津芽湊の暗殺教室 『更新停止中』   作:お薬二錠

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背負う時間

彼女の声は、初めて会った時からハッキリと聞こえていた。

 

あの研究施設で過ごし彩と亜衣の2人と離れ離れになった次の日、私は部屋の隅に置かれていた1本の刀と出会った。その刀は以前からあったのか、それとも誰かが置いていった物なのか分からなかったが、私は無意識のうちにその刀に手を伸ばした。

 

手にした刀は刀というよりも、苦無のような形をしていて雷をその身にまとっていた。手に取ろうとした時、バチッと鋭い痛みに襲われたが実験で耐電体質となった私に対してダメージはなく、私はようやく死ねると刃を胸元に当てた。

 

 

 

 

 

「…………………やっぱり出来ない」

 

 

 

 

 

 

鉄格子の部屋で1人きりになり、死にたいと思う気持ちが強くなった反面、私はまだ生きていたいと淡い希望を抱いていた。

 

 

 

 

だが次の瞬間、そんな私の思いを無視し刀は私の胸元に自ら突き刺さってきた。突然のことに戸惑いながらも、込み上がってくる痛みに必死に耐え私は刀を引き抜こうとした。

 

(いつ以来かしら、この刀を死ぬために使おうとする人を見たのは)

 

「え………」

 

突然聞こえてきた声に、私は幻聴でも聞いているのかと思いひとまず落ち着こうと深呼吸をした。

 

(まさか私の声まで聞こえるとはね…)

 

(気のせいじゃない!ハッキリと誰かの声が聞こえる)

 

私は怖くなり早く刀を引き抜こうと力を込め、やっとの思いで引き抜くことに成功した。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

恐怖心を落ち着かせるためにゆっくりと呼吸を繰り返す。そして、落ち着いたと同時にあることに気づいた。

 

「………痛くない」

 

先ほどの刀が突き刺さった場所からは血が出ていたが、肝心の傷口は綺麗に塞がっていた。

 

私は不思議に思いながらも、目の前の刀に何かを感じ恐る恐る手に取り強く握りしめた。

 

 

 

 

それからお父様と出会い、私が手にした刀『悪刀・鐚』のことを知った。刀を手にした途端、女性の声が聞こえてくることを伝えるとお父様は驚きながらも珍しくワクワクした表情を浮かべて言った。

 

 

『お前はその刀に選ばれたんだ』

 

 

正直嫌だった……凶悪の一振りと言われる刀に選ばれるなんて。でも今はそうとは思わない。悪刀・鐚に選ばれたのも、七実さんが私を所持者として認めてくれたのも………今この瞬間‼︎彩を助け、皆を守るためだ‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどよりも荒々しくなるミヤコの雷にたじろぎながらも、彩は鋭い一閃を放った。

 

「一刀・一文字斬り!」

 

ミヤコはその斬撃を体を反らすことでかわし、がら空きとなった彩の背中に蹴りを放つ。衝撃と共にミヤコに帯電した雷が彩を襲い、全身を支配するような痺れに必死に抵抗しつつ彩はミヤコを睨みつけた。

 

「帯刀せず相手の刀を自分の刀として使う奪刀術、『千刀流』まで使えるとは驚きました」

 

その言葉に彩は苛立ち、ポケットに入れていたリモコンを取り出すと瞬時にボタンを押した。

 

「死神さんから教わったの………驚いたって言う割には簡単に避けてくれるよね‼︎」

 

ガコォン‼︎という音と共に、千刀・ツルギが床や壁から現れ部屋の中は千本の刀でいっぱいとなった。

 

「千刀・ツルギと千刀流の共同合作……限定奥義『地形効果・千刀巡り』‼︎」

 

そう言うと彩は近場にあった二本の刀を手に取り、ミヤコに向かって投げつける。だが悪刀・鐚によって身体能力が上昇しているミヤコによって難なく防がれる。

 

「くそっ!」

 

彩は再び刀を手に取りミヤコに向かって投げつける。

 

「何度やっても無駄ですよ」

 

ミヤコはため息まじりに刀を弾き飛ばすと、自身の目の前に先ほどまでなかった刀が3本床に突き刺さっていた。

 

(いつのまに………)

 

刹那、猛スピードで彩が近づき3本の刀の剣先を斬り上げた。ミヤコは予想外の攻撃を避けきれず、斬り傷を作ってしまう。

 

「千刀流だけじゃないよ?私はありとあらゆる剣技を教わったの。姿が変わったくらいで、私に勝てると思うな‼︎」

 

彩は負傷したミヤコめがけ躊躇無く刀を振り下ろす。ミヤコはそれをギリギリのところでかわし、負傷した箇所を悪刀・鐚の力で治癒しながら部屋の中を逃げ回った。

 

「アハッ♪折角の力も逃げるためにしか使わないなんて、宝の持ち腐れだねミヤコお姉ちゃん‼︎」

 

ミヤコのスピードに遅れをとることなく、彩は刀を投げつけつつ追い続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな2人の戦いを目にしながら、ミナトは心配そうな表情を浮かべ雪乃に問いかける。

 

「姉ちゃん、ミヤコが戦い始めてから何分経った?」

 

「えっと……そろそろ5分ってところだと思う」

 

雪乃の答えを聞いた海莉は、ミナトが心配そうにする理由を理解し言った。

 

「おい、ヤバイんじゃないか?」

 

「ああ、ジウが言っていた通り悪刀・鐚の使用限界時間が5分のままなら……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミヤコに勝ち目は無い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩はミヤコを追いつつ考えていた。

 

(死神さんの情報が正しければ、ミヤコお姉ちゃんの悪刀・鐚使用限界時間は約5分。それが過ぎると身体が耐えきれず、悪刀・鐚による恩恵は無くなり身体能力も低下する。殺るならその時だ)

 

彩は刀を強く握りしめより速く、ミヤコを追い続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミヤコは逃げ回りながらも、自身の身体の現状に疑問を抱いていた。

 

(そろそろ5分経つはず………)

 

(どうかしたの?)

 

問いかけてきた七実に、ミヤコは自分が疑問に思っていることを口にした。

 

(いえ、前までは刀を使うのに5分が限界だったので)

 

(今も限界があると思ってるの?)

 

(へ?)

 

七実の声にミヤコは普段出さないような間抜けな声を出してしまった。

 

(全力を出しなさい。あなたは私と、悪刀・鐚に認められたのだから)

 

微笑んで話す七実を信じ、ミヤコは悪刀・鐚の力を最大限まで発揮させた。

 

「私に力を貸してください………悪刀・鐚最大出力‼︎」

 

悪刀・鐚は今までで最も大きく、最も大量の雷をほとばしる。そんな光景にミナトや雪乃はミヤコの身を心配するが、彼女の身体に異変は無かった。

 

(身体に負担が全くない……)

 

ミヤコは逃げ回りながらも自身の現状に驚いていた。いくら耐電体質の彼女といえど、悪刀・鐚が発する大量の雷はミヤコの身体に負担をかけていた。しかし今はそれが全くない。ミヤコは苦しむことなく悪刀・鐚の力を最大限に発揮していた。

 

(悪刀・鐚に認められた者だけが使える奥義。身体に負担をかけることなく、その恩恵を身に受けることが出来る。私と悪刀・鐚に認められたからこそ使える技ってことね)

 

ミヤコは七実の解説に思わず笑みを浮かべる。

 

(何かおかしなこと言ったかしら?)

 

(いえ、そうじゃなくて……今ものすごく嬉しいんです)

 

(はい?)

 

(だって私にとっての強さは、守るための力ですから)

 

嬉しそうに答えるミヤコを目に、七実もまた微笑みを見せた。

 

(私自身変わってるって自覚あるけど、あなたも相当変わってるのね)

 

 

 

 

 

 

 

「笑ってる余裕なんかないよ‼︎」

 

怒り混じりの声と同時に投げられた刀を、ミヤコは立ち止まり刀身に挙底を打ち込んで弾き飛ばす。

 

(そろそろケリをつけましょう。罠は充分張ったでしょ?)

 

(……気づいてましたか。ええ、そろそろ終わりにします)

 

 

七実にそう告げると、ミヤコはゆっくりと彩の元へ歩み寄った。

 

 

「彩…」

 

「来るな…」

 

「………」

 

「来るな」

 

「一緒に帰りま」

 

「来るなー‼︎」

 

彩はいきり立ってミヤコを斬りつける。だが振り上げた刀を振り下ろそうとした時、何かに引っ掛かり刀を振り下ろすことは出来なかった。

 

「何……」

 

驚きを隠せぬ彩が振り返ると、振り下ろそうとした刀の先には他の千刀・ツルギが無数にくっついていた。

 

「くそっ………くそっ‼︎」

 

無理やり引き離そうとしても刀が離れることは無く、気づけば彩の前にはミヤコが立っていた。

 

「ただ逃げ回っていたのではありません。千刀・ツルギ全てに微弱ですが悪刀・鐚の雷をくっつけました」

 

そう言うミヤコの手の平の上で雷がバチバチとほとばしると、まるで共鳴しているかのようにくっついていた刀から雷がほとばしり音を立て崩れ去った。

 

「悪刀・鐚は本来、その刀身に帯びた雷により所持者の活性力を向上させる刀です。ですが私はその雷を活性力向上の為だけではなく、武器としても扱います」

 

「だまれぇ‼︎」

 

ミヤコの話に耳を傾けることなく、彩は手にしていた千刀・ツルギで斬りかかる。その瞬間ミヤコは手の平を前に突き出し雷をほとばしらせると、周りの千刀・ツルギが壁となり彩の攻撃を防いだ。

 

「千刀・ツルギ………その全ては私が今、支配している」

 

「う……そ…」

 

信じられないという表情を浮かべ、戦意を喪失した彩を目にミヤコは彼女と千刀・ツルギの繋がりを断ち切るため最後の一撃を放った。

 

「私がいなくなってからの話を聞かせてください。あなた達の辛さを私も共有したいから。そして出来ることならまた彩と亜衣、みんな一緒に楽しく過ごしたい」

 

ミヤコは片足に雷を集め、密集し壁となった千刀・ツルギを全て粉砕する勢いで蹴りを放った。

 

 

 

「これで最後です。悪刀・鐚 裏奥義『雷鳴斬』‼︎」

 

 

 

ミヤコは崩れ去った千刀・ツルギの壁の向こうで立ち尽くす彩に歩み寄り、優しく抱きしめた。

 

「ごめんね…1番辛い時にそばにいれなくて。でもこれだけは言わせてください……彩、亜衣、あなた達2人が生きててくれて本当に良かった」

 

その言葉を聞き刀の毒と殺意から解放された彩は、今まで溜め込んだ感情を全て吐き出すように大粒の涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激闘を終え、彩と亜衣そして雪乃の応急処置を終えたミヤコはミナト達の元へ駆け寄った。

 

「お二人は応急処置しなくて大丈夫ですか?」

 

「問題ねぇよ、このくらい」

 

「喧嘩で慣れてるからなw」

 

ミナトと海莉の言葉に呆れながらもミヤコは笑みを浮かべた。

 

「てか副会長さ、気づけば髪の色も服装も元に戻ってるよね」

 

海莉の言う通り、ミヤコの髪色は普段の銀色、服装は黒い僧衣から椚ヶ丘中学の制服に戻っていた。

 

「いったいどんな手品だよ?」

 

「私にもよく分からなくて………ただ、彼女が私に力を貸してくれたんです」

 

そう言ってミヤコは自分の胸元に手を当てた。

 

「はるか昔の刀所持者か……信じがたい話だけど事実なんだよな」

 

「完成形変体刀ね〜俺にはさっぱりだわ」

 

死闘を繰り広げた後とは思えない他愛もない話をしていたその時……

 

 

 

ドゥン‼︎

 

 

 

上の階から爆発音が轟き、何かが崩れ落ちるような音が聞こえ部屋の照明は切れ、辺りは薄暗い非常用照明に切り替わった。

 

「今のは…爆発?」

 

海莉が珍しく慌てた表情を浮かべていると、ミナトはトランシーバーアプリで殺せんせーと連絡を取ろうとしたが、繋がることはなく苛立ちを見せていた。

 

「とりあえず殺せんせー達と合流しよう」

 

「雪乃姉様」

 

「このアジトの地図は全部把握してるよ」

 

「必ず合流させるから……」

 

「お前ら……」

 

雪乃と共に彩と亜衣が懐中電灯を手に持ちつつ言った。

 

「こんな状況だけど、一応一件落着ってことでいいよな?」

 

「まぁ、お前の言う通りだろうな」

 

海莉の言葉に賛同したミナトは生徒達の身を案ずると共に、死神を追った烏間のことを心配していた。

 

「大丈夫だといいんだけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アジト内に轟いた爆発音。それは死神が烏間を足止めするために天井を全て落とし、イリーナごと生き埋めにするためのものだった。

 

「さて、遠慮なく最後の仕上げに入るとしよう」

 

烏間は急いで瓦礫をどかし死神を追おうとするが、そんな時トランシーバーから殺せんせーの声が響いてきた。

 

『烏間先生‼︎モニターを見てたら爆発したように映りましたが大丈夫ですか⁉︎』

 

「………俺は無事だがイリーナは瓦礫の下敷きだ。だが構っているヒマはない、瓦礫をどかして死神を追う」

 

『ダメ‼︎』

 

トランシーバーから聞こえてきた大声に、烏間は思わずびっくりしてしまった。

 

『どーして助けないの烏間先生‼︎』

 

「倉橋さん………彼女なりに結果を求め死神と組んだ。責めもしないし助けもしない、一人前のプロならば自己責任だ」

 

『プロだとかどーでもいーよ‼︎15の私がなんだけど…ビッチ先生まだ20だよ⁉︎』

 

『経験豊富な大人なのにちょいちょい私達より子どもっぽいよね』

 

倉橋の言葉に矢田が付け足すと、倉橋は普段とは違うしんみりした表情を浮かべ言った。

 

『……たぶん安心の無い環境の中で育ったから、ビッチ先生は大人になる途中で大人のカケラをいくつか拾い忘れたんだよ』

 

倉橋の言葉を聞き烏間はしばらく考え込むと静かに呟いた。

 

「時間のロスで君等が死ぬぞ………それに津芽君達のほうも心配だ」

 

『私達は大丈夫です。それに……ミナトなら無事に帰ってきてくれるから』

 

『もちろん鮫ちゃんも‼︎』

 

『ミヤコさんも無事に帰ってきます‼︎』

 

トランシーバーの向こうから速水や倉橋をからかう声を聞き、烏間は思わず笑みをこぼした。

 

(プロとしてこだわっていた自分が小さく見える。思いやりが欠けていたな)

 

「分かった、そっちは君達に任せる。絶対に無茶はするな。イリーナは俺が必ず助け出す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1人殺すごとにあの時に感じた血の温度を感じなくなっていった。冷たい血の海が私の日常、裏切られて死ぬぐらいが丁度いいのかもしれない…………

 

 

(ねぇビッチ、もし殺し屋を辞めたら何になりたい?)

 

 

この声……まったく何度言えばヴィッチの言い方直るのよ。殺し屋を辞める?そんなの考えたことも無い。思い出しちゃいけないのよ、陽の当たる世界の温もりを……

 

 

(ビッチみたいに綺麗な人なら、いい旦那さんも見つかって幸せに暮らせそうだけどな。でも世界一のいい旦那さんは裕翔さんね♪)

 

 

バカ…何惚気てんのよ。美月……殺し屋であり、子を持つ母として生きる貴方が悩み苦しむ姿を何度も見てきた。でもそれと同時に少し羨ましいと思う自分がいた。

 

私も貴方みたいに、家族を持って平和に生きることが出来るの?一度でいいからそんな世界の中で笑って過ごしたかった………

 

 

(イリーナ・イェラビッチ、誰にでも幸せに過ごす権利はあるのよ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

暗闇を照らす一筋の光

 

イリーナはその眩しさに目を開けると、瓦礫を持ち上げる烏間の姿があった。

 

「さっさと出てこい、重いもんは背負ってやる」

 




烏間先生の身体能力もかなりチートですよね……

感想お待ちしておりますv(`ゝω・´)


PS.松井先生 暗殺教室の完結お疲れ様でした‼︎
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