ラブライブ!DM   作:レモンジュース

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 なんてこった、前回の投稿から3ヶ月もの時間が過ぎているとは……。
 新しいカードやルールで戦いたいのに、気が付けばこんな季節に。
 【サイバース族】はもっとカードが充実したら出してみたいけど、書いてる途中でバンバン新規が出るのが怖いですね。

 それでは、どうぞ!


結束の黒・魔・導!

「私は、手札から《シャドール・ドラゴン》を通常召喚!」

 

 《シャドール・ドラゴン》

 ☆4 闇属性 魔法使い族 ATK1900

 

 闇に染まり、糸で吊り下げられる姿と化した狻猊(さんげい)。ドラゴンを名乗るものの、このモンスターの種族も「シャドール」の例に漏れず魔法使い族である。

 

「続けて、魔法カード《ルドラの魔導書》! 《シャドール・ドラゴン》を墓地に送って、カードを2枚ドローします!」

 

 その種族を利用し、《聖なる魔術師》の効果で回収したドローカードを再度発動する。手札の総数はターン開始時と変わりないが、この魔導書は『コスト』ではなく『効果』でモンスターを墓地に送る。

 

「カードの『効果』によって、「シャドール」モンスターを墓地に送ったということは……」

「当然、《シャドール・ドラゴン》の効果が発動されます。マハードさんの場に伏せられたカードを対象として、破壊します!」

 

 首だけの存在となった操り人形の残骸が、マハードの場へと突き進む。

 手札交換をしつつ、相手の伏せカードを破壊。通常召喚権を使ったものの、アドバンテージを稼ぐ無駄のないコンボだ。

 

「ならば、私は罠カード《天地開闢》を発動! デッキから「暗黒騎士ガイア」または「カオス・ソルジャー」の名を持つモンスターを含む、3体の戦士族モンスターを公開します。

 私が選ぶのは、この3体!」

 

 《疾走の暗黒騎士ガイア》☆7 光属性 ATK2300 / DEF2100

 《魔装戦士 アルニス》☆4 炎属性 ATK1700 / DEF1200

 《ネクロ・ガードナー》☆3 闇属性 ATK600 / DEF1300

 

「そして貴女がランダムに1枚を選び、《疾走の暗黒騎士ガイア》であれば私の手札に加わり、残りは墓地へ。違った場合は3枚全てが墓地へ送られます」

 

 マハードが選びだした3枚は、レベルも属性も全く異なる。ここに来て他種族の要素が増えてきたことに若干の違和感を覚える寧々(ねね)だが、実際は彼のデッキと噛み合うものばかりだ。

 どうやら、柊史(しゅうじ)はマハードの意図に気付いたらしい。それはデュエルモンスターズに精通しているからか、はたまた彼自身が戦士族モンスターを扱っているのだろうか。

 

(なるほどね。リリースなしで召喚できる《疾走の暗黒騎士ガイア》はランク7のエクシーズモンスターの素材に最適だし、《魔装戦士 アルニス》は自身が戦闘破壊されたら攻撃力1500以下の魔法使い族を呼び出せる。

 おまけに《ネクロ・ガードナー》は自身を墓地から除外することで、相手モンスターの攻撃を無効にできる。コンボ向けだけど、デッキ圧縮にも使えるいいカードだ)

 

 寧々としては、3枚全てを墓地に送っておきたいところであろう。

 普段は学院でタロットカード等を使った占いをしている彼女が逆の立場になる、というのは中々に新鮮な気持ちだ。《マジカルシルクハット》の時と同じく、やや悩みながら運命のカードを指名した。

 

「私から見て、右側のカードを選びます」

「ふっ。貴女が選んだカードは《疾走の暗黒騎士ガイア》。これが私の手札に加わり、残りは墓地へ送ります」

 

 またしても、運はマハードへと味方した。伏せカード除去の回避・手札増強・デッキ圧縮・墓地肥やしを同時にこなす一石四鳥。脱出劇第2幕に対し、少女は感心しつつも少々不満気だ。

 

「むむむ……、ハズレを引いてしまいましたか。ですが、すぐに墓地へと送って頂きましょう。私は魔法カード《悪夢再び》を発動し、墓地より守備力0の闇属性モンスター《ジェスター・コンフィ》と《時花の魔女 フルール・ド・ソルシエール》を手札に戻します。

 そして、魔法カード《手札抹殺》を発動!」

「ッ! 手札総入れ替えカード……!」

 

 互いの手札を全て捨て、同じ枚数分だけカードをドローするという、定番の手札交換カード。現在、寧々の手札は5枚。

 

 

 《救世の美神ノースウェムコ》

 《救世の儀式》

 《ジェスター・コンフィ》

 《時花の魔女-フルール・ド・ソルシエール》

 《黒魔導戦士 ブレイカー》

 

 

 この5枚が新たな手札へと変換される。対するマハードは3枚。

 

 

 《帝王の轟殻》

 《戦士の生還》

 《疾走の暗黒騎士ガイア》

 

 

 彼の手札に存在した2枚の魔法カードが、手札に加わったばかりのカード諸共墓地へと送られてしまう。直前のターンから狙っていたコンボが妨害されてしまったことになる。

 

「なんてカードを握ってたんだよあの人……。寧々が今の《天地開闢》で当たりを引いたところで、《戦士の生還》でサルベージした《疾走の暗黒騎士ガイア》を妥協召喚。

 そして《帝王の轟殻》はレベル5以上の通常召喚したモンスターをリリースし、フィールド上のカード1枚の効果を無効にしつつカードを1枚ドローできる、か」

 

 元々相性の良い組み合わせだが、リリースするはずであったモンスターには更なる効果がある。このコンボの真骨頂を、雪穂が引き継ぐ。

 

「《疾走の暗黒騎士ガイア》はリリースされた場合、デッキから「カオス・ソルジャー」の名を持つモンスターを手札に加えます。

 マハードさんはこれで開闢の使者をサーチして、特殊召喚するつもりだったのでしょうけど……」

 

 残念ながら、《手札抹殺》によって計画は頓挫(とんざ)。加えて寧々の手札には新たなカードが一挙に舞い込んだことで、戦況を一変させる可能性は十二分に存在する。

 それを証明するかのように、彼女は1枚のカードを繰り出した。

 

「私は手札から魔法カード《シャッフル・リボーン》を発動! 《風紀宮司ノリト》を、効果を無効にして特殊召喚します!」

 

 《風紀宮司ノリト》(Seal)

 ★6 光属性 魔法使い族 ATK2700

 

 倒したばかりのモンスターが、寧々のメインモンスターゾーンへと復活する。その攻撃力は《幻想の黒魔導師》を上回るが、マハードは既に相手モンスターの攻撃を無効にする《ネクロ・ガードナー》を墓地に送っている。

 

「貴女が発動した《シャッフル・リボーン》は、蘇生したモンスターをエンドフェイズに除外するデメリットもあります。

 ノリトをリリースし、新たなモンスターを召喚するのが狙いですか」

「いいえ、違います。私はノリトを『リリース』するのではなく、この魔法カードによって『進化』させます!」

 

 魔法カードによる、エクシーズモンスターの進化。その強さをマハードは過去に何度か目の当たりにしている。

 まさか、という彼の不安を証明するかのように少女は『それ』を発動した。

 

「行きます! 《RUM(ランクアップ・マジック)-バリアンズ・フォース》を発動! このカードは自分フィールドのエクシーズモンスター1体を素材として、1ランク上で同じ種族の「CX(カオスエクシーズ)」または「CNo.(カオスナンバーズ)」を特殊召喚します!

 私は、ランク6の《風紀宮司ノリト》を素材として、オーバーレイ・ネットワークを再構築!」

 

 風紀宮司が紅き光へと変質し、突如出現した(くら)い穴へと吸い込まれていく。その不気味で異様な空間が、深緑と漆黒の爆発によって炸裂し、新たなモンスターへと進化を遂げる。

 

「ライト・エクストラモンスターゾーンを再び解放!

 混沌の力をその身に宿し、新たな祝詞(のりと)を捧げる力とならん! カオスエクシーズ・チェンジッ!」

 

 

 

 ――出でよ、ランク7! 《CX 風紀大宮司サイモン》!!

 

 

 

 《CX 風紀大宮司サイモン》(ORU 1)

 ★7 光属性 魔法使い族 ATK3000

 

 攻撃力3000の、大型エクシーズモンスター。

 身に纏う純白の斎服(さいふく)は、僅かに精錬な印象を抱かせる。だが、衣服の隙間から覗く紅き光に加え、鞭の如き2本の長大な(ぬさ)を振るう姿は神職とは程遠い。これでは、進化と言うよりも光から闇へと変質したかのようではないか。

 

「まだ終わりません! バリアンズ・フォースの更なる効果、カオス・ドレイン!

 相手フィールド上に存在するエクシーズ素材1つを、サイモンへと移動します!」

「何ッ!?」

 

 《幻想の黒魔導師》(ORU 1 → 0)

 

 《CX 風紀大宮司サイモン》(ORU 1 → 2)

 

 エクシーズモンスターは、己の魂たるオーバーレイ・ユニットを用いることで真の力を発揮するものが殆ど。それを相手から奪い、自らの魂へと変換するとは。

 ただでさえ強力な風紀宮司が進化した以上、より恐るべき力が振るわれることは想像に難くない。

 

「次はこれです! 魔法カード《洗脳-ブレインコントロール》を発動! ライフを800ポイント支払うことで、相手フィールドに表側表示で存在する通常召喚可能なモンスター1体を、エンドフェイズまで私がコントロールします!」

 

寧々 LP2800 → LP2000

 

「ッ! 《コスモクイーン》が……!」

 

 この魔法カードは、元々は特殊召喚されたモンスターであってもコントロールを得ることができた。奪った大型モンスターで攻撃、または各種召喚素材にするという汎用性の高さは数多くの決闘者を魅了し、やがて禁止カードとして名を連ねることとなる。

 しかし、効果対象が制限されたことにより扱いやすさは大幅に低下。対戦相手によっては全く通用しないカードとなっているのが現状だ。

 

「バトルです! サイモンで《幻想の黒魔導師》を攻撃! このモンスターは、あらゆるモンスター効果を受け付けません!」

「何ッ! くっ……!」

 

マハード LP3300 → LP2800

 

 ノリトと対になる、モンスター効果への完全耐性。加えて高い攻撃力によって振るわれた鞭が、黒魔導師を討ち倒した。

 

「私の攻撃はまだ残っています! 続けて《コスモクイーン》で攻撃です!」

「させません! 墓地より《ネクロ・ガードナー》の効果発動!」

 

 この攻撃を通せば、マハードのライフは尽きる。当然通すわけにはいかない。

 女王が連続して放つ魔力弾を、幻影の戦士によって何とか阻む。

 

「バトルを終え、メインフェイズ2へ移行します。ここで私は墓地から《シャッフル・リボーン》のもう1つの効果発動!

 自分フィールド場に存在するカード、《コスモクイーン》をデッキに戻して1枚ドローします!」

「やはり、そう来ますか……」

 

 カードを除去する方法の中でも、『デッキバウンス』は特に強力と言われている。

 モンスターを奪った上での攻撃。更には完全に除去しつつドローへと変換するコンボは、流石だと認めざるを得ないだろう。

 

「最後に、手札3枚を全て伏せてターンエンドです。これで《シャッフル・リボーン》第2の効果で、手札1枚を除外するデメリットは適用されません」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 沈黙の魔術師やノリトの欠点を突き、状況を一変させたマハードのタクティクス。それに安堵する暇もなく、瞬く間に逆転を許してしまった。しかも少女の場には、黒魔導師から奪ったエクシーズ素材を持つ攻撃力3000のカオスエクシーズ。

 

「ねぇ、高坂さん。もしかして今のターン、寧々が引いていたカードが洗脳じゃなくて《精神操作》だったら……」

「保科さんの予想通り、サイモンの攻撃でマハードさんのライフは300まで削られていました」

 

 雪穂と柊史が言わんとしていることは、こうだ。

 魔法カード《精神操作》は、奪ったモンスターの攻撃とリリースを封じる代わりに、対象の制限及びライフコストは存在しない。

 よって、蘇生したノリトをランクアップさせる前に《幻想の黒魔導師》のコントロールを奪い、効果を発動して寧々のデッキから魔法使い族・通常モンスターを特殊召喚。

 

「寧々がその通常モンスターで《コスモクイーン》に攻撃して《ネクロ・ガードナー》で無効化されても、除外効果は適用されるってことでいいんだよね?」

「はい。攻撃を無効にされても、カードを除外する処理は適用されるみたいです。世間には一切出回っていないカードなので、ディスクやプレイマットの認識頼りになりますが」

 

 その後、サイモンの直接攻撃によってマハードのライフは虫の息となっていただろう。例え話を挙げればキリはないが、『適当な下級モンスター』や『攻撃力上昇カード』が寧々の手札にあれば決着まで持ち込むことすら可能であったのだ。

 

「サイモンは、カオス・オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで相手モンスターの表示形式を変更して、効果も無効にする。普通はそう簡単に突破できない、けど……」

「マハードさんの戦術は基本的に《ブラック・マジシャン》を多彩な魔法・罠でサポートする、というもの。正直な話、ノリトよりもサイモンの方が対処しやすいんですよね。

 あの魔術師が持つ真の実力は、まだまだこんなものじゃありません」

 

 《ブラック・マジシャン》及びその派生形態・サポートカードは本来この世界に存在しない。何度かアテムのデュエルを体感した雪穂でさえ、全てを確かめたとは言い切れない。

 初見である寧々に対し、これまで変幻自在な黒き魔術師の戦術で翻弄してきた。ならばきっと、次のターンも――

 

「私のターン、ドロー! 手札より永続魔法《黒の魔導陣》を発動!

 発動時の効果処理として、デッキトップ3枚を確認します。その中に《ブラック・マジシャン》またはカードテキストに《ブラック・マジシャン》の名が記された魔法・罠カードがあれば、1枚を手札に加える!」

 

 マハードはドローしたカードを即座に発動すると、デッキの上から3枚を掴み上げる。『めくる』ではなく『確認』であるため、詳細を寧々が知ることはできない。

 

「良きカードだ。私は魔法カード《騎士の称号》を手札に加え、残る2枚を任意の順番でデッキトップに戻します」

 

 彼は少しも迷うこと無く魔法カードを選び出し、残りを元に戻す。

 自らのエースモンスターをサポートするであろうカードを手札に加えるばかりか、デッキトップの操作。中々に便利なカードだ。

 だが、これは『永続魔法』として場に残り続けている。まだ何か別の効果を持つのでは、と寧々は推測していた。

 

「続けます。私は魔法カード《思い出のブランコ》を発動! 墓地に眠りし通常モンスター《ブラック・マジシャン》を特殊召喚!」

 

 《ブラック・マジシャン》

 ☆7 闇属性 魔法使い族 ATK2500

 

 黒き魔術師が、フィールドへと再臨する。こうしてエースモンスターを復活させるという行為は決闘者の誇りを明確に示す。ただ――

 

「攻撃表示、ですか。攻撃力を変化させるカードを使うつもりなのでしょうが、サイモンには――」

「ハズレです。ここで私は永続魔法《黒の魔導陣》のもう1つの効果発動! 自分フィールドに《ブラック・マジシャン》が特殊召喚された時、相手フィールド上のカード1枚をゲームから除外します!」

「ッ! 魔法カードによる、除去……!?」

 

 進化前と反対に、対モンスターの特殊能力を持つ風紀大宮司。《トーラの魔導書》のようなカードがあれば弱点を補うことができたのだが――

 

(この3枚の伏せカードでは、除去を防げませんね。ですが……!)

 

「私は、サイモンの効果を発動! カオス・オーバーレイ・ユニットを1つ使い、相手モンスター1体の表示形式を変更し、効果を無効にします!

 この効果は、効果モンスター以外のモンスターに対しても有効です!」

 

 黒き魔術師が魔導陣から撃ち出す魔力と、風紀大宮司が投げ放つ結晶。2つが交差し、それぞれへと直撃する。前者は強制的に膝をつかされ、後者は次元の彼方へと弾き飛ばされた。

 

「……綾地殿、貴女はこう考えていますね。

 『《思い出のブランコ》で特殊召喚したモンスターは、エンドフェイズに破壊される。表示形式を変更して攻撃を封じた以上、もう安全だ』

 違いますか?」

「……ッ!」

 

 どうやら図星のようだ。いくら高い攻撃力を備えたモンスターも、表示形式が変更されてしまえばその脅威は激減するのだから。フィールドから消え去ることが確定しているのならば、尚更。

 

「このカードにより、常識は覆ります。魔法カード発動、《騎士の称号》! 自分フィールドの《ブラック・マジシャン》をリリースすることで、手札・デッキ・墓地に眠る騎士へと進化させる!」

 

 2本の長剣が交差し、その上に『B』のアルファベットが描かれた蒼き盾が魔術師の眼前に出現する。そこへ左手を(かざ)すや否や、瞬く間に『騎士』と呼称するに相応しい甲冑姿へと変化していく。

 

「現れよ、黒魔導騎士! 《ブラック・マジシャンズ・ナイト》!!」

 

 《ブラック・マジシャンズ・ナイト》

 ☆7 闇属性 戦士族 ATK2500

 

 身に纏う甲冑の色は紫。また、右手に所持していた翠の杖は長剣へと持ち替えられていた。それでも身に纏う赤と黒の外套や、剣の(つば)に埋め込まれた真紅の宝玉が、魔術師としての印象をある程度残している。

 

「《ブラック・マジシャンズ・ナイト》が特殊召喚に成功したことで、モンスター効果発動! 相手フィールドに存在するカード1枚を破壊します!

 対象は、デッキ側の伏せ(リバース)カード!」

 

 寧々の場に伏せられたカードは3枚。《シャッフル・リボーン》のデメリットを回避するためだけに伏せた可能性も高いが、マハードは敢えて厄介な《補給部隊》を狙うという選択肢を除外する。

 

「……ッ! ならば、私は対象となった伏せ(リバース)カード、速攻魔法《大欲な壺》を発動します! 除外されている3枚のモンスターカード、

 

 《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》2体、

 《CX 風紀大宮司サイモン》

 

 これらをデッキに戻してカードを1枚ドローします!」

 

 黒魔導騎士が繰り出す魔力の刃が斬り裂いたのは、発動タイミングを問わないフリーチェーンの速攻魔法。

 相手の狙いを逸らしつつモンスターを回収し、尚且つカード消費は±0。まんまとハズレを引かされてしまったことになる。

 

「上手く躱しましたね。ですが、バトルフェイズ!

 《ブラック・マジシャンズ・ナイト》で、プレイヤーに直接攻撃(ダイレクトアタック)!」

 

 

 

 ――黒・魔・導・斬・撃(ソード・オブ・ダーク・マジック・アタック)!!

 

 

 

 黒魔導騎士の攻撃力は2500ポイント。対して少女の残りライフは2000。これが通れば決着だが、場には未だ2枚の伏せ(リバース)カードが残されている。

 

「耐えてみせます! 速攻魔法《鈍重》を発動! フィールド上のモンスター1体の攻撃力を、その守備力の数値分ダウンさせます!」

「何ッ!?」

 

 《ブラック・マジシャンズ・ナイト》

 ATK2500 → ATK400

 

 攻撃を繰り出さんとする騎士の動きが、目に見えて鈍くなる。その表情は苦痛に歪み、剣を持つことはおろか、立つだけで精一杯といったところだ。

 

「寧々が《シャッフル・リボーン》の効果で引いたのは《鈍重》だったか。前のターンに《幻想の黒魔導師》の攻撃力を下げていれば、大ダメージを与えられたんだからね」

「高い攻撃力を持つエース級モンスターは、守備力も高いものが多いです。特に《ブラック・マジシャンズ・ナイト》の守備力は2100ポイント。下げ幅は尋常じゃありません……」

 

 雪穂が知る限り、エース級モンスターで高攻撃力・低守備力のモンスターは、時花の魔女をはじめとして非常に少ない。

 魔法使いとしては攻守ともに最高クラスを誇る《ブラック・マジシャン》だが、そのバランスの取れた能力値が仇となってしまった。遂に黒魔導騎士は剣を振るうことを一時断念し、低級モンスター以下の拳を少女へと繰り出す。

 

寧々 LP2000 → LP1600

 

「私はバトルを終え、メインフェイズ2へ移行。2枚のカードを伏せ、ターンを終了します」

 

 《ブラック・マジシャンズ・ナイト》

 ATK400 → ATK2500

 

 

【挿絵表示】

 

 

 重力の枷から解き放たれた騎士が、取り落とした剣を構え直す。同時に、大幅に減少していた攻撃力も元の数値に戻る。

 特殊召喚時にあらゆるカードを破壊する特殊能力は強力だが、その種族は『戦士族』。能力使用後は、《ブラック・マジシャン》ばかりか『魔法使い族』用の補助も受けられないただの高攻撃力モンスターだ。

 

「私のターン、ドロー! 手札から魔法カード《マジック・プランター》を発動します! フィールド上の永続罠カード、《デモンズ・チェーン》を墓地に送ることで2枚のカードをドロー!

 続けて、魔法カード《終わりの始まり》! 私の墓地には7枚以上の闇属性モンスターがいる時、そのうち5枚を除外することで3枚のカードをドローします!」

「貴女の墓地には、丁度7体の闇属性モンスター。条件は満たしていますね」

 

 これまで無意味に残っていた永続罠カードを処理しつつ、手札に変換。そして、《黒き森のウィッチ》と《ジェスター・コンフィ》を除いた5体をコストに、3枚もの手札を補充。驚くべき速度のドロー加速である。

 

「……来ましたか。私は、ドローした魔法カード《ダーク・バースト》を発動します!」

「墓地から攻撃力1500以下の闇属性モンスターを1体手札に戻すカード……。《黒き森のウィッチ》を回収するつもりですか」

「ええ、その通りです。私は《黒き森のウィッチ》を手札に戻し、新たなモンスターを裏守備表示で場に出します」

 

 回収と同時に、寧々の場へ伏せられた1体のモンスター。一見正体不明のモンスターだが、何を出したかは口に出すまでもなく全員が分かりきっていた。

 

「綾地さんが伏せたモンスターは、間違いなく《黒き森のウィッチ》。マハードさんの攻撃を耐えつつ、沈黙の魔術師をサーチすることが狙いでしょうか」

「……確かに守備固めは悪くないけど、寧々は今の局面でそんな甘いプレイングをする娘じゃないさ」

 

 同じ魔法使い族の使い手として、幾度となくせめぎ合って来た2人のデュエル。勢いを絶やせばそのまま押し切られてしまうであろうと少女は感じていた。

 

(マハードさんは、今のタイミングでも《リビングデッドの呼び声》や《戦線復帰》のようなフリーチェーンの蘇生カードを使いませんでしたか。

 ……通常召喚権を行使した以上、もう止まるわけにはいきません!)

 

 彼女が繰り出すのは、『守り』ではなく『攻め』の一手。そのためのカードは既に場と手札に揃っている。

 

「手札から、魔法カード《ブラック・ホール》を発動! 互いのフィールドに存在するモンスターを全て破壊します!」

「ここで、《ブラック・ホール》!?」

 

 黒魔導騎士とともに、寧々の場に伏せられたばかりの魔女が漆黒の渦の中へと姿を消してしまった。

 自らのカードすら巻き込む破壊行為だが、使い方次第で強力なコンボを生み出す。

 

「私のモンスターが破壊されたこの瞬間、2枚のカードの効果発動!

 《黒き森のウィッチ》の効果によりデッキから守備力1000の《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》を手札に加え、《補給部隊》の効果で1枚ドロー!」

 

 マハードのモンスターを破壊しつつ、自らは手札を回復。良いコンボではあるが、直前のプレイングに対しても彼は内心で賞賛していた。

 

(なるほど。《黒き森のウィッチ》を裏守備表示で場に出したのは、私が《トーラの魔導書》や《禁じられた聖槍》のようなカードで耐性を付与することを避けたのか……)

 

 仮に《黒き森のウィッチ》が破壊を免れた場合、何らかの特殊召喚素材として処理されなければ、寧々の場には低めの攻撃力を持つモンスターが晒されることとなる。

 そうなれば返しのターンで手痛い反撃……、手札次第では勝敗が決する可能性もあった。小さいながらも冷静かつ的確なプレイングであると言えよう。

 

「まだまだ引かせて頂きます! 前のターンに伏せていた魔法カード、《闇の誘惑》を発動! カードを2枚ドローして、手札の闇属性モンスター《見習い魔女》を除外します!」

 

 更なる手札増強により、寧々の手札は6枚。これだけの枚数があれば、様々な戦法を繰り出すことが可能となる。

 

「手札から魔法カード発動、《予想GUY》! 自分フィールドにモンスターがいないため、デッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚します!

 私が呼ぶモンスターは、これです!」

 

 《エンジェル・魔女》

 ☆3 闇属性 魔法使い族 ATK800

 

 (ほうき)に跨り、赤黒い装束を纏う金髪の女性。種族・属性に違わず『魔女』と呼ぶに相応しい身なりだが、その背に見えるのは純白の双翼。

 元々は天使になる運命を背負っていたが、自らの願いであった魔女になることを選んだ稀有な経歴を持つのだという。

 

「新たな魔法使い族を呼び出した、ということは……!」

「私は、魔法使い族である《エンジェル・魔女》をリリース! 三度(みたび)現れてください、《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》!」

 

 《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》

 ☆4 光属性 魔法使い族 ATK1000 → ATK3000

 

 《黒き森のウィッチ》の効果で手札に加わったモンスター及びその同名カードは、そのターン内で効果を『発動』できない。だが、沈黙の魔術師の特殊召喚は《ジェスター・コンフィ》と同じく『発動』という手順を踏まずに行われる。

 

「さらに、手札から装備魔法《魔導師の力》を発動! サイレント・マジシャンの攻撃力と守備力を、自分フィールドの魔法・罠カード1枚につき、500ポイントアップさせます!」

 

 攻撃力を手札に依存するモンスターを操る場合、手札を減らすプレイングはやや躊躇われる。しかし、魔術師自身と装備魔法の上昇値は一致しており、彼女の場には永続魔法《補給部隊》が発動中だ。

 

「寧々の場に魔法・罠カードは合計2枚。これで、寧々のサイレント・マジシャンの攻撃力は結果的に500ポイント上昇する!」

 

 《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》

 ATK3000 → ATK2500 → ATK3500

 DEF1000 → DEF2000

 

「この一撃で決めます! 私は、《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》で、プレイヤーに直接攻撃(ダイレクトアタック)

 ――サイレント・バーニング!!」

 

 レベル4のモンスターでありながら、並の最上級モンスターを上回る攻撃力を獲得した魔術師。その一撃がマハードの残りライフ2800を削り取る――

 

 

 

伏せ(リバース)カード、オープン! 速攻魔法《ハーフ・シャット》! 貴女のサイレント・マジシャンの現在の攻撃力を、ターン終了時まで半分にします!」

「モンスター弱体化の速攻魔法……!?」

 

 《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》

 ATK3500 →ATK1750

 

「流石はマハードさん。サイレント・マジシャンが持つ魔法カードの発動を無効にする効果も、このターンは《黒き森のウィッチ》のデメリットによって『発動』できません」

「だけど、寧々の攻撃が止まったわけじゃない。彼のライフを削りきれずとも、ライフポイントは逆転する」

 

マハード LP2800 → LP1050

 

 まさしく間一髪。《黒き森のウィッチ》の効果が書き換えられたからこそ、必殺の一撃を回避することが可能となった。

 しかし、エラッタが無ければ永遠の禁止カードに名を連ねていたのだからその気持ちは複雑であるのかもしれない。

 

「……この攻撃も、届きませんでしたか。ですが、次のターンからはサイレント・マジシャンの効果は復活します。

 私は、手札を2枚伏せてターンを終了です。《魔導師の力》の効果により攻撃力は変動せず、守備力の上昇のみが適用されます」

 

 《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》

 ATK1750 → ATK3500

 DEF2000 → DEF3000

 

 

【挿絵表示】

 

 

 高攻撃力かつ魔法無効効果を持つ魔術師と、2枚の伏せカード。崩しても崩しても、幾度となく構築される防御の布陣は並の決闘者の戦意を喪失させていくことだろう。

 現在マハードの手札はなく、残されたのは発動中の永続魔法《黒の魔導陣》と伏せカード1枚のみ。心理的重圧はどれ程のものか。

 だが、それでも。彼は決して諦めない。魔法使い族デッキ同士で戦う意地などという単純なものではない。宿命の相手を前に、今度こそは必ず勝つという信念を持って、デッキへと手を伸ばす。

 

「私のターン、ドロー! ……伏せていた罠カード、《無謀な欲張り》を発動!」

「確かそれは、カードを2枚引く代償として、発動後2ターンの間ドローフェイズをスキップするカード。勝負に出ましたか……!」

 

 強烈なデメリットを覚悟した上での発動。無謀な賭けによって、彼が最後に手にするであろう2枚の(カード)。それがもたらすのは『希望』か、それとも『絶望』か。

 

「……ドローッ!!」

 

 一瞬の静寂。残り15枚のデッキの中から掴み取った2枚のカードは――

 

「この瞬間、私は手札のモンスター効果を発動! このモンスターがドローされた時、自身を手札より特殊召喚できる!」

「ドローによって、特殊召喚されるモンスター!?」

 

 ドローやサーチによって手札へ加わることを引き金として特殊召喚されるモンスターは数枚存在する。だが、この局面で呼び出したとして戦況を覆すカードなど、寧々には想像もつかない。

 

「さぁ、今こそお見せしましょう! 我が魂を!」

 

 

 

 ――現れよ、レベル7! 《守護神官マハード》!!

 

 

 

 《守護神官マハード》

 ☆7 光属性 魔法使い族 ATK2500

 

「なっ!? これは……!」

 

 現れたのは、《ブラック・マジシャン》と同じレベル・攻守を持つ魔法使い族モンスター。

 このデュエル中、寧々は未知のモンスターや魔法・罠カードを何度も目の当たりにしてきた。心の何処かでは、『もしや』という予感もあったのかもしれない。

 だが、それでも。寧々を含めて大多数の人間を混乱させずにはいられない。

 

「高坂さん、オレの目はおかしくなったのかな。あの人が呼び出したモンスターって……」

「いいえ、保科さんの目は正常ですよ。もちろん、ソリッド・ヴィジョンの故障でもありません。詳細に関しては、色々な意味でお教えすることはできませんが」

 

 寧々や柊史と同じ部活動に所属する後輩は、自らの苗字を名に持つカードを遊び心でデッキに入れている。しかし、たった今呼び出されたモンスターの名と姿は、『似ている』などというものではない。カード名も然ることながら、その魔法使い族は少女の眼前に立つ青年と瓜二つの顔をしているのだ。

 また、そのモンスターの姿を彼女たちは初めて見るにも関わらず、以前に耳にした覚えがあった。

 

(確か、因幡(いなば)さんがネット上で戦ったという人も、同じカードを使っていたと言っていました。

 もしかして、この人が……?)

 

 その決闘者も《ブラック・マジシャン》を使役していたと寧々の後輩は散々口にしていた。初めて見るカードや、居丈高な態度が印象的であったとも。

 ただ、当時及び『以前』の彼女はデュエルモンスターズに触れる機会さえなかった。そのため今の今まで完全に頭から抜け落ちていたのだ。

 

「《エヴォルカイザー・ラギア》の召喚無効効果をすり抜ける、最上級モンスター……。しかし、攻撃力は私のサイレント・マジシャンの方が上です!」

「ならば、届かせるまで! 手札より、《魔導剣士 シャリオ》を通常召喚!」

 

 《魔導剣士 シャリオ》

 ☆4 風属性 魔法使い族 ATK1700

 

 タロットカードの大アルカナの1つ、『戦車(The Chariot)』の名を関する白馬の青年。主を勝利に導くために、その身に秘める力を解き放つ。

 

「シャリオの効果発動! 手札から「魔導書」の名を持つ魔法カード、《ヒュグロの魔導書》を墓地に捨てることで、墓地に眠る魔法使い族1体を手札に戻します。

 対象となるモンスターは、《幻想の見習い魔導師》!」

「ここで《幻想の見習い魔導師》を……?」

 

 発動が実質禁じられている魔法カードをコストとして、可憐な魔導師がマハードの手札へと舞い戻る。手札から自身を墓地に送ることで魔法使い族・闇属性のモンスターを大幅に強化する特殊能力は、彼のデッキにとっては非常に有用だ。

 

(しかし、変ですね。守護神官は『光属性』のモンスター。マハードさんはプレイングミスを犯すような人ではないはずですが……)

 

「綾地殿、貴女の疑問にはこのカードでお答えしましょう!

 墓地より、速攻魔法《帝王の轟殻》を除外することで『効果』発動! ターン終了時まで、フィールドに表側表示で存在する全てのモンスターは、私が宣言する属性となる!

 よって、3体のモンスターを全て『闇属性』へと変更します!」

「ッ! 《手札抹殺》の効果で墓地に送られたカードですね。それを使えば《幻想の見習い魔導師》の効果で、守護神官の攻撃力は4500ポイント……。ですが、たとえ戦闘破壊されても私のライフは600ポイント残ります!」

 

 それだけではない。沈黙の魔術師は戦闘及び相手の効果で破壊された場合に手札・デッキの「サイレント・マジシャン」を特殊召喚する能力を持つ。この効果で呼び出されるのは、当然《サイレント・マジシャン LV8》であり、攻撃力は3500ポイント。このままターンを明け渡せば、攻撃力1700の魔導剣士が攻撃を受け、マハードの敗北は必至。

 だが、雪穂は知っている。守護神官が持つ真の力は、まだここからだということを。

 

「《守護神官マハード》が闇属性モンスターとバトルする場合、ダメージステップの間だけ攻撃力を2倍にします。他のカードで強化すれば、一撃必殺の攻撃を叩き込むことが可能です」

「攻撃力倍増って、大きく出たな……。最後の最後でとんでもない隠し玉を出してきたね」

 

 柊史が知る由もないが、マハードは生前闇の千年宝物(せんねんアイテム)の所有者の1人であった。その中でも、彼が司る千年輪(せんねんリング)は最も悪しき魂を宿す。

 自身と相手を闇に染め、愛弟子の精霊(カー)である魔導師の補助を受けて決着をつける。光の神官が闇をもって闇を制す、これもまた一興ということか。

 

「バトル! 私は《守護神官マハード》で、《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》を攻撃!

 ――黒・魔・導・波(ブラック・マジック・バースト)!!」

 

 闇の力を宿した魔力(ヘカ)が、精霊魔導士の写し身より解き放たれた。コンボによって得られる攻撃力は、9000ポイント。たとえ攻撃力3500の沈黙の魔術師が相手であっても、勝敗を決するには十分すぎるダメージを与えられる。

 

「……その攻撃は通しません! 罠カード発動、《聖なるバリア -ミラーフォース-》!!

 相手の攻撃表示モンスターを、全て破壊します!」

「何ッ!?」

 

 この局面まで沈黙を保っていた、2枚の伏せカード。そのうち片方が遂に牙を剥く。言わずと知れた攻撃反応型の盾が魔導波を文字通り反射し、精霊魔導士と魔導剣士へと直撃した。

 

「これで、マハードさんのモンスターは全滅しました。次のターン、サイレント・マジシャンの直接攻撃(ダイレクトアタック)で私の勝利です!」

 

 マハードの手札に残ったカードは、上級モンスター1枚のみ。伏せカードも無い今、彼に打てる手はもう残されていない。少女の勝利を、この場にいるほぼ全ての者が確信していた。

 

 

 

 

 

 ――ほぼ、全ての者が。

 

 

 

 

 

「それはどうでしょう? まだ私のバトルフェイズは続きます。《守護神官マハード》が破壊されたこの瞬間、最後の特殊能力を発動します!」

「最後の、特殊能力……?」

 

 宣言を耳にした瞬間、ある日寧々が柊史とのデュエル中に、後輩と交わしたやり取りを思い出していた。その時も確か、『アテム』とのデュエル内容を聞かされていたはずではなかったか。

 

 

 

 ――因幡さん、私のデュエルディスクが壊れたのかもしれません。サイレント・ソードマンの効果の発動に対して罠カードを発動したいのに、反応してくれません。

 

 ――どれどれ? ああ、別に故障じゃないですよ寧々先輩。《神の宣告》はどんな特殊召喚も無効にできるって思いがちですけど、『モンスター効果の発動』による特殊召喚は基本的に無効にできないんですよ。ここで発動できるのは、《神の警告》ですね。

 

 ――ごめんなさい、日本語でお願いします。

 

 ――く、口で説明するのは難しいですね。詳しい解説が載ってるサイトがあるので、保科センパイを倒したあとで勉強しましょう。

 

 ――オレが負けること前提で話進めないでくれないかな、因幡さん。いやまぁ、サイマジの特殊召喚に打った《神の警告》を無効にされた時点でかなり厳しいんだけど。

 

 ――別にいいじゃないですか。それにしても、神宣と神警の違いには嫌な思い出が……。

 

 ――ゲームに詳しい因幡さんも覚えるのに苦労したんですか?

 

 ――それもありますけど、寧々先輩には話しましたよね、『アテム』とかいう態度でかい人のこと。その人とデュエルした時、ラギアで無効にできない特殊召喚に対して神警を打ったら、別のモンスターを出されてそのままラギアを倒されちゃったんですよ。

 

 

 

(確か《守護神官マハード》には、破壊された時に発動される効果が……!)

 

 マハードは死してなお主君に尽くし続けた忠臣。そんな彼の写し身である《守護神官マハード》の(バー)は、決して滅びることはない。

 

「我が魂は不滅! このカードが戦闘またはカード効果によって破壊された場合、手札・デッキ・墓地に眠りし黒魔術師を特殊召喚する!

 転生せよ、我が精霊(カー)《ブラック・マジシャン》!」

 

 《ブラック・マジシャン》

 ☆7 闇属性 魔法使い族 ATK2500

 

 寧々が自らの魂を宿した魔術師、それを何度でも呼び出すのならば。マハードも彼自身と主の魂のカードを繰り出そう。

 漆黒の魔術師と沈黙の魔術師、これが最後の闘い。

 

「《ブラック・マジシャン》が特殊召喚されたことにより、《黒の魔導陣》の『効果』を再び発動! 貴女のカード1枚を除外します! 対象は当然、サイレント・マジシャン!」

 

 既に表側表示で存在する永続魔法の『効果』に対して、沈黙の魔術師は自身の特殊能力を使用することはできない。この除外効果によって退けてしまえば、先と同じく後続を呼び出すことも不可能だ。

 

「その効果は既に対策済みです! 私は、罠カード《砂塵の大嵐》を発動!

 《黒の魔導陣》を破壊することで、除外効果は不発に終わります!」

 

 牛や家をも巻き上げる嵐が、魔導陣の一部に切れ目を入れる。繊細な制御が必要となる高等魔法ゆえに、僅かな妨害を受けただけで陣そのものが跡形もなく消滅してしまった。

 永続系の魔法・罠カードは、効果処理時にフィールド上に存在しなければその効果は適用されない。よって、沈黙の魔術師は傷一つ負うことなく健在だ。

 

「……やはり、同じ手が2度も通じる相手ではありませんでしたか。ならば戦闘で決着をつけましょう。

 ファイナルバトル! 私は《ブラック・マジシャン》で、《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》を攻撃!」

「《幻想の見習い魔導師》で再び強化するつもりですね。しかし、私にはサイレント・マジシャン自身と《補給部隊》の効果があります。

 たとえ戦闘によって破壊されても、次のターンで…………あぁっ!?」

 

 後続を確保し手札を補給するこの2枚は、持久戦において非常に優れた組み合わせである。しかしそれは、攻撃を凌いだ上で次のターンを迎えることが前提だということを忘れてはならない。

 

「綾地殿が発動した《魔導師の力》は、場の魔法・罠カードの枚数によって強化値が決定する。

 ミラーフォースと《砂塵の大嵐》は、ともに発動後に消滅する罠カード。よって、サイレント・マジシャンの攻撃力・守備力は1000ポイント減少します!

 更にダメージ計算時! 《幻想の見習い魔導師》を手札から墓地へ送ることで、《ブラック・マジシャン》の攻撃力・守備力を2000ポイントアップさせる!」

 

 《沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン》

 ATK3500 → ATK2500

 DEF3000 → DEF2000

 

 《ブラック・マジシャン》

 ATK2500 → ATK4500

 DEF2100 → DEF4100

 

 沈黙の魔術師が放った魔力が徐々に勢いを失い、黒魔術師と拮抗する。その精霊(カー)に力を貸すのは、愛弟子の精霊(カー)

 

「これで、決着です!」

 

 

 

 ――黒・魔・導・連・弾(ブラック・ツイン・バースト)!!

 

 

 

 交差した2本の杖から解き放たれる、魔術師の連携魔法攻撃。結束の黒魔導が遂に静かなる炎を打ち破り、沈黙の魔術師に引導を渡す。

 そして、発生したダメージの余波が少女へと向かい――

 

「私の……、負けですね」

 

寧々 LP1600 → LP 0

 

 終了を告げる甲高い機械音が店内に響き渡る。一瞬の静寂ののち、店内は互いの健闘を讃える拍手に包まれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 デュエルの決着から数十分後。『穂むら』を後にした柊史と寧々の姿は、東京駅の中にあった。より詳しく記すと、京都へと向かう新幹線に乗車し、席に着いたところである。因みに通路側に座っているのは柊史だ。

 柊史としては、今日は何処かで宿泊したいと考えていた。しかしそれを寧々の両親へと話したところ、父親から猛反対を受けたために止む無く断念せざるを得なかった。

 家に泊まることは一応の許可を出せても、流石に遠方で年若い男女が一晩を過ごすまでは認められなかったようだ。

 

(過保護な人だし、オレも寧々も本来は受験生だってことを考えれば仕方ないと言えばそれまでなんだけどね)

 

 別に『そういう』ホテルに宿泊したいという気持ちは3割程度しか持っていなかったが、既に一線を越えていることを知られている手前、余計に怒らせたいとは思っていない。しかし、寧々の方はどう思っているのだろうか。初めての東京で、疲労が溜まっているのならばもう少しゆっくりするべきだったのではないか。

 店を出てからというもの、思案に暮れることの多い恋人へと話を切り出してみる。

 

「……そうですね。ホテルで夜を明かすというシチュエーションには心惹かれましたが、お父さんとお母さんに心配をかけすぎるわけにもいかないので、今日のところは諦めてます」

「えっ」

「えっ」

 

 単に宿泊の許可が下りなかったことへの気持ちを聞いたつもりだったのだが、『ホテルで夜を明かす』などという意味深な言葉が飛び出すとは半分しか思っていなかった。空気が凍り、2人の間に沈黙が下りる。

 

「……………………死のう、死ぬしかありません」

「待って! 久々にその台詞聞いたけど、落ち着いてくれ! 急に話を振ったオレが悪かったから!

 そ、それよりも寧々! さっきから考え込んでいるみたいだけど、やっぱりさっきの和菓子屋のこと?」

 

 寧々がとある悩みを抱えていた頃は度々口にしていたが、美少女が真顔で『死ぬしかない』などと呟くのは何度聞いても心臓に悪い。

 他の乗客も只ならぬ気配を感じ取ったのか、鋭い視線が無数に突き刺さる。この後も呪詛をつぶやくようでは、最悪乗務員を呼ばれかねない。そう思った柊史は急いで話題を転換する。

 

「はい。初めてのミラーマッチに、見たことも聞いたこともない沢山のカード。負けたのは悔しいですが、いい思い出ができました。オマケのお菓子も沢山頂きましたし。

 ただ、あのマハードさんという方は色々と謎の多い人だと思います」

「……本人もだけど、彼が仕えているっていうヒトデ頭の人のインパクトも相当だったよなぁ」

 

 データベースに全く載っていないカードを次々と操り、最終ターンには本人と瓜二つのモンスターを召喚した、和菓子屋勤めの外人男性。近辺では話題集めに事欠かないはずだ。

 また、デュエルが終わった直後に彼等はマハードへとある質問をした。インターネット上では、『アテム』という名前でデュエルをしているのではないかと。もしもそうであったのなら、彼はリアルとネット上で全く態度の違うネット弁慶ということになる。

 しかしそれはきっぱりと否定され、本人の写真も見せて貰った。あまりにも奇抜な髪型と、ユーザー名だと思ったものが実名であったことには心底驚いたものだ。

 

「連絡先を交換しましたし、次はオカ研のメンバーも誘って行ってみたいですね」

「リベンジに燃える因幡さんが荒れて、それを面白がる戸隠(とがくし)先輩の姿が目に浮かぶよ……」

椎葉(しいば)さんはスクールアイドルに興味を持っていましたし、高坂さんのお姉さんと話が弾むかもしれません」

 

 マハードが忠誠を誓うヒトデ頭の少年や、スクールアイドル活動をしているという雪穂の姉とは、残念ながら会うことはできなかった。

 ただ、互いの連絡先は交換してあるので今後も交流を続けていきたいとは考えている。遠い地で出会った者にまた会いたいと思うなど、1年前までの2人を知る者は揃って耳を疑うことだろう。

 

 やがて、新幹線は京都へ向けて動き出す。それから間もなくして、寧々のスマートフォンが着信を告げる振動を始めた。

 

「あ、早速『穂むら』から電話がかかってきたみたいです。私、(デッキ)に出てきますね」

 

 新幹線の中では、マナーモードにした上で座席での通話は厳禁。どうしてもしたい場合は、デッキにまで出なくてはならない。寧々は一言告げると、デッキへと足を運んだ。自身以外に人がいないことに安堵した少女は、『通話』をタッチして機器を頬へと近付ける。

 

『もしもし、マハードですが』

「え、マハードさん?」

 

 柊史や父以外の男性から電話が掛かってくることは滅多にないため少々顔が引きつったが、努めて冷静に言葉を返す。

 

『突然すみません、綾地殿。今はお時間大丈夫でしたか?』

「はい、大丈夫です。新幹線の中なので、あまり長電話はできませんが」

『でしたら、要件だけをお伝えするとしましょう。あまり長く話をして、貴女方の時間を奪うわけにもいきません。

 お2人が店を出た後に掃除をしていたのですが、綾地殿が忘れ物をされたようなので、確認のお電話をさせて頂きました』

「はぁ。忘れ物、ですか?」

 

 何だろう、と寧々は首を傾げる。新幹線に乗る直前に買い物をしたため財布でないことは確かだ。心当たりは無いが、本当に自分のものであれば後日着払いで郵送して貰う必要がある。

 

『ええ。複数の球体が連なり、末端に輪がついた――』

「違います!!!」

 

 マハードが言い終える前に、寧々は全力で否定した。心当たりがありすぎる彼女の顔は、一瞬で真紅に染まる。

 

『あ、綾地殿?』

「私は知りません! マハードさんが考えている『パールのようなもの(自主規制)』なんて!!」

『名称を口にしている以上、明らかに肯定しているのでは?』

「はっ!」

 

 盛大に自爆。久々にやってしまった。しかも、修史以外の人に対して。

 

「き、興味があったんですから仕方ないじゃないですか! ネットで知り合ったロシア出身の女の娘も絶賛していた人気商品なんですよ! マハードさんも成人した男性なんですから、使っている画像や動画を検索したことがありますよね!?」

 

 彼女はナニを言っているのだろうか。

 

『い、いえ……。『パールのようなもの(自主規制)』というのは初めて耳にしました。

 それよりも、含まれる単語や貴女の言動から察するに、まさかそれは……』

「――」

 

 絶句。電話越しであっても、彼が赤面しているのがわかる。どうやらこの外人男性は、『その手の知識』に疎かったらしい。もはや、言葉すら出なかった。

 

 

 

 ――ツー、ツー、ツー。

 

 

 

 通話を終了したのは、どちらであったのか。その直後、

 

「もうやだぁああああ! お家帰るぅううううう!!!」

 

 

 

 騒ぎを聞いて駆けつけた乗務員から厳重注意を受ける程の絶叫が、車内に轟いた――。

 

 

 

●オマケ

 

 

 

 一方『穂むら』では。マハードは生前に犯した失態と同様の後悔に苛まれていた。

 

「雪穂殿、私はもう消滅した方が良いのかもしれません……」

「何言ってるの、マハードさん! というか、どうして『パールのようなもの(自主規制)』を持ってるの!?」

 

 後日、彼はアテムとともに寧々たちの元へ伺い、地に頭を擦り付けるという典型的な土下座スタイルで謝罪したという。

 




 新マスタールール移行に伴い、盤面を挿絵で描写したものの、2人ともEXデッキをほとんど使わないので、大きな影響はありませんでした。
 一応、書いてる途中で「魔弾」や《導爆線》などの位置を参照するカードが増えているため、今後はこうしたカードも使っていきたいです。

 作中でアテムとめぐるが戦ったことがあるという描写は、以前Twitterで投稿した立ち絵鑑賞モードを使った小ネタです。

 誕生日を迎えたことりのデュエルもそろそろ書いておきたいところですが、次の投稿は未定。投稿ペースはせめて月一にしたいところですが、何故か最近は時間が経つのが早すぎる気がしてなりません。もう年なのかなぁ……(遠い目)

それでは、次回も宜しくお願い致します。
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