良ければ、御協力ください
(なんでもいい……武器を取れ……でないと……二人が、死ぬ！！)
そう思ったヨシアキは、自分が落ちた金銀財宝の中に埋まっていた剣の柄を握った
そして、眼前に迫って鉈を振り上げていたゴブリン
リアンの腹に、深々と突き刺した
「があぁぁぁぁぁぁ！？」
刺されたリアンは、腹を抑えながらのたうち回った
どうやら反撃されるとは思っていなかったらしく、リアンは刺し傷を抑えながらヨシアキを見た
するとヨシアキは、剣を振り上げて
「……終わり」
と言って、リアンの首を切り落とした
そして、ゆっくりと顔を上げた
そんなヨシアキを、他のゴブリン達は驚いた表情で見ている
その時、リアンに続いて大きかったゴブリンが
「脳筋のリアンを殺すとは、大した白イウムのガキだ！ だが、この俺。ナダルはリアンとは違う！」
と笑いながら、リアンが落とした鉈を拾った
だが、ヨシアキのほうが動きが早く
「うるさい」
ヨシアキは一言そう言って、ナダルとやらの胸に剣を突き刺した
その一撃が致命傷になったらしく、ナダルは倒れ伏した
それを視認したヨシアキは、素早く周囲を見回した
リヒトは倒れていて、腹部を押さえて悶えている
そしてよく見れば、ライカの姿が無い
更によく見れば、何体かのゴブリンが龍の骨の近くの洞窟に向かっている
「ライカは、その先か……」
そう呟いたヨシアキは、リヒトにトドメを刺そうと短剣を振り上げているゴブリンの頭に剣を振り下ろした
その一撃は、確かにそのゴブリンの頭をかち割った
そしてリヒトの安全を感じ取ったヨシアキは、洞窟の奥に向かった
ある確信があったからだ
今のリヒトは、ライカが居ないと助けられないと
だからヨシアキは、拐われたライカを助けるために走った
そして、見つけた
意識が無いらしいライカを抱えて運んでいる、二体のゴブリンを
「ライカを……返してもらうよっ！」
ヨシアキはそう言うと、赤い光りを灯らせた剣を爆音と共に突き出した
その威力は凄まじく、二体のゴブリンを一撃で葬った
そして、落ちたライカの体を揺さぶりながら
「ライカ。ライカ！」
とライカの名前を呼んだ
すると、ゆっくりとライカの目が開き
「う……ヨシアキ……ゲホッゲホッ」
とライカは、咳き込んだ
そんなライカを労りながらも、ヨシアキは
「ライカ、リヒトが危ないんだ！」
と言った
そして数分後、二人はリヒトの近くに戻った
そして、リヒトの天窓を開いたライカが
「これ……骨が折れてる！？」
と声を上げた
外見的な傷は大したことはない
しかし、リヒトの天命が少しずつ減ってきている
つまりは、内側の傷だと分かった
「骨を治すとなると、僕の神聖術じゃ出来ない……シスター見習いのライカなら、治せる筈なんだ！」
神聖術というのは、所謂魔法に当たるもので、この世界では割りと普及しており、才能が有れば誰でも使えるものだ
「無理よ！ こんな傷、治したこと無い！」
ヨシアキの言葉に、ライカは泣きそうになりながらもそう反論した
だが、そんなライカの肩をヨシアキは掴んで
「ライカ！ 君がやらないと、リヒトが死んじゃうんだ！」
と言った
それを聞いたライカの体が、ビクリと震えた
そしてライカは、改めてリヒトの
リヒトの残り天命は、約５００
今の減少速度から考えると、村の教会まで持たないのは明白だった
だから、この場所で治すしかないのだ
それが理解出来たらしく、ライカは大きく深呼吸してから
「ねえ、ヨシアキ……手を、握ってくれる？」
とヨシアキに問い掛けた
それを聞いたヨシアキは、微笑みながら
「それでライカの気が軽くなるなら、幾らでも」
と言って、ライカの手を握った
そしてライカは、倒れているリヒトを見て
「システム・コール！」
と声高に、式句を紡ぎ始めた
ゆっくりと確実に、ライカは式句を紡いでいく
そして唱え終えた直後、ヨシアキは何とも言い難い感覚に襲われた
その理由が、ライカが唱えた回復神聖術だった
ライカが唱えた回復神聖術は、第三者の天命を対象に分け与えて、対象を治すというものだった
その神聖術により、リヒトの治療に成功
リヒトは、一命をとりとめた
この後が、彼等の運命の別れ道になる