真っ暗な空の下で僕と優子さんの2人。
蛍光灯から出される淡い光を全身に浴びながら僕達は歩く。
その光を浴びて出来る影が伸びて縮む。
そんな光景を何回見ただろうか。
「……………」
「……………」
文月学園を出てから僕は、
いや僕達は一言も話せないでいた。
重い空気が僕達を包んでいる。
時々、蛍光灯に照らされた優子さんの顔を盗み見ると、いつもの余裕のある顔とは一変して余裕のない顔に見えた。
もう直ぐでY路地が見える頃だ。
帰る為にはそのY路地を僕は右、優子さんは左の道にいかなくてはならない。
でも今は20時13分。
とても優子さんを1人に出来る時間じゃなかった。
だから僕は優子さんに『家まで送るよ』
そう言おうとずっと試みていた。
けど、言おうとしてるのに声がでなかった。
一人で心の中で頭を抱えている時に、優子さんから声がかけられた。
「…………ねぇ」
「……なぁに?優子さん」
優子さんから声をかけて貰ったからだろうか
思ったより普通に声が出た。
「明久君は……姫路さんの告白…どう返したの?」
「きゅ、急にどうしたの?」
「ねぇ…どうなの?」
僕を上目遣いで見てくる優子さんの目には
少しだけ涙の膜がはってあった。
理由は僕にはわからない。けど、この答えが優子さんにとっては大切なのかもしれない。
それなら、答えてあげないといけないよね…。
「ごめんなさいって。返したよ」
「………………そう…なんだ」
優子さんの表情が緩やかになる。
胸を撫で下ろし、声を出す優子さん。
「…………よかったぁ」
「何が良かったの?」
「な、なんでもないわ」
ちょっとあたふたする優子さん。
本当に可愛いと思った。
「そ、それじゃあ、アタシはこっちだから!」
そう言って走っていこうとする優子さん。
「あ、待って!」
僕は優子さんの手をつかむ。
「送ってくよ」
「べ、別にいいわよ。家までもう直ぐだし」
「それでも僕は女の子をこんな真っ暗な中1人にしたくないんだ。それも優子さんのような可愛い女の子なら尚更ね」
「か、かか、かわっ」
みるみるうちに顔が赤くなっていく優子さん。
あれ?もしかして…怒らせるようなこと言ったかな。
「ご、ごめんなさい!迷惑だった?」
「………………………手」
「………………へ?」
「手を繋いでくれるなら………送ってくれても…いいわよ」
そう言ってそっぽを向く優子さん。
えっと…なんだか良く分からないけど…
手を繋げばいいんだよね?
って…手!?繋ぐ!?
はぁぁぁぁぁあ!!!!???
何それ!?なんのご褒美ですか!!!?
「………繋がないの?」
上目遣いで不安そうに見てくる優子さん。
ありがとう。神さま。
神さまはいい人だったんだね。
「これでいいかな」
「………うん」
なんだか照れくさい気もするけど
優子さんの優しい手の温もりを感じる。
ただ、その事が嬉しくてたまらなかった。