「ほら!みんな急ぐぞ‼︎」
昼休み
普段なら友達と楽しく昼食をとる時間だが、3年E組の生徒は月に一度行われる全校集会のため、本校舎に向かっていた。
「この前は遅れて花壇の清掃やらされたからな」
「前原はほとんどサボってただろ!」
磯貝がそう言うと、一緒に歩いていた岡野が耐えられなくなったのか大きな声で叫んだ。
「あーもう!なんで私達だけこんな目に会わなきゃいけないのよー!」
「昼休みはゲームの時間って決まってたんだけどなー」
渚、茅野、杉野、片岡と一緒に歩いていたミナトは、ゲームの時間を奪われたことに少し怒っていた。
「仕方ないよ全校集会は本校舎で行われるし、E組は他のクラスよりも早く整列してないといけないから」
「けど本当に、ひっどい差別だよなー」
慰める渚に続けて杉野が言った。そんな時ミナトは自分の前を歩く渚たちを目に、手を頭の後ろで組みながら昔のことを思い出しているのか空を見上げつつ口にした。
「まぁ、俺はE組にいた方が楽しいからいいけどさ」
ミナトの発言が他の四人は嬉しかった。
ミナトは不良高校生との事件があってから変わった。適当な言動こそは変わらないものの、殺せんせーを暗殺しようとしたり前よりも積極的にクラスメイトと関わるようになっていた。
「そういえば、津芽君って元々何組だったの?」
「俺は前…」
茅野の質問にミナトが答えようとした時、後ろから何かが迫ってきた。
「ねぇ、あれハチの群れだよ!」
「いや待て片岡、その前を誰か走ってるぞ!」
杉野の発言に、その場にいた全員が目を凝らした。
「あれは…」
ミナトが目を凝らすと、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「お前ら危ないからそこをどいてくれー!」
「「「「「岡島(君)⁉︎」」」」」
ハチの群れを率いて走っていたのは岡島だった。制服は所々破けていて、蛇を体に巻きつけながらも彼はそのまま本校舎に向かって走っていった。
「なんか色々くっついてたけど、岡島のやつ大丈夫か?」
「と、とりあえず先急ごうぜ」
杉野の発言に彼らは再び、本校舎を目指し歩き始めた。
E組の生徒はやっとの思いで、本校舎にたどり着いた。
「みんな大丈夫か?」
「烏間先生の方こそ大丈夫ですか?」
前原はビッチ先生をおぶっている烏間を見て苦笑を浮かべつつ言った。
「疲れた、もう足が動かないとだだをこねてな…」
「か弱いレディーにあんな山道歩かせるんじゃないわよ!」
そう言うとビッチ先生は烏間から降り、疲れた様子を見せることなくある生徒の元へ向かっていった。
「ところで、殺せんせーは?」
倉橋の質問に烏間は、呆れたように答えた。
「あいつもついてくるとうるさくてな… 国家機密だから生徒の前に出すわけにはいかない。だからあいつは教室で待機させた」
烏間先生の苦労が目に浮かび、倉橋は苦笑混じりに「お疲れ様です」と言った。
その頃E組では、窓から本校舎を眺める殺せんせーの姿があった。
「先生だけのけ者、ぼっち先生」
「岡島大丈夫か?」
「あぁ、ミナトか… かなりひどい目にあったぜ」
ミナトと岡島が話していると、ビッチ先生が近づいてきた。
「あなたが、津芽ミナトね?」
「そう言うあなたは、ビッチ姉さんですね?」
「せめて先生って言いなさい!あと、あんたのビッチも発音が違う!」
「ごめんごめん、俺英語苦手でさ…てか突っ込むところそこですかビッチ先生w」
イリーナはミナトの言葉に苛立ちを覚えながらも、どこか懐かしさと妙な引っかかりを抱いていた。
「あんた、一度私とあったことある?」
「急に真面目な顔してどうしたんですか?初対面のはずですけど?」
「そう……ならいいわ。次はちゃんと私の授業にでんのよ?」
「ほーい♪」
(初対面のはずだよな?)
ミナトはイリーナの言葉に疑問を抱き思考を張り巡らせたが、いくら考えてもわからないので気にするのをやめ岡島と共に体育館へ入っていった。
(津芽………あいつと同じ名字だけど、まさかね…)
イリーナは脳内にある人物の顔を思い浮かべるが、すぐにその考えをやめ体育館へ向かっていった。
そして、本校舎での全校集会が始まった。
E組の差別待遇はここでも同じように続き、彼らは長々と耐えなければならなかった。だがミナトは今まで通り寝て過ごした。途中、E組の生徒を馬鹿にする声やクラスメイトたちの声で目が覚めたが、彼はほとんど寝ていた。
「ねぇ、ねぇってば!」
「あー、おはよう速水」
「ずっと寝てたの?もう集会終わったけど」
「マジで⁉︎どうりで周りが静かになったと思ったw」
ミナトは大きくあくびをしてから速水とともに、体育館を後にした。
「俺飲み物買ってくるけど、起こしてくれたお礼に速水の分も買ってきてやるよ」
「別に大したことしてないし悪いからいいよ。先に行ってるから」
「りょーかい♪」
そう言うとミナトは体育館近くの自販機に向かった。そこには渚と、渚の元クラスメイトであろう、ニキビとメガネの男子生徒がいた。何を話しているかはよく聞こえなかったが、渚が責められていることは分かった。
ミナトはモブ2人を止めように渚達に近づくと少しずつ、すると会話の内容が少しずつ聞こえてきた。
「なんとか言えよE組‼︎ 殺すぞ‼︎」
その時ミナトは、渚が笑っているように見えた。
「今、渚のやつ笑ってたのか?」
そして、聞こえてきた渚の一言でミナトは足を止めた。
「殺そうとした事なんて無いくせに」
メガネとニキビは身を引き、渚は彼らを押しのけて歩いていった。モブ2人は渚が放った殺気に怯えた様子だった。
ミナトもまた、渚が放った殺気にしばらくその場を動けなかった。
そんな弱者が強者に牙を向ける一部始終を学園の支配者が見ていたことを、誰も知らない。