「最後ぬが一個多いよ…」
グ「ぬ?」
寺坂と吉田が倒れたスモッグを隠している頃烏間は磯貝の肩を借り、なんとか立ち上がった。
「これ以上は無理ですよ、烏間先生」
「30分で回復させる…けっして無茶はするな…」
「象をも倒すガス浴びて歩ける方がおかしいって」
「烏間先生も十分化け物だよね」
磯貝に肩を借り歩く烏間を見て、菅谷と岡野は言った。
標的のいる10階はまだまだ先、でも烏間先生やビッチ先生、そして殺せんせーにも頼ることはできない。経験と知識を重ねたプロがこの先にも待ち構えていることに生徒達は皆、不安を抱いていた。
そんな時…
「いやぁ〜いよいよ夏休みって感じですねぇ」
殺せんせーのお気楽な一言は生徒達をイラつかせた。
「ひとりだけ絶対安全形態のくせに‼︎」
「渚振り回して酔わせろ‼︎」
木村に続く磯貝の言葉に、渚は殺せんせーの入った袋を振り回した。
「にゅやーッ‼︎」
「よーし寺坂、これねじ込むからパンツ下ろしてケツ開いてー」
「死ぬわ‼︎」
カルマと寺坂のやり取りのあと、振り回されてぐったりしてる殺せんせーに渚は問いかけた。
「何でこれが夏休みなの?殺せんせー」
「夏休みとは、先生の保護が及ばない所で自律性を養う場でもあります。普段の体育を思い出しなさい、君達ならクリアできる、この暗殺夏休みを」
ヌルフフフと笑って殺せんせーが締めると吉田が何かに気づいた。
「そういえばあいつ静かだな…」
そう言って吉田が指差す方を見ると、顔色を悪くした津芽の姿があった。
「振り回されてる殺せんせー見たら、気持ち悪くなった…」
(((こいつもこいつでめんどくさいな‼︎)))
口元を押さえながら話すミナトを見て、生徒達は心の中で突っ込んだ。
それでも先ほどまでの不安は薄れ、生徒達は再び前へ進みだした。
最上階
その部屋のテーブルには、なんとも美味しそうなつけ麺が置いてあった。
「濃厚な魚介ダシにたっぷりのネギと一匙のニンニク……そして銃‼︎」
そう言うとガストロは銃をラーメンの中に突っ込みスープと絡め、舐め始める。
「つけ銃うめぇ…銃身内に絡むスープがたまらねぇ」
「ククク…見てるこっちがヒヤヒヤする。実弾入りだろ?その銃」
ガストロな異常な行為にボスは愉快そうに笑い問いかけた。
「ヘマはしねっス、撃つ時にも何の支障もありませんし。"その日一番うまい銃がその日一番手になじむ"俺の経験則ってやつっスわ」
「奇特な奴だ、他の2人もそんなか?」
「ええまぁ、俺等みたいな技術を身につけ何度も仕事をしてきた連中は何かしら拘りが出てくるもんス。スモッグの毒も全て自作、拘るあまり研究室まで作る始末っス」
そう言うとガストロは何かを思い出し、逆に問いかけた。
「あいつはそういう拘り無いんですか?」
「あいつ?ああ、篠宮のことか」
「呼びましたー?」
そう言ってひょこっと現れた男はスラッとした体格で爽やかな顔つきをしていた。
「こんなひょろひょろした奴が殺し屋なんて言っても誰も信じないだろ?」
「ひょろひょろとか言わないでくださいよ!そう言う先輩は昔と比べて痩せましたねー」
笑いながら篠宮はボスに言葉を返していた。
「お前なんか暗殺者として拘りってあるか?」
「拘りですか?うーん」
篠宮は腕を組みしばらく考えていたが、先ほどまでの爽やかな顔とは打って変わって、邪気のこもった笑みを見せる。
「どんな相手でも必ず斬殺する…女、子どもでも必ず……悲鳴が聴けるように少しずつ、数ミリ、数センチずつ傷を深くし、俺の我慢の限界が来たら一気に‼︎……一刀両断する…それが俺の拘りですかね」
そう言う篠宮は最後には爽やかな顔つきに戻っていた。
ガストロは篠宮の言葉に背筋を凍らせ痛感した…
こいつはかなり狂った暗殺者だと…
「ところでガストロ、もう1人のグリップはどんな拘りがあるんだ?」
「ええ…ま…あいつはちょっと殺し屋の中でも変わってまして…」
篠宮の変わりように、ガストロはボスの言葉に対する返事が少し遅れた。
篠宮に目を移すと、刀をまるでおもちゃを与えられた子どものような眼で見ていた。
(こいつは…今までにあったどんなやつよりも、ヤバイやつだ…)
ガストロはつけ銃を堪能しながらもそんなことを考えていた。
5F 展望回廊
「本当ならこっから綺麗な海が見えるんだろーなー」
ミナトの言う通り見通しの良いフロア、だが今は生徒達にとって最悪のフロアとなっていた。
原因は回廊の途中に寄りかかる金髪の男。
今までの経験から生徒達はその男が殺る側の人間だとすぐに気づいた。
(この状況では奇襲もできず、数の利も活かせない…くそ、実弾の銃が欲しい…この島で必要になるとは思わなかった)
ビシッ‼︎
烏間が考えていた時、寄りかかっていた男は素手でガラスにヒビを入れていた。
その光景に生徒達は皆驚きを隠せなかった。
「…つまらぬ」
その男、グリップはそう呟くと、生徒達が潜むほうに近づきつつ言い続けた。
「足音を聞く限り手強いと思える者が1人も居らぬ。精鋭部隊出身の引率教師、それと暗殺者の息子がいると聞いていたぬ…だ」
グリップの言葉にミナトは苛立ちを覚えていた。その様子を速水はミナトに見えない位置から眺めつつ、自分がミナトに対し言った言葉を思い出していた。
(私もミナトに同じこと言ったんだよね…)
「どうやら…スモッグのガスにやられたようだぬ。半ば相打ちぬといったところか、出てくるぬ」
グリップの言葉に生徒達は恐る恐る姿をあらわす。
それと同時にグリップの喋り方に疑問を抱いていた。
(この人手で窓にヒビ入れるとかめちゃくちゃだし)
(めちゃくちゃ怖いけど…)
(なんかその…)
「「ぬ多くね?おじさん」」
(((言った‼︎ミナトとカルマがいて良かった‼︎)))
「ぬをつけるといサムライっぽい口調になると小耳に挟んだぬ、カッコよさそうだから試してみたぬ」
「ねーねー、ぬのおじさん。ぬをつけるよりも、それと便座カバーってつけた方がかっこいいんじゃない?」
ミナトの言葉に生徒の大半は疑問を抱いたが、不破は理解していた。
「津芽君もわかるみたいね、あのアニメの良さが」
「それと便座カバー?少し試してみるかぬ…いや、少し試してみるか…それと便座カバー」
慣れない言葉を話すグリップを見て生徒達は笑をこらえるのがやっとだった。
「おい暗殺者の息子よ、お前俺に嘘を教えたな?ぬ」
そう言うとグリップはミナトの頭めがけ手を伸ばした。
すかさずミナトはその手を払いのける。
「あんたの武器は、毒ガスでも銃でもない、その素手でしょ?」
「ほう、よく気づいたぬ。身体検査に引っかかることのない武器、近づきざまに頚椎をひとひねり、その気になれば頭蓋骨も握る潰せるぬ」
グリップの言葉に岡野はイメージしてしまい、鳥肌が立った。
「だが、そんなことはどうでもいいぬ。お目当ての相手がこのザマ、お前達雑魚を1人でやるのも面倒だぬ、ボスと仲間を呼んで皆殺し…」
そう言ってグリップがポケットから携帯を取り出した時、その携帯はブオンと振るわれた観葉植物の器によって窓に叩きつけられた。
「ねぇおじさんぬ、プロって結構ふつーだね、俺も同じことできるよ?それに…もしかして中坊とタイマン張るの怖い?」
カルマの挑発を烏間は無謀だと止めるが、殺せんせーが呼び止めた。
「アゴが引けている」
殺せんせーの言葉を聞き、烏間はカルマに視線を移した。そこには今までとは違う構えをするカルマの姿があった。
(目は真っ直ぐ油断なく、正面から相手の姿を観察している…ヌルフフフテスト以来少々鳴りを潜めてましたが、しっかり学んだようですね…存分にぶつけなさい、高い大人の壁を相手に‼︎)
カルマの大人への挑戦が今、始まろうとしていた。
湊「カルマ…観葉植物俺の頭かすったんだけど…」
カ「いやーごめんごめんわざとじゃないんだw」
湊「嘘つけコノヤロー‼︎」
ケチャ「元気だなー、今回投稿が少し遅れてしまい申し訳ありません…感想、ご指摘お待ちしてます!」