魅魔と魔理沙   作:オルナイン

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第九話

まずは、あたしの生まれた時の話をしようか。

 

あたしが生まれたのは、幻想郷を出て海を越えて大陸を抜けた西の端にある小さい国だ。

国といっても小さい国の更に西の端にある村だ。

その村の二人しかいない魔法使いの夫婦の間からあたしは生まれた。

もちろんあたしは魔法使いとして育てられた。人間の魔法使いしてね。

あたしの親は、薬を作っていた。魔法でね。

風邪薬から栄養剤まで、幅広く。

そんな魔法の一つに「人体改造魔法」があった。

代謝を上げたりが主だったかな。あんたみたいに自分の強化にはあんまり使わなかったな。

まぁ、その魔法が私たち一家を変えてしまった。

 

 

 

ある年、酷い伝染病が流行ったんだ。

感染したら、体がどんどん弱っていって、最後に死んでしまう病だった。

あたしの周りの村は次々に消えていった。

でもあたしの村は違った。

人体改造魔法の力を使って代謝を上げることで伝染病の原因の細菌が死ぬことが分かったからだ。

だから、村で死人は二人しか出なかった。

あたしの親だけさ。

治療にあたっていたら、伝染病になっちまった。二人同時にさ。

魔法も使えないほど、弱った二人は同時に死んじまった。

情けないよね。あたしの親なのに。

伝染病に唯一効く魔法が使える人がその伝染病で死んじゃうなんてさ。

あたしは、そのまま近所の家に引き取られることになった。

親が死んだ日にあたしは誓ったさ。

「二人を超える魔法使いになってやる」

強くね。

 

 

 

それからあたしは魔法の研究にいそしんだ。

寝る間も惜しんで研究に没頭した。

友達と遊んだりもせず、一日の大半を研究につぎ込んだ。

二人を超えるために。

そしてあたしは、いつの間にか15歳になっていた。

で、お嫁に行った。

別段当時は不思議な話じゃないさ。

むしろ早く旦那を見つけないと大変な時代だったんだよ。

あたしの旦那はねとても優しい人であたしより10も上だったんだけどいつも可愛がってもらったもんだよ。

周りからは、夫婦というより親子に見えたんじゃないかな。

そんな旦那はいつもあたしを応援してくれて魔法の研究のサポートをしてくれた。

毎日、幸せだったよ。

誰もあたしを否定しない。そんな毎日だった。

 

 

 

戦争があった。

あたしの国が隣国のもっと小さい国を侵略し始めた。

最初は軍隊が出動してたんだけど、戦力不足で国民からも出兵することになった。

あたしの旦那もその対象になった。

一年もせずに戦争は終わった。

近所の人々が再会で涙を流す中、あたしのもとに来たのは一枚の死亡通達の紙だった。

10も違う嫁とその嫁の腹に子供を残して死んじまった。

その日は一晩中泣いたね。

声も涙も枯れるほど。

戦争さえなければ、旦那は死ななかったにさ。

あたしは、本当に一人になった気がしたよ。

父も母も旦那も死んだ。

居るのは腹の子供だけ。

どうしたらいいかまったく分からなかったよ。

でもね、近所の人は皆あたしを支えてくれた。

誰もあたしの不幸を笑わなかった。

皆、声をかけてくれた。心配してくれた。

おかげであたしは無事に娘を産むことが出来た。

あんたみたいに可愛い子でさ、皆が見てくれた。支えてくれた。

娘はすくすくと育っていった。

 

 

 

魔女狩り

 

魔法使いを殺せと国から命令が出た。

国中の魔法使いが殺された。

もちろんあたしも例外じゃなかった。

すぐに兵隊があたしの村に来てあたしを捜した。

でも見つからなかったよ。

あたしは娘と近所の人の家にあった地下室に隠れてた。

魔女狩りが発令されたとき、皆口をそろえて私たちを匿うと言ってくれた。

毎日、食事を持ってきてくれて生活の世話をしてくれた。

ある日その食事が来なくなった。

あたしは全身に寒気を感じた。

人一倍に気配を感じやすかった私は地上から生物の気配がしないのを感じ取っていた。

地上に誰もいない。

考えるだけで恐ろしいことだった。

食事が来なくなって3日目。

あたしは外に出た。

 

 

 

あたり一面。血の海だった。

血は酸化が進んで黒くなっていた。

そして凄まじい腐敗臭で意識が朦朧とした。

見るに堪えないその景色に唖然としていた。

 

 

「まだ、生き残りがいたぞ!!」

 

 

不意にそんな声が聞こえたかと思うとあたしは髪を捕まれ引きずられた。

 

 

「やっと見つけた!この村の魔女だ!」

「手間かけさせやがって!!」

 

 

兵士だと思われる若い男があたしを蹴った。

 

 

「っつ、、」

「さっさと首切って帰ろうぜ。こんな地獄みたいなところもう嫌だぜ」

「確かにな!」

「剣はどこだ?早く切るぞ!」

「村の人を・・・」

「ん?何だ?」

「村の人を殺したのはお前らか?みんな殺したのか?」

「何言ってんだお前?」

「はっ?」

「そんな当たり前のこと聞いてどうすんだよ?」

「ギャハハハハハハ「ハハハハハ「ガハハハハハハハ

「・・・お前ら・・・・・許さん」

「その体でどうすんだよ?」

「おい!家から子供の声が聞こえるぞ」

「何?まだ生き残りがいたか。殺せ」

「やめろ!その子に手を出すな!!」

「さては、お前の子供だな?早く行け!!」

「分かりました」

「やめろ!やめろ!!やめてくれぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと周りに真新しい赤い血と死体があった。

男が数人。女が一人。子供が一人。

男は全員口から血を吐いて倒れていて、女と子供は首を落とされていた。

そしてあたしはこんな姿になっていた。

足は消え失せ、特徴的な三角帽、そして背中から黒い翼が生えていた。

悪霊になった。

妬み、憎しみ、恨み。

負の感情が積み重なっていたあたしはすべての感情が翼と死後の体を形成した。

 

 

 

 

 

あたしの国の王家は立派な城を持っていた。

その門の前で見張りがあたしを見つけた。

同時にあたしは研究していた人体改造魔法で心臓を活発にして爆発させて殺した。

城に入ると兵士がどんどん攻めてきた。

あたしは目についた兵士を片っ端から殺した。

心臓を爆発させるなんて悪霊になったあたしには簡単なことだった。

兵士は虫のようにバタバタ死んでいった。

あたしは更に奥へ進むと、今度はメイドが攻撃してきた。

同じように殺した。

対魔法使い用の兵士も来たなぁ。

あたしのとこに来る前に殺したけど。

王のいる部屋まで来た。

そこには王と王妃とその娘がいた。

王はあたしに

「殺さないでくれ」

と言った。

「じゃあなんであたしとあたしの娘とあたしの村の人とあたしの旦那を殺した」

あたしは低い声で聞いた。

「仕方なかったんだ!!」

「仕方ない?何がだ?」

「そ・・・それは・・・」

「答えられないんだな。じゃああたしがお前らを殺しても仕方ないなぁ」

「やめて!娘だけは見逃して!!」

「王妃よ。お前の娘を思う気持ちはまさに親心そのものだ・・・」

「えっ?」

「だから娘は殺さない」

「本当ですか!!」

「あぁ・・・。あたしの魔法で脳細胞を強くして死なないようにしてやるよ」

「よかった・・・」

「まずは、娘の肺を爆発させようか?」

「なっ!話が違います!」

あたしは王妃を見て笑った。

「殺さないように、苦しめるのさ。生き地獄だ」

娘はその場で崩れた。

「肺が無くなれば、心臓は要らないね?爆発させよう」

「やめて!!そんなことしないで!!」

「苦しいかい?辛いかい?あたしはもっと辛かったよ。次は胃を動かして膵臓に無理やり穴を開けてみようか?」

「なっ・・何でそんなことを?」

「知らないのかい?膵臓で作られる膵液は消化液の中で最も強い消化酵素なんだよ。だからもし体に漏れ出たら、そこから体は腐っていくのさ。ついでにあたしも魔法で普通より強い消化酵素にしてあるから物の十分もしないうちに腐り始めるよ」

「そんな・・・」

「もちろん死なないよ。脳細胞は生き続けるから今や不死身みたいなもんさ」

「なんて酷いことを・・・」

「腐り始めたら、感覚は無くなっちゃうのよね・・・。首から下を落としましょう」

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

「ほら!あんたの娘は首だけだよーー。でもまだ生きてるよーーーー。良かったわねぇ」

「・・・・・・・」

「しゃべる気力も無くなったか・・・」

「悪霊・・・貴様!!」

「王よ!娘を救いたいか?あたしがもっと強力な魔法を使えば殺せるよ」

「ふざけるな!!ここまで何でこんなことをしたんだ!!」

「逆に聞きたい!何故、魔女狩りなんてやったんだ?」

「・・・・・・・」

 

王は静かに口を開いた。

 

 

 

 

「他国との競争だよ。私たちの宗教を汚す存在として魔女をどれだけ殺せるかの競争だったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけるなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしは背中に生えた負の感情でできた翼から負のエネルギーの杖を作り床に突き刺した。

そこを中心に黒い半球体がが生まれた。

それは一気に大きくなると、国のすべて飲み込んだ。

 

 

 

 

 

そして何もなくなった。

 

 

 

 

 

木も建物も動物も人も

あたしが住んでいた村だったところも

何も残らなかった。

すべてあたしが作った黒い半球体に飲み込まれて消えてしまった。

 

 

 

 

ひたすらに広がる平地。

あたしはただ眺めてたよ。

 

 

生き物も生きることができないほど負のエネルギーの溜り場になった場所に

 

あたしは森を作ろうと思った。

 

なぜかは分からないけど森を作りたくなったんだ。

魔法の森はこうやって作られた。

 

 

 

 

 

「じゃあこの木は・・・」

「あたしが突き刺した杖のなれの果てだよ」

「今使ってるのは?」

「三本目」

「ということは、そのあと二回杖を作る機会があったんだな?」

「そうだよ」

「幻想郷に来たのは?」

「百三十年ぐらい前」

「魅魔様にとって人間とは?」

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「復讐の対象」

 

 

 

 

 

 

 

「あたしは全人類への復讐を目論んでいる」

 

 

その時、魅魔様の背中から真っ黒の翼が生えていた。

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