男子全員でクラスの気になる女子を集計をしていた時と同じ頃、女子の大部屋では…
「「「ビッチ先生まだ20歳⁉︎」」」
「経験豊富だからもっと上だと思ってた」
「毒蛾みたいなキャラのくせに」
片岡に続いて岡野がボソッと呟いた。
「それはね濃い人生が作る色気が…誰だ今毒蛾つったの‼︎」
イリーナは怒鳴り散らした後、少し真面目な顔つきで言い続ける。
「女の賞味期限は短いの……あんた達は私と違って危険とは縁遠い国に生まれたのよ。感謝して全力で女を磨きなさい」
………………
「ビッチ先生がまともな事言ってる〜」
「なんか生意気〜」
「なめくさりおってガキ共‼︎」
岡野、中村の発言にイリーナは目を飛び出しながら怒っていた。その後、矢田と倉橋がイリーナが今までオトしてきた男の話を聞こうとしたが……
「あんた達はどうなのよ?クラスの中に気になる男子ぐらいいるでしょ?」
それから、女子全員で気になる男子の集計を始めた。女子は宣言する男子たちのやり方とは違い、それぞれ紙に気になる男子を書きそれを片岡が集計する方法をとった。
「で、なんで気になる男子の集計に烏間が入ってるのよ‼︎」
「えーだって、烏間先生かっこいいし」
烏間に票を入れたであろう倉橋は笑って答える。
「烏間先生抜きで考えるとやっぱ1位は磯貝になったか…カルマと渚が2票で、おっ!津芽に1票入ってるねぇ〜」
気になる男子のリストを見て、中村が言った。
「へぇー磯貝が人気なのは知ってたけど、カルマと渚の2票、それに津芽にも1票入ってるなんて意外ね」
カルマに票を入れたのは誰かわからないが、渚に票を入れたうちの1人はいつも仲が良い茅野だろうとイリーナは思った。
「E組に入って日が浅い津芽の1票が気になるわね」
「詮索しちゃダメだよビッチ先生。誰が誰に票入れたか、分からないようにしたんだから」
「私ぐらいになると、表情みれば分かるのよ」
片岡に言いつつ、イリーナは女子の顔を眺め始める。
「隠し通せると思わない方がいいわよ…」
イリーナの言葉に、一瞬だが1人だけ顔を赤くし視線を逸らした。
「まぁ、詮索しないルールなら黙っておくわ」
「それよりビッチ先生の話!」
「早く聞かせてよー」
「フフいいわよ。子どもにはシゲキが強いから覚悟なさい。例えばあれは17の時…」
矢田と倉橋の言葉に、イリーナは自分の過去の話を始めた。イリーナの話を女子達と、殺せんせーは固唾を呑んで聞こうとしていた。
「おいそこぉ‼︎さりげなくまぎれこむな女の園に‼︎」
イリーナはしれーっと、女子の中にまぎれる殺せんせーを指差した。
「いいじゃないっすか、私も…その…色恋の話聞きたいっす」
「そーゆー殺せんせーはどーなのよ?」
「そーだよ人のばっかずるい‼︎」
「………………」
シャッ‼︎
生徒たちに問いただされ、殺せんせーはマッハで逃げた。
「くそっ!逃げやがった‼︎」
「みんな‼︎捕まえて吐かせて殺すよ‼︎」
中村に続いて片岡が言うと、女子も一斉に殺せんせーを追い始める。その時、イリーナはある生徒の手を取り言った。
「あんたも結構分かりやすいのね……速水」
「うるさい、ビッチのくせに」
クラス全員が殺せんせーを追いかけている頃、ミナトは1人三日月を眺めていた。
(喧嘩しているときの俺は楽しそうにしてるのか…)
海莉に言われた言葉がミナトを悩ませていた。去年の5月頃クラス内で孤立したミナトは、表沙汰にならない喧嘩を繰り返していた。
(鮫島に会ったのもおそらくその頃、あいつが言ってたことも、あながち間違ってないかもな…)
ミナトは過去の自分を思い出していた。喧嘩に明け暮れる日々、戦うことに楽しさを覚えていたあの頃。そんな生活をしていた自分が今ではクラスの仲間と共に暗殺をしている、そう考えると次第に口元が緩み嬉しくなっていた。
「なにニヤニヤしてんのよ」
「速水⁉︎」
ミナトが振り向くとそこには速水がいた。
「なんでここに?てか、ニヤニヤしてねぇし」
「別になんだっていいでしょ?ただ、今日の暗殺お疲れって言いに来ただけだから」
「あぁ、ありがとう、速水こそお疲れ。あと、パックマンのゲームありがとうな♪」
ミナトに笑顔を向けられ、速水は赤面していることがバレないよう、顔を逸らし言った。
「…どういたしまして」
そんな速水の姿を目にミナトは笑みを浮かべる。
「俺らも殺しに行こっか♪」
「うん!」
そう言ってミナトと速水は、殺せんせーの暗殺に向かった。
(昔とは違う何かを楽しみにしている俺がいる。あの頃の俺なら考えられないことだけど、今すごっい充実してるや)
ミナトは自分がE組であること、クラスメイトと共に一つの目標に向かっていけるのが嬉しくなり笑みを浮かべる。そんなミナトを横見に、速水も顔を赤くしながら笑みを浮かべていた。
『明日、1人目の「転校生」を突入決定。
旅行の間に実働準備は終えている。』
烏間は特務本部からの通達に目を通していた。それは明日、科学力で人知を超えた能力をもつ2人の特殊な暗殺者のうちの1人を、E組に送り込むといった内容だった。
目を通し終えると烏間はため息を吐いた。
「これで奴を殺せるといいんだが…」
シャッ‼︎
物音に反応し烏間が振り向くと、そこには生徒の暗殺から逃れた殺せんせーがいた。
「どうした?さっきから騒がしいが」
「いやー、生徒達に恋話を吐かされそうになりまして…」
こいつに恋話があるのかと疑問を抱く烏間に、殺せんせーは言い続けた。
「私だって過去の恋話などゴロゴロありますしねぇ、この手足では数え切れないぐらいのね」
「その話は、お前の手足が2本ずつだった時の話か?」
烏間の言葉に殺せんせーは沈黙した。
「…いややめておく、どうせ話す気は無いだろうしな」
「…賢明です烏間先生」
殺せんせーは少し笑うと言い続けた。
「いくら旅先でも、手足の本数まで聞くのは野暮ですから」
その頃E組では、誰もいない教室のなか転校生暗殺者が静かに微笑んでいた。
「お会いするのが楽しみです、殺せんせー」