津芽湊の暗殺教室 『更新停止中』   作:お薬二錠

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2週目の時間

つんと冷えた空気、山の木の実の甘い匂い、この季節は毎年何か切なくなる。皆それぞれクラスの中でそれぞれの答えを出し始める時期。

 

成熟の11月、殺せんせーの暗殺期限まで残り4ヶ月。

 

 

 

 

 

「ふぅー、流石に疲れました」

 

生徒達の面談も終わり放課後を迎えた殺せんせーは自身の席に座り休んでいた。そんな時、真琴が教員室に入ってきて生徒達が書いた進路希望を目を向けた。

 

「皆それぞれ素晴らしい目標を持ってますね」

 

「ええ、進むべき道を決めかねている生徒もいますが、必ず自分自身で見つけることでしょう」

 

真琴は進路希望の紙一枚一枚に目を通すと、ある1人の生徒でピタリと止まった。

 

「どうかしましたか?」

 

「………いえ、津芽君の希望する職業が幼稚園教諭なのが少し以外で」

 

「ヌルフフフ、確かに私も彼がそんな目標を抱いているとは知りませんでした。子ども達の成長を手助けしたいと言っていましたよ」

 

「そうですか……」

 

「………確かに泉先生は防衛省に入る前、幼稚園教諭をやっていたんですよね?」

 

「ええ、烏間から聞いたのですか?」

 

「いえいえ、一緒に生徒達を育てる先生のことを知るのも大切なことですから」

 

「……………プライバシーの侵害で訴えますよ⁉︎」

 

「にゅやっ‼︎流石にそれはご勘弁を‼︎」

 

慌てふためく殺せんせーを目に、真琴は心の奥深くから湧き上がる感情を抑え笑みを浮かべた。

 

「フフッ、冗談ですよ。それでは私はこれで失礼します」

 

「はい、お疲れ様でした」

 

 

 

 

 

 

夕日が照らす帰り道を真琴は複雑な思いで帰っていた。

 

(私に与えれた任務は津芽ミナトの監視。その為に3年E組の保健医としてやってきた。だが私は悩んでいる。あの方がやろうとしていることは本当に正しいのだろうか…………)

 

 

そんな時、路地裏からハンチング帽を被った男がヌッと現れ真琴はため息つき言った。

 

「何の用だ、譲」

 

「やっぱりスケさんって読んでくれないんだね………表向きの仕事の帰りさ、そう言う真琴も今終わり?」

 

「そうだ」

 

「そっか♪それじゃこれからどこかに食べに行く?」

 

「何故そうなる⁉︎」

 

自由奔放な譲に振り回されつつも気分転換にちょうどいいと思ってた矢先、真琴の目にはとんでもないものが飛び込んできた。

 

「何で君がここに……」

 

その少女は真琴の驚く顔を目にすると、ニヤリと笑みを浮かべ一目散に走り出した。

 

「今の制服って真琴が保険医やってる椚ヶ丘中学のだよね?」

 

「そんなことはどうでもいい‼︎早く彼女を捕まえ誤解を解かないと‼︎」

 

慌てて逃げ去った金髪の生徒を追いかける真琴を目に、譲は苦笑を浮かべながらも2人の後を追い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、ミナトはいつも通り速水と共に帰路についていた。ちなみにミヤコは茅野、倉橋、奥田の4人でケーキバイキングに向かった。

 

今日1日、速水と普通に会話を交わすことが出来ていたが、彼女が嫉妬し冷たい態度を取ることを忘れていたミナトは内心気まずさを抱いていた。

 

(口数もいつも以上に少ないし、やっぱり機嫌悪いのかな……でもそしたら一緒に帰ってくれないだろうし………)

 

「ミナト?」

 

「ほい⁉︎」

 

考え込み自分の世界に入っていたミナトは自分の名を呼ばれていることに気づかず、気づいた時には隣を歩いていた速水が目の前にいた。

 

「考えごと?」

 

「うん………あのさ、まだ怒ってる?その…ミヤコのこと……」

 

申し訳なさそうに話すミナトを目に速水は柔らかい笑みを浮かべ、くるりと振り返った。

 

「怒ってないよ。2人は兄妹だもん、一緒に暮らすのが普通でしょ?」

 

速水の答えにミナトはホッと胸を撫で下ろした。すると速水はその場で立ち止まり、ミナトの方に歩み寄ると胸に顔を埋めぎゅーっと抱きつきながら言った。

 

「ちょ速水さん⁉︎そんな道の真ん中で堂々と」

 

「こんな事言うと嫌われるかもしれないけど………ミナトの1番は……その………私がいい………」

 

「凛香……」

 

「初めてなの……こんなに誰かを好きになるなんて…………だからその、不安になって冷たくなる時もあるけど…………私を」

 

「うん、手放さないよ」

 

速水の頭に手をポンと置き、ミナトは優しく撫でた。

 

「俺も同じくらい凛香が好きだから」

 

「………私も好きだよミナトの事」

 

 

2人は互いに笑みを浮かべ幸せそうな雰囲気を醸し出していた。そんな惚気てる場面をクラスメイトに見られているとも知らずに………

 

 

「速水さん………ミナト君………」

 

「おー渚じゃん♪」

 

「なぎさ?…………なぎさぁぁぁぁぁぁ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミナトと速水は公園のベンチに座り、渚は近くの自販機で飲み物を買い速水に手渡した。

 

 

「誰にも言わないからとりあえずこれ飲んで落ち着いて?」

 

「……………死にたい」

 

「ダメ‼︎そんな事絶対許さないからな⁉︎」

 

 

顔を赤く染め俯向く速水を必死に慰めるミナトを目に、渚は申し訳ない事をしてしまったのだろうかと苦笑を浮かべていた。

 

 

「そう言えば渚は進路相談どうだった?」

 

「僕?」

 

「そう、渚1番最後で結構時間かかってただろ?」

 

「あはは……まぁね、殺し屋になるべきかどうか聞いたんだ」

 

「やっぱりね…」

 

「殺し屋って…それ本気?」

 

速水が顔を上げ問いかけると渚は殺せんせーに言われた事を思い出した。

 

(君の「勇気」は「自棄」を含んでいる)

 

「どうしてこの才能を身につけたのか見つめ直し、それでも殺し屋になりたいと思ったら先生も全力でサポートするって言われたよ」

 

「やめたほうがいいよ渚」

 

「ミナト君……」

 

「確かにお前が持つ暗殺の才能は俺もすごいと思う。だけどお前が殺し屋になって誰が幸せになるんだ?殺し屋になって得るものなんて何もないぞ……」

 

ミナトは真剣な顔つきでそう言うとふぅと息を吐き、いつも通りの笑みを浮かべた。

 

「まぁどうしようもない時はメイド喫茶とかそっち系の道に進めば?」

 

「ミナト君までなんてこと言うのさ‼︎」

 

 

 

 

 

 

2人と別れた後も渚は公園のベンチに座り1人考え込んでいた。

 

(僕が暗殺の才能を手に入れた理由……それは僕が1番知っている。他の皆みたいに勉強が出来たり運動が得意なわけじゃない、大した才能がない僕にとって暗殺の才能は唯一の物なんだ)

 

やっぱり殺し屋になるしかないのかと考えていた時、不意に渚の隣に1人の男が腰かけた。

 

「隣いいかい?と言っても、もう座っちゃってるんだけどね」

 

「ど、どうぞ…」

(何だろうこの人……すぐ近くにいたはずなのに全然気づかなかった)

 

「その制服、確か椚ヶ丘中学の生徒さんだよね?」

 

「そうです…」

 

「そっかそっか♪僕の友人がね椚ヶ丘中学で教師をしているんだ。あれ?保健医って言ってたかな……」

 

止まることなく口を開く男に渚は違和感を抱きながらも、いつ何があってもいいように警戒していた。

 

 

「見たところ3年生だよね?進路とか決まってるの?」

 

「いえ…まだ決まってなくて……」

 

「そっか…まぁ周りの意見に流されず自分の意志を貫き通せばそのうち見つかるはずさ♪頑張ってね少年♪」

 

男はそう言うと鼻歌交じりにその場を立ち去った。渚はそんな男の姿を見送りながら彼の言葉を思い出し、自分の進路を考え直すことを決意したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ただいま」

 

「おかえり渚。ちょっとそこ座んなさい」

 

母 潮田 広海(しおた ひろみ)に促され渚は言われた通り向かい合うように座った。

 

「アンタの中間テストの成績……本校舎復帰条件に届いてなかったけど、寄付金持って必死に頼んだら特例で許可頂けたって話を聞いたのよ。だから私もそうするわ。一刻も早くアンタをE組から脱出させなきゃ」

 

突然の提案に渚は我慢できずいつもならしない反発をしてしまった。

 

「ちょっと待ってよ母さん‼︎僕はE組のままがいいよ‼︎楽しいし成績だって上がってるじゃん‼︎それに……E組のみんなと卒業したいし、急に決められても」

 

 

その時、渚は気づいた。広海の顔が暗くなっていることに

 

 

「なによその言い草は‼︎何でそんな向上心の無い子に育っちゃったの⁉︎母さんと同じ苦しみを味あわせたく無いから、アンタの成績が悪いから寄付金まで出費するのよ‼︎親がそこまでしてあげてるのに、アンタ一体何様のつもり⁉︎」

 

渚は髪を強く掴まれる痛みに耐えながら明るい時に話さなかったことを後悔した。

 

「…ごめんなさい母さん……僕の理解が足りなかった………」

 

「……渚、アンタは子どもなんだから人生の上手な渡り方なんてわかるはず無いの。でも安心しなさい、アンタのために全部プランを立ててあげるから」

 

 

(殺気にも似たこの人の執念に多分僕はずっと逆らえないだろう……)

 

 

「そうと決まれば担任の先生に電話しなさい渚。明日転入手続きを頼みに行くって」

 

「…え?」

 

渚はこの時再び思い出した、自分の担任がエロくて、器が小さくて、地球を滅ぼす怪物だという事を………

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かった、殺せんせーには私から伝えておくよ。おやすみ渚君」

 

そう言って電話を切り、受話器を置いた真琴はため息をついた。

 

「困ったことになったな……」

 

「にゅや?どうしたのですか泉先生?こんな遅くに学校にいるなんて」

 

「…忘れ物をしたので………そんな事より渚君のお母さんが転級の相談に来るそうです。ですが明日烏間は出張のため不在、どうしたものかと………」

 

不安そうに話す真琴を目に殺せんせーは得意げに答えた。

 

「何の心配もいりませんよ泉先生。私は地球を破壊する超生物、三者面談などごく自然に乗り切って見せましょう」

 

そう言って何らかの準備を始める殺せんせーに対し、真琴はため息をつき同僚の事を思い出していた。

 

(烏間はこんな環境にも必死に耐えているのだな……)

 

真琴の不安など知るわけもなく殺せんせーは鼻歌を歌いながら面談の準備をするのであった。

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