体育祭当日…
椚ヶ丘中学本校舎の校庭では開会式を終え、最初の競技男子100メートル走が行われていた。
『100mはA・B・C・D組がリードを許す苦しい展開‼︎負けるな我が校のエリート達‼︎』
現在、木村が持ち前のスピードで他の生徒達を大きく突き放し、そしてぶっちぎりの1位でゴールしていた。
「うーん、体育祭でも相変わらずのアウェイ感だな」
「ほんとほんと…言えよE組って」
杉野と中村が放送部部長 荒木の実況に対し不満を漏らしていると、岡野がため息まじりに言った。
「いるようちらにも、味方がさ……」
その言葉に杉野と中村、そして近くにいた前原と千葉が岡野の指差す方に目線を移すと………
「フォォォォォォォォォォ‼︎カッコいい木村君‼︎もっと笑いながら走って‼︎」
木村にカメラを向けながらパシャパシャと、カメラのシャッターを押す殺せんせーがそこにいた。
「殺せんせーもう少し静かにして」
「いやー木村君のカッコいい姿をカメラに収めたくて……速水さんも写真撮ってあげますか?」
そう言いながら殺せんせーは速水にカメラを向けると、速水はカメラのレンズを手で覆い隠しながら言った。
「私の写真は撮らなくていいから…」
「そうですか?…………それなら‼︎ミナト君とのツーショットを撮ってあげましょう♪」
「余計なお世話‼︎」
速水は顔を真っ赤にしながら答えると、銃を2つ取り出し殺せんせーへ向けた。
「ちょっ!はやみんストップ‼︎」
「凛香ちゃん落ち着いて‼︎」
そんな速水を中村と倉橋が抑える隣で、ミナトは恥ずかしがりながらも目の前の光景を笑みを浮かべながら見ていた。
「相変わらず……賑やかなクラスじゃの」
聞き覚えのある声に生徒達は振り向くと、真っ先に口を開いたのは寺坂であった。
「孫の応援にでも来たのかよ、じいさん」
「こんなとこまで歩いてきて大丈夫なのか?」
「もう若くねぇんだから、あんま無理すんなよw」
寺坂に続き、吉田、村松が笑いながら言った。
「相変わらず口のきき方が悪いようじゃな……悪ガキ共が」
寺坂達の言葉に対し伊武鬼は笑みを浮かべながら答える。
「寺坂達とミナトのじいちゃん仲良いみたいだな」
ミナトは菅谷の問いにそうらしいと答えると、寺坂達と楽しそうに話す伊武鬼を見ていた。
(確か夏休みの訓練終わった後、あの悪ガキ3人は体格がいいから暗殺に欠かせない存在になるって言ってたっけ)
そんなことを思い返していると、和気藹々と話す伊武鬼を微笑みながら眺める1人の存在と、1人のからくり人形に気づきミナトは声をかけた。
「ばあちゃんは大丈夫だったの?ここまで結構キツかったんじゃない?」
「まだまだ若い者には負けないよ」
「八重野、無理はいけませんよ?」
余裕と言わんばかりの笑みを浮かべる八重野に対し、日和号は心配そうに言った。
「このからくり人形も伊武鬼さんが言ってた完成形変体刀の一本なの?」
気づけば日和号の周りはE組の生徒達で囲まれていた。
「これが刀?」
「どっからどう見てもからくり人形だよな?」
「でもすごい綺麗♪」
「確かに、ミナトの先祖ってかなりすごい刀鍛冶だったんだな」
慣れないたくさんの人の目線に日和号はあわてふためき八重野に助けを求めようとしたが、八重野はあえて何も言わずたくさんの人に囲まれる日和号を笑顔で眺めていた。
生徒達が日和号に興味津々の中、伊武鬼は応援席に座っていた先生方に挨拶をした。
「お久しぶりです、伊武鬼さん」
「いつもミナトがお世話になっています烏間先生………ところで殺せんせー……はそちらの黄色いかたでよろしいんですかな?」
烏間と挨拶を交わした伊武鬼は、カメラを持つ殺せんせーに問いかけた。
「ヌルフフフ、直接会うのは初めてですね。初めまして伊武鬼さん、私がミナト君の担任 殺せんせーです」
「初めまして殺せんせー。バカな孫をこれからもよろしくお願いします」
そう言って伊武鬼は手を差し出した。
しかし、殺せんせーはその手を握ること無くしばらく沈黙していた。
「あいにく、私はそこまで器用な人間では無い………小細工などする気も無いので安心してくだされ」
「にゅやっ‼︎実は以前生徒に握手をするふりをされ、触手を破壊されましたので……」
「ほぉ〜中々の手練れで……して、その生徒はどの子ですかな?」
「あの赤髪の生徒ですよ」
殺せんせーがカルマを指差したと同時にそれは起こった。
伊武鬼が殺せんせーの指差す方を見ようと振り返ると………同時に殺せんせーの体めがけ刀が振るわれた。
「「っ‼︎‼︎」」
その光景を目の当たりにした烏間とイリーナは驚きの表情を見せ、殺せんせーはにゅやっ‼︎と叫びながらもその斬撃を躱していた。
「一つ言い忘れておった……下手な小細工はせんが、ワシの近くにいるときは気をつけた方が良いぞ?殺せんせー」
「ヌルフフフ、流石は日本最強剣士と言ったところでしょうか」
「それも昔の話じゃ……歳老いてはただの刀鍛冶のじじいじゃよ。今のワシじゃあんたは斬れん、あんたを斬るのは、孫に任せることにしようかの……あー、それとこれはただのおもちゃじゃ」
伊武鬼は笑いながらそう言うとおもちゃの刀をしまい、殺せんせーに言った。
「今日はバカ孫の学校行事、楽しませてもらいますぞ」
「それでは今日は一緒に生徒達の応援をしましょうか」
それから伊武鬼は殺せんせーと握手を交わし、八重野、日和号と共に応援席に腰掛けた。
そんな伊武鬼の前に1人の教師が歩み寄った。
「初めまして伊武鬼さん」
「………あなたもE組の先生ですかな?」
凛とした表情で声をかけてきた真琴に、伊武鬼は少し疑問を抱き聞き返した。
「はい、私も防衛省の者で烏間さんの後輩 泉 真琴といいます。伊武鬼さんにご指導頂いたことはありませんが、あなたの話はよく耳にしていました」
「それはそれは、あなたも中々手練れのようで………これからもバカ孫をよろしくお願いします」
その言葉に真琴は笑みを浮かべると、伊武鬼の前を後にした。
(烏間の後輩か………腕の立つものはチェックしていたつもりじゃが……泉 真琴………そのような名前は目にしたことが無いな)
伊武鬼はそんなことを考えつつ、イリーナと談笑する真琴に目を向けた。
(………年はとりたくないものじゃな)
伊武鬼は一度見た名前であるが、忘れてしまったのだろうと自分に言い聞かせた。そして、一緒にきたもう1人がまだ来てないことを気づき辺りを見渡した。
(あいつはいったいどこで迷ってるんじゃ……)
「いたいたー‼︎もー迷子になっちゃだめじゃん2人とも」
「迷子になってるのはお前の方じゃろ…」
伊武鬼の言葉にミナトの姉である雪乃はアハハと笑いながら頭を掻きつつ言った。
「いやー、さっきそこで知り合いの子達と会って、話してたら2人を見失っちゃってさ……ってそんなことより例の子は?」
「「「「「「例の子?」」」」」」
雪乃の言葉に殺せんせー、烏間、イリーナ、真琴、八重野、伊武鬼は疑問を抱いた。
「ミナトの彼女だよ♪」
「あーそれならあの生徒達の中にいるはずですよ」
そう言って殺せんせーが指差す生徒達を雪乃は品定めをするかのように眺めると、礼を述べその生徒の元に向かっていった。
「ありがとうございます、殺せんせー♪」
笑顔でそう答え生徒達の元へ向かう真琴を目に、イリーナは疑問を抱いていた。
(なんであいつタコのこと殺せんせーって呼んだのかしら……あいつの前では殺せんせーって一度も言ってないのに)
「速水凛香ちゃーん」
日和号に興味を示していると、不意に聞こえてきた声に生徒達は振り返った。
「姉ちゃん⁉︎」
「あ、雪乃さんお久しぶりでーす」
「ミナト君の応援に来たんですか?」
「うん、たまたま仕事が休みだったからね♪」
「俺には反応しないのかよ‼︎」
雪乃はミナトの言葉に答えず、顔なじみの中村と不破の言葉に答えていた。
「ところで速水凛香ちゃんはいるかな?」
「わ、私です」
名前を呼ばれたことに疑問を抱きつつ、おずおずと前に出る速水を目に、雪乃は目を輝かせて言った。
「すっごいかわいいー‼︎」
「「「…へ?」」」
雪乃の突然のはしゃぎように速水は目を丸くさせ何も言えず、周りの生徒達は驚きの声をあげていた。
「まさかミナトにこんな可愛い彼女が出来るなんてね〜。今日来てよかったよ♪」
「ちょっと待てよ‼︎俺、姉ちゃんに彼女が出来たなんて言ってないけど、何で知ってんの⁉︎」
「何でって……今朝帰ってきたときミナトの部屋入ったんだけど、そのとき彼女と思われる女の子と写ってるプリクラが大事そーうに飾ってあるのを見つけたから、なるほどね〜って…」
「……………ふざっけんなよ‼︎なんで勝手に俺の部屋入ってんのさ‼︎」
「うーん……なんとなくw私が出掛けてる間にミナトになんか変化が会ったかな〜っと思ってw」
「……姉ちゃんのバカ」
ミナトが赤くなっている顔を手で隠しつつ言うと共に、速水も赤くなった顔を隠すよう俯いていた。
「初々しいね〜。キスはもうしたの〜?」
「人の恋愛に首突っ込むなー‼︎」
その後ミナトはカルマと前原に、速水は中村に質問攻めされていた。
そんな光景を岡島が羨ましそうに悔しそうに見ていたのは言うまでも無かった……
しばらくして次の競技、借り物競争が行われるというアナウンスを聞き、カルマはイトナと中村に声をかけた。
「次の俺らの番だからいこー」
「わかった」
「はいよー」
3人が立ち上がりスタート地点へ向かおうとするのを目に、渚は不安を漏らした。
「……あの3人が集まると何かとんでもないことをやらかすんじゃないかって凄く不安になるよ……」
「共感するぜ渚……」
杉野が渚の不安に共感していると、別のところで問題が生じた。
楽しそうに談笑するミナト達の前に紫色の髪をした少年が現れた。彼はE組の生徒達を見渡すと、何かを見つけたのか目を輝かせ1人の女子生徒に近づき言った。
「見つけたよ my princess♪」
キザなセリフを吐く紫色の髪をした少年は、そう言いながら速水の手を取り跪いていた。
「僕の気持ちを伝えてから数日……どうだろう、僕に対する思いに変化はあっただろうか?」
周りの生徒達や速水が唖然とする中、そんなの御構い無しにと話す紫色の髪をした少年に1人の悪魔が歩み寄っていた。
「誰だよお前」
冷たい目つきで殺気を放つミナトに気づき、紫色の髪をした少年は振り返り自己紹介を始めた。
「君とは初対面だね…Piacere(ピアチェーレ)津芽ミナト君。僕は最近椚ヶ丘中学に転校してきた、月山 亘(つきやま わたる) A組の生徒だ」
「凛香は俺の彼女なんだけど…きやすく手握ってじゃねぇよ」
ミナトの言葉からは痛いほど殺気が伝わり、周りの生徒達は今後どうなるかと不安に思いながらも目の前の光景を眺めていた。
「ミナトの殺気…最近増してると思わないか?」
竹林の問いに渚は小声で答えた。
「うん、僕も最近そう思う…ミナト君の殺気、もしかしたら今まで殺せんせーを暗殺しに来た暗殺者や鷹岡先生よりもずっと強いかも…」
「ケッ…だけどあのキザ野郎、ミナトの殺気に全然怯んでないぜ?」
竹林と渚の会話に気づき、月山の変わらな様子に気づいた寺坂は悪態を吐きつつ言った。
「フッ…落第生の君と比べて僕の方が上に決まっているだろ?それに彼女の美しさは君も知っているだろう…他の者と奪い合いになるとは分からなかったのかい?」
月山はそう言うと速水の方へ振り返り言い続けた。
「だから…この僕が‼︎彼女を守る騎士(ナイト)になる‼︎僕の気持ちはハード(本物)だよ?津芽君」
月山の強気な発言にミナトも負けじと言い放った。
「ふざけんな、凛香を守るのは俺だ‼︎凛香に対する気持ちだってお前に負けない‼︎」
「フッ、君との決着はこの体育祭でつけようか……どちらが彼女の騎士にふさわしいか……決めようじゃないか‼︎津芽君‼︎」
「上等だ…凛香を守るのは俺だ‼︎」
強く言い放つミナトに月山はSee youと言い残しその場を去っていった。
「絶対勝つ」
そう意気込むミナトであったが、彼はまだ気づいていなかった………後ろで微かに殺気を放つ彼女の存在に……
「ミナト」
「ん?」
速水の呼びかけにミナトは振り返ると、脳天にチョップをぶちかまされた。
「ほげぇぇぇえええ‼︎」
「たくさんの人の前で恥ずかしいこと言いすぎ‼︎」
速水は赤くなり叫びながらミナトの脳天にチョップをぶちかました。
「で、でも凛香を取られるわけには…」
速水のチョップによりその場で倒れるミナトは、なんとか速水を見上げながら言った。そんなミナトを目に速水は顔を背けつつ言った。
「だから……絶対勝ってね」
「……おう!約束する!」
へへッと笑みを浮かべるミナトにつられ、速水もほんのりと笑みを浮かべていた。
1人の姫を守るために1人の剣士と1人の騎士の戦いが今、幕を開けた。
「あーリア充爆発しねーかなー」
「岡島君は相変わらずだねー」
羨ましそうにミナトと速水を眺める岡島を雪乃が笑顔で慰めていた。
投稿が不定期にもかかわらず読んでいただきありがとうございます。
今回は競技を行わず、津芽家集合‼︎そして、速水にラブレター渡したモブキャラが登場させました‼︎
彼のモデルは名前と喋り方を見ればわかるかもしれませんねw
次の投稿がいつになるかまだわかりませんが、これからも宜しくお願いします!