どうもこんにちは、またしても時間が空きました。感想やお気に入り数が少しでも増えるたび、「頑張らなくては!」という思いを奮い立たせて切りの良い部分まで投稿に漕ぎ着けました。
本当は2月のはじめに投稿できるはずだったんですけどね、「ソーサレス*アライヴ!」やってたら1週間以上持っていかれました。ちなみに来週末は「金色ラブリッチェGT」です(おい待て)
ようやく、ゾーンの初デュエル。アニメよりも使い勝手がよくなった時械神、そのお相手は……。
それでは、どうぞ!
万雷の拍手も、やがて終わりが訪れる。徐々に会場内が元の静けさを取り戻していくと、黒羽仮面は片膝を付き、己の無念を嘆いた。
「まさか、私が怪人に屈するとは……! このままでは、秋葉原が悪の手に墜ちてしまう!」
本心なのか演技なのか、わかりにくい悲痛な声。ヒーローショーを謳っているため、語る必要は無かったかもしれないが、本来ここで勝つのは黒羽仮面の予定であった。デッキのオートシャッフル機能などを細工せず、双方の実力を存分に発揮した上で、だ。
彼女の操る【BF】は地力の高いデッキであり、今回のエキシビジョンマッチで初公開となった強力なカードも数多く使われていた。だが、相手は怪人とは言え
「貴様のデュエルは素晴らしかった! コンボも、戦略も! だが、しかし、まるで全然! このかしこいかっこいい俺を倒すには程遠いぜ! ふはははは!」
気色悪い仮面をつけて高笑いを上げている姿からは、全く想像できないだろうが。
身内の恥に穂乃果たち3人が頭を抱え、司会の少女はどうしたものかと考えていると、舞台袖から1人の男が姿を現す。
「そこまでです、ヒトデ男。これ以上の狼藉は、私が許しません」
「何っ!? お前は!」
彼を一言で言い表すと、『蟹』だった。衣服や装飾品に蟹が描かれているからではなく、頭髪の形状が蟹そっくりであるからだ。他の特徴は、左頬に描かれた黄色い線と、珍しい左利き用のデュエルディスクを装着しているところか。
この店の常連客は見慣れているため『ああ、次は店長が出てくるのか』と思ったことだろう。しかしそうでない者の殆どは、『なんだあの蟹頭は』という感想を抱いていた。
そして真っ先に反応したヒトデ男は、興奮気味に男へ詰め寄る。
「なぜ遊星がここに!? お前もこの世界に来ていたのか!」
「私は不動遊星ではない。私の名はゾーン、この店のオーナーを務めている者です」
対する店長、ゾーンは彼を冷たくあしらい、デュエルディスクを装着した右腕を突き出した。
「
今私が戦うべき決闘者は、貴方ではなく彼女です」
「彼女、だと?」
ゾーンが振り返り、彼が出てきた場所へと向けられる。釣られてヒトデ男や観客たちも同じ方向を見やると――
「店長さんの言う通りだよ、ヒトデくん。ちょっと下がっていて貰えるかな?」
「……ッ!」
そこに立つのは、誰もがハッと息を呑む可憐な美少女。
真っ先に注目を浴びるのは、その衣装。歴史の授業や博物館、街の呉服屋でもお目にかかれないほどの綺羅びやかな和装は、見る者が見れば高級車数台分でも足りない値をつけることだろう。腰近くまで伸ばされた黒髪や、衣服に覆われていない真っ白な素足とあどけない表情もまた、高価な陶磁器のよう。
会場に集ったどのコスプレすら霞む美しさは、中学生ほどの外見でありながら、まるで神話の世界から顕現した天女のようだという畏敬の念を誰もが抱いた。
だが、
(
(ああ。奴から発せられる、絶対的な存在感。俺が初めて《オシリスの天空竜》と向かい合った時と全く同じだ)
『カフェ・ノワール』のオーナーである天元ルイも、ただの人間とは異なる雰囲気を持っていた。しかし眼前の少女はその比ではない。
三幻神それぞれと戦った時の感覚に似ているが、ただの人間から感じられるなど絶対にあり得ぬこと。ただの人間でないとすれば、それは……。
「ヒトデ男さん、そろそろ私たちは下がりましょう。いつまでもこの場にいたら、2人のデュエルの妨げになります」
色々と確かめたいことがあったのだが、やむを得ず黒羽仮面とともに移動する。正直、司会の少女から『あっち行ってよ、邪魔』と言いたげな視線を送られたことが非常にショックだった。
そして舞台袖へと引っ込むと、黒羽仮面は何やら私用があると言い去っていく。まるでヒトデ男の正体を知っているかのような態度であったが、彼にそれを気にする余裕など無い。今にも始まろうとするデュエルはもちろん、舞台袖からステージをじっと見つめる巫女装束の少女の方が余程気になっていたからだ。
「初めまして、ですね。アテムさん。それと今は姿を消しているようですが、精霊魔導師のマハードさん」
「ッ! 俺の名前だけでなく、マハードまで……!」
「貴方がたについては、連盟の方である程度調べていますので」
ダサい伊達眼鏡を外し、ヒトデ男改めアテムは隣の少女を見やる。彼女は低身長のアテムよりもさらに小柄だが、醸し出す空気は膝まで伸びた蒼髪のように冷ややかで、威厳に満ちていた。
「俺たちのことを、調べていただと?」
「はい。貴方やこの店の主要人物は、別世界より突如現れた存在。この世界にとって脅威となるか否か、連盟では見極める必要がありました」
『さぁ、エキシビジョンマッチ第2戦が始まるよ~! 戦うのは「Yliaster」の店長、ゾーンと…………』
「
『そう! 和服美少女の水緒里ちゃん!』
どうやら珠樹は、彼女の名前を知らなかったらしい。ゾーンと水緒里、30cmもの身長差がある2人が、互いにデュエルディスクを構え火花を散らす。
「店長さん、本気でかかってきていいからね?」
「無論、そのつもりです。まさか私がそのような言葉を掛けられる日が来るとは思いませんでしたが」
可憐な少女が、店を預かる男性に対して本気を促す。そのやり取りを疑問に思わない者はいないだろう。だが言われた本人は気にする様子を見せず、むしろ当然であるかのような態度だ。
「ねぇねぇ、ことりちゃん。店長さんってどんなデッキを使うの?」
「普段はシンクロ召喚中心のデッキなんだけど……、今日は多分違うと思う」
「? なぜそう思うのですか、ことり」
従業員であることりなら、ゾーンのデッキを把握していると考えた問いなのだが、ことりの返事はどこか歯切れが悪い。
(店長はこの前、自分自身のデッキが完成したって言ってたはず。それにあの娘、間違いなくこの会場に来ている『本物』の1人だよね)
服装といい、言動といい。普通とは違う力に多く触れてきた彼女だからこそ、あの和装の少女が強大な力を持つ者であることを感じ取っていた。そして、今始まるデュエルはきっと過去に類を見ないものになることも。
『デュエル!!』
ゾーン LP:4000
水緒里 LP:4000
◆
「先攻は私です。メインフェイズ開始時、手札から魔法カード《強欲で金満な壺》を発動。エクストラデッキから6枚をランダムに裏側で除外することで、カードを2枚ドローします」
「へぇ、いきなり
エクストラデッキから無作為に大量のカードを取り除かなければならないドローソース。リンクモンスターなどを多用するデッキではまず採用されないが、裏を返せばメインデッキを主戦力とするデッキであれば気兼ねなく発動でき、《強欲な壺》のように扱えるカードだ。
「そして、自分フィールドにモンスターがいない場合、手札からこのモンスターを特殊召喚できる。現われよ、《時械巫女》!」
《時械巫女》
☆1 光属性 天使族 ATK 0
巫女の名を持つだけあって女性らしい胸部を持っているが、その他の外見は機械族や悪魔族と見紛うほどに不気味だ。会場内にどよめきが起こるが、外見だけが理由ではない。直前のデュエルに引き続き、見たこともないモンスターが現れたからだ。
そのレベルは1、攻守も0。単に特殊召喚しただけで終わらないことは、想像に難くない。
「攻撃力0のモンスターを特殊召喚か。次は何を見せてくれるのかな?」
「急かさなくとも、すぐにでもお見せしますよ。全知全能の神の力を。
私は《時械巫女》をリリースし、効果発動! デッキよりこのモンスターを手札に加え、通常召喚します。
降臨せよ、《時械神ラツィオン》!」
《時械神ラツィオン》
☆10 炎属性 天使族 ATK 0
脚部を持たない無機質の鎧と、胴体部分の鏡面に映された厳しい男性の顔。その姿は、先と同じく天使族と一目で天使族と判断できない異形であった。
『なんと! 店長、レベル10のモンスターをリリース無しで召喚! だけどその攻撃力と守備力は、またしても0!』
高レベルのモンスターが一定条件下で召喚または特殊召喚できる効果は、今や珍しくはない。しかしレベル10でありながら攻守0のモンスターを通常召喚するというのは前代未聞。いったい何事かと、誰もが疑問に思わずにいられない。
「ラツィオンは自分フィールドにモンスターが存在しない場合、リリース無しで召喚可能。そしてこのカードは戦闘・効果で破壊されず、自身の戦闘によって発生するダメージを0にします。
カードを2枚伏せ、私のターンは終了です」
言うなれば、戦闘において無敵を誇るモンスター。さらに効果で破壊することもできないとなると、突破は非常に困難。
有象無象を一切寄せ付けない神は、眼下の少女を睨めつける。
「なるほどね。全知全能の神なんて言うだけあって、確かに厄介な効果だ。私のターン、ドロー!」
しかし神の脅威を前にしても、水緒里は全く動じることなくカードを引く。それと同時に、ゾーンは左腕を振り上げた。
「この瞬間、《時械神ラツィオン》の効果発動! 1ターンに1度、相手がドローした時に1000ポイントのダメージを与える!」
ラツィオンの両肩で燃え盛る
水緒里 LP4000 → LP3000
「いきなり1000ポイントも削られちゃったか。でも、これくらいは必要経費ってね。
反撃の前に、まずは下準備。私は手札から永続魔法《
水緒里がディスクへとカードを挿し込んだ瞬間、その背後に
「続けて、手札から《
《妖仙獣 鎌壱太刀》
☆4 風属性 獣戦士族 ATK1600
《修験の妖社》
妖仙カウンター 0 → 1
暴風とともに現れる、鋭利な鎌を持ったイタチ。それに合わせて、社の中に並ぶ
「さらに、鎌壱太刀の効果発動! このカードが召喚に成功した場合、手札から新たな「妖仙獣」を『召喚』できる! これにより《妖仙獣
そして鎌弐太刀も同じ効果を持っているよ! おいで、
《妖仙獣 鎌弐太刀》
☆4 風属性 獣戦士族 ATK1800
《妖仙獣 鎌三太刀》
☆4 風属性 獣戦士族 ATK1500
《修験の妖社》
妖仙カウンター 1 → 2 → 3
長刀を持つイタチと、短刀を持つイタチ。驚くべきことに、カード効果を含む通常召喚だけで、一気に3体のモンスターが並び立つ。また、社に灯る火が増えるにつれて不気味さが増していく。
「一瞬で3体のモンスター、まるでペンデュラム召喚のようですね。ですが、いくらモンスターを並べようと、ラツィオンを破壊することは不可能です」
「うん、知ってる。ついさっきも言ったけど、破壊できないモンスターは確かに『厄介』かもしれない。でもさ――」
――今どき、
「ッ!?」
突如、水緒里が纏う空気が一変する。獲物を捉えたかのようなの眼光に、ゾーンを含む会場内の一部の者は身体をビクリと震わせた。
「私は、《妖仙獣 鎌壱太刀》のさらなる効果発動! 自分フィールドに他の「妖仙獣」がいる場合、相手フィールドの表側表示カード1枚を手札に戻す! 対象とするカードは当然、《時械神ラツィオン》!」
鎌壱太刀がその手に持った鎌を横薙ぎに振るうと、暴風が吹き荒れる。『破壊』ではなく『手札に戻す』効果を受けた神は、無抵抗のまま姿を消してしまった。
「馬鹿な! 時械神が、下級モンスターにこうも容易く……!」
高レベルのモンスターが低レベルのモンスターによって退けられる。これほど屈辱的なものは無いだろう。ゾーンは自身の手札に神を加えつつ、苦悶の表情を浮かべる。
一方の水緒里は、無防備となったフィールドへ攻め込むため、3体の「妖仙獣」へと攻撃命令を下す。
「呆気ないけど、もうお終いかな。まずは鎌壱太刀でプレイヤーに
「甘い! 私は、伏せていた速攻魔法《光神化》を発動! 手札の天使族モンスター《時械神ラツィオン》を、攻撃力を半分にして特殊召喚します!」
第一の鎌が駆け出した瞬間、再び現れた神が行く手を阻む。攻守ともに0であれば半分となるデメリットも関係なく、ラツィオンは戦闘による破壊とダメージを無効にするため、攻撃は無意味。
「簡単にワンキルは許してくれないか。でも私のバトルフェイズはまだ終わらないよ。
三兄弟の次男、鎌弐太刀は戦闘ダメージを半分にすることで相手プレイヤーに
「くっ、今度は時械神を無視した攻撃を仕掛けてきますか」
ゾーン LP4000 → LP3100
吹き抜ける風のように神を素通りした刃が、ゾーンを斬りつける。すると待ってましたと言わんばかりに、三男が右手を振り上げた。
「この瞬間、《妖仙獣 鎌三太刀》の効果発動! 自身以外の「妖仙獣」が相手に戦闘ダメージを与えた時、デッキから「妖仙獣」カードを手札に加える! 私が選ぶのは、《妖仙獣の秘技》!」
イタチのような姿をした妖怪・鎌鼬には、3体一組で行動すると伝えられている。それぞれが別の役割を持ち、1匹目が対象を転ばせ、2匹目が斬りつけ、最後に3匹目が傷を癒やすことで痛みを消すのだという。
「妖仙獣」三兄弟が持つ『相手モンスターを手札に戻す』『プレイヤーへの直接攻撃』『ダメージを引き金とした手札補充』はこれを再現しているのだろう。
「メインフェイズ2! カードを1枚伏せて、魔法カード《予見通帳》を発動!
デッキの上から3枚のカードを裏向きで除外して、3回目の自分のスタンバイフェイズに、この3枚を手札に加える!」
往復6ターンという、昨今のデュエルモンスターズでは長すぎる時間だが、成功すれば《強欲で金満な壺》を上回る手札補充が可能となるカード。それまでに決着をつけなければ、圧倒的な手札差で少女が優位に立つことは考えるまでもない。
だが、それでも足りないと言いたいのか。水緒里は新たなカードを繰り出した。
「手札から魔法カード《命削りの宝札》を発動! 今、私の手札は0。よって3枚のカードをドローするよ!
このカードを発動『する』ターンは一切の特殊召喚を行なえず、発動後に相手へ与えるダメージは0となるけど……」
「貴女が呼び出した「妖仙獣」は、全て通常召喚によるもの。そして今はメインフェイズ2、重いデメリットは無いも同然ということですか」
《命削りの宝札》を発動するターンは、モンスターの大量展開はまず不可能。そのデメリットを打ち消すコンボに、会場から感嘆の声が漏れる。だが、それも束の間。
「見事なコンボでしたが、ドローの代償は支払って頂きます。《時械神ラツィオン》の効果により、貴女に1000ポイントのダメージを与える!」
「ッ! 場に出し直したから、効果をまた使えるってことだね」
水緒里 LP3000 → LP2000
ラツィオンが放出する豪炎が、少女の身へ再び襲いかかる。自身のターンに2000ポイントものダメージを受けては、経費としては過剰が過ぎる。
「永続魔法《修験の妖社》の効果発動! 1ターンに1度、このカードに乗った「妖仙カウンター」を3つ取り除き、デッキか墓地から「妖仙獣」カード1枚を手札に加える!
私はスケール3のペンデュラムモンスター《妖仙獣
《修験の妖社》
妖仙カウンター 3 → 0
《妖仙獣 左鎌神柱》スケール3
ペンデュラムモンスターは、ペンデュラム召喚を行なうために必要となるカード。特殊召喚ができない状況で手札に加え、発動したのは《命削りの宝札》のデメリットを回避するためか。それとも……。
「そしてカードを2枚伏せて、手札から《D.D.クロウ》のモンスター効果発動! 手札から自身を墓地に捨てることで、相手の墓地からカード1枚を除外する!
対象とするカードは、《時械巫女》。次のターンで2体の「時械神」を並べようとしたんだろうけど、そうはさせないよ」
「ッ! なぜ《時械巫女》の効果を……!」
周囲の反応からもわかる通り、《時械神ラツィオン》や《時械巫女》はゾーンしか持ち得ないカードであり、当然ながら水緒里にとっても初見であるはず。だが、彼女は既知のカードであるかのように対処してみせた。
「『なぜ』とか聞かれても、墓地は公開情報でしょ? 初めて見るカードを相手にするなら、確認くらいはしないとね」
「確かに、デュエルディスクの機能を使えば墓地に存在するカード効果を確認することは可能。しかしそのような仕草は…………まさか、『貴女が持つ力』によって見通したとでも言うのですか?」
「正解♪ あ、でもデッキや手札は覗き見たりしないから安心していいよ」
未知のモンスターが次々と召喚されるだけでなく、ディスクを使わず相手のカード効果を把握した少女。2人の間で交わされる会話に、周囲の動揺は一層増していく。
「最後にエンドフェイズ。まずは《命削りの宝札》のデメリットで手札を全て捨てなくちゃいけないけど、今私に捨てる手札は無い。
そして通常召喚された鎌壱太刀三兄弟は、エンドフェイズに持ち主の手札に戻るよ」
エンドフェイズに複数の処理が発生する場合、プレイヤーが任意の順番で処理することができる。これを利用し、彼女は《命削りの宝札》のデメリットを回避しつつ3体のモンスターを回収したのだ。
スピリットモンスターのような効果を持ちながら、展開力も十二分。ゾーンが呼び出した《時械神ラツィオン》とは別の意味で、戦闘で倒すことはまず不可能と言ってよいだろう。
「私もここで永続罠《虚無械アイン》を発動! 手札のレベル10モンスター《時械神メタイオン》を捨てることで、カードを1枚ドローします!」
新たな「時械神」をコストに、ゾーンの手札が入れ替わる。その効果を今度もデュエルディスクを介さず確かめたのだろう、水緒里はくすくすと笑いながら「時械神」の特性を述べていく。
・デッキから特殊召喚できない。
・レベル10の天使族であり、一部を除き攻撃力0。
・自分フィールドにモンスターが存在しない場合、リリース無しで召喚可能。
・戦闘及び効果で破壊されず、戦闘ダメージを0にする。
・戦闘を行なったバトルフェイズ終了時に固有の効果を発動する。
・自身のスタンバイフェイズに強制的にデッキへ戻る。
「――例外がいるのかもしれないけど、大体こんなところかな。それと店長さん自身わかってると思うけど、ラツィオンとメタイオンが持ってるバトルフェイズ終了時に発動する効果は、私のデッキに対してあまり通用しないからね」
少女は続けて、2体の固有効果について語る。
まず、《時械神メタイオン》はフィールドのモンスター全てを手札に戻し、1体につき300ポイントのダメージを相手に与える。
続いて《時械神ラツィオン》は相手の墓地のカードを全てデッキに戻すのだと。
どちらも強力な効果であり、穂乃果は顔を引きつらせていた。
「せっかく出した融合モンスターが戻されちゃうし、墓地に溜めたカードを空っぽになるなんて、すっごく強いじゃん!」
「ですが、水緒里さんと言いましたか。彼女が召喚したモンスターは全てエンドフェイズに手札へと戻っています。フィールドにモンスターがいなければ、《時械神メタイオン》の効果は全く意味がないのでしょう」
「しかも墓地のカードを全部デッキに戻すっていうラツィオンの効果も、墓地を重視するデッキが相手じゃないと効果は薄い。
ライフポイントだけなら店長が有利だけど、これは……」
事前に対策を施していたかのような戦術と、僅かなカードでデッキの特性を把握する洞察力。ゾーンは、相対する少女の脅威を改めて実感する。
「《時械巫女》と「時械神」2体を見ただけで私のデッキを把握するとは、流石ですね。しかし、それだけで主導権を握ったと思わないことです。私のターン、ドロー!」
「まずはスタンバイフェイズ。「時械神」の共通デメリットでラツィオンはデッキに戻って貰うよ」
水緒里の宣言通り、ラツィオンがデッキへと消えていく。ゾーンに限った話ではないが、持ち主よりも先に相手プレイヤーの口から効果を述べられるのは、あまり良い気がしない。
また、《修験の妖社》と鎌壱太刀三兄弟のコンボによって、デュエルが長引くほどに手札や場のカードの差が開いていくことだろう。
(彼女の場にモンスターがいない以上、強力な罠が仕掛けられていることは明白。だが、ここで臆する訳にはいかない!)
「私は手札より、《時械神ザフィオン》を召喚! このモンスターも、「時械神」の共通効果によってリリース無しで召喚可能です」
《時械神ザフィオン》
☆10 水属性 天使族 ATK 0
3体目の「時械神」、その胸部に映された顔はこれまでと異なる女性のもの。表情も穏やかで、ラツィオンやメタイオンの厳しいものとは正反対だ。
やはりこのモンスターの攻撃力も0。本来であれば攻撃表示での召喚は愚策でしかないが……。
「バトル! 《時械神ザフィオン》でプレイヤーに
ザフィオンの双掌から放出される激流が、水緒里を飲み込む。攻撃力が皆無である以上、勢いに反してダメージを受けることは無い。何も知らない者は、完全に無駄な行為だという感想を抱いたことだろう。しかし、「時械神」にとってはこれが正しいのだということは既に明かされている。
「私のバトルフェイズは、ここで終了。そしてこの瞬間、《時械神ザフィオン》の効果発動! 相手フィールドの魔法・罠カードを全てデッキに戻す!」
破壊せず、デッキへ戻す。それどころか複数枚を同時にという、あまりにも強力な除去。コンボパーツの1枚である《修験の妖社》を排除できれば、デュエルの流れは変わることだろう。
「そんなおっかない効果、もちろん通さないよ。私はカウンター罠、《妖仙獣の秘技》を発動!
自分フィールドに「妖仙獣」カードが存在し、「妖仙獣」以外の表側表示モンスターが存在しない場合、モンスター効果・魔法・罠カードの発動を無効にして破壊する!」
「左鎌神柱を発動した本当の目的は、《妖仙獣の秘技》の発動条件を満たすためでしたか。しかし効果を無効にされようと《時械神ザフィオン》は自身の永続効果により破壊を免れます!」
「時械神」が持つ耐性によってどうにか持ち堪えたゾーンであったが、その表情は優れない。罠を仕掛けていたことはわかりきっていたが、うち1枚は多くの状況に対応できるカウンター罠。しかも「妖仙獣」の名を持つため、《修験の妖社》や《妖仙獣 鎌三太刀》の効果によって容易に手札へ加えることも可能と来ている。
「メインフェイズ2! 私は手札より魔法カード《アドバンスドロー》を発動! 自分フィールドからレベル8以上のモンスターをリリースすることで、2枚のカードをドローする!
リリースするモンスターは当然《時械神ザフィオン》!」
次のターンになれば《妖仙獣 鎌壱太刀》の効果でザフィオンが手札へ戻されてしまうのは明白。それ故にゾーンは自ら神を手放し、手札を補充する。一見、通常召喚権を行使した手札交換。
「ここで、《時械神ザフィオン》のもう1つの効果発動! このモンスターがフィールドから墓地へ送られたことで、カードを1枚ドローします」
「ザフィオンと《アドバンスドロー》のコンボで、一気に3枚のドローか。これで準備は整ったってところかな?」
「何をわかりきったことを。そうならないことは貴女なら理解しているはずです」
少女は、デュエルディスクの機能を使わずに相手のカードテキストを確認することができ、なおかつデッキの特性を洞察する力を持つ。
《虚無械アイン》の効果を確認したのならば、次にゾーンが取る行動を予測しないはずがない。
「《虚無械アイン》のもう1つの効果発動! 自分の魔法・罠ゾーンに他のカードが存在しない場合、墓地の「時械神」1体をデッキに戻し、デッキから《無限械アイン・ソフ》をセットする!」
メタイオンがデッキへ戻り、その代わりに新たな罠カードが伏せられる。
虚無から無限へ。カード名から、《虚無械アイン》の上位種であることは説明するまでもないだろう。
その効果とは? 未知のカードゆえに観客が知ることは不可能だが――。
「ふむふむ、「時械神」の特殊召喚ね。そのカードが発動された時こそ、店長さんのデッキの本領発揮ってことか」
あろうことか、水緒里は発動されてすらいないカード効果を把握していた。
「山神水緒里、伏せられたカードを覗き見るのはルール違反ではないですか?」
「うん、知ってる。でも、店長さんだってデッキから持ってきたカードのテキストを確認させてくれなかったし、お互い様だよね」
見慣れないカードのテキストを確認するのは、当然のこと。そのため彼女が《無限械アイン・ソフ》の効果を把握しようと確認を求めるのは、ルールに違反しているわけではない。しかし、確認する間もなく伏せられたカードの効果を見通すなど前代未聞。不正を疑われるのも無理はない。
「……いいでしょう。私はカードを3枚伏せ、ターンエンドです」
「私のターン、ドロー! まずはスタンバイフェイズ、《予見通帳》の1ターン目だね。モンスターはいないけど伏せカードには気をつけなきゃいけないかな」
そう述べる水緒里の口調からは、全く警戒心は感じられない。むしろ、未知のゲームを目の前にして心を弾ませる子供のよう。
彼女はドローしたカードを手札に加え、前のターンで戻った3枚の中から1枚のカードを抜き出す。
「そしてメインフェイズ、手札から《妖仙獣 鎌壱太刀》を召喚して効果発動! 手札の――」
「カウンター罠発動、《
その後、相手プレイヤーにカードを1枚ドローさせます」
水緒里が狙っていたであろう、妖仙獣の3連続召喚。展開の起点となるモンスターを潰せば、何も出来ずこのままターンを終えるしかないはずだ。
「とりあえずドローっと。悪くないけど、これだけで私の戦術を破ったなんて思うのは早計じゃないかな?
私は伏せてあった魔法カード《おろかな埋葬》を発動! デッキから《妖仙獣
しかしゾーンが繰り出した妨害を想定していたかのように、水緒里は落ち着き払っていた。
「そして、木魅を除外して効果発動! このターン通常召喚に加えて1度だけ、「妖仙獣」を召喚できる! 私は、手札の鎌弐太刀を攻撃表示で召喚!
当然、鎌弐太刀の効果で鎌三太刀も召喚するよ!」
《妖仙獣 鎌弐太刀》
☆4 風属性 獣戦士族 ATK1800
《妖仙獣 鎌三太刀》
☆4 風属性 獣戦士族 ATK1500
まさか召喚権を追加するモンスターを擁しているとは。展開を止めたはずが、2体の「妖仙獣」が場に並んでしまった。また、鎌壱太刀は効果を無効にされて破壊されたものの、召喚そのものは成功している。
よって、社に灯る蝋燭の火は合計3つだ。
《修験の妖社》
妖仙カウンター 0 → 3
「《修験の妖社》の効果を再び発動! 妖仙カウンターを3つ取り除き、デッキ・墓地から「妖仙獣」カード1枚を手札に加える!
私はスケール5のペンデュラムモンスター《妖仙獣
《修験の妖社》
妖仙カウンター 3 → 0
《妖仙獣 右鎌神柱》スケール5
「左鎌神柱の対となるペンデュラムモンスターを手札に加えてきましたか。だが、スケール3と5でペンデュラム召喚できるのは、レベル4のモンスターだけ」
「うん、知ってる。だけどこれを見てもそう言えるかな?
私は、右鎌神柱のペンデュラム効果発動! もう片方のペンデュラムゾーンに「妖仙獣」カードが存在する場合、「妖仙獣」以外の特殊召喚を封じる代わりに、自身のペンデュラムスケールを11にする!
これでレベル4から10のモンスターが、同時に召喚可能!」
《妖仙獣 右鎌神柱》スケール5 → 11
狭すぎるペンデュラムスケールが一転、最上級モンスターすら召喚できる数値へと変化した。デメリット付きの効果を使用したということは、手札に大型モンスターを握っていると宣言しているようなもの。
「これが私のエースモンスターだよ! ペンデュラム召喚ッ!」
水緒里が右手を天に掲げた瞬間、両端のペンデュラムカードの間に竜巻が発生した。その勢力は、これから呼び出されるモンスターの強大さを示すかのように増していく。
「烈風纏いし、
――いでよ、レベル10! 《魔妖仙獣
《魔妖仙獣 大刃禍是》
☆10 風属性 獣族 ATK3000
《修験の妖社》
妖仙カウンター 0 → 1
竜巻を突き破り、紅い眼の一角獣が咆哮とともに降臨する。「時械神」に勝るとも劣らない巨躯であり、レベルも攻撃力もエースモンスターと称されるに相応しい数値だ。
「ありがとね、店長さん。貴方が発動した《
《
大量展開を止めた一見正しいプレイングが、逆に手助けをしてしまった事実に、ゾーンは苦悶の表情を浮かべた。
「大刃禍是の効果発動! このモンスターが召喚・特殊召喚に成功した時、フィールドのカード2枚を手札に戻す!
対象は《虚無械アイン》と、セットされた《無限械アイン・ソフ》!」
「今度は伏せカードを含む2枚のカードを……! だが、やらせはしません! セット状態のアイン・ソフを対象として、罠カード《スキル・プリズナー》を発動! このターン、アイン・ソフを対象とした相手のモンスター効果は全て無効となる!」
巨獣の角から発生する、2つの大竜巻。しかし2枚の罠カードを飲み込まんとしたそれは、不可視の盾によって遮られた。水緒里は「流石に通してくれないかぁ」と言いつつも、笑みを浮かべる。破壊以外の除去が蔓延している昨今、破壊耐性を過信するなど愚の骨頂だからだ。
「そろそろバトルフェイズに移りたいんだけど、当然使うよね?」
「言われずとも。まずは《虚無械アイン》の効果発動! 手札から《時械神ハイロン》を墓地に送り、カードを1枚ドロー!」
「ハイロンの効果は、『自分のライフポイントが相手より少ない場合、その差分だけ相手にダメージを与える』、か。中々いい効果だけど、今は私のライフの方が少ないから今はコストにしたってことかな」
メタイオンの時と同じく、コストとなったカードでさえ彼女は見逃さない。ゾーンを見つめる瞳は、「早く次の「時械神」を見せて」と語っている。
伏せたカードの効果が既に割れている以上、勿体振る必要はなかった。
「《虚無械アイン》を墓地に送り、永続罠《無限械アイン・ソフ》を発動! このカードの効果により1ターンに1度、自分または相手のメインフェイズに、手札の「時械神」を特殊召喚する!
現われよ、《時械神ラフィオン》!!」
《時械神ラフィオン》
☆10 風属性 天使族 DEF 0
守備表示で特殊召喚された5体目の「時械神」、その表面に映る顔は中性的で男女の判断がつかない。
「店長さんが壁モンスターを出したところで、バトルフェイズに移行! 鎌弐太刀でプレイヤーに
ゾーン LP3100 → LP2200
「そして鎌三太刀の効果発動! デッキから2枚目の《妖仙獣の秘技》を手札に加える!」
相手モンスターを避けた次男の斬撃と、それと連動してカウンター罠を手札に加える三男の効果。
「時械神」は戦闘での破壊とダメージを無効にし、なおかつ戦闘を行なえば固有の効果を発動する。それをさせないためには直接攻撃や効果ダメージでライフポイントを地道に削っていくしかないのだが、前のターンと全く同じ光景は、観客にとって満足できるものではない。
「これ以上バトルする意味はないし、メインフェイズ2に――」
「逃がしはしません! 罠カード発動、《メタバース》! デッキからフィールド魔法《サベージ・コロシアム》を直接発動します!」
円形の闘技場が地中より迫り上がり、舞台を取り囲む。ゾーンが言う通り、この檻に囚われた者は決して逃げられない。
「このフィールドが存在する限り、攻撃可能なモンスターは必ず攻撃しなければならない。さぁ、向かってきなさい!」
戦闘を避けようとするのなら、自ら戦闘せざるを得ない状況に持ち込めばいい。理性を失った鎌三太刀と大刃禍是が、神へと突き進む。それを冷たく嘲笑うかのように、氷の風が2体を凍てつかせた。
「私のモンスターが……! だけど、《サベージ・コロシアム》の効果でライフを回復!」
水緒里 LP2000 → LP2300 → LP2600
「構いません、このターンで決着がつくのですから。バトルフェイズ終了とともに、ラフィオンの効果発動! このカードと戦闘を行なった相手モンスター1体の攻撃力分のダメージを相手に与える!」
ラフィオンに攻撃した2体のモンスターの攻撃力は、鎌三太刀の1500と大刃禍是の3000。選ばれるのは当然後者であり、僅かな回復程度では焼け石に水。莫大な効果ダメージにより少女のライフポイントは尽きる…………はずだった。
「罠カード発動、《エネルギー吸収板》! 相手が発動した効果ダメージを、回復に変える!」
極めて限定的な効果ダメージへの対策カードゆえにあまり採用されないが、一打逆転を狙っていたゾーンには非常に堪えたことだろう。水緒里は「ほらほら早く」とライフ回復を促す。
「だが、ラフィオンの効果は相手モンスターを対象とせず、効果解決時に決定する。よって、私は《妖仙獣 鎌三太刀》を選びます」
「つまり回復量は1500ポイント、か。対象を取る効果だったら3000ポイント回復できたのに」
水緒里 LP2600 → LP4100
ライフポイントが一気に初期値とほぼ同じ数値にまで回復してしまう。その原因を作ったのは他でもないゾーン自身であり、これでは敵に塩を送ったようなもの。
「さて、バトルが終わってライフポイントも満タン。メインフェイズ2に移るよ。
手札から魔法カード《アドバンスドロー》を発動。レベル10の大刃禍是をリリースすることで、カードを2枚ドローするね」
ゾーンも使用した、手札増強カード。異なる点を挙げるとすれば、大刃禍是はペンデュラムモンスターであるため、墓地ではなくエクストラデッキへ送られたこと。その特性ゆえに、次のターンペンデュラムスケールが健在であればペンデュラム召喚によって復活できる。
「お、いいカードだね。お次は魔法カード《一時休戦》を発動。互いにカードを1枚ドローして、次の店長さんのターンが終わるまで私たちが受けるダメージを0にするよ」
『またしても、ダメージを防ぐカード! 店長の手札が増えても、これでは次のターンで攻めきることができない!』
自分ターンにはモンスター効果で場を荒らしながら攻撃を通し、手札を確保。相手ターンには魔法・罠カードでダメージを防ぎ、場が手薄になりがちという「妖仙獣」の弱点を補う。このヒット&アウェイ戦術は、大型モンスターによる戦闘や、相手モンスターの除去を主体とするデッキ相手には特に効果的だ。
「あのゾーンが、ここまで苦戦させられるとはな」
モニタールームから様子を見守っていたパラドックスは、会場で繰り広げられている光景を『悪夢』と形容せずにはいられなかった。彼だけではない、会場内にいるイリアステルのメンバー全員も間違いなく同じ感情を共有しているはずだ。
(「時械神」が持つ破壊耐性を突破する効果はともかく、相手モンスターがエンドフェイズに手札へ戻ってしまっては、多くの「時械神」は効果が封じられたも同然。
奴のデッキは、ゾーンにとって相性最悪の天敵ということか……!)
幸い、ゾーンがこのターンで使用した罠カード《スキル・プリズナー》は、墓地から除外することで同じ効果を使用できる。そしてこれは「カードの発動」ではないため、《妖仙獣の秘技》で無効化することは不可能。すなわち、「妖仙獣」の効果による除去をあと1回は防げるはずだ。
「回復させたライフポイント、有効活用させて貰うよ。私はライフを800ポイント払って、手札から永続魔法《妖仙大旋風》を発動!」
水緒里 LP4100 → LP3300
大仰なカード名ではあるが効果が発揮される気配がない。どのような効果を持っているのかとゾーンたちが考える間もなく、少女は自らのターンを終える。
「私はカードを1枚伏せて、ターン終了。だけどこれは、ただのターンエンドじゃないよ! エンドフェイズに、召喚した鎌弐太刀と鎌三太刀は手札に戻る!」
水緒里の手札に戻る、次男と三男。モンスターが1体減ったこと以外は、前のターンと変わらない。だが、彼女は「ただのターンエンドではない」と述べている。
「この瞬間、《妖仙大旋風》の効果発動! 1ターンに1度、自分フィールドの「妖仙獣」が手札に戻った場合、相手フィールドのカード1枚を手札に戻す!
対象とするカードはもちろん、《無限械アイン・ソフ》!!」
「ッ! 今度は魔法カードによるバウンスだと!?」
《スキル・プリズナー》で防げるのはモンスター効果のみであり、魔法・罠には通用しない。大旋風が《無限械アイン・ソフ》を巻き上げ、手札へと舞い戻る。これが単なる永続罠ならば「手札に戻す」という除去は、再発動に時間がかかる程度の時間稼ぎに過ぎなかっただろう。
「《無限械アイン・ソフ》は、表側表示の《虚無械アイン》を墓地に送ることでしか発動できない。つまり、2枚目のアインが無ければアイン・ソフを再発動することは不可能。
モンスター効果を止めて安心していたみたいだけど、残念だったね。店長さんが狙っていた、《無限光アイン・ソフ・オウル》への進化は完全に封じたよ」
「くっ! まさか貴女の力がこれほどとは……!」
ゾーンの場に存在するカードは、デッキへ戻ることが確定している「時械神」とフィールド魔法のみ。対する水緒里は《一時休戦》の効果で次のターンにダメージを受けることはなく、次のターンにモンスターを展開する準備も整っている。
そして、伏せられたカードが《妖仙獣の秘技》であることは明白。絶望的な状況とはまさにこのことを言うのだろう。
まるで赤子の手を捻るように全知全能の神を圧倒する少女は、告げる。
「改めて名乗らせて貰うよ。私の神名は、
言っておくけど、私の力はまだまだこんなものじゃないよ。『神』の名を持つカードと違う――」
――正真正銘の神様の力は、ね。
時械神って、自前の耐性が破壊にしか対応しないから、今どきあっさり対処されちゃうんですよね。アニメ本編でもアーチャー出されたらそのままやられていましたし(なお、その場合未来は破滅まっしぐら)
コレパで揃った時械神、サベストでアクセルシンクロに磨きをかけたTG、レジェコレで雑な強化を貰ったSin、未来組がどんどん時代に追いついてきました。アポリアはどうなるのでしょうか。シンクロメタの戦術をエクストラメタにシフトしないと、どうしようもない気がしますが。
それでは、次回もよろしくお願い致します。