ラブライブ!DM   作:レモンジュース

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 前回投稿後、まさかのランキング9位にはかなり驚きました。皆さま、ありがとうございます。
 『ラブライブ!×遊戯王』も少しずつ増えているようで嬉しいです。
 今後とも、よろしくお願いします。

 あんじゅが《トゥーン・キングダム》を発動したことに対して、案の定強化された「トゥーン」の強さに期待しているようですね。
 私自身、『初期ライフ4000で「トゥーン」は強すぎる……』と戦慄しながら構成を考えていました。

 今回投稿分でも決着まではいかないですが、20000字を超えてしまったので前後編に分けました。
 後編も同時に投稿します。

 それでは、どうぞ。



A-RISE再び! 鉄壁の《トゥーン・キングダム》(前編)

●アテムVSあんじゅ

 

 

 

「《トゥーン・キングダム》だと……!?」

 

 ポンッ! と小気味良い音とともに現れる1冊の本。それが開かれると、デフォルメされた城がしかけ絵本のように飛び出す。

 城の奥からは、これまたデフォルメされたモンスターが何体かチラリと顔を覗かせ、《デーモンの召喚》や《バスター・ブレイダー》といった、アテムが所持しているものも見受けられた。

 

「ふふっ。挑戦者さんも驚きのご様子。確かに、これだけ賑やかなフィールド魔法は中々お目にかかれるものではありません。しかし、お楽しみはこれからです。

 まずは最初のお友達をご紹介。私は、《トゥーン・仮面魔道士》を召喚っ!」

 

 《トゥーン・仮面魔道士》(トゥーン)

 ☆4 闇属性 魔法使い族 ATK900

 

 甲高い声を出しながら、城の中より小さな道化が姿を現す。

 元となったのは《仮面魔道士》という鉄仮面の男。このモンスターはそれをデフォルメした風貌であり、頭髪についた花びらも相まって無骨な雰囲気は一切ない。

 彼がウィンクを飛ばす仕草に、客席からもクスクスと笑い声が漏れ出る。

 

「早速来たか……! だが、トゥーンモンスターは《トゥーン・ワールド》がなければただのモンスターにすぎないはずだ!」

「おや、トゥーンモンスターの特性については幾らか把握しているようですね。でも、少々惜しいです。《トゥーン・キングダム》はフィールドに存在する限りカード名を《トゥーン・ワールド》として扱います。よって、

 

 『相手がトゥーンをコントロールしていない時に直接攻撃(ダイレクトアタック)ができる』

 

 というトゥーンモンスターの能力は有効。もっとも、元の《トゥーン・ワールド》はプレイヤーのライフを1000ポイント支払って発動するだけの永続魔法。

 どうしてわざわざ別のカードとして発売したのでしょうか。ね、魔道士さん?」

 

 アテムの疑問に対して答えるあんじゅは、《トゥーン・仮面魔道士》とともに小首を傾げる。おそらく彼女が感じていることは誰もが同じかもしれない。

 

 アテムがかつていた世界で、「トゥーン」というテーマはデュエルモンスターズの創造主であるペガサス・J・クロフォードが自分自身のためだけに創りあげたものであり、一切量産されていない。

 特に《トゥーン・ワールド》は、発動プレイヤーのフィールドに存在するモンスターを完全無敵のトゥーンモンスターに変える超強力カード。

 しかし、彼はアテム……いや、2人の遊戯とその仲間たちに敗れてからは新ルールに合わせて《トゥーン・ワールド》を弱体化させるとともに、複数のサポートカードを生み出したという話だ。

 原因は不明だが、この世界では一般販売されているそれらのカードにも弱体化の影響が出ているようである。

 

「気を取り直して仕上げに移りましょう。《トゥーン・キングダム》を対象にして、魔法カード《マジック・ガードナー》を発動。

 このカードは、対象となった魔法カードに「カウンター」を1つ乗せ、その名の通り1度だけ破壊から守ってくれます。

 《トゥーン・キングダム》は破壊耐性を持っていないのだけれど、これで一安心っ♪」

 

 淡い光を放つ薄い膜が、王宮を包み込む。モンスターとともに楽しげに笑うあんじゅだが、抜け目の無い戦略に対してアテムは思わず歯噛みする。

 彼がペガサスと戦った時は、《トゥーン・ワールド》が破壊耐性を持っていないという弱点を突き、遊戯との連携によってなんとか攻略に成功したのだ。

 1度だけとはいえ弱点を克服されたとあっては、非常に厄介になることは間違いない。

 

「トゥーンモンスターは場に出たターンに攻撃ができないけれど、1ターン目なら全く問題はなし。

 これにて、第1幕は終了となります」

 

 《トゥーン・仮面魔道士》とともに、恭しくお辞儀をするあんじゅ。本日通算10戦目であるからか既に観客の心は掴んでいるらしく、小さな子供を中心として拍手が沸き起こる。

 更に、その音に被せるようにツバサの実況が響いた。

 

《流石はあんじゅ! 《トゥーン・キングダム》を発動し、最初のトゥーンモンスターを召喚! 順調な滑り出し!

 しかも《トゥーン・キングダム》がある限り、トゥーンモンスターは相手のカード効果の対象にならず、デッキトップを裏向きのまま除外することで破壊を免れます! まさに無敵のトゥーンモンスターに、どう立ち向かうのか!

 さぁ、挑戦者のターンです!》

 

「……ッ! 俺のターン、ドローッ!」

 

 半ば急かされるようにカードをドローするアテムだが、彼が焦燥感を覚えた理由は別にある。

 

(なんという効果だ……。《トゥーン・キングダム》に守られたトゥーンモンスターの防御力は、《神縛りの塚》を発動した時の神と同等。

 それどころか、全てのトゥーンモンスターが直接攻撃(ダイレクトアタック)できるということは、どれだけモンスターを並べても無意味。

 ならば、こちらから先にダメージを与えるまで!)

 

「俺は魔法カード《調和の宝札》を発動! こいつは、手札から攻撃力1000以下でドラゴン族のチューナーモンスターを墓地に送ることで、新たに2枚のカードをドローするカード!

 俺が墓地に捨てるモンスターは、攻撃力400の《破壊剣-ドラゴンバスターブレード》だ!」

 

 《破壊剣-ドラゴンバスターブレード》(チューナー)

 ☆1 闇属性 ドラゴン族 ATK400 / DEF300 

 

 剣を手にした子供の竜が墓地へ送られ、新たに2枚のカードが手札に舞い込む。

 一見普通の手札交換カードだが、彼が手札交換を行なった際にとあるカードを引き当てるのは『μ’s』の中ではよく知られている。

 

「この瞬間、今手札に加わった《ワタポン》のモンスター効果発動! こいつは、通常のドロー以外の方法で手札に加わった時に特殊召喚できる!」

 

 《ワタポン》

 ☆1 光属性 天使族 DEF300

 

 《トゥーン・キングダム》と同じような可愛らしい音とともに、丸く小さな妖精が姿を現す。その名の通り柔らかな綿を思わせるモンスターの登場に、周囲からは『可愛い!』という声が溢れる。

 

「更に、俺は《ワタポン》を生け贄に捧げ、このモンスターを召喚する!

 現れろ! 黒き魔術師の英知を受け継ぎし、たった1人の弟子!」

 

 

 

 ――《ブラック・マジシャン・ガール》!!

 

 

 

 《ブラック・マジシャン・ガール》

 ☆6 闇属性 魔法使い族 ATK2000

 

 アテムにとってお決まりのパターンで現れた、可憐な魔法少女。久方ぶりに大観衆の前で召喚されたことが嬉しいのか、はたまた愉快な「トゥーン」に対抗しているのか。客席に手を振りながら、投げキッスを飛ばすサービスまでも行なっている。

 

「あら、早速可愛いモンスターさんのお出ましですね。ツバサちゃんが言っていた《ブラック・マジシャン》の女の娘バージョンってところでしょうか」

 

 あんじゅが言うように、《ブラック・マジシャン・ガール》はアテムしか所持していないモンスターのうちの1体。『μ’s』メンバーを覗く全員が初めて見ることになる。

 そんな魔法少女が、まるで意思があるかのような演出を見せるのだから、観客……、特に男性客は大興奮だ。

 

 

 

 その一方で内心穏やかでいられないのが、デュエルを見守る海未たちだ。

 

「……凛、《調和の宝札》を勧めたのはあなたですね」

「な、なんのことかにゃー」

 

 一足先に会場へ来ていた5人は、特定のパターンで《ブラック・マジシャン・ガール》を召喚するアテムの運に感心する。

 しかし、ドラゴン族チューナーが入っているからといって《調和の宝札》を入れたことで、より一層バランスが悪い構築となったデッキとなったことは言うまでもないだろう。

 

「アテムくんのデッキに入っているドラゴン族チューナーって、ドラゴンバスターブレードと《破壊剣士の伴竜》の2体だけのはず、だよね」

「そのはずよ。しかもその2体は《バスター・ブレイダー》のサポートカード。それを魔法使い族と一緒に採用するなんて、アイツは本当に何を考えているんだか」

「……魔法使い族どころか戦士族やら悪魔族、ましてや神まで入っていますよね。

 私、たまにセンパイのメインデッキが100枚くらいあるんじゃないかって思うことがあります」

 

 

 

 彼女たちの会話が喧騒に紛れる中、アテムは攻撃のための手を増やしていく。

 

「まだだ! 手札から装備魔法《バウンド・ワンド》を《ブラック・マジシャン・ガール》に装備!

 このカードを装備した魔法使い族モンスターの攻撃力を、レベル1つにつき100ポイントアップする!」

 

 《ブラック・マジシャン・ガール》

 ATK2000 → ATK2600

 

 空いていた左手に、赤い水晶が取り付けられた杖が握られる。両手に杖を持つ姿は少々動きにくそうだが、その魔力は一層高まっていく。

 

「バトルだ! 俺は《ブラック・マジシャン・ガール》で、《トゥーン・仮面魔道士》に攻撃!」

 

 

 

 ――黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)!!

 

 

 

 魔法少女の杖より放たれた魔力弾が、道化へと炸裂し、辺り一帯が煙に包まれる。

 その攻撃力は1700ポイントもの差があり、たとえ破壊されないとしても大ダメージは避けられない。

 

 だが――。

 

 

 

「ふふっ。残念♪」

 

 

 

 煙が晴れた先。

 あんじゅの横にはジャグリングを繰り広げる、三角帽子を被った曲芸師の姿があった。

 

 

 

「私は《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃宣言時、手札から《Em(エンタメイジ) ダメージ・ジャグラー》のモンスター効果を発動させて頂きました」

 

 《Em(エンタメイジ) ダメージ・ジャグラー》

 ☆4 光属性 魔法使い族 ATK1500 / DEF1000

 

 空中へと放り投げている幾つもの小球の色は、漆黒。魔法少女が放った魔力弾と同じ色だ。

 まるで、魔力弾を使って曲芸をしているようではないか。

 

「ダメージ・ジャグラーは、お互いのバトルフェイズ中に手札から墓地へ捨てることで、私が受ける戦闘ダメージを1度だけ0にしてくれるのです。

 そして《トゥーン・キングダム》の効果により、デッキの1番上のカードを除外することで《トゥーン・仮面魔道士》の破壊は無効となります」

 

 やがて全ての小球は三角帽子の中へと収められ、曲芸師は姿を消す。

 攻撃を受けた道化自身も、舌を出しながら無傷の姿をアピールしている。

 

「破壊どころか、ダメージまでも……!

 しかも、「EM(エンタメイト)」ではなく「Em(エンタメイジ)」だと?」

 

 彼が以前戦い、今はこのデュエルの実況を担当している綺羅ツバサ。彼女が使っていたデッキは、「EM(エンタメイト)」と名のついたモンスターが多く入っていた。

 似たような名を持つカテゴリのカード、何かしらの繋がりがあるのだろうか。

 

「おや、私が普段使用するカードをご存知ない様子。ならばお答え致しましょう。

 お集まりのお客様に娯楽(エンターテインメント)を与える魔術師(メイジ)、それこそが「Em(エンタメイジ)」モンスター。そんな凄腕奇術師たちが、本日は漫画の世界(トゥーン・ワールド)の住人たちを支えます」

「俺はバトルフェイズを終了し、メインフェイズ2へ移行。伏せ(リバース)カードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

 

 

 漫画の世界(トゥーン・ワールド)の中では、トゥーンモンスターは完全無敵の生命体。

 先制攻撃を与えるチャンスが完全に防がれた今の状況は、アテムがかつてペガサスと戦った時とほぼ同じ。

 僅か2ターンであるにも関わらず、デュエルのペースはあんじゅの方に傾こうとしていた。

 

 

 

●無敵の王国

 

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

 やや大げさに、かといって荒々しくもないしなやかなドロー。スクールアイドルの頂点に立つ者に相応しい所作は、見る者全ての心を魅了し、惹きつける。

 

「魔法カード《トレードイン》を発動っ! 手札からレベル8の《トゥーン・アンティーク・ギアゴーレム》を墓地に捨てることで、新たに2枚のカードをドローさせて頂きます♪」

 

 現時点では召喚に困難である最上級モンスターを一旦墓地へと送り、あんじゅは2枚のカードを新たに手札へと加える。

 ドローカードを確認した彼女は楽しげに微笑みながら、うち1枚を即座に発動した。

 

「さてさて、お次は魔法カード《シャドー・トゥーン》を発動!

 このカードは、私のフィールドに《トゥーン・ワールド》が開かれている時に現れる、怖ぁい怖ぁい影のお化け。

 相手のモンスターさん1体を対象として、その攻撃力分のダメージを相手に与えます。対称となるのは、もちろん挑戦者さんのフィールドに存在する、可愛い女の娘♪」

 

 選択された魔法少女の足元の影が歪み、陽気な笑い声を上げる怪物へと姿を変える。然程大きな怖れを抱かせないものの、モンスターの力がプレイヤーへとそのまま跳ね返る効果は強力極まりない。

 

《対象となった《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃力は2600! あんじゅ、挑戦者への大ダメージとなるか!?》

 

「そうはさせない! この瞬間、俺は罠カード《ダメージ・ダイエット》を発動! ターンの終わりまで、俺が受ける全てのダメージを半分にする!」

 

 アテムへと迫る影の怪物が、みるみるうちに縮小されていく。しかし、あくまで半分となっただけであり、無効化しているわけではない。1300ポイントという決して少なくないダメージが彼を襲う。

 

「くっ……!」

 

アテム LP4000 → LP2700

 

「大ダメージを回避するとは、お見事っ! ならば、お次は新たなトゥーンのお友達をご紹介しましょう。

 魔法カード、《トゥーンのもくじ》を発動。このカードは、デッキから「トゥーン」と名のついた好きなカードを手札に加えます!」

「カードの種別を問わないサーチカードだと!?」

 

 デッキから特定のカードを手札に加えるカードの中でも、間違いなく最上位に位置するであろうカードを初めて知れば、誰でも驚愕する。そんなアテムのリアクションを楽しみつつ、あんじゅは手元に現れた本を捲ってとあるページを公開した。

 

「私が手札に加えるカードは、《トゥーン・ワールド》の282ページに登場する姉妹、《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》です。そして、このモンスターを通常召喚っ!」

 

 《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》(トゥーン)

 ☆4 地属性 魔法使い族 ATK1900

 

 プレイヤーに負けず劣らずのスタイルを持つ、妖艶な色香を醸し出す双子の妖精姉妹。

 眼前の魔法少女に対抗しようと投げキッスを飛ばしているものの、観客からの反応は芳しくない。本日集まった客層には合わなかったようである。

 

《残念! 妖精姉妹のお色気は、お集まりの皆さまには通じない模様!

 トゥーンモンスターは召喚したターンに攻撃を行なうことはできず、手札は0! さぁ、どうするあんじゅ!》

 

「ご心配には及びません。私は、墓地よりダメージ・ジャグラーの更なる効果を発動。

 このモンスターは墓地から除外することで、デッキから新たな「Em」を手札に加えることができるのです!」

「何だと!?」

 

 ダメージを無効化するばかりか、モンスターのサーチという利便性の高い効果を持つモンスター。

 これでは、前のターンの攻撃が完全に無駄に終わったようなものではないか。

 

「私が手札に加えるのは、《Em ハットトリッカー》!

 このモンスターはお互いのフィールドに存在するモンスターの合計が2体以上の場合、手札から特殊召喚できるのですっ!」

 

 《Emハットトリッカー》

 ☆4 地属性 魔法使い族 ATK1100

 

 続いて現れたのは、シルクハット・サングラス・マント・手袋のみで構成された奇術師。

 あまりにも緩い召喚条件も驚きだが、そのモンスターのレベルは4。そして、いずれも魔法使い族。

 

(来るか、エクシーズ召喚……ッ!)

 

「私は、レベル4の《Emハットトリッカー》と、《トゥーン・ヂェミナイ・エルフ》でオーバーレイ! 2体の魔法使い族モンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 アテムの予測通り、奇術師と双子姉妹は新たな舞台を形作るために、ともに茶色の球体へと姿を変えて光の渦へと吸い込まれていく。

 

「天空を舞う奇術師よ、華やかに漫画の世界(トゥーン・ワールド)を駆け巡って下さいな♪ エクシーズ召喚っ!」

 

 

 

 

 

 ――The Show Must Go On(お楽しみはこれから)! 現れて、ランク4! 《Em トラピーズ・マジシャン》!!

 

 

 

 

 

 《Em トラピーズ・マジシャン》

 ★4 光属性 魔法使い族 ATK2500 ORU 2

 

 何もない空間に突如現れた空中ブランコに手足を引っ掛けながら、紅きマントの奇術師が《トゥーン・キングダム》の上空を舞う。

 一向に地面に降り立つ気配を見せないその姿は、「トラピーズ」の名を冠するに相応しい。

 

《あんじゅ、エクシーズ召喚を見事決めた! お次はどう出る!?》

 

「さぁ行きますよ~っ! 愉快な王国を彩るトラピーズ・マジシャンのエクシーズ効果(マジック)をご覧あれ!

 1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、トラピーズ・マジシャン以外のモンスターに2回の攻撃権を与えます。対象となるのは、もちろん《トゥーン・仮面魔道士》!」

 

 《Emトラピーズ・マジシャン》

 ORU 2 → 1

 

 奇術師が腕を振るうと、光の粒が《トゥーン・仮面魔道士》へと降り注ぐ。その光は、ただでさえ騒がしい漫画の住人に更なる活力を与える。

 

直接攻撃(ダイレクトアタック)可能なトゥーンモンスターの連続攻撃……!」

 

 壁モンスターを無視してプレイヤーにダメージを与える効果だけでも十分な脅威。それを2回も行なえるとあっては、なんと強力なコンボであろうか。

 

「さぁ、お待ちかねのバトルフェイズ! 《トゥーン・仮面魔道士》でプレイヤーにダブル直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

 甲高い声で笑いながら、道化の平手打ちが2回連続でアテムへと浴びせられる。《ダメージ・ダイエット》で戦闘ダメージは半分になっているものの、モンスターを無視されたというショックは決して少なくない。

 

「ぐぁっ……!?」

 

アテム LP2700 → LP2250 → LP1800

 

「この瞬間、《トゥーン・仮面魔道士》のモンスター効果発動!

 元となる《仮面魔道士》と同様、このモンスターも相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えたことで、カードを1枚ドローします。

 挑戦者さんへ与えた戦闘ダメージは2回分。よって、2枚のカードをドロー!」

「手札補充まで行なうか……!」

 

 エクシーズ召喚を行なうまでに、あんじゅは残っていた手札を全て消費していた。その激しい損失を連続攻撃によって最小限に抑え、ライフは大きく差がついた。

 

「残念ながら、私のトラピーズ・マジシャンの攻撃力は可憐な魔法少女には及びません。よって、これ以上の攻撃は行なえないためバトルを終了とさせて頂きます。

 この時トラピーズ・マジシャンの効果を受けたモンスターは破壊されてしまいますが――」

「《トゥーン・キングダム》の効果を使えば、デッキの1番上のカードを裏向きのまま除外することで破壊を免れる、ということか」

「そう、Exactly(正解)♪」

 

 デッキトップのカードをアテムへと掲げ、あんじゅは微笑む。

 直接攻撃(ダイレクトアタック)・連続攻撃・手札補充・破壊無効。トゥーンモンスターの特性を存分に活かし、なおかつデメリットまでも無視するコンボを前に、アテムは声にこそ出さないものの内心で称賛せざるを得なかった。

 

(《ダメージ・ダイエット》を伏せていなければ、このターンで負けていた……!

 だが、奴のフィールドには攻撃力900の《トゥーン・仮面魔道士》が残ったまま。

 次の俺のターン――)

 

 

 

 

「――手札にダメージ・ジャグラーがない限り、更なるモンスターを召喚すれば大ダメージを与えることができる。そう考えていますね、挑戦者さん?」

 

 

 

「ッ!」

 

 アテムが考えていることをそのまま、彼女は言い当てる。

 戦闘破壊されないモンスターに連続で攻撃することでプレイヤーのライフポイントを削るという行動は、誰でも考えつく。

 しかし『トゥーンモンスターを操る決闘者』に思考を読まれること自体が、彼の動揺を誘ってしまう。

 

「私の「Em」は、ダメージに精通したエキスパート。ダメージ・ジャグラーはもちろんのこと、トラピーズ・マジシャンもその1人。

 このモンスターがフィールドに存在する限り、コントローラーはトラピーズ・マジシャンの攻撃力以下の如何なるダメージも受けなくなるのですっ!」

 

 あんじゅと奇術師、ついでに道化までもが両手を広げると、観客席から感嘆の声が漏れる。彼女のトラピーズ・マジシャンの攻撃力は2500ポイント。つまり――

 

「2500以下のダメージは全て無効……!」

 

 1度に2500ポイントの効果ダメージを与えるカードはほとんど存在しない。アテムのデッキには相手の攻撃モンスターを対象として、その攻撃力分のダメージを跳ね返す《魔法の筒(マジック・シリンダー)》が入っているが、《トゥーン・キングダム》で守られたトゥーンモンスターを対象にすることはできないため、そもそも発動自体が不可能。

 戦闘ダメージを与えようにも、2500ポイント以上もの差を出すことは難しい。

 

「私は、伏せ(リバース)カードを1枚セットして、第2幕を終了。さぁ、挑戦者さんのターンです」

 

 あんじゅは空いた右手を前に出し、アテムに対して次の手を促す。

 《ダメージ・ダイエット》の効果により辛うじて1ショットキルは防いだものの、互いを補う「トゥーン」と「Em」のコンボの強力さは誰が見ても明らか。

 一部の者は、『もう勝負はついたのではないか』と口にしていた。

 

「俺のターン、ドローッ!」

 

 一方のアテムは、あんじゅと真逆の鬼気迫る表情で新たなカードをドローする。

 それを確認した彼は一旦目を閉じて、前のターンには使えなかった1枚のカードを手札から抜き出す。

 

「魔法カード《黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)》を発動ッ!

 俺のフィールドに《ブラック・マジシャン・ガール》がいる場合、相手フィールドに表側表示で存在するモンスターを全て破壊する!」

 

 この場にいるほぼ全員が初めて見る、《ブラック・マジシャン・ガール》という名の美少女。それだけでも驚きなのに、まさか専用のカードまで存在するとは思いもしないだろう。

 ツバサやあんじゅもほんの一瞬だけ視線が鋭くなるが、それに気付く者はいない。

 

「《トゥーン・キングダム》で守られたトゥーンモンスターは破壊できないが、トラピーズ・マジシャンは別だ!」

 

 トラピーズ・マジシャンさえ倒せばコンボは崩れ、ダメージを与えることも可能となる。

 そうすれば反撃の機会も訪れるはずだ。

 

 

 

 だが、その魔力弾も――。

 

 

 

 

 

 ――突如出現した『何か』によって天空へと弾き飛ばされる。

 

 

 

 

 

「ッ! あの盾は……!」

 

 笑いながら無傷で飛行を続けるトラピーズ・マジシャンを守った『何か』、それは中央に『我』という文字が刻まれた巨大な盾。

 

「私は《ブラック・マジシャン・ガール》の攻撃宣言時に、罠カード《ガガガシールド》を発動していました。

 このカードは発動後、自分フィールドの魔法使い族の装備カードとなり、1ターンに2度まで戦闘・効果で破壊されなくなるのです。

 そしてこの瞬間、コンボは完成致しました!」

 

 アテムも存在自体は認知していたものの、デッキに入れていなかった魔法使い族サポートカード。《トゥーン・仮面魔道士》を破壊から守るために除外したカードを手にしながら、あんじゅは得意気に胸を張る。

 破壊もダメージも完全に防ぐという、かつてない強敵。

 アテムは自らの心音が徐々に速まっていくのを感じていた。

 

「……俺は、モンスターを裏守備表示で召喚。更に、魔法カード《命削りの宝札》を発動。

 このターン、俺は特殊召喚ができなくなる代わりに、手札が3枚になるようにカードを新たにドローする。

 今、俺の手札は0。よって、3枚のカードをドローだ。

 《命削りの宝札》を発動したターンのエンドフェイズに、俺は手札を全て捨てなければならないが、俺が引いたカードの中にモンスターはいない。よって、3枚全てをセットしてターンエンド!」

 

 攻撃を封じられた以上、防御に徹する他に手は残されていない。

 幸い、一気に3枚ものカードをドローした上で全てを伏せることができたが、アテムの表情は苦いままだ。

 

(へぇ……)

 

 それでも、焦燥感に駆られる彼の瞳には『諦め』の感情はない。眼前に立つあんじゅは、心の中で挑戦者の『運』に感心していた。

 

(《命削りの宝札》が抱える誓約を全て回避、か。魔法・罠の比率が多く無さそうなデッキみたいだけど、アテムくんは『運』に愛されているみたいね。

 しかもサレンダーしないということは、あの3枚の伏せ(リバース)カードの中に、なんらかの防御手段がある

 ふふっ。このコンボを破ったさっきの2人みたいに、私たち『A-RISE』とお客さんを驚かせてね♪)

 

 

 

 一方、アテムの師匠であるにこは、以前からずっとファンである『A-RISE』のデュエルタクティクスに感嘆すると同時に、恐怖にも似た感情を抱いていた。

 

「直前に戦った相手にも使っていたコンボだけど、これは本格的にヤバいわね。あんなコンボを決められたら、アテムのデッキじゃ突破は相当困難よ。

 召喚ターンに攻撃できないトゥーンモンスターをフィールド魔法《トゥーン・キングダム》が守り、それも《マジック・ガードナー》で1度だけ破壊から免れる」

 

 これだけでも十分に堅牢な防御力。しかしあんじゅが見せる……いや、魅せるコンボは更に上を行く。

 

「それだけじゃないにゃ……。2500ポイント以下、つまりほぼ全てのダメージはエクシーズモンスター《Em トラピーズ・マジシャン》の効果で無効になる。しかも、トラピーズ・マジシャンの破壊も装備罠《ガガガシールド》が2度防ぐ!」

 

 破壊できずダメージも与えられない、『鉄壁の王国』とも言うべき絶対防御の盾。そして、敵の防御を貫く鋭い矛。

 

「未だ無傷のあんじゅさんに対して、センパイの残りライフは1800ポイント。あの3枚の伏せ(リバース)カードを使って次のターンを凌いでも、直接攻撃可能なトゥーンモンスターの前では安心できません。

 デュエルが長引けば長引く程、状況は悪化してしまいます!」

 

 

 

 見る者を驚かせ、楽しませる愉快な舞台。

 それでいて対戦相手を翻弄し、反撃の手段を奪う攻防一体の布陣。

 これが『A-RISE』のデュエル。

 

 

 

《さぁ、挑戦者が伏せた3枚の伏せ(リバース)カードは、攻撃を防ぐ盾となるか! それともただのブラフか!》

 

(アテムくん、このままボサッとしていたらアナタの負けよ。あんじゅの【Emトゥーン】の力はこんなものじゃないんだから)

 

(認めたくないが、優木あんじゅが使う【トゥーン】は攻守ともに隙がない。しかも、奴はまだ本気を出し切っていない!)

 

 

 

 脅威(お楽しみ)は、まだ終わらない――。

 

 

 

 




【現在の戦況】(ごちゃごちゃしてきたので)
《アテム》
LP :1800
手札:なし
場 :《ブラック・マジシャン・ガール》攻
   《裏守備モンスター》守

   《バウンド・ワンド》(ブラック・マジシャン・ガールに装備)
   《伏せ》
   《伏せ》
   《伏せ》

《あんじゅ》
LP :4000
手札:1
場 :《トゥーン・仮面魔道士》攻
   《Emトラピーズ・マジシャン》攻(ORU 1)

   《ガガガシールド》(トラピーズ・マジシャンに装備)

   《トゥーン・キングダム》(カウンター 1)

要するにあんじゅは、

・現在ノーダメージ
・トゥーンモンスターは相手の効果対象にならず、破壊されない
・仮面魔道士で直接攻撃できて、ダメージを与えたら1ドロー
・2500以下のダメージは一切通らない
・トラピーズ・マジシャンは2回まで破壊されない
・仮にトラピーズ・マジシャンを破壊しても後続の「Em」が出てくる
・《トゥーン・キングダム》は1度だけ破壊されない

こんな感じとなっています。あんじゅさんマジ怖い。
ダメージ・ジャグラーを見た瞬間、恐怖を感じた決闘者は多いのではないでしょうか。
「Em」を混ぜなくても、《スピリットバリア》で似たようなことが可能です。

それでは、後編をどうぞ。
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