なんとか劇場版公開前日に投稿することができました。
新規カードが判明するに連れて執筆意欲は湧いてくるものの、スローペースで申し訳ないです。
さて、ついに始まるアテムVS絵里。
作者的には今までで最も激しい展開、というよりも現実では再現不可能なデュエルをお楽しみください。
それでは、どうぞ!
●自分の言葉で
「おはようございます、生徒会長!」
「まずは柔軟ですよねっ!」
指導を開始してから2日目の朝。重い足取りで屋上へとやって来た絵里を出迎えたのは、
彼女たちの表情からは昨日の疲労や絵里に対する抵抗感は一切感じられず、むしろ今日これから始まる練習を楽しみにしているようではないか。
本当は紛失したはずの原稿の行方について確認したかったのだが、気が付けば彼女は脳裏に浮かんだ疑問を口にしていた。
「……辛く、ないの?」
問いかけたものの、全員目を丸くして『へっ?』と気の抜けた声を漏らす。どうやら本当に辛さを感じていないらしい。
「昨日あれだけ辛そうにしていた基礎トレーニングを今日もするのよ。第一、上手くなるかどうかもわからない。オープンキャンパスに間に合わないかもしれない。貴女たちはどうしてそこまで頑張ろうとするの?」
絵里自身かつての経験から、基礎トレーニングしかやらせて貰えなかった頃の辛さはよく知っている。それに、昨日の練習中は目に見えるほど辛そうな表情を浮かべていた。なぜ彼女たちは愚痴1つ漏らさず素直に練習に取り組めるのだろうか。
「やりたいからです!」
「……ッ!」
その疑問に対して答えた穂乃果の力強い声には、一切の迷いもない。
「確かに、練習は凄くキツいです。今まで基礎を疎かにしていたせいで、身体中痛いです。
でも、廃校をなんとか阻止したいという気持ちは生徒会長にだって負けません!
『間に合う』とか『間に合わない』とか、そんなことは関係ないです! ただ、やりたいんです!
だから、今日もよろしくお願いしますっ!!」
『お願いします!!』
誰一人、失敗する可能性なんて想定していない。彼女たちはただ純粋に、『やりたい』という感情だけで動いているのだ。それは数ヶ月前に『スクールアイドルを始める』と言って生徒会室に現れた時と全く変わっていない。
「……今日は、昨日と同じことをしていてちょうだい」
「えっ……?」
気が付けば絵里は逃げるように穂乃果から目を逸らし、屋上を後にしていた。
階段を降り、廊下を歩く足音は生徒の少なさを度外視してもよく響く。普段の生真面目な姿を知る者が見れば別人ではないかと一瞬でも疑っていたことだろう。それほどまでに彼女の歩調は乱れていた。
あのアルパカが語った『暗い顔では何も成し遂げられない』という確信めいた指摘。
亜里沙からの『これが本当にやりたいことなのか』という問い。
穂乃果が述べた『やりたいから』という力強い叫び。
かつて祖母が語りかけてきた『楽しく元気に』という優しい言葉。
彼(?)や彼女たちの声が絵里の心中で何度も繰り返され、その思考をかき乱す。今は授業が始まるまでの間生徒会室で気を落ち着けたかった。
だが、しかし。
「よう、絢瀬」
眼前に立ち塞がるヒトデ頭の男が、それを許そうとしない。
「……何の用かしら。今は貴方と話したい気分じゃないの」
ただでさえ1人になりたい時に、最も関わりたくない相手と会話などしたくはない。無視して通り過ぎようと思ったところで、彼は懐から折りたたまれた用紙を取り出し広げてみせた。
それは紛れも無く、昨日から探していたオープンキャンパス用の原稿。
「これは昨日屋上で拾ったものだ。お前のだろ?」
「……貴方が、持っていたのね」
やはり屋上で紛失していたらしい。しかしアテムが昨日のうちに拾っていたのならば、先ほど屋上に行った時に誰かしら言ってきたはずだ。
その疑問に対する答えは、至ってシンプルなもの。
「ああ、これは誰にも知らせていない。読んだ後すぐに仕舞っておいたからな」
誰のものか確かめるために文章を確認するのは間違っていない。だが、他の仲間に知らせずに絵里の前へと現れた理由は何なのだろうか。
「絢瀬、お前に言っておきたいことがあって此処で待たせて貰った。今からする話は、あまり多くの奴らに言いたくなくてな。
この原稿に書かれている『学院の成り立ち』『地域の発展に深く関わっていた』『音楽学校としての側面も持っていた』という内容は、学校を紹介するだけならよくできているかもしれない。
だが――」
――これは、お前が本当に伝えたいことなのか?
「……ッ!」
アテムが放った言葉は、一昨日亜里沙が口にしたものとほぼ同じものだった。呆気にとられる絵里を気にすることなく、彼は続ける。
「音ノ木坂学院について紹介しようと考え、懸命に調べ上げた努力を認める奴は確かにいるかもしれないが、つまらないと感じる人間が圧倒的に多いはずだぜ。
俺が元いた世界でもこの世界でも『全校集会で校長の話を聞いていると眠くなる』という話を何度も聞くが、ここに書かれているのはそれと大して変わらない。お前が伝えるべき肝心なことが書かれていないんだからな」
「肝心なこと、ですって? この学院のことをほとんど知らない貴方に言ってもわからないと思うけど、その原稿は何度も推敲して書き上げたもの。書き漏らしなんてないはずよ」
練習中、亜里沙の友人である高坂雪穂が途中で居眠りをしていたことを思い出す。アテムはあの場にいなかったのに、なぜ同じことを言えるのか。
高坂家に居候しているのは知っているが、もしや雪穂本人から話を聞いたのだろうか。
「いや、書き漏らしているのは学院の歴史なんていう、調べればわかるものなんかじゃない。
かつて俺がデュエルをした奴の中に、偉人の言葉を並べ立てる奴がいた。そいつにも言ったことだが、長い時間をかけて学んだ知識をどれだけ蓄えたところで、自分の言葉にして語れないようでは意味を成さない。結局は他人からの借り物だ」
他人からの借り物? なんだそれは。
自分は伝統のある学院を、祖母が愛した学院を守る義務がある。どうして未だ出自不明の人間から説教紛いの言葉を浴びせられなくてはならない。
もう、限界だった。
「何なのよ、さっきから……ッ! 私は音ノ木坂学院のために、生徒会長として廃校を阻止しないといけないの!
この学院のことを何も知らない人が偉そうな口をきかないでよッ!!」
放った自分でも信じられないほどの怒声が廊下に響き渡り、窓ガラスが微かに震えた。
瞳からは大粒の涙が次々と溢れ、視界がぼやける。ここまで怒りの感情を露わにしたのは生まれて初めてかもしれない。
「ふっ。『生徒会長として』か……。確かにトップに立った人間は相応の責任を負う必要がある。俺もかつてはそうだったからな。だが、『守りたい』のではなく『守らなければならない』という義務感だけで何とかなるほど世界は甘くないぜ」
しかし、アテムは全く動じない。逆に彼が放つ静かな怒気に、絵里の方が後退ってしまった。
「お前の言う通り俺はこの学院のことをほとんど知らない。それでも、『武藤遊戯』ではなく『アテム』として過ごした初めての学校生活は一瞬一瞬の全てが掛け替えのない記憶だ。
この身体で触れてきた音ノ木坂学院の魅力を語れというのなら、いくらだって語ってやるさ」
彼の学校内での奇行は嫌でも絵里の目と耳に入ってきたが、希をはじめ他の生徒は口を揃えて『小さな子供のように全力で楽しんでいる』と述べていた。
嘘を付いているようにも見えず、問いを投げかける以上の答えを返してくるのかもしれない。
「絢瀬にもあるはずだ。お前以外には語れない音ノ木坂学院の魅力が。喜び、学んできたことが、それこそ俺の何十倍も!
人の心に響かせたいのなら、『絢瀬絵里というたった1人の人間』が心から伝えたい言葉で語ってみせろ!!」
「……ッ!」
絵里が発したものよりも遥かに激しい怒号に、全身が震え上がる。
窓の外を跳んでいたスズメが一斉に飛び立ち、屋上で練習に励んでいたらしき少女たちも何事かと戸惑いの声をあげていた。
(心から伝えたい言葉ですって……?)
心に浮かぶのは穂乃果たち『μ’s』の姿。そして、彼女たちとともに立つ自分。
(何よ、そんなの無理にきまっているじゃない。今更私がアイドルを始めようだなんて……!)
睨み合って数十秒が経過し、決して落ち着いたわけではないが心臓の鼓動が落ち着いた頃。そのタイミングを待っていたのか否か、彼は左腕に装着した『ソレ』を胸の前に掲げて見せてきた。
「絢瀬、俺とデュエルだ」
「…………は?」
なぜ、この流れでデュエル? 全く意味がわからない。しかし彼は大真面目らしく、表情は真剣そのもの。
「デュエルをすれば、誰もが心の内を吐き出さずにはいられない。決闘者の意思に関わらずな。
直接語ることができないのなら、デュエルを通じてお前自身の
「ふん、馬鹿げているわね。貴方の提案を呑んだところで、私には何の利もない。それとも何? 仮にデュエルを承諾して貴方を倒したら私の要求を『何でも』受け入れるとでも?」
「別にいいぜ、問題ない」
軽く嫌味を籠めて『何でも』の部分を強調しただが、彼は少しも迷わず即答した。亜里沙を倒すほどの実力を持っていたからか、余程自らの勝利を信じているようだ。
「……わかったわ、そのデュエル受けてあげる。場所は屋上でいいのよね?」
「ああ」
彼らが普段から屋上での練習の合間にデュエルをしているという話は何度か耳に入っている。昼休みや放課後ではなく、今すぐという時間も依存はない。ざわついた心で授業などまともに受けていられる自信はなかったためだ。
「私は生徒会室に戻って、デッキとデュエルディスクを取ってくるわ。貴方は先に屋上に行って高坂さんたちに説明しておいてちょうだい」
「待っている。それと原稿もお前に返しておくぜ」
2人の進行方向は真逆。絵里はすれ違いざまにアテムが差し出してきた原稿を乱暴に奪い取ると、早足で生徒会室へと向かって行く。
いつの間にか、涙は止まっていた。
◆
「男子とのデュエルなんて、いつ以来かしらね」
デッキとデュエルディスクを握りしめ、誰もいない廊下を歩きながら小さく呟く。
なぜ自分はこのような早朝からデュエルをしなければならないのかとも思うが、それも今日限り。散々奇行を繰り返してきたあの男を全力で圧倒し、打ち勝ってみせる。
やがて屋上前の階段に差し掛かった時、壁に背を預けて立つ親友の姿があった。
「希……」
「や、エリち。今からアテムくんとデュエルするんやってね」
生徒会室に戻った時には姿が見えなかったため、てっきり教室か何処かに行っているのかと思っていたが、絵里のことを待っていたようだ。
「もしかして、さっきの話を聞いていたの?」
「せや。ウチがエリちに声掛けようとする前に、アテムくんに先を越されてしもたんよ」
「聞いていたなら――」
止めて欲しかった、という言葉を途中で呑み込む。早朝の廊下に響き渡るほどに声を荒げる言い争いの中に飛び込むのは、誰でも躊躇うはずだから。
しかしアテムが現れなかった場合、希は何を言うつもりだったのだろうか。
「ホントは色々と言いたいことがあったんやけど、長話してアテムくんたちを待たせてもあかんからな。手短に伝えとくで」
そう言って彼女はポケットの中から2枚のカードを取り出し、見せてきた。
「エリちはいつも、誰かのために頑張ってきた。生徒会長になってからは特に。
だけど、もっと自分のやりたいことに対して素直になってもええんやないかな」
――何の変哲もない弱小通常モンスター《ミューズの天使》と、ハイリスク・ハイリターンの永続罠カード《女神の加護》を。
「穂乃果ちゃんたちは、間違いなく受け入れてくれるよ」
本当に、そうだろうか。彼女たちのように好きなことだけに取り組んで学校を存続できるのなら誰だってそうしたい。
だが、これまで散々彼女たちの活動に否定的だった自分がその中に入ろうなどと、アイドルを始めようなどと言えるはずがない。
「……無理に決まっているわ。それよりも、今は彼を倒すことだけに集中したいの」
静かな闘志を燃え上がらせていく絵里と、その姿を優しく見守る希。
2人ともこれ以上は口を開かず、ドアの向こうで待っている彼らの元へ向かうために階段を昇り始めた。
◆
(アテムさんと絵里先輩のデュエルが、こんな形で始まるとは思いませんでしたね……)
亜里沙とのデュエルが行なわれてからというもの。あの2人はいつか戦うことになるのではないかと海未は心のどこかで予測していた。
しかし、絵里が発する空気は晴れ上がった空とは全く正反対で、先ほど屋上を出て行った時よりも重苦しい。先に屋上に戻ってきたアテムは、デュエルをすることになったとしか言わなかったため、どのような話が展開されたのかはわからない。それでも絵里の逆鱗に触れるようなことを言ったのは確かだろう。
8人の視線が集う中、両者は同時にデュエルディスクを左腕に装着して展開し、デッキをセットする。絵里の動きは先日視聴した映像のようにしなやかで、誰かが感嘆の声を漏らすほどだった。
(絵里先輩の動きには全く無駄がありません。いったい、どのようなデッキを使うのでしょうか)
自らの手足を動かすかの如く慣れた動作をしたことから、デュエルは非常に多くの数をこなしてきたのだろう。しかも彼女は亜里沙の姉。相当な実力を持っていると見て間違いないはずだ。
「エリち、アテムくん。準備はええかな?」
「ああ」
「大丈夫よ」
ジャッジを希に一任するアテムも、今だけは普段以上の落ち着きを見せる。彼も絵里がかなりの実力者であると感じ取っているのだろうか。
2人の顔を交互に見回した希は、右腕を空へと掲げる。これが振り下ろされた時が、決戦の合図。
『…………』
ほんの一瞬だけ、喧騒すら聞こえない静寂が屋上を包み込む。
誰かが唾を飲む音が響いた、その瞬間。
「デュエル、開始!」
戦いの火蓋は、切って落とされた。
『デュエル!!』
アテム LP4000
絵里 LP4000
●アテムVS絵里
「俺の先攻! 魔法カード《調和の宝札》を発動! 手札から攻撃力400のドラゴン族チューナー、《破壊剣-ドラゴンバスターブレード》を墓地に捨てることで、カードを2枚ドローする!
更にモンスターと
ターンの開始からエンド宣言まで、ごく僅か。手札効果と裏守備モンスターと
「私のターン、ドロー! まずはフィールド魔法、光の王国《ジャスティス・ワールド》を発動!」
「くっ……!? なんだ、この光は……!」
突如発せられた眩い光が、朝陽の輝きも相まってアテムたちの視界を奪う。目を開いた先に広がっていたのは、穢れ無き純白の王国。
「続いて私は、魔法カード《光の援軍》を発動! このカードは、発動時のコストとしてデッキトップから3枚のカードを墓地に送る。これと同時に《ジャスティス・ワールド》の効果により、自身に「シャインカウンター」を1つ置く!」
決闘者にとってもう1つの命とも言えるデッキから、
《カオス・ソーサラー》
《ライトロード・ウォリアー ガロス》
《ライトロード・マジシャン ライラ》
3枚のモンスターカードが墓地へと送られていく。その内容を確認した絵里は笑みを浮かべ、同時に光の王国は微かに輝き出した。
《ジャスティス・ワールド》
シャインカウンター 0→1
「《ジャスティス・ワールド》はデッキからカードが墓地に送られる度、チェーンブロックを作らずに「シャインカウンター」を1つ置く。
そして、《光の援軍》の効果でデッキからレベル4以下の「ライトロード」モンスター、《ライトロード・アサシン ライデン》を手札に加えるわ!」
「レベル4のチューナーモンスター、しかも攻撃力1700か」
基本的には攻撃力・守備力ともに低めのチューナーモンスターだが、たった今絵里が手札に加えた
レベルもチューナーの割には高めで、シンクロ召喚の素材・攻撃要員としても侮れないカードと言えよう。
「更に、魔法カード《ソーラー・エクスチェンジ》を発動! 手札から「ライトロード」モンスター、《ライトロード・メイデン ミネルバ》を墓地に捨てることで新たにカードを2枚ドロー! その後デッキトップから2枚のカードを墓地に送るわ。
そしてミネルバは手札かデッキから墓地へ送られた時に、デッキトップのカードを墓地に送る『強制効果』を発動する!」
「デッキのカードが2回墓地へ送られたということは……」
《ジャスティス・ワールド》
シャインカウンター 1→2→3
光の王国へと徐々に力が蓄えられていくとともに《ソーラー・エクスチェンジ》の効果によって、
《ライトロード・パラディン ジェイン》
《ギャラクシー・サイクロン》
モンスターカードと魔法カードが墓地へ送られる。更にミネルバの効果では、
《妖怪のいたずら》
罠カードの合計3枚が墓地へと送られた。
驚くべき速さでデッキを回転させる絵里だが、彼女はまだ手を休めない。引き当てたカードのうち1枚を、待っていたと言わんばかりに繰り出した。
「《ライトロード・サモナー ルミナス》を通常召喚して効果発動! 1ターンに1度、手札を1枚捨てることで墓地からレベル4以下の「ライトロード」モンスターを特殊召喚するわ。
この効果は、あらかじめ墓地に「ライトロード」がいればコストにしたモンスターも蘇生可能。よって、私は《光の援軍》の効果で手札に加えたライデンを墓地に送り、そのまま特殊召喚!」
《ライトロード・サモナー ルミナス》
☆3 光属性 魔法使い族 ATK1000 → ATK1300
《ライトロード・アサシン ライデン》(チューナー)
☆4 光属性 戦士族 ATK1700 → ATK2000
褐色肌の美しき女性召喚師の呼びかけに応じ、同じく褐色肌の筋骨隆々な暗殺者が馳せ参じる。光の支配者の名を持つ彼らは、王国が放つ光を浴びて力を増していく。
「《ジャスティス・ワールド》の第2の効果。フィールド上に存在する「ライトロード」モンスターの攻撃力は、「シャインカウンター」1つにつき攻撃力が100ポイント上昇する」
「乗っている「シャインカウンター」は3つ。つまり300ポイントアップするというわけか」
「その通りよ。だけど、ここで私はライデンの効果を発動するわ。
1ターンに1度、デッキトップから2枚のカードを『効果』によって墓地に送り、その中に1枚でも「ライトロード」モンスターが含まれていれば、攻撃力を200ポイントアップさせる」
墓地へ送られたカードは、最上級ドラゴンと純白の毛皮を持つ猛犬。
《巨神竜フェルグラント》
《ライトロード・ハンター ライコウ》
「ライトロード」の名を持つカードが含まれているため、暗殺者の力を増幅させる。
そして再びデッキからカードが墓地へ送られたことで光の王国の効力も再び発揮された。
《ジャスティス・ワールド》
シャインカウンター 3→4
《ライトロード・アサシン ライデン》
ATK2000 → ATK2300
《ライトロード・サモナー ルミナス》
ATK1300 → ATK1400
ここまで、デッキから墓地へカードが送られた回数は4回。
その枚数は《光の援軍》で3枚、《ソーラー・エクスチェンジ》で2枚、《ライトロード・メイデン ミネルバ》で1枚、《ライトロード・アサシン ライデン》で2枚。
更に通常のドロー、カード効果で手札に加わった計3枚も合わせると、このターンで削られたデッキの合計枚数は12枚。
始まったばかりで手札とデッキを恐るべき速さで回転させていく絵里の手腕に、穂乃果たちは戦慄する。
「生徒会長、1人でやってるよ~」
「そんなこと言ってはいけませんよ、穂乃果。【ライトロード】ならたまにあることです」
「絵里先輩のデッキは45枚みたいだけど、もう28枚にまで減ってる。しかも墓地には既に「ライトロード」が5種類」
「あとは、『あのカード』が手札に加わるのを待つだけやね」
デュエルモンスターズにおいて、墓地とは『もう1つの手札』と例えられるほどに重要な要素。その理由は、墓地に存在して初めて真価を発揮するカード、墓地に眠るカードの数・種類によって力を高めていくカードがあるためだ。
絵里が使役する光の騎士団「ライトロード」はその最たる例であり、いち早くデッキのカードを墓地に送ることで強力な効果を発揮していくカテゴリ。
切り札となる『あのカード』を召喚する様子を見せていないことから、現時点では未だ手札には加わっていないようだが、フィールドに並んだ2体のモンスターだけでも十分な脅威であることは間違いない。
少々長めの準備期間を経て、ついに戦闘が開始された。
「バトルフェイズ! 私は、《ライトロード・アサシン ライデン》で裏守備モンスターを攻撃!」
上級モンスターと同等の力を得た暗殺者が、その凶刃で隠れた敵を切り裂く。断末魔の叫びを上げて葬られたのは、年若い魔術師だった。
《見習い魔術師》
☆2 闇属性 魔法使い族 DEF800
「ッ! 《見習い魔術師》の効果は……!」
「知っているなら話は早いな。このモンスターが戦闘によって破壊された場合、デッキからレベル2以下の魔法使い族モンスターを裏側守備表示で特殊召喚する。
俺が呼び出すのは、レベル2の《マジカル・アンダーテイカー》だ!」
『死人に
(あのモンスターの効果は確か……。ならば、ここは攻撃しておくに越したことはないわね)
「続いて、《ライトロード・サモナー ルミナス》で裏守備表示の《マジカル・アンダーテイカー》を攻撃!」
「《マジカル・アンダーテイカー》のリバース効果発動! 俺の墓地からレベル4以下の魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する!
舞い戻れ、《見習い魔術師》!」
対象となる僕は1体しかいないため、蘇るのは当然葬儀屋を呼び出した年若い魔術師。
『葬儀屋』と名乗る割には死者を呼び戻しているが、その目的は定かではない。
「壁モンスターを残したつもりのようだけど、そうはさせないわよ! 私はバトルフェイズを終了し、メインフェイズ2へと移行!
レベル3のルミナスに、レベル4のライデンをチューニング!」
金色のポニーテールを靡かせ、右腕を振り上げる。合図とともに飛び上がった暗殺者は4つの光輪となり、3つの光球となった召喚師を包み込む。
「光の世界を統べる最上位天使よ! 遙かなる天上の力を以て、その威光を示せ! シンクロ召喚!」
――レベル7! 《ライトロード・アーク ミカエル》!!
《ライトロード・アーク ミカエル》
☆7 光属性 ドラゴン族 ATK2600 → ATK3000
光り輝く金色の鎧を纏い、紅き瞳を持つ純白の龍とともに光臨する最上位天使。数多の英雄を統べる高貴な輝きは、光の王国を背に飛翔することで、より確かなものとなる。
「ミカエルの効果発動! 1ターンに1度、ライフを1000ポイント支払うことで対象のカード1枚を除外する!
消え去りなさい、《見習い魔術師》!」
絵里 LP4000→LP3000
1000ポイントというライフコストは、決して安くはない。しかし《見習い魔術師》を放置しておけば壁や各種召喚素材として使えることを危惧し、躊躇いなく力へと変換する。
莫大な光を蓄積した大剣を横に振り抜かれ、眩い斬撃が年若い魔術師へと迫り――
「この瞬間、
身体を断ち斬ることなく、通り抜けていった。
「なっ……!?」
絵里がここまで行なったカードの発動、モンスターの召喚、そして攻撃。その全てを妨害されることが無かったため、アテムの手札と1枚の
「こいつは選択したカードを対象として発動したモンスター効果を無効にする罠カード。
よって、《見習い魔術師》を対象としたミカエルの効果は無効になったのさ」
しかしそれは間違いだった。今まで発動条件を満たすカードを絵里が使用しなかっただけで、彼は妨害札を備えていたのだ。
ライフポイントを無駄に支払ってしまったことは悔しいが、破壊されることが無かっただけマシと考えるべきか。
「私は
アテムが発動した《スキル・プリズナー》は、あくまで『選択したカードを対象として発動したモンスター効果』を無効にする効果。つまり、今発動された『デッキの上からカードを3枚墓地へ送る』という効果は通常通り適用され、2枚のモンスターカードと1枚の罠カードが墓地へと送られる。
《ダンディライオン》
《ライトロード・エンジェル ケルビム》
《
「この瞬間《ジャスティス・ワールド》に5つ目の「シャインカウンター」が発生し、同時に《ダンディライオン》の効果も発動するわ。このカードが墓地へ送られた時、私のフィールドに「綿毛トークン」2体を守備表示で特殊召喚する!」
《ジャスティス・ワールド》
シャインカウンター 4→5
「綿毛トークン」×2
☆1 風属性 植物族 DEF 0
デフォルメされた獅子のようなタンポポから放出される、これまた小さな2つの綿毛。可愛らしく浮遊しているものの、輝きを増した光の王国の中ではその魅力はあまり発揮されないようだ。
「これで改めてターン終了よ」
ようやく終わる1巡目。絵里の場には5つの「シャインカウンター」が蓄積された光の王国《ジャスティス・ワールド》が発動され、ミカエルの力を高める。そして、2つの綿毛と1枚の
ライフポイントは1000失ってしまったが手札も2枚残されており、墓地には8体の「ライトロード」モンスター。決戦兵器が舞い降りるための下準備は既に整いつつある。
絵里が築いた、朝陽を超える眩い光を放つフィールド。そんな光景を、にこは難しい表情を浮かべつつ眺めていた。
「どうしたの、にこ先輩」
その様子を不審に思った真姫が問うと、彼女はやや自信なさげに答える。
「少し聞いたことがあるのよ。何年か前、ロシアで大会から急に姿を消した【ライトロード】使いがいたってね。
ちょうど私たちと同じくらいの金髪碧眼の少女で、将来はプロリーグに行くのではないかとも言われていたそうよ」
「それが、あの生徒会長かもしれないってことね。『姿を消した』って言うのは、何か理由が?」
「さぁ? イカサマや八百長で追放されたなんて記録は無いし、単に幼くしてデュエルを辞めたのではないかって言われているわね」
大会に出場しなくなった理由は人それぞれ。あれこれと詮索するのは野暮というもの。だが、今真姫たちの目の前には実際に【ライトロード】の使い手がいる。
「【ライトロード】の基本は短期決戦。あの切り札を引き当てられる前に、アテムは早々に攻めていかなければならない」
「でも、《ダンディライオン》や《カオス・ソーサラー》が入っていたとはいえ、【ライトロード】は『光属性』のテーマ。手札を残している以上、何の考えもなしに攻撃を仕掛けるのは自殺行為よ」
登場当初から高い地力を持ち、時代とともに進化する強力なデッキを相手にどのような反撃を繰り出すのか。
今、光の騎士団へと王が挑む。
「俺のターン、ドロー!」
今、アテムの場には守備表示の若き魔術師のみ。並の決闘者が相手であれば暫し防御に徹して相手の消耗を誘う手もあったが、果敢に攻めてくる絵里を相手にそれは愚策。
ならばこちらも、一気に攻め立てるべきだ。
「フィールド魔法《
俺が選ぶのは、《覚醒の暗黒騎士ガイア》! 更にレベル7であるこいつをゲームから除外して、魔法カード《七星の宝刀》を発動! その効果により、新たに2枚のカードをドロー!」
手札に加えた《覚醒の暗黒騎士ガイア》はレベル7だが、相手フィールド上に存在するモンスターの数が自身よりも多い場合、リリースなしで召喚可能な攻撃力2300のモンスター。
しかし、それでも攻撃力3100を誇る最上位天使には敵わない。だからこそ、今はお決まりとなったドロー加速コンボのパーツとする。
「よしっ! 次は魔法カード《ワンダー・ワンド》を《見習い魔術師》に装備! このカードを装備した魔法使い族モンスターの攻撃力は500ポイントアップ!」
《見習い魔術師》
ATK400 → ATK900
下級モンスターの攻撃力を多少上げたところで、倒すことができるのはせいぜい小さな綿毛のみ。しかし、この状況を打開するための手札は揃いつつある。残る1枚のカードを手にするために、アテムは迷わない。
「続いて、《ワンダー・ワンド》のもう1つの効果発動! このカードと装備モンスターを墓地に送ることで、カードを2枚ドローする!
フィールドからモンスターが墓地へと送られたことで、《混沌の場》に「魔力カウンター」が1つ精製されるぜ!」
《混沌の場》
魔力カウンター 0→1
若き魔術師が姿を消すと同時に、魔力が蓄えられていく。このフィールドも《ジャスティス・ワールド》と同様に、カウンターを溜めることで効力を発揮するのだ。
また、手札は1枚増えたがこれで彼の場からモンスターは消え去った。このドローで逆転のカードを引き当てなければ、早くも敗北は必至。
ドローしたカードを横目で見ると、アテムはニヤリと笑みを浮かべる。どうやら、準備は完了したようだ。
「手札から、魔法カード《予想GUY》を発動! 俺のフィールド上にモンスターが存在しない場合、デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚する!
俺が呼び出すのは、レベル4の《エルフの剣士》だ!」
《エルフの剣士》
☆4 地属性 戦士族 ATK1400
緑を基調とした兜・肩当て、藍色の外套を纏い、長大な剣を構える眉目秀麗な妖精剣士。しかしその能力値はレベル4のモンスターとしては低い。カードそのものも所々傷ついており、フォーマットも非常に古い。かなり昔から所持していたものであることが伺える。
「更に、俺は《エルフの聖剣士》を通常召喚!
そしてこのカードは1ターンに1度、手札から「エルフの剣士」の名を持つモンスター1体を特殊召喚することができる! 来い、《翻弄するエルフの剣士》!」
《エルフの聖剣士》
☆4 地属性 戦士族 ATK2100
《翻弄するエルフの剣士》
☆4 地属性 戦士族 ATK1400
同じ顔の剣士が3人並ぶ異様な光景。しかし、よく見ると最初に呼び出された剣士とは細かな違いが見られる。
特に顕著なのは、通常召喚された聖剣士。兜や肩当ての色は同じだが、外套は紅色。所持している剣の数も両手に1本ずつ。攻撃力が2100ポイントと、上級モンスターに匹敵する数値を誇ることから、エルフを纏める長のような立場なのだろう。
聖剣士の呼び出しによって馳せ参じた剣士も、纏う装備品の強度が高く、右手に持つ剣の装飾が僅かに異なる。
今ここに、『エルフの剣士団』が揃い踏み。しかし、このままではやはり綿毛を消し去ることはできても、ミカエルを倒すことは不可能。
「今、俺のフィールドに存在するモンスターの中で最も攻撃力が高いのは、攻撃力2100の《エルフの聖剣士》だ。しかしこのモンスターは自身の手札が1枚でも存在する場合攻撃することができない。
よって俺は手札を1枚伏せ、装備魔法《
「手札0、しかも《月鏡の盾》……ッ!」
聖剣士が左手に握っていた剣を鞘へと収めて新たに装備したのは、金色に輝く円形の盾。何かが変わったようには見えないが、絵里が表情を強張らせたことから、強力な装備魔法であることが伺える。
「バトルだ! まずは《エルフの剣士》と《翻弄するエルフの剣士》で2体の「綿毛トークン」を攻撃!」
同時に駆け出し、綿毛を散らす斬撃を繰り出す2人の剣士の姿はまるで双子。残るは攻撃力3100の大天使だが、その強大な力へ向けて聖剣士が駆け出した。
「続けて、《エルフの聖剣士》で《ライトロード・アーク ミカエル》を攻撃!」
一見無謀にも思える強者への攻撃。しかし満月の如き輝きを放つ大盾は、その常識を打ち破る。
「ダメージ計算時、《月鏡の盾》の効果発動! 装備モンスターの攻撃力と守備力はダメージ計算時のみ、戦闘を行なう相手モンスターの攻撃力か守備力のうち、高い方の数値+100ポイントとなる!」
《エルフの聖剣士》
ATK2100 → ATK3200
たとえ攻撃力が皆無のモンスターであってもほとんどのモンスターに打ち勝つ、文字通り常識破りの聖なる盾。
大天使が放つ光の斬撃を全て防いだ聖剣士は、その勢いで龍もろとも一刀にて斬り捨てた。
「くっ……!」
絵里 LP3000 → LP2900
「相手プレイヤーに戦闘ダメージを与えたこの瞬間、《エルフの聖剣士》の更なる効果発動! 俺のフィールドに存在する「エルフの剣士」の名を持つモンスターの数だけカードをドローする!」
《エルフの聖剣士》は、ルール上「エルフの剣士」と名のついたカードとして扱われる。よって、俺がドローする枚数は3枚だ!
更に、モンスターが墓地へ送られたことにより《混沌の場》に2つめの魔力カウンターが精製される!」
3人の剣士が右手に持つ剣を天へと掲げ、それに合わせてアテムは3枚のカードをデッキから引き抜く。
手札とは、決闘者にとって無限の可能性を生み出す力の源。極論だが、一部のデッキを除けばライフポイント以上に重要と言われている。
《混沌の場》
魔力カウンター 1→2
「だけど、私のミカエルも破壊されたことで効果を発動する! 墓地に眠る自身を除く「ライトロード」モンスターを任意の数だけデッキに戻し、私はその数×300ポイント分のライフを回復する! 私は、
《ライトロード・マジシャン ライラ》
《ライトロード・メイデン ミネルバ》
《ライトロード・パラディン ジェイン》
《ライトロード・ハンター ライコウ》
この4枚をデッキに戻して、1200ポイント回復するわ!」
絵里 LP2900 → LP4100
死した魂のうちミカエルと3人を残した者たちが転生し、先のターンで無駄に支払ってしまったライフポイントを帳消しとする。
ライフポイントを回復したということは、目的は再びミカエルのようにライフコストを必要とするカード効果の使用を狙っているのだろう。
「トークンがいなければ大ダメージを与えられたんだが、残念だ。
俺はバトルを終え、メインフェイズ2へ移行! ここでバトル前に伏せていた通常魔法《馬の骨の対価》を発動する! こいつは俺のフィールドに存在する効果モンスター以外のモンスターを墓地に送ることで2枚のカードをドローするカード。
これにより、通常モンスター《エルフの剣士》を墓地に送ることで2枚ドローするぜ!」
《混沌の場》
魔力カウンター 2→3
このターンだけで合計8枚ものカードをドローしたというのに、まだ足りないとでも言うのか。
1つの役目を終えた剣士は、新たな可能性へと姿を変える。そして今、彼の場にはレベル4のモンスターが2体。
「俺はレベル4のモンスター2体で――」
「待ちなさい! 私は《馬の骨の対価》の効果処理が終わった瞬間に、墓地から罠カード《妖怪のいたずら》を除外して効果発動!
《翻弄するエルフの剣士》を対象として、そのレベルをターンの終わりまで1つ下げる!」
「何ッ!?」
《翻弄するエルフの剣士》
☆4 → ☆3
昨今のデュエルモンスターズにおいて、『レベル』は非常に重要だ。召喚しやすく強力な効果を持つシンクロモンスター及びエクシーズモンスターは、素材とするモンスターのレベルを参照するからである。
相手によってレベルを変更させられた場合、前者であれば合計レベルが同じモンスターがエクストラデッキに存在すればそちらを召喚することで一応の処置は可能。
しかし後者ならばそうはいかない。場に存在するモンスターのレベルが分散してしまった時点で召喚を封じられ、無防備な姿を晒すことになる。
「ランク4のエクシーズ召喚を封じられたか……。ならば俺は、《混沌の場》のもう1つの効果を発動するぜ。
1ターンに1度、魔力カウンターを3つ使用することで、デッキから儀式魔法1枚を手札に加える!」
《混沌の場》
魔力カウンター 3→0
蓄積されていた魔力が凝縮し、新たに1枚のカードを生み出す。彼の右手に握られたのは、
「この効果により、俺は《超戦士の儀式》を手札に加える。最後に、
ターン開始時に52枚あったデッキも、ターンが終わってみれば残り39枚。通常のドローで1枚、カード効果で9枚のカードをドローし、3枚のカードをサーチ・リクルートしたアテムは絵里に負けず劣らずのデッキ圧縮速度を見せつける。
「アテムせんぱい、いくらなんでも引きすぎじゃないかにゃ~」
「まだ《クリバンデット》も《高等儀式術》も使ってないのに、60枚あったデッキがもう3分の1。何だか、いつも以上に飛ばしてるかもしれないね」
凛も花陽も、アテムのドロー速度には毎度驚かされてばかりだ。
彼のデッキは基本的に複数のカードを組み合わせることで力を発揮するコンボ寄りのデッキ。そのために多くのカードをドローする必要があるのだが、今日に限っては普段以上。
エクシーズ召喚は阻害されてしまったものの、2枚の
「私のターン、ドロー!」
現在、絵里とアテムの場・手札の合計枚数は倍以上の差がある。一般的なデュエルでは場や手札のカードが多い決闘者が優位に立つものだ。しかし、先も述べたようにデュエルでは枚数が多いほど良い場所がもう1箇所ある。
「《ソーラー・エクスチェンジ》の効果で墓地に送った《ギャラクシー・サイクロン》の効果発動!
墓地に送られてから1ターン以上経過したこのカードを除外することで、フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠を1枚破壊する。対象は当然《月鏡の盾》よ!」
「《ギャラクシー・サイクロン》、やはり使ってきたか……!」
それが墓地だ。前のターンにエクシーズ召喚を妨害した《妖怪のいたずら》のように、場合によっては手札のカード以上に決闘者をサポートしてくれる。
戦闘では無類の強さを発揮させる《月鏡の盾》も、効果破壊の前には無力。やはり盾というものは脆いものである。
「ここで《月鏡の盾》の強制効果を発動して貰おうかしら。表側表示で存在するそのカードが墓地へ送られた場合、プレイヤーはライフを500ポイント支払い、デッキトップかデッキボトムに『戻さなければならない』」
「プレイヤーの意思に関わらず、な。俺は《月鏡の盾》をデッキの下に戻させて貰う」
アテム LP4000 → LP3500
聖剣士をカード効果で除去せずに、再利用される可能性もあった盾を破壊したということは、戦闘を行なうことが狙いだということ。
それを裏付けるように、絵里は手札より1枚のカードを繰り出す。
「続いて、手札から魔法カード《死者蘇生》を発動! 言わずと知れたその効果により、墓地から《巨神竜フェルグラント》を特殊召喚!」
《巨神竜フェルグラント》
☆8 光属性 ドラゴン族 ATK2800
神の力を纏いし伝説の
「この瞬間、《巨神竜フェルグラント》の効果発動! このカードが墓地からの特殊召喚に成功した場合、相手のフィールド・墓地からモンスター1体を対象として除外できる!
私が選択するのは、墓地に存在する《エルフの剣士》! 更に除外したモンスターのレベルまたはランク1つにつき100ポイントだけ自身の攻撃力をアップする!」
「くっ……! 《スキル・プリズナー》が守ることのできるのはフィールド上のカードのみ……!」
鋭利で長大な尾が墓地へと突き刺さり、妖精剣士を引きずり出す。その魂を喰らった巨神竜は、自らの力へと変換していく。
《巨神竜フェルグラント》
ATK2800 → ATK3200
「バトルよ! 私は、《巨神竜フェルグラント》で《エルフの聖剣士》を攻撃!」
「攻撃力が低い《翻弄するエルフの剣士》ではなく、聖剣士を狙ってきたか! だが、甘いぜ! 攻撃宣言時、罠カード《聖なるバリア -ミラーフォース-》を発動! 攻撃表示モンスターを全て破壊する!」
咆哮とともに解き放たれた爆炎を聖なる盾が受け止め、威力を保ったまま跳ね返す。攻撃力3000を超える竜であっても、カード効果であれば耐性を持たない限り破壊は容易。
しかし、それを簡単に許す絵里ではない。
「甘い、ね。その言葉をそっくりそのまま返してあげるわ! 墓地から、《幻影騎士団トゥーム・シールド》の効果発動!
このカードを除外することで、相手フィールド上に表側表示で存在する罠カードの効果をターン終了時まで無効にする! よって、ミラーフォースの反射攻撃はフェルグラントに届かない!」
「何だとッ!?」
巨神竜の前にヒビ割れた盾が出現し、跳ね返って来る爆炎を受け流す。『ターン終了時まで』という誓約も、永続罠でもない限り完全に無力化されたも同然だ。
「ミラーフォースによる破壊が無効となったことで、攻撃続行! これで――」
「まだだ! ダメージステップに入る前に、もう1枚の罠カード《光の封札剣》を発動! 相手の手札1枚を裏側のままゲームから除外する!」
「《光の封札剣》ですって!?」
勢い良く飛来する短剣が、絵里が持つ2枚の手札のうち1枚を貫通し、場に縫い付ける。まさかのマイナーカードの出現に、思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
驚愕したのは絵里だけではない。穂乃果たちでさえなぜそのようなカードを使うのかと疑問符を浮かべていた。
「《光の封札剣》で除外したカードは、相手のターンで数えて4ターン目のスタンバイフェイズに持ち主の手札に戻る。
絢瀬、お前に《オネスト》の効果は使わせない!」
「なっ……!?」
《光の封札剣》でカードを選ぶ行為はランダム、つまりどのカードを除外したのかは通常わからないはずだ。
「どうして、という顔をしているな。光属性モンスターを主軸とするデッキと戦うならば、《オネスト》を警戒するのは当然のこと。それに、俺が《月鏡の盾》を発動した瞬間にお前は一瞬だけ自らの手札を見ていた。その時確信したのさ、絢瀬は既に《オネスト》を手札に握っているとな。
西木野、光属性モンスターを使うお前なら理由がわかるんじゃないか?」
アテムが首を真姫の方へと向けると、全員の視線が1箇所に集中する。問われた本人は、一瞬思案した後に思い当たることがあったのか口を開いた。
「仮に先輩が発動したカードが《フォース》や《魔導師の力》だったら生徒会長は特に反応を示さなかったでしょうね。《オネスト》の発動タイミングは『ダメージステップ開始時からダメージ計算前』。メインフェイズにどれだけ強化したところで基本的には返り討ちにできるのだから。
でも、《月鏡の盾》を装備したモンスターを相手にした場合は別。あのカードが効果を発動するのは《オネスト》の発動タイミングよりも後となる、『ダメージ計算時』。
《オネスト》の効果を使ったとしても必ず100ポイント上回られてしまうとわかったから、必要以上に反応してしまったっていうところね」
「正解だぜ、西木野」
これこそ、《月鏡の盾》が最強の戦闘サポートカードと言われる所以。カードの特性を把握し、相手の挙動によって手札のカードを見透かすとは。
だが、まだ《オネスト》が除外されただけ。攻撃自体が止められたわけではない。
「改めて攻撃続行よ。今度こそ、《巨神竜フェルグラント》で《エルフの聖剣士》を破壊するわ!」
「ぐぅっ……!」
アテム LP3500 → LP2400
再度放たれる爆炎が聖剣士を覆い尽くし、健闘むなしく消滅する。絵里のフィールドには他にモンスターが存在せず、本来ならばここでバトルフェイズは終了するのだが、彼女の攻勢は止まらない。
「相手モンスターを戦闘で破壊したことにより、《巨神竜フェルグラント》のもう1つの効果発動! 自分か相手の墓地から、レベル7または8のドラゴン族モンスター1体を対象として、私のフィールドに特殊召喚する!
復活させるモンスターは、当然《ライトロード・アーク ミカエル》!」
《ライトロード・アーク ミカエル》
☆7 光属性 ドラゴン族 ATK2600 → ATK3100
装備魔法とのコンボで倒したはずの大天使の復活。更に、バトルフェイズ中に特殊召喚したモンスターには攻撃の権利が残されている。狙いは当然、最後の妖精剣士。
「やりなさい、ミカエル! 《翻弄するエルフの剣士》に追撃よ!」
白龍、そして大天使の剣より放たれる2本の光線が一切の容赦もなく剣士を襲う。彼は苦悶の表情を浮かべながらも、両手に握る剣を落とそうとはしない。
「《翻弄するエルフの剣士》は、攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されないぜ!」
「だけど、ダメージは受けて貰うわ!」
アテム LP2400 → LP700
モンスターは残ったが、発生するダメージは決して小さくない。完全には受け止めきれない衝撃を浴び、アテムの息が少々荒くなる。
「なるほど、《死者蘇生》でミカエルを復活させなかったのはこれが狙いか。《光の封札剣》で《オネスト》を封印できていなければこの攻撃で負けていたな。
流石は亜里沙の姉、いい攻撃だったぜ」
「……バトルフェイズ終了よ。メインフェイズ2は何もせず、このままエンドフェイズへ。
ミカエルの効果を発動して、デッキトップから3枚のカードを墓地に送るわ」
デュエルが始まる前は随分と失礼な発言をしてきた癖に、いきなり称賛されたところで嬉しくもなんともない。
淡々とデュエルを進行し、新たな
《ジャスティス・ワールド》
シャインカウンター 5→6
墓地へ送られたのは2枚のモンスターカードと、1枚の罠カード。
《ライトレイ ダイダロス》
《ライトロード・ハンター ライコウ》
《ライトロードの裁き》
「……ッ! どうやら、次のターンで決着がつきそうね。私は、墓地へ送られた罠カード《ライトロードの裁き》の効果発動!
このカードが「ライトロード」モンスターの効果によって墓地へと送られた場合、デッキから「ライトロード」の最大兵器《
罠カードの効果によって手札へと加わった龍が公開された瞬間、ほとんどの者が戦慄した。その龍こそ、光の支配者が操る決戦兵器にして切り札とも言える存在。
絵里が発した『次のターンで決着』という言葉も、過言ではない能力を秘めているのだ。
「特殊な方法で手札に加えたということは、そのドラゴンが絢瀬のデッキのキーカードということか。しかし俺のターンが始まる前から勝った気になるのは早いんじゃないか?
いや、案外次の俺のターンで決着がつくのかもしれないぜ」
「言ってくれるじゃない。そこまで言うのなら、この状況を覆してみるといいわ。
私はこれでターン終了よ」
右手を払いつつエンド宣言をする絵里は、『ほぼ不可能だ』と言っているかのようだった。
確かに《光の封札剣》の効果で辛うじて窮地を脱したとはいえ、場とライフポイントを見ればアテムが圧倒的に不利な立場のままであることは明らか。
だが、デュエルとはカードを引くまで何が起こるかわからず、たった1枚で戦局を覆すこともある。
「行くぜ、俺のターン!」
一握りの可能性を信じて、その挑戦に応えるために。
「ドローッ!」
カードという名の剣を、引き抜いた。
●次回予告という名のネタバレ
『μ’s』の未来を左右する、アテムと絵里のデュエル。
あらゆる場所のカードを駆使する一進一退の攻防は、次第に激しさを増していく!
絵里が呼び出す裁きの力に対抗するため、アテムが繰り出すのは魔術師の技! ちょっと2人とも、どれだけ多くのカードを使うっていうの!?
次回、『絢瀬ジャッジメント』
デュエルスタンバイ!
現在の戦況(4ターン目終了時)
○アテム(先攻)
LP:700
デッキ:40枚(デッキボトムに《月鏡の盾》)
手札:4枚(うち1枚は《超戦士の儀式》)
モンスター:
《翻弄するエルフの剣士》ATK1400
魔法・罠ゾーン:なし
フィールド:《混沌の場》(魔力カウンター:1)
墓地:《スキル・プリズナー》
●絵里(後攻)
LP4100
デッキ:24枚(うち3枚はライラ、ミネルバ、ジェイン)
手札:2枚(1枚は《裁きの龍》)
モンスター:
《巨神竜フェルグラント》ATK3200
《ライトロード・アーク ミカエル》ATK3200
魔法・罠ゾーン:伏せ1枚
フィールド:《ジャスティス・ワールド》(シャインカウンター:6)
墓地:ライトロード(ガロス、ルミナス、ライデン、ケルビム、ライコウ)
除外:《光の封札剣》で除外した裏側表示のカード(0ターン経過)
今回のデュエルは絵里が【ライトロード】を使うということで、あとがきにて双方の状況を記載しています。
それにしても、双方のデッキ構成・引き・墓地肥やしがとんでもないことになってますね。次回はもっと動くことになりますが。
引きまくるアテムVSひたすら墓地を肥やす絵里、どちらもデッキ枚数が全然足りない。
それでは、次回もよろしくお願いします。