「退屈だ……」
その声は、A組の生徒によるものだった。その声の主は、球技大会のトーナメント表を見て溜息をついた。
「なぁ、会長?俺はE組と戦ってみたいなーって思うんだけど、ダメかなー?」
「…お前が戦いたいのはE組じゃなく、E組の津芽湊だけだろ?そんなことよりちゃんと職務をこなせ、鮫島。」
「はいはい。」
そう言われ鮫島は、トーナメント表を机の上に置き生徒会の職務を再開した。
(あいつの運動神経なら面白いものが見れそうなのになー。それで乱闘になったら最高なんだけど。)
鮫島は深くため息をつき、資料整理などの職務を進めた。
その頃E組では…
「ふむ、それでE組は女子が女子バスケ部と、男子は野球部の選抜メンバーとエキシビジョンマッチに出なくてはならないと。」
殺せんせーの問いに三村がそーゆーことと応えた。
「なるほど、いつものやつですか。」
「そ、でも心配しないで殺せんせー。暗殺で基礎体力ついてるし、いい試合して全校生徒を盛り下げるよ、ねー皆」
片岡の言葉に女子は声をそろえ応えた。
(スポーツは勝つばかりが全てじゃない。負ける時は負け方も大事ですが、片岡さんは責任感がありリーダーシップも抜群、女子チームはこの逆境も良い糧に出来るでしょう。)
殺せんせーが、女子達をまとめ作戦を話す片岡を見ている時だった、
「俺等さらし者とかカンベンだわ。お前らで適当にやっといてくれや。」
「寺坂!…ったく。」
そう言って寺坂、村松、吉田の3人は教室を出て行ってしまった。
「ほっとっけよ磯貝、野球となりゃ頼れんのは杉野だけどなんか勝つ秘策ねーの?」
前原は杉野に問いかけるが、すぐに応えることはなかった。
「どーした?杉野」
ミナトに呼ばれ杉野はようやく口を開いた。
「…無理だよ。俺とあいつらじゃ経験の差がありすぎて勝負にならねー。…勉強もスポーツも一流とか不公平だよな人間って。…だけど勝ちたいんだ殺せんせー。…E組のこいつらとチーム組んで勝ちたい‼︎」
杉野は自分の気持ちを伝え、殺せんせーに目をやったが、殺せんせーはなぜか野球のユニフォームに着替えワクワクしていた。
「…ヌルフフフフフ、先生一度スポ根モノの熱血コーチをやりたかったんです。最近の君達は、目的意識をはっきりと口にするようになりました。その心意気に応えて殺監督が勝てる作戦と、トレーニングを授けましょう‼︎」
そして、球技大会当日
「それじゃいくよ!みんな!」
「「「おーう‼︎」」」
本校舎にある体育館では、E組の女子と女子バスケ部選抜メンバーの試合が始まろうとしていた。
ミナトは周りを見渡すが、応援席は満員になっている。
「ったく、どいつもこいつもE組を見せ物にしやがって。」
「仕方ないでしょ、そんなもんよ。」
ミナトが少し苛立ちを覚えていることに気づき、速水は声をかける。
「あんたはどうだったの?A組だった時、私たちの事どう見てたの?」
速水は前から気になっていたことを問いかけた。
「どうって普通に見てたよ?実力だけで差別なんてしない。周りのそういう雰囲気にも興味なかったし。だから、集会の時とか正直俺は苛ついたな。」
ミナトはわらいながら言った。
「そっか…少し安心した。それに私達もただ負けて終わりじゃない。いい試合して、全校生徒盛り下げてくるよ。」
コートに入ろうとする速水を、ミナトは思わず呼び止めた。
「あのさ…速水」
「ん?」
「その…二つ結びなかなか似合ってるよ。」
「っ⁉︎…ありがと」
イリーナと被るのが嫌という理由で髪型を変えたが、ミナトに褒められ普通に嬉しかった。
(今日から二つ結びでいこうかな)
「それでは最後に…E組対女子バスケ部のエキシビジョンマッチを行います。」
体育館の中にアナウンスが鳴り響いく。
「それじゃ応援席から見てるから、頑張ってな速水。」
「そっちこそ…野球負けないようにね。」
コートに入りながら速水は考えていた。
(頑張って…か)
「なんかいいことあったの?凛香ちゃん」
微笑む速水を見て矢田は問いかけた。
「別に…こんなアウェーな中でも、応援してくれる人がいるから頑張ろって思っただけ。」
矢田が速水の視線の先に目をやると、1人の生徒と目があった。
(ただの応援じゃそんなニコニコしないよね…少しわかったかも…)
「それじゃ応援してくれる人のためにも、頑張らないとね!」
そしてE組女子達の戦いが始まる。
ミナトの応援のおかげか定かではないが、その日の試合速水は24得点を決めた。
球技大会女子の結果は惜敗だったが、空気を読まない八面六臂に本校舎会場はドン引きした。
そして午後を迎え、次は男子達の戦いが始まろうとしていた。