魅魔と魔理沙   作:オルナイン

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今回はテンションが高かった。


第二十五話

 

「というのがあたしと魔理沙の今までの関係とそれまでの出来事だ」

「・・・・もし、霧雨さんがリサを勘当したんじゃなくて、預けていただけだったら僕は殺されてますね」

 

 

あたしは霖之助に魔理沙を預かってからの出来事を話した。

終始、霖之助は青ざめていたが問題ないだろう。

 

 

「それで、今、リサは夢幻世界にいるんですか?」

「あぁ、お使いを頼んでいる」

「お使いって、夢幻世界はお使いに行かせるような場所じゃないと思うんですけど」

「まぁ、そんなに気にしなくても魔理沙は帰ってくるよ」

 

 

霖之助は訝し気な表情を浮かべたまま聞いてきた。

 

 

「あなたは、どうしてリサを育てたんですか?」

「・・・・そうだねぇ。罪滅ぼしかな?」

「罪滅ぼし?」

「ありがちな話だよ。生前のあたしには娘がいたんだ。五歳のね」

「五歳?」

「魔理沙・・・・。当時のリサは自分の年齢を正しく言えたのかあたしは知らないけど聞いた限りでは今、十六歳か、十七歳だ。つまり十年前は六歳か七歳ということになる」

「あなたにはリサが娘に見えたと?」

「娘に見えたというか、思い出しちまったんだよ。今は亡き幼すぎる娘を」

「・・・・」

「子供っていうのはね、親より先に死んじゃいけないが、あたしの場合はどうなんだろうね。未練が祟って気が付きゃ千年近くこの世を彷徨っている。あの世の娘に申し訳ないよ。きっと会いたがってるだろうにね」

「そう、だと思います」

 

 

同情。随分とのんきな奴だ。

 

 

「少し前にね、私は魔理沙に対して「あんたはあたしの娘だ」と言ったことがあった。あんたにだけ話すがそれはすべてが本当ではない」

「えっ?」

「普通に考えれば、それでいいのかもしれない。だけどあたしはどうしてもそれだけじゃないんだ」

「どういう意味ですか?」

「もちろん、あたしは魔理沙のことを本当の娘だと思っている。だがそれと同じぐらい」

「同じぐらい?」

「彼女を『赤の他人』と思っている自分もいる」

「・・・どういう、意味ですか?」

 

 

あたしがこの話をするのは初めてのことだった。

 

 

「彼女はあたしにとって『娘』であり、『弟子』である。だが、それと同じぐらい『他人』なんだ」

「他人・・・ですか」

「あぁ、他人だ。だが、娘だ。とてつもなく曖昧なラインだが、あたしの中にあるんだ」

「そうなんですね」

「魔理沙を心配しているのなら申し訳ないね」

「いえ、そんなことありません」

「そうかい」

「むしろ、リサを育ててくださったことに感謝しています。魔法の森で小さな女の子が一人で生きられるわけありませんから」

 

 

 

霖之助はそういうとゆっくりと立ち上がり、

「お茶、入れなおしますね」

と言うと裏へ戻っていった。

 

 

あたしは道具に埋もれかけて少しだけ見える窓から外を見る。

すがすがしいほどに晴れ渡った空に対して、なぜか私の心は曇っているようだった。

 

 

「魔理沙は上手くやってるかねぇ・・・・」

 

 

正直に言って、夢幻世界のやつに簡単に会えるとは思っていない。

あたしが初めて会った時もかなり派手にぶつかり合ったものだ。

懐かしい記憶である。

あれからかなりの月日が経ち、しばらく会っていないが元気にしているだろうか。

ま、それを確認ついでに魔理沙を向かわせたのだが。

 

 

「お待たせしました」

「ん、ありがとうね」

「しかし、いつの間にか、子どもって成長するものですね」

「そうだねぇ」

「他人事みたいな言い方になりますが、しっかりと大人になっているんだなぁと思いまして」

「他人事・・・・あたしも心のどこかでそう思っているのかもしれないねぇ」

 

 

「さて、次は八卦炉について話そうかね」

「お願いします」

「八卦炉。そいつはあたしの故郷の人間に頼まれて作ったものだ」

「そうなんですか」

「その使用目的は・・・・罪人の処刑だ」

「・・・・え?」

「八卦炉の炉の上に罪人をつるして焼く。そういう使い方だ」

「待ってください!八卦炉が処刑道具なんですか!?」

「そうだよ。あたしも依頼されたときは何に使うのか分からなかったが、いざ完成したものと使い方を見て、吐き気をも要したね」

「どうして、そんな恐ろしいもの・・・・」

「ふふ・・・。当ててみな、あたしが答えるだけじゃつまらないからねぇ」

 

 

霖之助は少し黙って目を閉じた。

まぁ、これはわからないだろうが

 

 

「わからないことがあるので質問します」

「いいだろう」

「この設計図に書いてある大きさはそのままで使われましたか?」

「あぁ、この設計図の八卦炉の大きさ、縦横五尺、高さ三尺。そのままで使われた」

「大きいですね。それに出力も」

「そうだ。さっきあんたが話した通り、これ一つで幻想郷を火の海に変えられる」

「・・・なぜ、そんなに恐ろしいものを」

「そこが問題だ。なぜ、あたしの国はこんなものを作らせたか」

「仮に八卦炉で先ほど言われた通りの処刑が行われたとしたら、はっきり言って効率が悪いですよね」

「ほう。目の付け所は悪くない」

 

 

そう。この男が言う通り、八卦炉での処刑は非常に効率が悪い。

八卦炉が一回で消費する魔力量は、万全状態の魔法使い三人が魔力切れで卒倒するほどだ。

しかも、八卦炉は超極太レーザーだが、所詮レーザーである。

一度に処刑できる人間の数はせいぜい、二人から三人。

それなら、首を落とすほうが早いものだ。

 

 

 

「処刑。そういえば、外の世界から流れ着いた文書で何度か見ましたが、実際に幻想郷で行われた記録はないですね」

「そういえば。あたしも幻想郷歴長いと思ったんだがそんなもの見たことないねぇ」

「幻想郷に犯罪者なんていませんからね。いたとしても、妖怪に食べられるかして・・・」

「ん?どうしたんだい?」

「そういえば、外の世界に妖怪はいないんですよね?」

「あぁ、いないねぇ。伝承は語られていたりはするが・・・」

「それでは、罪を犯した者はだれが処罰するんですか?」

「え?そりゃあ、

 

 

 

 

 

 

 

 

人間に決まっているだろ」

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

霖之助の眼は驚愕を物語っていた。

 

 

 

 

「八卦炉を使うのは妖怪じゃないんですか?」

「妖怪なんていないからねぇ」

「そうか・・・・。じゃあ、人間を人間が処罰する」

「そうだよ。考えてみれば、幻想郷に住む者には馴染みがないかもしれないねぇ」

「どうやって、処刑するんですか?」

「ここには意外なことに、処刑道具の類が置いてないから説明しづらいが・・・・。一定期間の監禁。多額の罰金。あと、重罪を犯した奴なんかは・・・・首を落とされたり、くし刺しにされたり」

「う・・・・・」

「少々、生々しい話だったかねぇ」

「八卦炉で処刑された人間は、焼き殺されたと」

「そうだ。ついでにヒントをやろう。八卦炉はどこで使うと思う?」

「どこで・・・・。威力と使い方からして屋外ですか・・・・・。まさか!?」

「そう。処刑人は屋外につるされた。周りに被害が出ないように広場に置かれていた」

「広場ということは、人が集まる。ということですね」

「そうさ。もう答えはでたようなものだねぇ」

 

 

 

 

「見世物にするためですか?処刑人を」

「大正解だ」

 

 

大きなため息をつきながら霖之助は片手で顔を覆った。

少し青ざめているが、すぐに元に戻るだろう。

 

 

「外の人間は、残酷、なんですね」

「あぁ、残酷だ。この上なくね」

「今でも、そうなんですか?」

「さぁ?幻想郷が外と隔離されてから二百年行ったか行ってないかぐらいだろ?あたしが幻想郷に来たのは大体百三十年ぐらい前だからそれより先のことはわからない」

「そうですか」

「少なくとも、魔法技術は一つ残らず消えたから、八卦炉自体はもう使われてないけど、あたしがここに来るまで周りの国では普通に首はねとかはやってたからねぇ」

「それも、見世物のように?」

「あぁ。みんな、安心したいんだよ」

「安心?」

「犯罪者ってのは、それ以外の人間からしたら不安でしかないんだ。それが消えるんだったら消えたほうがいいだろ?だから消えるのをその目で見に行くのさ」

「不安が消える」

「それに、正しいを証明したいってのもある」

「正しい?」

「あたしが外にいた時代は偏見がひどくってねぇ、王様の言うことが絶対だった。だから反逆者はみんな」

「処刑された」

「そういうこと。あたしがこんな道具を作ったのも王様のせいだからねぇ。ま、逆らえば死刑なんだからやるしかなかったってことさ」

「恐ろしいですね」

「それが普通だったのさ。さっき言った通り、異議を唱えれば殺される世界がね」

 

 

 

今の外の世界はどうなっているんだろうか。

先日、教授が来たがあいつらは外の世界というより別の世界から来たようだったしな。

外の世界でのさぼってた八百年の間に周りは大きく変わってしまった。

特に幻想郷に行くことを決める直前の変化の目まぐるしさは異常だった。

恐らく、もう外の世界にあたしが知っているものはないんだろう。

 

 

 

「えっと、あなたは・・・・」

「あなたなんて、他人行儀はやめてくれよ。魅魔でいい」

「失礼。魅魔は、八卦炉は嫌いですか?」

「変な質問だねぇ」

「いろいろと気になったので。特に多くの命を奪った八卦炉を今更、僕に作らせるということは何か理由があるんじゃないですか」

「鋭い。正解だ」

「じゃあ、さっきの質問に答えてください」

「八卦炉ねぇ。好きだよ。あたしの作った道具だからねぇ」

「たとえ人々を楽しませるために人を殺していたとしても?」

「それは、使うやつ次第だろ?道具自体に罪はない。いや、罪の意識というものが生き物にしかないんじゃないか?」

「なるほど。確かにそうですね」

「あんたに見せたその設計図の八卦炉は千年前の技術なんだ」

「?どういう意味ですか」

「千年前にあたしは八卦炉を完成させた。つまり、千年後はどうなってると思う?」

「技術進歩してますね」

「そう。あんたには悪いが少し騙していた。本当に制作してもらいたいのはこっちだ」

 

 

 

あたしは別の設計図を取り出す。それは現在の技術で生まれ変わった八卦炉の設計図。

 

 

 

「ち、小さい・・・!」

「そう。八卦炉はその強力な火力はそのままによりコンパクトな形に改良することに成功した名付けて、『ミニ八卦炉』だ」

「ミニ、八卦炉・・・」

「ミニ八卦炉は巨大だった八卦炉を手のひらサイズにした上に、魔力を効率よく魔法に変換できるように改良したものだ。もともとは三人の魔法使いが力尽きるものだったがこの改良で、人間の魔法使いが半日は使えるようにしておいた」

「すごい・・・・。さっきとは全く別物じゃないですか!こんな高度な魔法道具を設計できるなんて」

「ふっ。もっと褒めてくれてもいいんだよ」

「でも、これだと星型魔法に特化しすぎてませんか?」

「いいところに気が付くじゃないか。ミニ八卦炉は星型魔法を打つことに特化させているのは魔理沙のためなんだ」

「リサのため?」

「彼女は星型魔法を使うことにかけてはかなりの腕前を持っている。あたしと同じぐらいね」

「まさか、このミニ八卦炉は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「魔理沙が初めて持つ、『魔法道具』にするつもりだよ」

 

 

 

 

 

 

「だから、僕に依頼を?」

「適任だったからな」

「適任?」

「魔理沙に関係がある人物で魔法に対してあたしと同じかそれ以上の知識を持っているのはあんたしかいなかったのさ。魔理沙とそこまで親しくない奴ならあたしの知り合いに何人もいるんだけどね。それじゃダメだ」

「どうしてですか。魅魔にとって僕はリサを捨てたも同然だったでしょうに」

「確かにそうだ。あたしはあんたを完全に信用しているわけじゃない。けどね」

「けど?」

「魔理沙が少しでも早く信頼できる奴じゃないとダメなんだ」

「早く?どうして」

 

 

 

 

ため息をつく。

最近は少し多くなってきた。

 

 

 

 

 

 

「あたしはあの子の前から消えるつもりだからだよ。早々にね」




皆様、
おはよおおおおおお、こんにちはああああああ、こんばんはあああああ、おやすみいいいいい。
オルナインです。眠いんやったら起きひんでもええやで。

今回は早めに投稿できました。ザ・マイペース。
こんなに早くできるんなら、毎話そうしろよ
って多くの読者様がお思いになられてると思いますが
私もそう思います。やる気あんのかってんだな。

前回から期間が開いてないのであとがき近況報告も特にないですが
次回も今年中に投稿できたらいいなと思います。
そういえば、あとがきで魔理沙と会話する黒歴史展開していた時に次回はいつまでに投稿するって宣言してましたねぇ。懐かしい。あの頃の私を殴ってやりたい。
次回も早め早めで年の暮れかもしれませんが頑張ろうと思います。

ついでに次回は夢幻世界に戻って久々に魔理沙の話を書こうかと
魅魔様に衝撃発言させておいて、引っ張るスタイルなんですけど
まぁ、気長に待っていただけると幸いです。

それでは、長々としてしまったんでここらへんで区切りを。
今回もご愛読ありがとうございました。

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