津芽湊の時間
それは2年の終わり、あと数ヶ月で3年生になるという頃だった。
「まったくお前のせいで俺の評価まで落ちたぞ」
「すいません」
「まぁこれからお前の顔を見なくて済むのは幸いだがな」
「失礼しました」
担任の先生との話を終え教員室を後にした。
俺の名前は津芽湊(つがみなと)つい先ほど担任に特別強化クラスの移動を告げられた。
3年E組 通称エンドのE組
成績の悪い生徒や素行不良者で構成されている落ちこぼれのクラス。授業は隔離校舎で行われ学食もない、部活も出来ないしおまけに本校舎の生徒や先生には見下される最悪の場所。俺はその場所に移動を告げられた…もちろん素行不良者という理由ではなく成績の悪さが原因だ。
この学校には2つのタイプの人間に分かれている。E組に落ち堕落するもの、E組に落ちまいと必死で勉学に励むもの……そのためE組以外の生徒は優秀なものが多い。その結果ここ椚ヶ丘中学校は、東京内でかなり有名な進学校になった。
教室に戻り帰る準備をしていたときのこと
「湊君いまかえりー? 先生となんの話してたのさー?」
(嫌味なしゃべり方…こいつ何話してきたか知ってるだろ)
そう思いミナトは何も答えなかった。
「なんとか言えよ!どうせE組行きだろ⁉︎」
(ほら予想通り言うと思ってたことそのまま言ってきたよ)
分かりきっていたことだから何も感じなかったが………
「お前終わったなwせいぜいE組のやつと仲良くしてろよ」
何かが切れた…次の瞬間俺は、嫌味を言ってきた奴の顔面に拳をめり込ませていた。
「あ、やっちまったよ…」
嫌味を言ってきた男子生徒は俺の前で大の字に伸びていた。
それからまた教員室でこっぴどくしかられ俺は2週間の停学をくらった。
「なーんで俺だけが停学食らうんだよ」
ミナトは不満を言いながら帰り道を歩いていた。自分が馬鹿にされるのはかまわなかったが、関係ないE組まで馬鹿にされることに我慢ができなかった。
「クラスも移動になり停学くらったこと言ったら、じいちゃん怒るだろうな…」
帰り道を歩く足はしだいに重くなっていった………
「ばあちゃんただいまー」
「おかえりー湊。お客さんが客間にいるからいっておいでー」
「ほーい」
(俺に客?いったい誰だろう)
俺は客間につき中に入ると、じいちゃんとスーツ服を着た2人が座っていた。
「君が津芽君か?私は防衛省の烏間というものだ」
「鶴田と言うものです」
「今日来たのは君に頼みたいことがあってな」
「ああ、伊武鬼さんにはすでに話している」
やけに親しいなと思い祖父である伊武鬼(いぶき)に眼を向けると明らかに不機嫌そうな顔をしていた。そんなミナトの視線に気づいたのか、伊武鬼はゆっくりと立ち上がり部屋を出ようとしたところでミナトの隣で立ち止まった。
「この人はワシが昔仕事で稽古をつけたことがあるなかなかの手練れじゃ、力になってやりなさい」
「う…うん」
「それと……お前クラスが移動になっただけで無く停学もくらったそうじゃの………」
「それは……その……」
「今日の夜食、お前は食わんでいい」
伊武鬼の鋭い気迫に押されミナトは何も答えることができず苦笑を浮かべたまま汗をダラダラと垂らしていた。
「なんだかすまないことをしたな…」
「いえ、自業自得ですから……それで俺に頼みたいことって何ですか?」
「これから話すことは国家機密であることを理解してほしい。伊武鬼さんには話したが、他の人に話した場合は記憶消去の治療を受けてもらうことになる」
「記憶……消去」
烏間の言葉にミナトは息を呑み身構えた。
「君にこいつの暗殺をお願いしたい」
そう言って烏間さんが出した写真を眼にミナトは驚きの表情を浮かべていた。
(こいつが暗殺のターゲット?)
普通の生徒ならなぜ暗殺をってなるだろうけど、それよりミナトはターゲットの容姿に驚きを隠せずにいた。
「このターゲット、ドラク○に出てくるホイミスラ○ムの色違いバージョンですか?」
それからいくつかの説明をされた。
こいつが月を爆破させた犯人で来年の3月には地球も破壊すること、こいつが3年E組の担任ならやっていいと自ら言ってきたこと。そしてこいつ用のナイフとBB弾も渡された。どうやらターゲットにはこれ以外の武器は効果がないらしい。また、すごく素早いということも教えてもらった。
最後に烏間さんはこう言った。
「暗殺成功の報酬は100億だ」
「100億⁉︎そんなにもらえるんですか?」
「当然だ、暗殺の成功は地球を救うことになるからな」
100億か…
「100億もらったら何に使おうかなー」
「ミナト君?」
「あれ俺…口に出してました?」
「あぁ…というわけで他のE組生徒にも同じく暗殺を任せている、君も停学あけから参加してもらいたい」
「わかりました」
「それでは失礼しました」
「いいえーまたいらしてください」
そう言って烏間さんと鶴田さんは帰っていった。
「なんの話だったんだい湊?」
ミナトは祖母に話の内容について聞かれたが、烏間さんが国家機密と言っていたことを思い出し誤魔化すことにした。
「椚ヶ丘中学で新しいクラスが増えるんだってー」
「そうかいそうかい、どれそろそろ夕飯でも作ろうかね」
「お願いねーばあちゃん」
「さぁて俺は夕飯までねるかなーっと」
あれ?何か忘れてるような…
「湊」
「…やぁじいちゃん…」
振り向くと名前の通り鬼の形相でこちらを見ているじいちゃんが手を招いていた…
「あれは地獄からこっちこいって誘っている鬼かな…」
それからミナトはこっぴどく叱られましたとさ…
いよいよ明日からか…
明日でようやく停学が終わり学校に向かうことになる。
「あーもう少し停学でもよかったなー。そしたらもっとゲームできんのに………よし今日も徹夜でゲームするぞー!」
ゲームを起動しながら俺は携帯のアプリをいじっていた。
その結果、ミナトは寝坊し停学あけの学校初日を遅刻することになる………