ラブライブ!DM   作:レモンジュース

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 デュエルパートを書き終えるまでまだまだかかりそうなので、
 キリのいいところまで先に投稿。それでも10000字近い。
 キャラ崩壊が止まらないのは全部ドン・サウザンドのせい。



かっとビングだ、アテム!

●前回のラブライブ!

 

 

 

 皆様こんにちは、『μ’s』メンバーの園田海未です。まだライブすらしていない状態でメンバーです、と言うのも変な話ですけど。

 

 私が弓道部の練習試合で穂乃果たちと顔を合わせることが無かった日曜日、アテムさんと真姫を含めた3人で秋葉原に行ったそうなんです。

 そこで出会った決闘者・ウィング・キラ……いえ、『A-RISE』の綺羅ツバサさん。

 アテムさんは彼女のことを、『今まで出会った決闘者の中でも1、2を争う実力を持っていた』と語っていました。

 調べてみたところ、どうやら綺羅さんは高校入学以降負けなしという驚きの勝率を誇っていたのです。加えて、残りのメンバー2人も公式戦での勝率は9割。

 スクールアイドルとデュエルモンスターズという異なる2つのジャンルでトップを独走する彼女たちなら、幅広い層に支持されるのも納得というもの。

 

 順位(ランキング)に天と地ほどの差があるとはいえ、私たちはこんな人たちと同じ土俵に立っていることが未だに信じられません。

 でも、アテムさん言いました。

 

『俺は必ず綺羅と決着をつける。お前たちも、奴らに勝つつもりで踊り続ければ、音ノ木坂を救うことができるはずだ』

 

 そう、ですね。

 勝てるとまでは思いませんが、少しでも彼女たちに近づきたい。そうすれば、多くの人が音ノ木坂学院に注目してくれるのですから。

 

 ファーストライブはいよいよ明日。さあ、今日も練習です!

 

 

 

 最近、解説役を真姫に奪われかけていることに危機を感じているのですが、きっと大丈夫ですよね?

 

 

 

●クラスメイトはスクールアイドル

 

 

 

「明日は新入生歓迎会、その後は部活動紹介があります。もう部活動に参加している方もいますが、まだ迷っている人はなるべく参加するように――」

 

 

 

 黒板の前に立つ教師の話を聞きながら、小泉花陽は机の上に置いた1枚の紙を見つめていた。

 その内容は、明日の放課後に音ノ木坂学院のスクールアイドル『μ’s』が講堂でファーストライブをするというものだ。

 

(……音ノ木坂学院のスクールアイドル、か)

 

 花陽は小さな頃からアイドルが好きである。それこそ、親友の星空凛を連れて何度もライブへ足を運び、CDやグッズを買い漁るほどに。その中にはスクールアイドルも入っていて、現在ランキング1位を独走中の『A-RISE』には特に関心を持っている。

 そんな中、音ノ木坂学院(自分が通う高校)からスクールアイドルが生まれたとあっては、嬉しく感じないはずがない。しかも、噂では廃校を取り消すために始めたという。自分では絶対にそのようなことを思いつけないだろう。

 

 

 

「――委員長、号令!」

 

 

 

 考えているうちに、話は終わったようだ。委員長の号令を合図にHR(ホームルーム)は終了し、生徒たちは次々と教室を出て行く。そんな中、花陽は1人の少女から目を離せずにいた。

 彼女の名は西木野真姫。この学院の入試をトップで合格し、入学当初は休み時間の間1人で図書室か音楽室にいることが多い孤高の天才であった。

 もっとも、花陽の視線の先に座る真姫は数人のクラスメイトに囲まれていて、今では孤高とは程遠い。むしろ入学当初以上にクラスメイトから注目を浴びている。

 その原因は――

 

 

 

 ――ねえ西木野さん、今日も先輩たちと練習なんだよね?

 

 ――え、ええ。そうだけど……

 

 ――新入生歓迎会で新入生が出し物をするなんて凄いよねー。

 

 

 

 

 なんと、真姫は先輩のアイドル活動に参加していたのだ。しかも明日のライブで歌う曲を作曲したのも彼女だというのだから、大したものである。

 ちなみに、それは本人が言っていたわけではない。掲示板に貼ってあるポスターの隅に、『作曲者は1年1組の西木野真姫ちゃん♪』と書かれた便箋がくっついていたそうなのだ。もっとも、すぐに本人が破り捨てたようだが。

 

 花陽は以前から真姫に話しかけようとしていたが、入学当初と違い、最近の彼女は人に囲まれていることが多い。引っ込み思案な自分では、今日も会話の邪魔をしてまで話しかけることができなかった。

 

 

 

「どうしたの、かよちん。早く帰ろ?」

「ご、ゴメンね凛ちゃん。すぐに準備するから……」

 

 凛に声をかけられ、我に返る。どうにも近頃は考え事が多くなりがちだ。

 話すのはまた今度にしよう。そう考えて筆記用具やポスターをカバンにしまい、足早に教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

「かよちん、いつも西木野さんのこと見てるよね」

「え!? 凛ちゃん気付いてたの!?」

「凛もかよちんのことをずっと見ていたわけじゃないけど、凛が見た時はほとんど西木野さんのこと見てたよ?」

「あぅ……」

 

 よもや親友に気付かれていたとは。もしかしたら、他のクラスメイトにも気付かれているのではなかろうか。

 そんな心配をしていると――

 

 

 

「そうね。見られている本人としては、言いたいことがあるのならはっきりと言って欲しいわね」

 

 

 

『!』

 

 後ろからかけられる声。

 驚いた2人が振り返ると、そこにはカバンを2つ抱えた真姫が、やや疲れた顔で立っていた。

 クラスメイトに囲まれるのは未だに慣れていないようである。

 

「に、西木野さんも気付いてたの……?」

「あれだけ見られてたら誰だって気付くわよ」

 

 2人の間に沈黙が降りる。真姫は自分が言葉を発するのを待っているようだが、口を開くことができない。悪気はなかったとはいえ、多少なりとも不快な思いをさせてしまったはずだ。

 ただ一言、『ごめんなさい』と言えばいいのか。いや、もっと誠意を込めるべき? 上手い方法が思い浮かばない。

 

「西木野さん、別にかよちんは悪気があったわけじゃないと思うよ?」

 

 そんな花陽が心配になったのか。隣に立つ凛がフォローしようと声を発してくれる。

 いつも助けてくれる親友を心強く感じると同時に、このような小さなことでフォローさせてしまう自分自身が不甲斐ないと思えてしまう。

 

「わかってるわよ。それに私は見られてることに怒っているわけじゃないの。ただ理由が知りたいだけ」

「だってさ、かよちん」

 

 思わず『ほっ』と息を漏らす。どうやら怒っていなかったようで少し安心した。

 でも、視線が気になっていたことは確かなのだ。ここは一言謝罪をして理由を説明しなければいけない。

 

「ありがとう、凛ちゃん。

 それと、ごめんなさい西木野さん。嫌な思いをさせちゃって。

 西木野さんのことをずっと見ていた理由だけど――」

 

 

 

 

 

 ――AIBOOOOOOOOOO!!

 

 

 

 

 

『!?』

 

 花陽の言葉は、突如聞こえた男性(・・)の叫び声によって遮られた。花陽だけではなく、この場にいた全員が『ビクッ!』と肩を震わせた。窓は開けっ放しにしていたため、その大声はよく響く。

 どうやら屋上から発した声らしく、誰もが窓の外へと顔を向けた。

 

 今更語ることでもないが、音ノ木坂学院は女子校である。そのため、学内にいる男性は基本的に教職員か用務員程度。だが、今の声の主はそのどちらでもなく、ましてや来賓の方でもない。

 約一ヶ月前に音ノ木坂学院に通うことになった音ノ木坂学院唯一の男子生徒、アテム。

 ヒトデ頭と意味不明な自己紹介というインパクトにより、彼のことを覚えていない生徒など1人もいない、それ程の存在感を放つある意味凄い人だ。

 そんな彼が、窓を挟んだ視線の先で。

 

 

 

 

 

 ――真っ逆さまに落下していった。

 

 

 

 

 

『!?!?』

 

 言おうとしていた内容が全て吹き飛んでしまう衝撃の事態に、花陽は凛とともに目を見開いた。これほどの衝撃は、初めて『A-RISE』のライブを見に行った時以上かもしれない。

 

「アテム先輩、またことり先輩を怒らせたのね」

 

『え、それだけ!?』

 

 今まで何度も見たよと言わんばかりの呆れ声を漏らす真姫。良くて大怪我は避けられない状況を見て、何故彼女は平然としているのか。

 

「か、かよちん救急車って117だっけ!?」

「違うよ、118だよ!」

「どっちも違うわ。119よ」

 

 117番は電話の時報、118番は海上事故の緊急通報である。

 

「それに、あの先輩はこの程度じゃ怪我しないわよ。医者の娘として信じられないけどね」

 

 さらっと凄いことを言っているが今はそんなことはどうでもいい。

 口をパクパクさせている花陽の代わりに、凛が辛うじて真姫に対して反論する。

 

「で、でも凄い音がしたし…………ん?」

 

 校舎の壁を引っ掻くような音が聞こえる。これ以上何が起こるというのか。『まったくあの先輩は……』と横で呟く真姫を不審に思いつつ、再び窓の外へ顔を向ける。

 すると――

 

 

 

「よう西木野! やっとHRが終わったのか? 一緒に屋上行こうぜ!」

 

 

 

『ヒィッ!?』

 

 ヒトデ頭が窓からひょっこりと顔を出して笑っていた。

 ボロボロになっているのは服だけのようで、肝心の身体は骨折どころかかすり傷ひとつ無い。

 しかも、校舎をよじ登って来るという傍若無人っぷりである。

 

 この短時間で何度驚けばいいのか。

 

「どうしてわざわざこっちに来たのよ。直接屋上まで登れば良かったんじゃないの?」

「落ちる時に西木野が見えたからな。折角だから一緒に行こうと思ったまでだぜ!」

「そ、そうなの……」

 

 そして平然と会話を進める2人。心なしか、真姫の顔が少し赤いように見える。まさかこんなヒトデ頭に好意なんてものを持っているのだろうか。

 

「別にデートじゃないぜ!」

「一言多いわよ!」

 

 ……持っていないと信じたい。

 

「ところで小泉さん。私のことを見ていた理由だけど、やっぱり明日でいいわ。急いで練習に行かないといけないから」

「う、うん。頑張ってね?」

 

 笑顔で送り出したつもりだが、今の自分はちゃんと笑えているだろうか。いや、相当引きつっているに違いない。

 

 

 

 ――で、今日はどうやって負けたの?

 

 ――ワンターンスリーストリクス、プトレノヴァインフィニティ。

 

 ――前から思ってたけど、ことり先輩って本当に容赦という言葉を知らないわね。

 

 

 

「……ねえ、凛ちゃん」

「何? かよちん」

「私、西木野さんのことが良くわからないよ……」

「うん、凛も同じにゃ」

 

 スクールアイドルの定義を真剣に考える2人であった。

 

 

 

●ビラ配りで、皆に笑顔を……

 

 

 

「……なによ、あんなに楽しそうにして」

 

 夕方の正門近く。

 

「明日の放課後、『μ’s』ファーストライブを開催します!」

 

 サイドテールの少女が、

 

「新入生の皆さん、ぜひ講堂へと足をお運びください!」

 

 大和撫子のような少女が、

 

「2、3年生の方も大歓迎です!」

 

 甘い声の少女が、

 

「午後4時開演です! よろしくお願いします!」

 

 ツリ目の少女が、

 

 笑顔でビラ配りをしている。

 

 そんな4人を矢澤にこという少女が遠くから見つめていた。

 彼女は2年前、この音ノ木坂学院で『アイドル研究部』を設立し、初めてスクールアイドルグループを結成したという過去を持つ。

 だが、とあるトラブルから空中分解してしまい、今では部員はにこ1人だけ。

 

 音ノ木坂学院では部活設立時には最低5人の部員が必要だが、それ以降は減ってしまっても構わないとなっている。

 だが、『部活』というのは1つのコミュニティである以上、部員が1人だけになればすぐに廃部になるのが普通。それが年々生徒数が減っているのなら尚更。大した活動もしていない部活動に対して予算を割くことなどできないのだ。実際、教師や生徒会からも何度か注意喚起されてきた。

 それでも彼女が頑なに廃部を認めなかったの理由は、

 

『アイドルが心の底から好き』

 

 この一点に尽きる。

 部室には、『アイドル研究部』設立当時から今まで集めてきたアイドルグッズや資料が存在する。

 プロのアイドルもスクールアイドルも関係なく、全て。

 それも、アイドルが好きだからこそ。

 自分のことを信じてくれている弟妹たちのためにも、『スクールアイドル・矢澤にこ』であり続けるのだ。

 

 しかし、約一ヶ月前。信じられないことが起きた。

 3+1人の2年生と1人の1年生が、音ノ木坂学院を廃校から救うためにスクールアイドルを結成したというのだ。

 初ライブは明日の放課後。新入生歓迎会が終わった後の部活動紹介を利用し、講堂で行うらしい。

 自分ができなかったことを成し遂げようとする後輩たちを少し腹立たしく思う。

 だが、ステージの隅からこっそりと覗くくらいはしてやってもいいか、とも思っていた。

 歌や踊りの実力がどれ程のものかはわからないが、彼女たちはビラ配りを始めてから1度も笑顔を崩していない。これなら一応見れるレベルには達しているだろう。

 

 

 

「なぁ、にこっち」

 

 

 

「っ!」

 

 いつの間にか、横に立っていた少女、東條希。

 にこは、彼女の身体の一部分を軽く睨みつけてから目を逸らした。一体何を食べたらあそこまで大きくなるのだろうかと思う。

 

「……いつからいたのよ、希」

「3分くらい前かな。それよりビラ、貰いに行かへんの? もうそろそろ無くなってまうよ」

 

 希の言う通り、30分以上前から始めていたビラ配りだが、もう無くなりつつ…………いや、話している間にもう配り終えていた。

 

「あっ……」

 

 貰うつもりは無かったはずなのに、思わず落胆の声を出してしまった。

 慌てて口を塞ぐが、あの副会長がそんな仕草を見逃すはずがない。

 

「そんなにこっちに朗報や。実はウチ、ビラを2枚貰っとるんよ」

 

 別にいらない、そう言う間もなく希は4つに折りたたんだソレを無理矢理持たせてきた。

 

「ほな、また明日~」

 

 最初から最後までマイペースを保ったまま去っていく同級生。

 にこは手に取ったビラを一通り眺めると、4つ折りにしてカバンの中にしまった。

 

「そういえば……」

 

 ビラ配りの間、一度もあのヒトデ頭を見ていない。

 奴は何をしているのだろう。特に興味を抱いているわけではないが、校内で注目を集めている人間なだけに、ふと気になった。

 

「まあいいか。それより早く帰って晩ご飯作らないとね」

 

 のんびりし過ぎたせいでいつも夕食を作る時間より遅くなってしまった。

 お腹を空かせてくる頃だろう弟妹のため、足早に歩き出すのだった。

 

 

 

●笑顔の真実

 

 

 

 ライブ前日。

 そういえば掲示板前のポスターでしか宣伝してないよね、という誰かの言葉から始まり、穂乃果たちは練習後にビラ配りを行なっていた。

 放課後になってから2時間近く経っていたため、多くの生徒……、特に新入生は帰宅していた。しかし、元々の印刷枚数が少ないこともあって全て配り終えることができた。

 

 その後、ビラ配りを終えた穂乃果たち4人は、飼育小屋へと向かっていた。

 アルパカという珍しい動物を飼育しており、音ノ木坂学院の一部で有名な場所である。馬と羊を足して2で割ったような外見で、分類上はラクダ科らしい。

 

 アテムは、穂乃果たちがビラ配りをしている間はずっとそこで留守番を命じられていた。

 もちろん彼もビラ配りに参加しようとしていたし、彼女たちもそのつもりであった。

 しかし――

 

 

 

 ――ビラ、発動!

 

 ――ファーストライブをやるぜ、Yeah!

 

 ――まずは手始めに俺のダンスを見せてやるぜ!

 

 

 

 開始3分でこの有様。これを見かねた海未が、アテムにビラ配りをさせないためにと飼育小屋での留守番を命じたのである。

 だが、ビラ配りを早く終わらせなければまた彼は暴走してしまう。そう考えた海未たちは必死になってビラ配りを行なった。

 身内の恥を晒すくらいなら、自分たちが前に出よう。人前に出ることが苦手であった海未や真姫も、この時ばかりは満面の笑顔でビラを配り続けていたと穂乃果とことりは後に語る。

 

「でも、無事に配り終えることができてよかったね、海未ちゃん」

「ことりには敵いませんよ。必死で笑顔を浮かべて配っていた私と違って貴女はまだ余裕があるじゃないですか」

「そうね、私もそう思うわ。ねぇ、私の顔引きつってないかしら」

「大丈夫だよ、真姫ちゃん。いつも通り可愛いよ♪」

 

 軽口を交わしながら歩を進める4人。

 練習を終え、ビラ配りも完遂した。残るは、ことりが作った衣装を確認するだけ。仕上げは知り合いの服屋がやってくれるそうで、後で受け取りに行ってくるらしい。

 正直ギリギリのスケジュールだが、間に合えば良いのだ。

 

 いよいよ明日。

 どれだけの人が来てくれるかはわからないが、最高のファーストライブにしよう。

 全員の心は、再び1つになっていた。

 

「アテムくん、おまたせ。ビラ配り終わった、よ…………」

 

 角を曲がって飼育小屋に辿り着いた穂乃果たちだが、目の前の光景に全員言葉を失った。

 大人しく留守番をしているはずのアテム。彼は――

 

 

 

「もっと速く疾走(はし)れー!!」

 

 

 

 飼育小屋の外でアルパカに跨って駆け回っていた。

 

『……』

 

「皆遅かったじゃないか! あまりにも暇だったもんで、コイツと遊んでたぜ!」

 

 念の為断っておくが、アルパカからはこの行いを嫌悪している感じはしない。むしろ一緒に楽しんでいるようにも見える。

 

「この白いアルパカ、白パカは俺の新しい盟友だぜ!」

 

 だが、しかし。

 

 

 

「フハハハハ! 最高に高めた俺のフィールで最強の力を手に入れてやるぜ!!」

 

 

 

 いくらなんでもエンジョイしすぎではないだろうか。

 彼の清々しいまでの笑顔は、練習後のビラ配りで疲労が溜まっている少女たちから色々な気力を奪うには十分であった。

 

「穂乃果ちゃん、私お店に行って衣装受け取ってくる……」

「……うん、よろしく。後で私の家に集合ね。行こ、海未ちゃん、真姫ちゃん」

「ええ、そうですね……」

「さっさと行きましょう……」

 

 言うまでもないが、アテムはこのあと教師から滅茶苦茶怒られた。

 

 

 

●禁止ワード「シルバー」

 

 

 

「ふぅ、酷い目にあったぜ」

 

 教師陣、特に担任から厳重注意を受けたアテムは、ふらつきながら高坂家の引き戸を開いた。日々肉体を鍛え上げている決闘者であっても、教師からのお叱りへの耐性はまだ十分に備わっていないのである。

 

「アテムさん、やっと帰ってきたんだ。お帰りなさーい」

 

 そんな彼を店先で出迎える少女、高坂雪穂。よほど暇なのか、彼女は参考書を片手に持っていた。

 高校受験を控えた中学3年生である以上、勉強を欠かさないのは結構だが、店先でやるのは如何なものか。

 

「よう雪穂、ただいま帰ったぜ!」

 

 もっとも、そんなことを気にするアテムではない。

 雪穂へと労いの言葉をかけると、そのまま階段へと足を運んでいく。

 歩を進めるうちに、穂乃果の部屋から言い争いをしているかのような声が聞こえてきた。

 

「皆どうしたんだ。随分と騒いでいたみたいだが」

「あ、アテムくん! いいところに!」

 

 部屋に入ると、すぐさま穂乃果に手を取られ座らされる。そして目の前に広げられる1着の服。

 

「これは……明日のライブで着る衣装か?」

「そう! ことりちゃんが作ったライブ衣装! 本物のアイドルみたいで、すっごくかわいいよね!」

 

 少々派手だが、動きを阻害されることのなさそうな可愛らしい衣装。なるほど、確かに穂乃果の言う通りよくできている。

 

「いいじゃないか。これのどこに問題があるんだ?」

「大有りです! よく見てください、このスカート丈! いくらなんでも短すぎるでしょう!」

「私も海未先輩と同意見ね。制服ならともかく、こんなヒラヒラの服で踊るだなんて、恥ずかしすぎるわよ」

 

 だが、海未と真姫の気に召さないようであった。

 そういえば、以前ことりが衣装を考える際に『スカート丈は膝下までないと絶対に穿かない』と2人は鬼気迫る表情で訴えていた。

 

「でもさ、ことりちゃんが一生懸命作ってくれたんだよ。

 アテムくんはどう思う? 今のところ私とことりちゃんが賛成で、海未ちゃんと真姫ちゃんが反対なの」

「男の子の意見として、どうかな?」

「いえ、男性だからといって短いスカート丈が好きだとは限りません。アテムさんは反対ですよね?」

「どうなの、先輩」

 

 4人に迫られ少々たじろぎながらも、目を閉じ腕組みをして思考を巡らせる。

 賛成と反対が2:2である以上、彼の意見が左右すると言っても過言ではない。

 誰かが息を呑むと同時に、アテムは目をゆっくりと見開いて、言った。

 

 

 

「シルバー――」

 

 

 

 かちり、と。スイッチが入る音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バトルッ! 《RR-レヴォリューション・ファルコン》で、「ナイトメア・デーモン・トークン」に一斉攻撃ッ!!」

 

 《RR-レヴォリューション・ファルコン》

 ATK2000

 

 「ナイトメア・デーモン・トークン」×3

 ATK2000 → ATK 0

 

「やめろ南! そんなことしちゃいけない!」

 

 

 

 ――レヴォリューショナル・エアレイドッッッ!!

 

 

 

「AIBOOOOOOOOOO!!」

 

 アテム LP4000 → LP-4400

 

 

 

「私、皆と一緒にこの衣装で踊りたいのっ!」

「穂乃果……」

「この角度と速度から考えると、今回の飛距離は約2000mってところかしら。記録更新ね」

 

 ――アテムさーん、近所迷惑だよー!

 

 結局、このままの衣装で踊ることになったとさ。

 

 

 

●ヒトデに願いを

 

 

 

 絢瀬絵里の就寝時間はやや遅めだ。

 日々の予習復習に加えて、生徒会長としての業務。加えて、明日は新入生歓迎会でスピーチを行なうため、その原稿を暗記する必要もある。

 そのせいか、気が付けば0時を回っていたという日もたまにあった。

 

「ふぅ、こんなものかしら」

 

 現在時刻は10時27分。

 いつもより少し早いが、明日のためにも今夜はもう寝よう。

 でもその前に水を1杯飲んでおこうと考え、部屋を出る。すると、妹の亜里沙の部屋から明かりが漏れているのが見えた。

 

「亜里沙、起きていたのね」

「あ、お姉ちゃん!」

 

 自分と同じ受験生とはいえ、まだ亜里沙は中学生。自分よりも早く寝ておくべきだろう。

 

「もうそろそろ寝なさい。それに、まだ夜は寒いのだから窓を開けっ放しにするのは良くないわよ」

 

 自室との体感温度の違いから、どうやら10分以上窓を開けていたようで、少々肌寒い。

 今言ったようにこの時期の夜はまだ冷える。こんなことで風邪を引いてほしくはなかった。

 

「……流れ星にお願いしていたの」

「流れ星?」

「うん。換気しようと思って窓を開けたら見えたんだ。私、お願いしたの。『音ノ木坂学院が廃校になりませんように』って」

 

 そう言った亜里沙の表情はどこか儚い。彼女もわかっているのだろう。中学生1人が願ったところで、現実を変えることなどできはしないのだと。

 だが、姉としてその願いを叶えてあげたいとも思う。

 

「大丈夫よ、亜里沙。私がそんなこと絶対にさせないわ」

 

 

 

 

 

 絢瀬絵里は改めて誓う。

 愛する妹のために、必ず廃校を阻止してみせると。

 

 

 

 

 

「ところでお姉ちゃん、日本では流れ星が見える時に『あいぼー!』っていう男の人の声も聞こえるんだねっ!」

「……」

 

 この後、水と一緒に胃薬も飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 朝と放課後に練習をしている場所、神田明神。

 ライブ成功を願い、穂乃果たちはやってきた。

 たかが一ヶ月、されど一ヶ月。4人と1人で培ってきた努力を、明日のファーストライブで披露するのだ。

 

 穂乃果は願う。

 

「どうか、ライブが成功……いや、大成功しますように!」

 

 海未は願う。

 

「……緊張しませんように」

 

 ことりは願う。

 

「みんなが楽しんでくれますようにっ!」

 

 真姫は願う。

 

「ステップを間違えませんように」

 

 皆は願う。

 

 明日のライブで多くの生徒が見に来てくれて、このファーストライブが音ノ木坂学院を救う第一歩となってほしいと。

 

『よろしくお願いします!』

 

 明日、良い日になりますように――

 

 

 

「逆鱗・南に勝てますようにっ!!」

 

 

 

「……アテムさん、いたんですね」

 

「今来たところだぜ!」

 

 いつでも自分のペースを崩さないアテム。

 彼がいれば、どんな困難が起ころうとも乗り越えられる、そんな気がした。

 

 

 

●暗躍

 

 

 

 ――カタカタッ

 

 

 

 深夜の音ノ木坂学院。

 警備員を除き、誰もいないはずの校舎内のとある部屋の中で、キーボードを叩く音が響く。

 

 

 

 ――タンッ

 

 

 

「……これで、完成」

 

 目を虚ろにしながら呟く1人の少女。

 端から見れば、怪しいクスリでも飲んでいるのではないかと疑われることだろう。

 

「明日の新入生歓迎会……。『コレ』で思い知らせてやるわ。私の底力を……」

 

 視線を横にずらすと、とある男性の写真が置いてある。

 彼女はそれを掴み取ると、醜悪な笑みを浮かべて握りつぶした。

 

「アンタには、私の復活のための(いしずえ)となって貰う。覚悟しておきなさい――」

 

 そこに写っている男性の名は。

 

「――アテムくん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ガラッ

 

 

 

「キミ! いつまで学校に残っているんだ! 下校時間を過ぎているなんてレベルじゃないぞっ!!」

「ヒィッ!? ごめんなさい! すぐ帰ります!」

 

 

 

●次回予告という名のネタバレ

 

 

 

 遂にファーストライブ当日。

 気力も体力も十分な『μ’s』メンバー。だけど彼らの前に、とある少女が現れる。

 私の復活のための生け贄になれですって? 何言ってるのよ!

 しかも彼女は、意外な刺客を伴っていた。そんな、どうして!?

 どうしてアナタがアテムと戦う必要があるの!? アナタたちは親友になったばかりじゃないの!?

 

 次回、『アルパカフォースの脅威』

 

 デュエルスタンバイ!

 




唐突な登場人物紹介その2

・アテム:シルバー大好き。最近、空を飛ぶ快感に目覚めた。
・穂乃果:男性と同棲しているけど、お互い全く意識していない模様。周囲からはある意味心配されている。
・海未:最近、自分の出番の少なさに不安を感じている。特に解説役。
・ことり:やりたい砲台。アテムの飛距離によってコンディションがわかるらしい。
・真姫:帝ストラクに大喜び。
・花陽:最近、『スクールアイドルとは何か』を真剣に考えている。
・凛:やった、出番にゃ! でもセリフがもっとほしいにゃ!
・絵里:胃薬の味の違いがわかる、かしこいかわいいエリーチカ。
・希:ワシワシし足りない。
・にこ:後に少女は知る。知らないほうがいい真実もあるということを。
・ツバサ:エンタメ不審者。
・ブラマジ:休暇申請中だが、無理そう。

 次回の投稿までけっこうかかりそうだけど、意味不明な展開にしかならないでしょう。予告の時点でアレだし。

 次回もよろしくお願いします。

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