そのうち片方は、突っ込んではいけない。
それはそうと、最近「遊戯VSレオン」を久々に見て思った。
金の城で相手のデッキの半分を削るって、むしろメリットなんじゃないかと。
今回も2万字超えました。
●前回のラブライブ!
私もこれやるの? 仕方ないわね……、西木野真姫よ。私たち『μ’s』が歌う楽曲の作曲を担当しているわ。
え、そんなことより私のプロフィールを知りたいですって? 言うわけ無いじゃない。……まあ、強いて言えば、最近は物理学をもっと勉強したいと思っているわ。
何故かって? 信じて貰えないかもしれないけど、『μ’s』で衣装作りを担当している南ことりって先輩が、よくデュエルでアテムっていうヒトデ頭の先輩を吹き飛ばしているの。
それで、アテム先輩が吹き飛ぶ時の初速や角度を何度も見ているうちに、もっと物理を勉強したいと思うようになったってわけ。今度レポートを先生に提出するつもりよ。まだ途中だけど、我ながら良い出来になるんじゃないかしら。
――AIBOOOOOOOOOO!!
あ、また吹き飛んでるわね。…………風向きも考えると、今回は2021mか。ことり先輩、随分と調子良いみたいね。
●新たなる不審者
ついに迎えたライブ当日。
朝練を早めに切り上げた穂乃果たちは、4人並んで学院への道を歩いていた。
上級生と並んで登校することに戸惑っていた真姫も、日が経つに連れて自然体で会話ができるようになっていった。
彼女たちの会話内容は、大体同じ。振り付けや発声方法などのライブに向けたこと、もしくは――
「ことり先輩、新しい「
そう、デュエルモンスターズである。あまり他人と関わることが無かった真姫が変わったのも、今ここにいないとある男子とのデュエルがきっかけだったと言っても過言ではない。
「《RUM-レイド・フォース》だよね。いいカードだけど、「RUM」を増やし過ぎてもデッキのバランスが……。海未ちゃんはどう思う?」
「今のことりのデッキは既に4枚入っていますから、レイド・フォースを入れるなら他のRUMを減らす必要があるのではないでしょうか。
……しかし、アテムさんのデュエルを見ていると総数8枚くらいになっても大丈夫かもしれないと思えてくるのが不思議ですね」
海未の言葉に、全員が同意する。彼女の言う通り、アテムは常に必要なカードを引き当てる運命力を持っている。そんな決闘者が近くにいては、どれだけ事故要素の多いデッキを組んでも回すことができるのではないかと思わされるから困ったものである。
「私は大丈夫だと思うよ。私も海未ちゃんもことりちゃんも、アテムくんとデュエルするようになってからドロー力が随分と鍛えられたもん」
しかし驚くべきことに、彼が現れてからは何故か全員のドロー力が向上していたのである。
アドバンス召喚という、今ではあまり使われない召喚を主軸に据える真姫も、彼と出会ってからというもの、「帝」モンスターの採用枚数を増やしたという話だ。
「それにしても、今日は学院の反対方向まで吹き飛ばしちゃったけど、アテムくん授業に間に合うかなぁ」
「吹き飛ばした本人が言うセリフですか……。いつまで経っても懲りないアテムさんにも問題がありますが」
この一連の会話に参加していないことからも分かる通り、今アテムはこの場にいない。いつものように、ことりに吹き飛ばされたためである。今回の飛距離は真姫が計算したところ、なんと2021mらしい。昨晩に引き続き新記録更新。ことりの
こうして、周囲の人々をぷちドン引きさせながら歩を進め、ようやく正門近くまでやってきた。
今日は新入生歓迎会や部活動紹介をするために早くから登校する生徒が多いのか、いつもより人通りは少ない。
――だからこそ、彼女はよく目立った。
「……ねぇ、アレ何?」
その女生徒の存在を最初に認識した真姫は、指差しながら3人に問う。
『え?』
真姫が指さした方向に立つ女生徒は、正門前で微動だにせず仁王立ちしていた。
音ノ木坂学院指定の制服の上から薄汚れた白衣を着て、サングラスを着用し、髪はボサボサ。その姿は、かつてのアテムや綺羅ツバサ程ではないが十分に怪しかった。
「あの人、ロボット研究部の部長さんだったと思うよ?」
ことりの言葉に、穂乃果と海未は思い出す。確か、以前書類選考で落ちたという話をことりがしていたはずだと。
部員数たった1人のロボット研究部。3年生で、名前は
「……私たちの方を見ていますね」
そのロボット研究部部長、唐沢は穂乃果たちの姿を確認すると、視線の鋭さを一層増した。どうやらこちらに用があるらしい。
普段からアテムと行動を共にしている彼女たちは直感で理解した。
――ああ、これは面倒なことになりそうだ。
「待っていたわよ! 音ノ木坂学院のスクールアイドル『μ’s』!!」
人目を憚らず、大声で自分たちのことを呼ぶ。そのまま通り過ぎようと思っていたが、どうやら無理そうだ。
「えっと、ロボ研の部長さん? 穂乃果たちに何か用でしょうか? あ、もしかしてサイン?」
軽めに終わらせたとはいえ、練習後に厄介事に巻き込まれるのは勘弁願いたかった。だが、そうはいかない。
「そんなものはどうでもいいわ。アテムくんを出しなさい。私は彼に用があるの」
そんなもの扱いされたことにショックを受ける穂乃果。
海未は道路の片隅にしゃがみ込んだ彼女を放置しつつ、口を開いた。
「唐沢先輩。アテムさんなら、ことりが学院の反対方向まで吹き飛ばしたので、学院に来るのは恐らく授業開始直前だと思われます。彼に用があるのなら、お昼休みにお願いできますか?」
「……南さんが定期的にアテムさんをボコっているって噂、本当だったのね。まあいいわ。ならばこれをアテムくんに渡しておきなさい!」
そう言って唐沢はその手に持っていた封筒を投げてきた。海未はそれを掴み取ると、表面に書かれている文字を読み上げた。
「『果たし状』?」
「そうよ! これは、我がロボット研究部が復活するための第一歩! 逃げたら承知しないわ!」
何なの、この人。全員がそう感じている間に、彼女は高笑いを上げながらその身を翻し、校舎へと歩いて行った。
――あ、理事長おはようございます。どうしたんですか?
――唐沢さん、警備の方から、貴女が夜遅くまで無断で学院に残っていたと報告を受けました。ちょっと時間を貰えるかしら?
――え? でもこれから授業……。
――1限目の先生には私から伝えておきます。さあ、デュエルでお説教です♪
――ヒィッ!? 誰かお助け~!
……本当に、何だったんだろう。
「よう皆、どうした? こんなところで立ち止まってたら遅刻するぜ」
「……教室で話します」
果たして、今日は無事にライブを迎えることができるのだろうか。
●立ちはだかる強敵
そして時は移り、現在昼休み。
アテムたち5人は、中庭で昼食を取っていた。唐沢からの『果たし状』によれば、中庭で待っていろとのことらしい。
「『今日の昼休み、中庭に来い。私が用意した最強の決闘者がキミを倒すことで、我がロボット研究部の復活への第一歩とさせてもらう』か…………今日も焼きそばパンが美味いぜ!
その唐沢という奴のことは全く知らないが…………クリームパンもデリシャスだぜ! 俺は誰の挑戦だろうと受けて立つぜ…………このコロッケパンはソースがちょっと多いぜ!」
「アテムさん、食べるのか手紙を読むのか話すのか、どれか1つに絞ってくれませんか? うるさいです」
元々、今日は本番前に体力を使いすぎるのも良くないと思い、この昼休みは練習を休みにしてミーティングだけにする予定だった。だが、それも各授業の合間の休み時間にある程度進めたので他のことをしていても大して問題はない。あるとすれば、落ち着いて食事ができないことくらいか。
「でも、朝の理事長に対する怯えっぷりを見たら実力は大したことなさそうだし、アテム先輩の敵じゃないでしょ。…………何が言いたいのよ、穂乃果先輩」
「べっつに~? いやぁ、真姫ちゃんは随分とアテムくんを信頼しているんだねぇ。ことりちゃんもそう思うよね?」
「うん、妬けちゃうよね~」
「な、なに勘違いしてるのよ! これは……その、一般論よ! アテム先輩って基本的に勝ってばっかだから今回も問題ないと思っただけ!」
いつものように漫才を繰り広げる5人。
だが、昼休みに入ってからもう10分は経過している。具体的な時間は記述していなかったが、流石に遅くはないだろうか。
もしやイタズラだったのだろうか。そんな疑問が皆の脳裏をよぎった時――
「待たせたわね、『μ’s』の諸君!」
中庭に響き渡る大きな声。
声のする方を向くと、彼らをここへ呼び出した張本人、唐沢久里子が人の波を掻き分けながら現れた。
いや、『人の波を掻き分けながら』というのは間違いだ。『近くを歩く人々にドン引きされながら』といった方が正しいか。
それもそのはず。彼女は――
白いアルパカに跨りながらやってきたのだから。
『…………』
ドン引きしているのはアテムを除いた4人も同じだ。皆が口を開きっぱなしにして、それぞれ持っていたパンの袋や箸を取り落としていた。
「何をボケっとしているのかしら? さては、今になって怖気づいたとでも?」
――貴女の奇抜な行動に対してどんな反応をしていいかわからないだけです。
口にはしないが全員が同じ気持ちだった。
だが、アテムだけは違う。彼は唐沢のことに目もくれず、白パカのある一点だけを見つめていた。
「唐沢といったか。貴様、白パカにいったい何をした?」
アテムの視線の先、白パカの頭には何かの装置が取り付けられていた。アレは一体何なのだろうか。
「フフフ、よくぞ気がついたわね。そう、これこそが――」
【この女が我にデュエルをさせるために作った装置だ】
「ゑ?」
唐沢の声を遮って聞こえた
「まさか白パカ、お前が喋っているというのか……!?」
【そのまさかだ、アテム。もっとも、我は機械に疎いのでな。詳しい説明はこの女にして貰おう。さあ、頼むぞ】
チラリと後ろを向いて説明を促す白パカ。昨日までと違って、渋い声で喋っているためかどこか偉そうに聞こえる。
「私には唐沢久里子っていう名前が……まあいいわ。この『アルパカ決闘者化装置』は、あらゆる決闘者のデータが詰め込まれている! ついでにアルパカの脳波やらなんやらを研究し、装置を介して言語化! これによりアルパカが人間とデュエルをすることが可能となったのよ!」
「なん、だと……!?」
アルパカがデュエルができるようになるという画期的な装置に、アテムは驚愕する。
「ねぇことりちゃん、確かロボット研究部って以前書類審査で落ちたって言ってたよね。あんな装置を作れるなら優勝まで行けると思うんだけど」
「大人の世界って厳しいんだよ、きっと」
「そういう問題では無いと思うのですが……」
「昨日も夜遅くまで学院に残っていたみたいだし、素行の問題じゃないの?」
『ああ、なるほど』
そして、各々勝手な想像をする4人。自分たちの普段の行動はそっちのけである。
「今、アンタは音ノ木坂学院で最も有名な生徒だと言ってもいい! そんな決闘者を、この装置を着けたアルパカが倒す! それを記録した映像を部活動紹介で公開することで、我が『ロボット研究部』の力を学校中に知らしめる!
そして、今度こそ書類審査で落ちるなどという汚名を返上する! さあ、デュエルディスクを構えなさい!」
ビシッ! と音が出るかのような勢いで指を立てる唐沢。白パカが負けるとは微塵も思っていないことから、余程この装置に詰め込まれたデータに自信があるらしい。
「俺は別に構わない。だが白パカ、お前はなぜ唐沢に協力している?」
【大した理由はない。お前たち人間が夢中になっている遊びがどんなものか知りたい。それだけのことさ。その初めての相手がアテム、貴様だというのなら、これ程嬉しいことはない】
そう言って白パカは、背中に乗っていた唐沢を下ろすと、彼女が用意したデュエルディスクを地面に置いた。更に、自分とディスクの間に仕切り版を立てかけた。恐らく、手札が見えないようにするためだろう。
会話とデュエルができるようになったとはいえ、人間のように指を器用に使えるわけではない。このような行動を取らざるを得ないというのは仕方ない。
「アテムさん! デュエル初心者のアルパカとはいえ、油断してはいけませんよ!」
「ふっ。心配するな園田。俺は相手が誰であろうと手を抜いたりはしないさ。それに、白パカが放つ
服に付いたパンくずを落としながら、デュエルディスクを構えるアテム。その瞬間、空気が一変する。
普段は問題行動を起こしてばかりの彼だが、大事な一戦になった時の真剣さは誰にも負けないことを穂乃果たちは知っている。
「さあ行くぜ、白パカ! お前の実力を見せてみろ!」
【ふん。その余裕、いつまで保っていられるかか見ものだな。さあ、デュエル開始の宣言をしろ、女!】
「だから私には唐沢久里子って名前があるのに…………デュエル開始ィ!!」
『デュエル!!』
アテム:LP4000
白パカ:LP4000
●アテムVS白パカ
【先攻は我が貰う。我はモンスターと
前足の先にも、カードを掴むための仕掛けがされているのだろう。流暢な動きで2枚のカードをフィールドに出した白パカ。その迷いの無さから、初デュエルといえども多くの決闘者のデータが蓄積されているという話は本当らしい。
「俺のターン、ドロー! 俺は手札から《熟練の青魔道士》を召喚!」
《熟練の青魔道士》
☆4 光属性 魔法使い族 ATK1800
やはり油断は禁物だと改めて認識したアテム。彼が召喚したのは、青い衣を纏い、右手に槍を携えた魔道士。攻守共に1800と、バランスが取れたモンスターだ。
「更に装備魔法《バウンド・ワンド》を青魔道士に装備! これにより、装備モンスターの攻撃力をレベル1つにつき100ポイントアップ!」
赤い水晶が取り付けられた一本の杖。青魔道士のレベルは4であるため、上昇値は400。これにより、上級モンスターに匹敵する攻撃力を得ることになる。
《熟練の青魔道士》
ATK1800 → ATK2200
「まだ行くぜ! 魔法カードを発動したことで、《熟練の青魔道士》の効果発動!」
アテムの宣言と同時に、青魔道士が持つ槍がうっすらと輝いた。まるで、力を溜め込むかのように。
「《熟練の青魔道士》は、互いのプレイヤーが魔法カードを発動する度に、自身に「魔力カウンター」を1つ乗せる!」
《熟練の青魔道士》
魔力カウンター 0→1
「カウンター」とは、カード効果の発動条件を満たす言わば燃料。それが十分に溜まった時、真価を発揮するのだ。
「バトルだ! 行け、《熟練の青魔道士》! 裏守備モンスターに攻撃!
裏守備モンスターへと狙いを定めた青魔道士の槍から、螺旋状の光線が放たれる。白パカは、伏せてい枚のカードを発動させる素振りを見せない。伏せカードはブラフか、はたまた発動条件を満たしていないのか。
【我が伏せていたモンスターは守備力1000の《おジャマ・ブルー》だ】
《おジャマ・ブルー》
☆2 光属性 獣族 DEF1000
ダメージステップに入り姿を現したのは、全身真っ青なタラコ唇のモンスター。
多くの者が『気持ち悪い』と評価するであろう見た目に、口には出さないが誰もが微妙に顔をしかめる。
そんなモンスターが、「いや~ん!」という声を出しながら砕け散った。
あっさりと破壊される低レベルのモンスター。だが、アテムには白パカが『ニヤリ』と笑みを浮かべたように見えた。
「なるほど、あのアルパカのデッキは【おジャマ】ということですか。厄介ですね」
「そうね。下手したら奴は次のターンで仕掛けてくるわ……!」
「へぇ~。2人ともよくわかるね」
たった1枚のカードから白パカのデッキを特定する海未と真姫。穂乃果はまだ【おジャマ】というデッキの内容をわかっていないものの、モンスター1枚だけで特定できるならば、アレがそれ程のキーカードであることだけは理解できた。
【この瞬間、《おジャマ・ブルー》の効果を発動する! このモンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、デッキから「おジャマ」と名のついたカードを2枚手札に加える!
我は、《おジャマジック》と《おジャマ・レッド》を手札に加える!】
「カードの種別を問わずに2枚も手札に加えるだと!?」
白パカが手札に加えたのは、モンスターと魔法が1枚ずつ。そのうちモンスターの方は《おジャマ・ブルー》と同じく攻撃力0で、守備力1000の弱小モンスター。だが、それが公開された瞬間、唐沢の表情が歪む。まるで、勝利を確信したかのように。
「フフフ、これで勝利への布石は整った! 次のターンで白パカの勝利よ!」
【騒がしい女だ。さて、アテムよ。これで攻撃可能なモンスターはいなくなったが、どうする?】
唐沢を迷惑そうにしながらも、勝利を確信しているのは白パカも同じのようだ。
「俺はバトルフェイズを終了して、メインフェイズ2へ移る。
その永続魔法が発動された瞬間、《熟練の青魔道士》が持つ槍の輝きが一層増した。
《熟練の青魔道士》
魔力カウンター 1→2
(奴らのあの自信……。キーカードは既に揃っていると考えて間違いない。だが、手札に加えたモンスターは攻守ともに低い。一体何を仕掛けてくる……?)
【我のターン、ドロー! 我はまず手札からフィールド魔法《おジャマ・カントリー》を発動する!】
フィールド魔法が発動されたことで、周囲の景色が一変する。そこは、『カントリー』というだけあって、家々が立ち並ぶ集落。1つ1つの建物は、「おジャマ」モンスターが入れるかどうかといった大きさだ。
「新たに魔法カードが発動されたことで、《熟練の青魔道士》に3つ目の魔力カウンターが溜まる!」
《熟練の青魔道士》
魔力カウンター 2→3
【構わん。《おジャマ・カントリー》の効果発動! 1ターンに1度、手札の「おジャマ」と名のついたカードを1枚墓地に送ることで、墓地から「おジャマ」モンスター1体を特殊召喚する。
この効果により、我は手札の《おジャマジック》を墓地に送り、墓地に眠る《おジャマ・ブルー》を守備表示で特殊召喚する】
再びフィールドへ現れた《おジャマ・ブルー》だが、先ほどと違う点が1つある。
アテムがデュエルディスクに表示されているモンスターのステータスを確認すると、《おジャマ・ブルー》の攻守が入れ替わっていたのだ。
《おジャマ・ブルー》
ATK1000 / DEF 0
「これは一体……?」
【それは《おジャマ・カントリー》のもう1つの効果によるものだ。このフィールド魔法は、我のフィールドに「おジャマ」モンスターが存在する限り、フィールド上の全モンスターの元々の攻撃力と守備力を入れ替える】
「なるほど。《熟練の青魔道士》の元々の攻撃力と守備力は、どちらも1800ポイント。だから《おジャマ・カントリー》の効果を受けても数値が変わらなかったということか」
(《おジャマ・カントリー》……、厄介な効果だぜ。元々の攻守が同じ《熟練の青魔道士》だから影響は無かったが、これが《デーモンの召喚》なら危なかった。デーモンの攻撃力は《ブラック・マジシャン》と同じ2500だが、守備力は1200しかないからな)
【さて、《おジャマ・カントリー》の効果を理解して貰ったところで、次はコストで墓地に送った《おジャマジック》の効果を発動だ!
このカードは手札かフィールドから墓地へ送られた時のみ効果を発動する特殊な魔法カード! 我はその効果によりデッキから《おジャマ・グリーン》《おジャマ・イエロー》《おジャマ・ブラック》を手札に加える!】
《おジャマジック》の特殊な発動条件に驚きの表情を浮かべるアテムだが、白パカが手札に加えたカードを確認すると、その驚きは疑問へと変わった。
無理もない。なぜなら白パカの手札に加わった3枚のカードは、どれも《おジャマ・ブルー》と同じ攻守でありながら、効果を持たない通常モンスターだったのだから。
「……穂乃果。次にあのアルパカが召喚するモンスターと、発動されるであろう魔法カードを見れば、私と真姫が【おジャマ】を警戒していた理由がわかりますよ」
「えっと、次に召喚するモンスターといったら、4体の「おジャマ」モンスターのうちのどれかだよね?
そこまではわかるけど、魔法カードまでわかっちゃうの?」
今、白パカの手札はカード効果で加えられた「おジャマ」モンスター4体を含めて7枚。
海未は既に感じ取っているのだ。残る3枚のカードの中に、【おジャマ】の切り札があることを。
【続いて我は、手札の《おジャマ・レッド》を通常召喚して、効果発動! このモンスターが召喚に成功した時、手札の「おジャマ」モンスターを可能な限り特殊召喚する!】
「モンスターの大量召喚だと!?」
驚くアテムを余所に、白パカの手札から3体のモンスターが現れる。それは、今しがた手札に加えられた3体の通常モンスター。
これにより、白パカのフィールドは5色の「おジャマ」モンスターに埋め尽くされた。
《おジャマ・グリーン》
ATK1000
《おジャマ・イエロー》
ATK1000
《おジャマ・ブラック》
ATK1000
《おジャマ・レッド》
ATK1000
《おジャマ・ブルー》
DEF 0
この光景を見て、アテムは少し前に出会った決闘者とのデュエルを思い出す。
ウィング・キラ……いや、綺羅ツバサが行なったペンデュラム召喚。2枚のペンデュラムカードを使ってモンスターを一度に特殊召喚する戦術は見事であった。
そして、今目の前にいる白パカも、それと似たようなことをやってのけたのだ。
「ペンデュラムカードを使わずにモンスターを一度に特殊召喚するとは流石だぜ、白パカ。だが、そいつらの攻撃力では俺のモンスターを倒すことは――」
――それはどうかな?
「何!?」
【アテム、貴様と後ろの女たちのうち1人はまだ理解していないようだな。「おジャマ」モンスターの底力を……!】
白パカが、1枚のカードをディスクへと挿し込む。そのカードの正体を知る者ならば、こう言うだろう。
――もしもカウンターできなければ、そこで勝負は決する。
【受けてみよ! 我は魔法カード《おジャマ・デルタハリケーン!!》を発動!】
その魔法カードが発動された瞬間、白パカのフィールドに並ぶ「おジャマ」モンスターのうち、
【このカードは、我のフィールドにグリーン・イエロー・ブラックが揃っている場合のみ発動できる! その効果により――】
――相手フィールド上のカードを全て破壊する!!
「そ、そんな!?」
禁止カード《サンダー・ボルト》と、元禁止カード《ハーピィの羽根帚》。2枚の強力なカードを内蔵した効果。
発動条件の厳しさに見合うなんてものではない威力に、穂乃果は戦慄し、ようやく理解した。海未たちが【おジャマ】を警戒していた理由を。
この効果が決まってしまえば、アテムのフィールドはがら空き。そこへ《おジャマ・カントリー》の効果で攻撃力が1000となった4体の「おジャマ」モンスターの
「アーッハッハッハッ!! これで決まりよ!」
3体の「おジャマ」モンスターが高速回転しながら巨大な竜巻を放つ。弱小モンスターと言えども、集まれば強力ということか。
竜巻によって抉られる地面を見て高らかに笑い、勝利を確信する唐沢。だが、彼女はわかっていない。
「この瞬間、俺は
絶体絶命な状況こそが、アテムにとって絶好のチャンスになるということを。
――《大革命返し》を発動ッ!!
【何だと!?】
「このカードは、フィールド上のカードを2枚以上破壊するカードが発動された時に発動できるカウンター罠! その効果により、《おジャマ・デルタハリケーン!!》の発動を無効にして、ゲームから除外する!」
アテムのフィールドを守るかのように、透明な盾が竜巻を跳ね返す。発動を無効にされた竜巻は霧散し、放った張本人である《おジャマ・グリーン》たちは、すごすごと持ち場へと戻って行った。
「くっ。そんなカードを伏せていたなんて……!」
「残念だったな、唐沢。《ブラック・ホール》や《ハーピィの羽根帚》を警戒して伏せておいたが、助かったぜ」
必殺の一撃を回避したことに悔しがる唐沢と、逆に安堵する穂乃果たち。
だが、安心するのはまだ早い。未だ白パカのフィールドのモンスターは健在なのだから。
【《おジャマ・デルタハリケーン!!》を破るとは恐れいった。だが、貴様のライフを削り切るためのカードはもう1枚手札にあるのだよ!】
「ッ!?」
刹那、白パカから放たれる強烈な
これも、音ノ木坂学院の決闘者のデータを蓄積した装置がもたらす力なのか。そう予測を立てるアテムだが、どうやら違うようだ。なぜなら、白パカの後ろに立つ唐沢でさえも白パカが放つ
「な、何これ!? アルパカがこれ程の
【見誤ったな、女。貴様がこの【おジャマ】デッキに隠し味として入れたこのカード。我はこれを大層気に入った。そして今、召喚条件が整ったために我の気力は最高潮に達しているのだ!!】
決闘者には、誰しもお気に入りのカードや相性の良いカードというものが存在する。それは、アテムの《ブラック・マジシャン》が最たる例だ。彼は《ブラック・マジシャン》を自身のエースとして、それを活躍させるための戦術を日々研究している。だからこそ、《ブラック・マジシャン》が場に出た瞬間、誰もが畏敬の念を抱くのだ。
(そして、恐らく白パカが出そうとしているモンスターこそがあのデッキの真の切り札!)
白パカが解き放とうとする未知の力を直感で理解するアテム。彼は同じ感覚をかつて味わったことがある。
それは、バトルシティで何度も目にした3枚のカード。
厳しい召喚条件に見合うだけの圧倒的な力を持ち、並の決闘者では、対峙しただけでサレンダーをしてしまうモンスター。
いや、あの3体はモンスターなどというカテゴリに分類することさえおこがましい。
――神のカード。
三幻神とも呼ばれるあの3体にも似た力を、白パカから感じ取れる。一体、白パカはどのようなモンスターを召喚しようというのか。
【覚悟するがいい! 我はフィールドのブルー・レッド・ブラック! この3体を墓地に送る!】
「なっ……!? 3体の生贄だと!?」
驚愕するアテムを余所に、3体の「おジャマ」が、白パカの眼前に現れた漆黒の空間へと吸い込まれて行く。
【このモンスターは、我のフィールドに存在する3体のモンスターを墓地に送った場合のみ特殊召喚できる超重量級モンスター。だが、それ故に絶大な力を持つ!】
かつて三幻神全てと対峙し、なおかつ今はその全てを所有しているアテムだからこそわかる。
3体のモンスターを贄とするモンスターが、どれ程強力であるかを。
【降臨せよ、大アルカナより外れし究極の力の1つ!】
――レベル10! 《
《アルカナフォースEX THE DARK RULER》
☆10 光属性 天使族 ATK4000
「レベル10、攻撃力4000……!」
漆黒の身体と鋭い刃。そして、2つの竜の首。
天使とは程遠い禍々しき姿を持つ、レベル10の超大型モンスター。
そして攻守は共に4000ポイント。恐らく、ステータスだけでなく特殊効果も強力なものに違いないとアテムは警戒する。
【ザ・ダーク・ルーラーが特殊召喚に成功した時、効果発動!
「アルカナフォース」と名のついたモンスターは、それぞれ場に出た時に正位置か逆位置かをランダムに決定し、位置によって異なる効果を得る。
だが! 今の我の運命力は最高潮に達している! 故に我が望む位置を自ら決定する!
我が選ぶのは、正位置! これにより、2回の攻撃を可能とする!】
「攻撃力4000で2回の攻撃だと!?」
「やるじゃない白パカ! インチキにも程があるけど!」
ランダム性を無くすという、まさしくイカサマとも言える白パカの力に、唐沢は驚嘆する。
だが、アテムがいつも状況に応じて必要なカードをドローする様を見ている穂乃果たちにとっては、彼女のように驚くことはなかった。一応の感心は見せているのだが。
【更に我は魔法カード《融合》を発動! 我のフィールドに存在する通常モンスター、「おジャマ」2体を融合させる!】
「2体の通常モンスターを要求する融合モンスター……まさか!?」
これにより呼び出されるモンスターの存在を、アテムは知っている。
それどころか、この世界に来てすぐに手に入れている。
《ブラック・マジシャン》を始め、通常モンスターが多めのアテムのデッキに相性が良いだろうと穂乃果に勧められたのだ。
【融合召喚! レベル9! 《始祖竜ワイアーム》!!】
《始祖竜ワイアーム》
☆9 闇属性 ドラゴン族 ATK2700
「ま、まずいよ海未ちゃん! 攻撃力4000の2回攻撃どころか、ワイアームまで召喚されちゃったよ!」
「確かに、これは良からぬ状況ですね。ワイアームは2700という高い攻撃力に加え、あらゆるモンスター効果を受け付けない強力な耐性があります」
「それだけじゃないわ。ワイアームは、通常モンスター以外のモンスターに戦闘破壊されない厄介な能力もある」
「アテムくんのデッキには通常モンスターが多めに入っているけど、どの道このターンを耐え切れなかったら……」
強大な2体のモンスターを前に、4人は戦慄する。すぐ近くで対峙するアテムは、更なる脅威を感じているに違いない。
彼女たちには、祈ることしかできない。この連続攻撃を防ぎきることを。
【バトルだ! まずはザ・ダーク・ルーラーの1回目の攻撃! 《熟練の青魔道士》を粉砕せよ!】
――ジ・エンド・オブ・シャドー!!
ザ・ダーク・ルーラーの両肩から伸びる2つの竜の首のうち、右側の口から光弾が放たれる。
必死に応戦する青魔道士だが、攻撃力4000の前には、強化した数値も雀の涙。呆気無くその身体を四散させる。
「ぐぁああああ!?」
アテム LP4000 → LP2200
苦悶の叫びを上げ、大きく吹き飛ばされるアテム。何度も地面をバウンドする姿を見せつけられた少女たちの口から、小さく悲鳴が漏れる。
【せっかく魔力カウンターを溜めていたというのに、残念だったな】
「くっ……! だが、まだだ! 俺は《バウンド・ワンド》と《魔法族の結界》の効果を発動!
魔法使い族モンスターが破壊されたことで、《魔法族の結界》に魔力カウンターが1つ精製される!」
《魔法族の結界》
魔力カウンター 0→1
アテムのフィールドに形成された魔法陣が、淡く発光する。そう、このカードも魔力を溜めることで力を発揮するのだ。
「更に! 《バウンド・ワンド》を装備したモンスターが相手によって破壊され、このカードが墓地に送られた場合、装備モンスターを復活させる! 戻って来い、《熟練の青魔道士》!」
《熟練の青魔道士》
☆4 光属性 魔法使い族 DEF1800
墓地からバウンドするかのように、守備表示で復活する青魔道士。通常ならば心強い効果だが、まだ安心はできない。
【まだ我の攻撃は2回残っているぞ! 次は《始祖竜ワイアーム》! 再び青魔道士を攻撃せよ!】
巨大な竜の首が、青魔道士を噛み砕く。守備表示のためダメージが発生することはないが、これで今度こそアテムのモンスターゾーンはがら空きになった。
「再び魔法使い族モンスターが破壊されたことで、《魔法族の結界》に魔力カウンター精製!」
《魔法族の結界》
魔力カウンター 1→2
【それがどうした! どの道次の攻撃で終わる! 行け、ザ・ダーク・ルーラー! アテムに
攻撃力4000。初期ライフと同じ数値の直接攻撃を受ければ、ひとたまりもない。
勝利を確信する白パカと唐沢。
万事休すか、と覚悟を決める4人の少女。
だが――
――このダメージ計算時、モンスター効果発動!
アテムの目は、まだ諦めていない。
「俺は手札から《クリボー》を捨てることで、この戦闘で発生するダメージを0にする!」
アテムのピンチを何度も救ってきた小さな救世主。
例えどれだけ高い攻撃力があろうとも、ダメージを0にしてしまえば問題はない。
【そんな手を残していたとはな……。ザ・ダーク・ルーラーは2回目の攻撃を行った場合、バトルフェイズ終了時に守備表示となる。我はこれでターンエンドだ】
ワンショットキルを決められなかったことを残念そうにしながらも、その表情にはまだ余裕がある。それを見た唐沢は、1つの予測を立てた。
(あの自信……。そうか、白パカが最初のターンに伏せたカードは十中八九、罠カード《逆転する運命》。
あのカードの効果は、「アルカナフォース」1体の位置を逆転し、召喚時に得た効果を逆にする。
そして、ザ・ダーク・ルーラーの逆位置の効果は、自身が破壊される時フィールド上の全てのカードを破壊するというもの。例えアテムくんがザ・ダーク・ルーラーを破壊しようとしても、その効果で彼のフィールドは全滅。一方、白パカの《始祖竜ワイアーム》はモンスター効果を受け付けない。
フフフ、今度こそ終わりね)
今、アテムの手札は無く、フィールドには《魔法族の結界》と伏せカードが1枚。
ここからの逆転は難しいだろう。
「アテムさんが逆転する可能性があるとすれば、《魔法族の結界》によるドローにかかっています」
アテムがなんとか耐え切ったことに安堵した海未は、冷や汗をかきながら逆転への道を模索する。
彼のフィールドに残ったカードの1枚、《魔法族の結界》こそが逆転へのキーカード。
「そうね。《魔法族の結界》は溜まった魔力カウンターの数だけカードをドローする効果がある。でも、この状況で効果を使うのは難しいわよ」
自分とのデュエル、そしてウィング・キラとのデュエルで見せたアテムのドローに期待したい真姫だが、《魔法族の結界》が持つ発動条件と、今の彼の状況を照らし合わせて、厳しい評価を下す。
「真姫ちゃんの言う通り、だね。《魔法族の結界》のドロー効果を発動するためには、フィールドの魔法使い族モンスターを墓地に送る必要がある。でも、今のアテムくんのフィールドにモンスターは無く、手札も0枚。このままじゃあ発動なんてできないよ……」
ことりの言う通りだ。もしも効果を発動させたいならば、次のドローで魔法使い族モンスターを引き当てなければならない。
「でも、アテムくんなら大丈夫だよ。アテムくんにとって、絶体絶命の状況は、絶好のチャンスなんだから!」
穂乃果は、自信を持って宣言する。
海未たちも、その言葉にハッとする。そうだ、彼はどんな時でも諦めない。だからこそ、いくつもの勝利を収めてきたのではないか。
彼はきっと、デッキにカードが残っている限り戦い続ける。
ならば信じよう、彼の逆転劇を。
「流石だぜ白パカ、簡単に攻撃力4000の超大型モンスターを召喚するタクティクス。とてもじゃないが初めてのデュエルだとは思えない」
【ふん、褒めても何も出ないぞ。次のドローで全てが決まる。引き当てることができるのか、我に打ち勝つためのカードを】
「やってみせるさ、『μ’s』ファーストライブを直前に控えて、負けるわけにはいかないさ! 行くぜ、俺のラストターン!」
――ドローッ!!
吹き荒れる暴風を目の当たりにした唐沢は、一体何事かと目を見開く。その一方で白パカは野生の勘で感じ取っていた。
彼がキーカードを引き当てたことを。
「俺は永続罠《漆黒のパワーストーン》を発動! このカードは、発動時に魔力カウンターを3つ精製する!
更に俺のターンに1度、他の魔力カウンターを置くことができるカードに自身の魔力カウンターを移し替える! よって、《魔法族の結界》のカウンターを増やす!」
《漆黒のパワーストーン》
魔力カウンター 0→3→2
《魔法族の結界》
魔力カウンター 2→3
「まだだ! ここで墓地の《熟練の青魔道士》の効果を発動! このカードを墓地から除外することで、《魔法族の結界》へと更に魔力カウンターを精製する!」
《魔法族の結界》
魔力カウンター 3→4
「魔力カウンターを一気に溜めてきたわね。でも、忘れていないかしら? 《魔法族の結界》のドロー効果を使うためには魔法使い族モンスターが必要だということを!」
「わかっているさ、その条件を満たすためのカードがこれだ! 魔法発動、《予想GUY》!
自分フィールドにモンスターが存在しない時、デッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚する! 来い、《ホーリー・エルフ》!!」
《ホーリー・エルフ》
☆4 光属性 魔法使い族 DEF2000
【魔法使い族モンスターをデッキから召喚しただと……!】
「これで条件は整った! 《魔法族の結界》の効果発動! 自分フィールドの魔法使い族モンスター《ホーリー・エルフ》と共に墓地に送ることで、乗っていた魔力カウンターの数だけカードをドローする! 乗っていた魔力カウンターの数は4つ! よって俺は、4枚のカードをドロー!」
手札0から、一気に4枚。
誰もが、手札とは可能性だということを知っている。それが急激に増えたとなれば、それは逆転劇の始まりを示していた。
「この4枚で、俺は勝つ! 行くぜ、まず1枚目! 手札から《ワタポン》のモンスター効果を発動! このカードは、カード効果で手札に加えられた時、特殊召喚できる!」
《ワタポン》
☆1 光属性 天使族 DEF300
綿毛のような、小さなモンスター。その姿に、ことりが「可愛い!」と声を出す。
「へぇ、随分と可愛らしいモンスターじゃない。それで一体どうするのかしら?」
「まあ焦るなって。俺は場にカードを2枚伏せて、手札から《疾風の暗黒騎士ガイア》を通常召喚!」
《疾風の暗黒騎士ガイア》
☆7 闇属性 戦士族 ATK2300
【レベル7の最上級モンスターをリリースなしで召喚だと!?】
「このカードは、手札のカードが自身の他に存在しない場合、生け贄なしで召喚することができるのさ。
更に今伏せた通常魔法《ギャラクシー・クィーンズ・ライト》を発動!
このカードは、フィールド上のレベル7以上のモンスター1体を選択し、他のモンスターのレベルを選択したモンスターと同じにする! 俺は《疾風の暗黒騎士ガイア》を選択して、《ワタポン》のレベルをガイアと同じ7にする!」
《ワタポン》
☆1 → ☆7
【これで、レベル7のモンスターが2体。まさか!】
「そのまさかだ! 俺は、レベル7の《疾風の暗黒騎士ガイア》と《ワタポン》でオーバーレイ!」
2体のモンスターが、それぞれ紫色と黄色の球体となって、アテムの眼前に出現した光の渦へと吸い込まれる。
そこは、新たな力を生み出すための場所、オーバーレイ・ネットワーク。
「幻想を彷徨いし魂よ、今こそ秘められし魔術を解き放て! エクシーズ召喚!」
――降臨せよ、ランク7! 《幻想の黒魔導師》!!
《幻想の黒魔導師》
★7 闇属性 魔法使い族 ATK2500 ORU 2
底知れない力を秘めた漆黒の魔導師。
その眼光が、対峙する2体のモンスターを射抜く。攻撃力はどちらにも及ばないというのに、まるで恐怖を感じていないかのように。
「《幻想の黒魔導師》の効果発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使うことで、デッキから魔法使い族の通常モンスターを特殊召喚する! 来い、我が最強の僕!」
――《ブラック・マジシャン》!!
《ブラック・マジシャン》
☆7 闇属性 魔法使い族 ATK2500
『出た! アテムくんのエースモンスター!』
アテムが最も信頼するエースモンスター、《ブラック・マジシャン》。
彼そ象徴するカードの登場に、穂乃果とことりは思わず歓喜の声を上げた。
「ふん、それがどうしたっていうの!? 2体のモンスターの攻撃力は、ワイアームにすら届いていない! せっかくのエクシーズ召喚も無駄に――」
――そいつはどうかな?
「え?」
「俺は更に伏せた魔法カード《フォース》を発動! 俺は《ブラック・マジシャン》とザ・ダーク・ルーラーを対象にして、効果を発動する!」
アテムが対象を選択した瞬間、2体に変化が起きる。
【バカな!? ザ・ダーク・ルーラーの攻撃力が……!】
《アルカナフォースEX-THE DARK RULER》
ATK4000 → ATK2000
「《フォース》は、選択した2体のモンスターのうち、1体の攻撃力を半分にして、もう一方の攻撃力を、その数値分アップする。
ザ・ダーク・ルーラーの攻撃力の半分は2000ポイント。よって、《ブラック・マジシャン》の攻撃力は2000ポイントアップだ!」
《ブラック・マジシャン》
ATK2500 → ATK4500
「バトル! 行け、《ブラック・マジシャン》! ザ・ダーク・ルーラーに攻撃!」
強大な攻撃力を得たブラック・マジシャンの杖が、ザ・ダーク・ルーラーへと狙いを定める。
その瞬間、白パカはニヤリと笑みを浮かべ、1枚の
【甘い!
逆位置のザ・ダーク・ルーラーが破壊された時、フィールド上のカードは全て破壊される!
そして、ワイアームはモンスター効果を受け付けない! これで終わりだ!】
そう、唐沢の予測は正しかった。白パカは、ザ・ダーク・ルーラーを召喚できると信じ、最初から《逆転する運命》を伏せていたのだ。
だが、しかし。
「無駄だ! 俺は《幻想の黒魔導師》の効果発動! 《幻想の黒魔導師》が存在する限り、1ターンに1度、自分フィールドの魔法使い族通常モンスターが攻撃する時、相手フィールド上のカードを1枚『除外』する! 俺が選択するのは当然ザ・ダーク・ルーラー!」
「そ、そんな! 『除外』ですって!?」
【これでは、ザ・ダーク・ルーラーの効果が発動できない!】
破壊ではなく、除外。
無敵とも言える力を持つはずのモンスターが、2体の魔法使いが生み出した異空間へと吸い込まれて行く。
「バトル中にモンスターの数が変化したことで、攻撃の巻き戻しが発生する! 俺は《ブラック・マジシャン》の攻撃対象をワイアームへと変更する!」
【くっ! 《ブラック・マジシャン》は通常モンスター! ワイアームの破壊耐性が通用しない……!】
1つの巨体を葬り去った魔術師が、新たな目標を設定する。
「行け、《ブラック・マジシャン》! 《始祖竜ワイアーム》を撃ち倒せ!」
――
漆黒の奔流が、ワイアームを襲う。
どんなに強固な耐性を持っていたとしても、必ず抜け道は存在する。
ワイアームが持つ弱点の1つ、「高い攻撃力を持つ通常モンスター」の攻撃を受け、その身は崩れ落ちていく。
【ぐぉおおおお!?】
白パカ LP4000 → LP2200
「こんな、ことって……!」
2体のモンスターが消え去り、白パカのフィールドは《おジャマ・カントリー》しか残されていない。
そして、アテムのフィールドにはまだ攻撃可能なモンスター、《幻想の黒魔導師》が残っている。
「これで終わりだ! 行け、《幻想の黒魔導師》! プレイヤーに
――
白パカに向けて殺到する、《ブラック・マジシャン》のものよりも遥かに密度の濃い奔流。
【ふっ。甘いのは我の方だったか。見事だ、アテム……!】
彼は満足そうな笑みを浮かべ、その攻撃を受け入れるのだった。
白パカ LP2200 → LP 0
●戦い終えて
【……勝てると思っていたのだが、貴様には及ばなかったか。デュエルというものは、奥が深いのだな】
立ち上がった白パカは、ゆっくりとアテムへと歩み寄る。しかし、その動きは若干ふらついている。初めてのデュエルで疲労が溜まってしまったのだろう。
「そうさ。デュエルは最後の最後まで何が起こるかわからない。俺も最後のドローで《予想GUY》を引けなければ負けていた。
いいデュエルだったぜ、白パカ。またデュエルしようぜ」
【望むところだ。研鑽を積み、次こそは貴様に勝ってみせよう】
握手(右手と右前足だが)を交わすアテムと白パカ。台詞だけ聞いていればちょっぴり感動的な場面かも知れないが、実際はヒトデ頭とアルパカであるため、非常にシュールな光景となっていた。
「私の、最高傑作が……」
一方、確実に勝てると思って放った刺客が倒されたことで、唐沢は途方に暮れていた。
デュエル開始時から記録を開始したビデオカメラはまだ動き続けている。録画を中止する気も起きないほどのショックを受けているのだろう。
そんな彼女に、1つの影が近づいていく。
「なあ唐沢、なぜお前は俺と白パカにデュエルをさせようとしたんだ?
装置を認めて貰うだけなら、相手は俺である必要はなかったはずだぜ。それこそ、東條に頼めばデュエルくらい受けてくれたんじゃないのか?」
アテムは、彼女の前にしゃがみ込んで問いかける。情報と違い、真剣味を帯びた表情で見つめられ、唐沢は口を開いた。
「悔しかったのよ……」
「悔しい?」
「私は今まで多くの発明をしてきた。『アルパカ決闘者化装置』に匹敵する大発明もね。でも、誰も認めてくれなかった。見向きもしてくれなかった。1人で夜遅くまで学院に残って作り上げてきたのに!」
やっぱり素行の問題なんじゃ、とは口には出さない。
「そんな中、アンタが現れた! アンタは私と同じく絢瀬さんの目の敵にされているくせに、瞬く間に皆の中心になっていった! 私の努力は誰にも認められなかったのに!」
悲痛な声が中庭に響く。一方的な逆恨みではないかとも思えるが、今の穂乃果たちなら理解できる。
今でこそ一部の人たちに認知されている自分たちのスクールアイドル活動も、もしかしたら唐沢と同じように誰からも認められないかもしれない。
しかもその第一歩は、数時間後のファーストライブに迫っているのだ。
その事実を改めて認識したことで、穂乃果たちは急激に不安が強くなっていった。
辺りの空気の温度が、冷えていくような感覚が、彼女たちを襲う。
「そんなことはないぜ、唐沢」
だが、そんな空気を1人の男が打ち破った。
アテムは、先ほどと変わらぬ表情で唐沢を見つめ続けている。
「同情のつもり? やめてよ、勝者に慰められるなんて、滑稽になるだけじゃない……」
「いいや、同情なんかじゃないさ。俺は、お前の発明品に感動しているんだぜ」
「え?」
「俺は昨日、白パカと心を通わせ、背中に乗せてもらうことができた。それと同時に、こうも思っていたんだ。『コイツと話をして、デュエルできないか』とな」
普通なら馬鹿みたいだと思われるであろうアテムの発言。だが、彼はいつでもバカ正直に物を言うことを穂乃果たちは知っている。これは彼の本心なのだ。
「お前は、そんな俺の願いを叶えてくれた。それにお前は、装置を着けた白パカを洗脳したわけではないんだろう?」
「え、ええ。人や動物の心を操る発明は、私の主義に反するから。そもそも、そこまでの技術をまだ私は持っていないわ」
「だったら、お前の努力を認めてくれる奴は俺1人じゃない。そうだろ、白パカ?」
そう言って、アテムは視線を横に向ける。そこには、穏やかな表情をしたアルパカが唐沢を見つめていた。
【アテムの言う通りだ、唐沢】
「あ、私の名前……」
この白パカは、装置を取り付けて喋れるようにしてからというもの、唐沢のことを『女』と呼び、まともに名前で呼ぼうとしなかった。そんな彼が、今初めて彼女の名を呼んだ。
【貴様の言動は自分勝手そのものだ。だが、その身勝手な行動により、我はこうしてアテムとデュエルをすることができた。その点だけは、貴様に感謝している】
「それに、お前は俺と白パカをデュエルさせるために多くの決闘者のデータを集めるという地道な努力も惜しまなかったんだ。誰も認めないなんてこと、あるはずがない。そうだろう、皆?」
続いてアテムが向いたのは、4人の後輩たち。
「そうね。デュエルのデータを集めるのって結構大変だし、凄いんじゃないの?」
「ええ。それに、この技術を応用すればもっと多くの動物ともデュエルができるはずです」
「唐沢先輩のこと、お母さんがよく話してましたよ。『空回ることが多いけど、努力を惜しまない凄い生徒』だって」
「今度は私も白パカさんとデュエルをしてみたいです!」
「アテムくん、白パカ、皆……! ごめんなさい、そして、ありがとう……!」
唐沢の目から、再び涙が流れ出る。だが、今度は悔しさや悲しさから来るものではない。もっと清らかな、喜びの涙。
「なあ唐沢、もしよければ俺たちのファーストライブ、見に来てくれないか?
俺たち『μ’s』のスタートを、是非お前に見て欲しい」
ポケットから取り出したハンカチで涙を拭いながら、手を差し出すアテム。そんな彼の手を、唐沢は掴んだ。
「ええ、喜んで。だけど、批評はしっかりさせて貰うわよ?」
「望むところだ。俺たちのダンス、とくと目に焼き付け――」
「アテムさん、ドサクサに紛れて踊ろうとしないでくれませんか?」
「ゑ?」
「あ、やっぱりアテムくんは踊らないのね」
「当然です、唐沢先輩。むしろアテムさんに踊らせたりしたら、ライブが滅茶苦茶になります」
少々呆れ顔の唐沢と、冷徹な表情の海未。
そんな2人に見つめられながらアテムは、ちょっぴり涙ぐみながら言った。
「俺だって皆と一緒に『お揃いのシルバー』巻いて――」
その刹那、空気が凍った。
「全てをッ! 引き裂けッ!」
――ブレイブクロー・レヴォリューションッッッ!!
「AIBOOOOOOOOOO!!」
アテム LP4000 → LP 0
「飛距離2597mってところかしらね」
「ほぇ~。真姫ちゃん凄いなぁ。よくわかるね」
【なるほど、これが噂に聞く『南ファルコン』か。いいものを見させて貰った】
「……ねぇ、いつもこんな感じなのかしら?」
「ええ、大体は。ことりに対して『シルバー』は禁句ですよ」
唐沢は、心の底から安堵した。対戦相手に選んだのが、南ことりではなくてアテムで良かったと。
●ファーストライブ
昼休みの激闘から約3時間後。遂に、『μ’s』ファーストライブが幕を開けた。
集まった観客は、約30人。ちょうどクラス1つ分。
昼休みの1件もあって、もしかしたら全然人が来ないのではないかという不安をどこかで抱いていたあめ、幕が上がり、観客の姿を目にした瞬間、穂乃果たちの目から涙がこぼれ落ちていた。
「皆さん、今日は私たち『μ’s』のファーストライブを見に来てくれて、本当にありがとうございます! 1曲だけですが、楽しんでいってください!
私たちの始まりの歌!」
――START:DASH!!
唐沢久里子は、そのライブに感動をしていた。
彼女たちのダンスは、あの『A-RISE』に比べれば素人もいいとこ。
だが、確かに魅せられていた。どんなに拙くても笑顔を絶やさず、希望に溢れた力に。
謝罪のつもりで見に来たライブだったが、また見てみたいと思わされていた。
「スクールアイドルで廃校阻止、か。彼女たちなら、できるかもしれないわね」
1年生の多くの女子生徒は、素直に凄いと思っていた。
彼女たちは元々はただの冷やかしのつもりで見に来たのだ。同じクラスの優等生が先輩に混じって新入生向けの出し物をするなんて、どんなことをするのだろうと。
そんな気持ちも、実際にそのライブを目の当たりにした瞬間に吹き飛んでいた。
楽しそうに、笑顔で踊って歌う同級生はとても輝いていて、なぜ友達をもっと誘って見に来なかったのだろうかと、少しの後悔もしていた。だが、それ以上に。記念すべきファーストライブに立ち会えた自分が誇らしかった。
穂乃果たちと同じクラスの少女のほとんどは、楽しそうに歌って踊るクラスメイトの姿に感動しながらも、同時に少し謝罪していた。
――どうしよ、お笑いライブを期待して見に来てゴメン、高坂さん。
いつものアテムの言動や行動を見せられている以上、そう思うのも仕方なかった。
そして、音ノ木坂学院唯一の男子生徒アテムは、彼女たちのライブに魅せられていた。
自分自身があの場に立っていなかったことはもの凄く、心底残念で仕方なかったが、しつこく出ようとすると再度ことりに引き裂かれそうだったので、やむなく諦めたのだ。
「皆、よく頑張ったな。これが俺たちの本当の始まりだ」
――モゾモゾ、ガサゴソ
「なあ、アテムくん。簀巻きにされながら言うてもあまりかっこよくあらへんよ?」
「言うな、東條。かしこいかっこいいアテムさんの台詞が台無しじゃないか」
講堂の最後列で簀巻きにされながら、副会長と仲良く鑑賞しているアテムであった。
●オマケ
翌日の朝。
飼育係である小泉花陽は、飼育小屋へと向かっていた。
しかし、彼女の頭の中は、未だ昨日のライブでいっぱいであった。
(凄かったな。先輩方と、西木野さん)
花陽が凛と共に講堂にやって来た時には、観客は3年生1人しかいなかった。
少し寂しいと思っていたが、すぐに他の観客はやって来た。
それでも全体で30人ほどと、多くはなかったが、先輩たちは喜びの涙を浮かべていた。「来てくれてありがとう」と。
その言葉を聞いた時、『客が少なくて寂しい』ではなく『ファーストライブを見ることができた感動』へと変わったのだ。
(私もあんな風に…………ううん、無理だよね。私なんかじゃ)
憧れの念を抱くが、ただアイドルが好きなだけな自分には彼女たちのように輝くことはできないだろう。
「考えるのは、やめよう。それよりもアルパカさんのお世話をしなくっちゃ!」
飼育係としての仕事を疎かにしてはいけない。あの愛らしいアルパカに触れ、今の気持ちを紛らわせ――
【やれ、《
「そうはさせない! 罠発動、《
【何だとぉ!?】
「…………」
その日、小泉花陽は授業を欠席した。
唐突な登場人物紹介その3
唐沢久里子:通称カラクリ。多分使用デッキは【カラクリ】画期的な発明をするものの報われない。理事長が苦手。ノートゥングはやめてください。
白パカ:白いアルパカ。愛らしい見た目とは裏腹にダンディな声で喋る。使用デッキは【おジャマ】にアルカナEX2体を搭載したもの。
ホーリー・エルフ:《予想GUY》で呼ばれて素材になったり、《ディメンション・マジック》のコストにも便利な壁。
ブラマジ:何度も何度もブラマジとばかり……。他のモンスターを知らないのか……。
次回もよろしくお願いします。