝利を確信するのはまだ早いんじゃないのか?」
それでも、彼はデュエルを諦めない。どのような窮地に陥ったとしても、デッキにカードが残されている限り戦い続ける。それが、真の決闘者のあるべき姿。
「俺のターン…………」
――ドローッ!!
離れた場所に立つ花陽や凛のスカートが捲れんばかりの風を起こす、アテムのドロー。ただカードを引いただけであるにも関わらず、なんという威圧感であろうか。
「…………引いたぜ、スターダスト・クロニクルを倒すためのカードを!」
「て、手札1枚で!? でも、スターダスト・クロニクルは墓地のドラゴン族シンクロモンスターを除外すれば、あらゆるカード効果を受けない! 《ブラック・ホール》のようなモンスター除去のカードは無駄だよ!」
凛の言う通り、効果を受けないモンスターをたった1枚のカードで倒すことなど、ほぼ不可能に等しい。
だが、アテムは1人で戦っているわけではない。今は頼もしい仲間とともに戦っているのだ。
彼女が残してくれたカードが、勝利への道を切り拓く。
「いいや、無駄じゃないさ。このカードを使うための条件を満たすことは、俺1人の力では難しい。
だが、俺たちのフィールドには西木野が残してくれた
アテムがデュエルディスクのパネルをタッチして、真姫のフィールドに伏せられていたカードを発動する。アテムへと託された希望のカード、その名は――
「永続罠発動、《強化蘇生》! 俺たちの墓地からレベル4以下のモンスター1体を、攻撃力と守備力を100ポイント、レベルを1つ上げて特殊召喚する!」
「センパイたちの墓地にいる、レベル4以下のモンスター……。なるほど、《ワタポン》を呼び戻す気ですね」
花陽が発動した《リビングデッドの呼び声》と似ているが、復活できるモンスターが『レベル4以下』と限定されている永続罠。
このデュエル中でアテムたちのフィールドに召喚された下級モンスターは《ワタポン》のみ。レベル1ゆえに強力なシンクロ・エクシーズモンスターに繋げにくいことから上級モンスターのアドバンス召喚を行なうつもりなのだろう。
花陽は、そう予想を立てる。だが――
「ううん、違うよかよちん。せんぱいたちが蘇生させるのは《ワタポン》じゃない」
「星空は気付いたようだな。そうだ、俺が特殊召喚するのは――」
――《幻奏の歌姫ソプラノ》!!
《幻奏の歌姫ソプラノ》
☆4 → ☆5 光属性 天使族 ATK1400 → ATK1500
「嘘!? そんなモンスター、いつの間に!?」
澄んだ歌声を奏でる歌姫が、このデュエルで初めてフィールドへと現れる。このデュエル中で召喚されていないはずのモンスターの復活に、花陽は当然驚いた。
「ふっ。覚えていないのか? 西木野が最初のターンに発動したカードを」
「最初のターン…………あっ!」
言われて、花陽は思い出す。真姫が使ったカードの中に《幻奏の歌姫ソプラノ》を墓地に送る方法があったことを。
――魔法カード《ブラック・コア》
手札1枚をコストとして要求するあのカードで、墓地に送っていたということか。
それだけではない。真姫はその次のターンでも何らかのカードを墓地に送る機会があったはずだ。
「小泉が思い出したところで、俺はソプラノの効果を発動だ。こいつは特殊召喚に成功した時、墓地に眠る「幻奏」モンスターを手札に戻す。
俺が選択するのは、《幻奏の音女ソナタ》!」
真姫は《手札抹殺》の効果で3枚のカードを手札から墓地に送っていた。あれはその中の1枚。
「ソナタは自分フィールドに「幻奏」モンスターがいる時、手札から特殊召喚できる! 来い、ソナタ!」
《幻奏の音女ソナタ》
☆3 光属性 天使族 ATK1200
アテムのフィールドに並ぶ、2人の女性。彼の最初のターンに《ブラック・マジシャン・ガール》が召喚された時は、『男性が女性モンスターを嬉々として出すなんて……』という感想を抱いたものだが今は違う。
信頼できる仲間とともに勝利を掴むために協力し合っていることが感じ取れるからこそ、そんな小さなことを考えてはいられないのだ。
「特殊召喚されたソナタがフィールドに存在する限り、俺たちの天使族モンスターの攻撃力と守備力は500ポイントアップする」
《幻奏の歌姫ソプラノ》
ATK1500 → ATK2000
《幻奏の音女ソナタ》
ATK1200 → ATK1700
ソナタが歌声を響かせると、彼らのフィールドに集う音女たちの身体が光り輝き、力を増していく。どちらも並の下級モンスターと渡り合うのに十分な数値だ。
「でも、その程度の攻撃力じゃ凛のスターダスト・クロニクルは倒せないよ! それに2体のレベルは違うからエクシーズ召喚にも繋げられない!」
「確かに、この2体ではお前のモンスターを倒すことはできない。
だが、俺はまだ通常召喚を行なっていない!」
アテムが残る3枚の手札から1枚のカードを抜き出した瞬間、ソプラノとソナタは同時に姿を消していく。新たなモンスターを並べてシンクロ召喚やエクシーズ召喚に繋ぐわけではない。
そう、このデュエル中でアテムと真姫が何度も行なった召喚。
「行くぜ! 俺は、《幻奏の歌姫ソプラノ》と《幻奏の音女ソナタ》を生け贄に捧げる!」
仄暗い混沌に染まった異空間を斬り裂き、1人の戦士が現れる。その輝きは金色の光を放つ竜と同等、あるいはそれ以上か。
「天使の歌声、流れる旋律! 2つの魂が、聖なる力を得た究極の超戦士を呼び醒ます!」
――レベル8! 《聖戦士カオス・ソルジャー》降臨!!
《聖戦士カオス・ソルジャー》
☆8 光属性 戦士族 ATK3000
純白に染まる鎧を纏った超戦士。スターダスト・クロニクルと相対することで、混沌渦巻くフィールドでさえ光に照らされた。
2体が創りだした空間は、
「《聖戦士カオス・ソルジャー》が召喚に成功した瞬間、効果発動! ゲームから除外されている俺たちの光属性か闇属性モンスター1体を墓地に戻し、相手フィールドのカード1枚を除外する!」
「カードの種別を問わない除外ってことは……!」
凛の表情が、凍りつく。これが『モンスターを除外する効果』であるならば、スターダスト・クロニクルの効果で掻き消すことができた。だが、種別を問わないのであれば、アテムが狙うカードは
「俺は最初のターンに除外した《覚醒の暗黒騎士ガイア》を墓地に戻し、お前たちのフィールド魔法《混沌空間》を除外する!」
多くの力を蓄えていた混沌に包まれた空間も、聖戦士が放つ光によって消滅する。後に残るのは、聖なる金色の光に包まれた《真帝王領域》。
◆
「まったく、アテムさんも相変わらず引きが強いですね」
スターダスト・クロニクルと相対する聖戦士の姿に感心しつつ、海未は呟く。
「聖戦士の効果により除外された《混沌空間》は、「カオスカウンター」を4つ以上消費することでその数と同じレベルを持つ、除外されたモンスターを特殊召喚できます。おそらく、星空さんはスターダスト・クロニクルとのコンボにより、《波動竜フォノン・ドラゴン》を何度も特殊召喚するつもりだったのでしょう」
《波動竜フォノン・ドラゴン》は、シンクロモンスターでありながらチューナーでもある。なるほど、スターダスト・クロニクルの効果と組み合わせれば、フィールド・墓地・除外を行き来しながら何度もシンクロ召喚に繋げられる。
「でも、それだけじゃない」
海未の言葉に続くのは、やはりというべきか、ことりだ。
「《混沌空間》は相手によって『墓地』に送られれば、乗っていた「カオスカウンター」の数以下のレベルを持つ光属性か闇属性のモンスターをデッキから手札に加える効果もある。
それも、除外されれば効果を使用することはできない」
凛のコンボは潰えた。
だが、アテムたちのコンボはまだ続く。
◆
「バトルフェイズ! 行け、カオス・ソルジャー! スターダスト・クロニクルに攻撃!」
「迎え撃って! スターダスト・クロニクル!」
――
上空へと飛び上がり、聖戦士は剣を振り上げる。対するスターダスト・クロニクルも、負けじと金色の奔流を撃ち出した。2体の元々の攻撃力はどちらも3000。このまま戦闘を行なえば相打ちにより両者は姿を消す。
しかし、《聖戦士カオス・ソルジャー》は『アドバンス召喚』により召喚されたモンスター。
「ダメージ計算時、フィールド魔法《真帝王領域》の効果発動! 生け贄召喚したモンスターが相手モンスターに攻撃する時、ダメージ計算時の間のみ攻撃力が800ポイントアップする!」
「帝王」の領域といえど、効果を受けるのは何も「帝王」だけではない。
《聖戦士カオス・ソルジャー》
ATK3000 → ATK3800
「こ、攻撃力3800!?」
「聖戦士の一撃! その身に受けるがいい!」
――セイント・ブレード!!
『きゃあっ!?』
花陽&凛 LP3800 → LP3000
カード効果で倒せないのならば、戦闘にて突破する。攻撃力3000という大型モンスターを前にしては難しいものであったが、どうだろうか。
金色の竜が、聖戦士が繰り出す斬撃にて斬り伏せられているではないか。
その衝撃は思いの外大きく、フィールド全体を覆い尽くすほどの煙幕を作り出した。
「スターダスト・クロニクルを戦闘によって破壊したことで、《聖戦士カオス・ソルジャー》の効果発動!
こいつは相手モンスターを戦闘破壊した時、俺たちの墓地に眠るレベル7以下の戦士族モンスターを手札に戻す! 俺が選択するのは《覚醒の暗黒騎士ガイア》だ!」
煙幕に包まれているものの、アテムの声は向こう側の2人にも聞こえていることだろう。
やがてフィールドを包む煙は晴れ、そこには悠然と佇む聖戦士の姿だけが――
「な、なんだと!?」
――あるはずだった。
「凛は、スターダスト・クロニクルの更なる効果を発動していたよ」
フィールドに存在するモンスターは、聖戦士だけではない。
「スターダスト・クロニクルが相手によって破壊された場合、除外されているドラゴン族シンクロモンスターを特殊召喚できる」
純白の閃珖を放つ美しき竜が、3度目の復活を果たしていた。
「その効果で、凛はかよちんに希望を繋ぐ!」
《閃珖竜 スターダスト》
☆8 光属性 ドラゴン族 ATK2500
「凛ちゃん……」
「……カード効果で倒せず、戦闘で破壊しても後続を残して小泉に希望を繋ぐ、か。流石だな。だが俺も西木野に持てる力の全てを託す!
俺はバトルフェイズを終了し、《混沌の黒魔術師》の効果で手札に加えた《七星の宝刀》を発動!
たった今《聖戦士カオス・ソルジャー》の効果で手札に戻した《覚醒の暗黒騎士ガイア》を再びゲームから除外! 新たに2枚のカードをドローする!」
墓地を介して手札に戻った暗黒騎士が、再びコストとしてゲームから除外される。戦術としては間違っていないだろうが、召喚すらされずに2度も除外されるとは少々気の毒である。
「更に俺は、墓地から
「それも、西木野さんが《手札抹殺》で墓地に送っていたカード……!」
アテムは再び真姫からカードを受け取ると、デッキに入れてシャッフルし、新たなカードを手札に加えた。これで彼のデッキにはタッグパートナーのカードが3枚も入っていることになる。
「これで魔法・罠ゾーンのスペースが1つ空いた!
カードを3枚伏せてエンドフェイズへ移行。この瞬間、《シャッフル・リボーン》のドロー効果を使用したデメリットとして、手札1枚を除外する。
俺はこれでターンエンド!」
●勇気を出して
除外されたカードは、レベル4のモンスター《超電磁タートル》。
相手のバトルフェイズに墓地から除外することで、バトルを強制終了させる強力なカードである。
しかし、アテムはそれを迷いなく除外した。確かにもう通常召喚権を使用しているため、選択肢としては間違っていない。それでも、あえてこの選択をしたということは、
そんな彼の姿を見て、花陽は思う。
(きっと、センパイは西木野さんに全てを託したんだ。凛ちゃんが私にスターダストと
凛が伏せたカード、それは――
《闇の誘惑》
カードを2枚ドローし、手札の闇属性モンスターを除外する手札交換のカードであり、闇属性モンスターを使用するデッキであればこれ以上ないほどに優秀なサポートカード。
だが、ドローした後に闇属性モンスターが手札に存在しない場合、残る手札を全て墓地へ送らなければならないという強烈なデメリットも内包している。
こうしたデメリットを起こさないために、《闇の誘惑》は手札に闇属性モンスターを持った状態で発動することが基本となっている。
(でも、私の手札は0。次のドローで闇属性モンスターを引かなきゃいけない……)
せっかく託してくれた2枚のカード。それを、自分のせいで台無しにしてしまったらどうしよう。
『やっぱり引けませんでした』なんてことになるくらいなら、自分なんかがスクールアイドルになれるはずがないと考えているように、最初から諦めてしまいたい。
――今までなら、そう思っていた。
(どうしてだろう。私、凄くワクワクしてる……!)
アテムと真姫は、こちらが大型モンスターを何度繰り出しても勝負を諦めず、互いのカードを活用しあうことで何度も戦況を覆してみせた。
彼らはきっと、心の底から互いを信じているのだろう。だからこそ、凛がやっとの思いで召喚したアクセルシンクロモンスターも打ち破ることができたのだろう。
今でも怖い。出会って1ヶ月ほどしか経っていないはずなのに抜群のコンビネーションを見せる2人に勝てるのだろうかと。
だがそれ以上に、このかつてない高揚感を目の前の2人にぶつけ、自分を信じてくれる幼なじみのために勝利を掴みたいという想いが強く
「私のターン、ドローッ!!」
これまで生きてきた中で1番の大きさと言ってもいい、自分でも驚くほどの声量。凛を含めて全員が目を丸くしているが、今の花陽にとっては些細なこと。
(ドローカードは……)
《スキル・プリズナー》
(ッ! 闇属性モンスターじゃなくて、罠カード! …………でも!)
「私はカードを1枚伏せて、凛ちゃんが残してくれた
このカードは、デッキから新たに2枚のカードをドローして、手札から闇属性モンスター1体を除外します。
ただし、手札に闇属性モンスターが存在しない場合、手札を全て墓地へ送らなければいけません!」
「手札0で《闇の誘惑》を発動ですって!?」
「かよちん、まさか……!」
ここに来て、成功確率が低いギャンブル。もしも闇属性モンスターを引ければカード1枚分のアドバンテージを得られるが。引けなければ大損だ。内気な花陽からは想像もできない大胆な行動には真姫はもちろん、長年の付き合いがある凛をも驚かせた。
(これで闇属性モンスターを引けなかったら私たちは負ける。
でも、応えて私のデッキ! 信じてくれた凛ちゃんのためにも、今出せる全力をセンパイと西木野さんにぶつけるためにも!)
「……ドローッ!」
デュエルの行方を左右する、まさしく
希望か、絶望か。
敵味方関係なく全員が固唾を呑んで見守る中、花陽は――
「私は、闇属性モンスター《キラー・トマト》を除外します!」
希望を掴みとった。
凶悪な表情を浮かべるトマトを次元の彼方へ放ち、1枚のカードが彼女の手元に残った。
この手札1枚と伏せたカードでなんとかするのだろうかとアテムと真姫は予想を立てるが、今の花陽はその予測を上回る。
「更に私は魔法カード《貪欲な壺》を発動! 私の墓地から、
《イービル・ソーン》3枚
《桜姫タレイア》
《森羅の守神 アルセイ》
この5枚をデッキに戻して、2枚のカードをドローします!」
『なっ!?』
花陽の願いが届いたかのような連続ドロー。新たに加わった2枚のカードを確認した花陽は、満面の笑みを浮かべた。
引き当てたのだろう、形勢逆転のためのカードを。
「私は、チューナーモンスター《デブリ・ドラゴン》を召喚! このカードが召喚に成功した時、墓地から攻撃力500以下のモンスターを、効果を無効にして攻撃表示で特殊召喚します! 来て、《ローンファイア・ブロッサム》!」
《デブリ・ドラゴン》(チューナー)
☆4 風属性 ドラゴン族 ATK1000
《ローンファイア・ブロッサム》(効果無効)
☆3 炎属性 植物族 ATK500
スターダストを小さくしたような、『破片』の名を持つドラゴンと、花陽のデッキの要となる炎の蕾。2体の合計レベルは7。
(ここまで動いても、センパイは
でも、わざわざ《シャッフル・リボーン》の効果を使ってまでスペースを空けた以上、あの3枚はここで破壊しなくちゃいけない!)
「これが私のエースモンスターです! 私は、レベル3の《ローンファイア・ブロッサム》に、レベル4の《デブリ・ドラゴン》をチューニング!」
4本の光輪となった風の竜が、炎の蕾を変化させていく。
「冷たい炎が世界の全てを包み込む! 漆黒の花よ開け! シンクロ召喚!」
やがて蕾は3つの光球となり、光輪とともに光差す道を作り出す。
「くっ。私たちのフィールドにこれだけのカードがある状況で呼び出すのなら、アレしかいないわよね……!」
――咲き乱れよ、レベル7! 《ブラック・ローズ・ドラゴン》!!
《ブラック・ローズ・ドラゴン》
☆7 炎属性 ドラゴン族 ATK2400
召喚とともに、真紅に染まる黒薔薇の竜が咆哮する。
黒薔薇の花言葉は、『恨み』『憎しみ』
その言葉を即座に実行するためか、花陽は《ブラック・ローズ・ドラゴン》へと命令を下した。
「《ブラック・ローズ・ドラゴン》の効果発動! このモンスターがシンクロ召喚に成功した時、フィールド上の全てのカードを破壊します!」
――ブラック・ローズ・ガイル!!
旋風とともに、薔薇吹雪が敵味方問わず全てのフィールドへと襲いかかる。
全てを破壊せんとするこの一撃は、まさに花言葉の通りではないか。
「そして、凛たちのフィールドにはスターダストがいる!
――この瞬間、
『!?』
――凛たちの勝ち。
その言葉は、アテムのカード発動宣言によって遮られた。
「カウンター罠《ツバメ返し》! モンスターが特殊召喚された時に発動されるモンスター効果の発動を無効にして破壊する!」
「そ、そんなピンポイントなカードを!?」
アテムが発動したカウンター罠が、薔薇吹雪を《ブラック・ローズ・ドラゴン》へと跳ね返す。どんなに強力な効果であろうと、無効にしてしまえばなんということはない。
全てを破壊する薔薇吹雪を一身に浴びた竜は、断末魔の叫びをあげて消滅した。
自らエースだと明言したモンスターが、たった1枚のカウンター罠によって葬られたことに花陽は少なからずショックを受けた。前のターンと合わせて2度も大型モンスターの効果を邪魔されては、そう感じるのも無理はない。
「惜しかったな、小泉。《ブラック・ローズ・ドラゴン》の効果が無効となったことで、俺のフィールドにカオス・ソルジャーは残ったままだ。攻撃力2500のスターダストじゃあ、倒すことはできないぜ?」
確かに、アテムの言うようにスターダストでは聖戦士を倒すことはできない。
スターダスト、だけなら。
「まだです! このターンで決着をつけることはできなくなりましたが、カオス・ソルジャーだけは倒します! 私は《閃珖竜 スターダスト》で攻撃!」
――
「攻撃力の劣るモンスターで攻撃だと!? 迎撃しろ、カオス・ソルジャー!」
――セイント・ブレード!!
攻撃宣言を受けたスターダストを返り討ちにせんと、聖戦士が再び剣を振り上げる。攻撃力に差がある以上、このまま戦闘を続行すればダメージを受けるのは花陽たち。
だが、この局面で何も考えずに自爆特攻をするなど、ありえない。
「ダメージステップに入り、私は速攻魔法《イージーチューニング》を発動! 墓地のチューナーモンスター1体を除外することで、その攻撃力をスターダストに加えます!
私が除外するのは、《波動竜フォノン・ドラゴン》! 攻撃力は1900!」
《閃珖竜 スターダスト》
ATK2500 → ATK4400
「攻撃力4400だと!?」
1900ポイントという破格の強化を得たスターダストの攻撃力は、聖戦士のそれを遥かに上回る。
最初は押され気味であった光の奔流も、波動の力が加わることで聖なる斬撃を弾き飛ばし、聖戦士を飲み込み、跡形もなく消し去った。
「ぐっ……!」
「やってくれるじゃない……!」
アテム&真姫 LP1700 → LP300
「……《補給部隊》の効果で、1枚ドローする!」
ギリギリで残ったアテムたちのライフポイント。
だが、下級モンスターの一撃でさえ致命傷となるこの数値は、絶体絶命という言葉が相応しい。
「私はこれで、ターンエンドです。念のために伝えておきますが、《イージーチューニング》による効果はターンが終わっても継続します」
「つまり、スターダストの攻撃力は4400のまま。戦闘ではほぼ倒されず、破壊効果も1度だけ無効にできるというわけか……!
だが、俺たちは最後まで諦めない! このエンドフェイズに
アテムたちの背後に突如現れる、巨大な石版。これもまた花陽たちが見たこともないカードであるが、石版には彼のエースモンスター、《ブラック・マジシャン》が描かれている。
「もしかして、これも《ブラック・マジシャン》のサポートカード!?」
「そうだ! こいつは1ターンに1度、手札か墓地から《ブラック・マジシャン》を特殊召喚できる! 蘇れ、マハード!!」
《ブラック・マジシャン》
☆7 闇属性 魔法使い族 ATK2500
アテムの最初のターン以降、再び相対する魔術師と竜。元々は同じ攻撃力であったが、今では圧倒的な差が開いている。
それでも、魔術師の瞳は強く輝き、眼前の敵を見据えていた。エースモンスターとして信頼する主と、その
「俺が最も信頼する下僕をお前に託す。後は任せたぜ、西木野!」
この場にいる全員が感じ取っているに違いない。
アテムたちの残りライフは僅か300。
花陽たちのフィールドに攻撃力4400の《閃珖竜 スターダスト》が存在する以上、次の真姫のターンで逆転のカードを引けなければその時点で勝敗は決するだろうと。
決着は、真姫の手に委ねられた――。
●次回予告という名のネタバレ
互いを助けあう一進一退のタッグデュエルも、遂に決着を迎えようとしていた。
凛ちゃんに託された《閃珖竜 スターダスト》を従える花陽ちゃんと、アテムから《ブラック・マジシャン》と
このターン、2人の攻防で全てが決まる! ここが正念場よ、真姫!
次回、『結束する
デュエルスタンバイ!
Q.アクセルシンクロを見たことりちゃんの反応がおかしいんだけど。
A.いずれわかるさ、いずれな。
かなり先(具体的にはアニメ9話)の部分で明らかにする予定です。
合計6万字にもなろうかという非常に長いデュエルも、次回でようやく決着です。
草案自体はアルパカ回の前から考えていただけに、どのような反応が来るか今からちょっと緊張しています。はよ書けって話なんですけどね。
次回もよろしくお願いします。