ソードアート・オンライン 黄昏の剣士   作:京勇樹

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襲撃

「え? バイトの内容を、覚えてないの?」

 

と驚きの声を上げたのは、ダイシィカフェにて明久と和人のバイトの話を聞こうと問い掛けた琴音だった

 

「うん、覚えてない」

 

「なんでも、国の最新技術の研究だから、記憶を消してるんだってよ」

 

琴音の言葉に、明久と和人はそう言った

実はここ最近二人は、菊岡が持ってきたバイトに協力していたのだ

そのことを聞こうとした琴音や明日奈達だったが、返ってきた言葉が覚えてない、だった

 

「まあ、直接その研究所に行ってるわけじゃないんだ」

 

「六本木にあるその支社に行って、バイトしてるんだ」

 

明久と和人の二人はそう言って、エギルが淹れたコーヒーを飲んだ

すると、和人が

 

「まあ、体調管理の一環で、胸に鼓動を測るのとGPSが埋められてあるんだけどな」

 

と言って、胸元を軽く叩いた

それを聞いた明日奈が

 

「私はそれを見れるけど……本当に大丈夫なんだよね?」

 

と心配そうに問い掛けた

その問い掛けに、明久が

 

「うん、大丈夫。そこでも体調管理をしてるし、万が一に備えて近くに医師が待機してるみたいだし」

 

と説明した

その後全員は、それぞれ帰ることにした

のだが、明久と琴音と詩乃の三人

そして、和人と明日奈はそれぞれ買い物してから帰るために、他のメンバーとは別れた

 

「うん、雨がやんで良かったよ」

 

「本当」

 

「雨が降り続けてたら、少し面倒だったわね」

 

明久の言葉に、琴音と詩乃の二人は同意していた

今日は朝から雨が降っていて、ダイシィ・カフェに来るのも少し面倒だった位だ

しかし、ダイシィ・カフェで話をしている間にやんでいた

流石に雲はまだあるが、それでも少し切れ間からは僅かに太陽の光が漏れている

そして、三人で少し歩いていると、明久が僅かに険しい表情を浮かべた

それに気付いた二人が

 

「明久?」

 

「どうしたのかしら?」

 

と問い掛けてきた

その問い掛けに、明久は少し間を置いてから

 

「……二人供、こっち」

 

と二人を先導する形で、脇道に入った

 

「?」

 

二人は首を傾げながらも、明久の後に続いた

そしてある程度進み、人気が減った時

 

「……そろそろ出てきたら? ダイシィカフェから追ってきてるでしょ?」

 

と後ろに声を掛けた

二人が振り向くと、曲がり角から雨ガッパを着た人物が出てきて

 

「くっくっく……流石だな、影の英雄……」

 

と言った

その声を聞いた琴音は、目を見開きながら

 

「その声は!?」

 

とその人物を睨んだ

すると明久は、その人物に

 

「……そろそろ、その雨ガッパ脱いだら? D・D……いや、根本恭二!」

 

と告げた

 

「くっくっく……つうか、よお、おい……俺のことはさんか様を付けて呼べって言ったはずだぜ、吉井明久……流石は、俺が知る限り一番のバカ野郎だな? 忘れたのか?」

 

「僕からも言わせてもらうと、絶対に付けないって言ったはずだよ? 慕う理由も、敬う理由も無いからね……むしろ、君のことは嫌いだよ。卑怯者の根本」

 

根本の言葉に、明久は強い語気でそう答えた

そんな明久を見て、琴音と詩乃は驚いていた

そんな明久を、見たことが無かったからだ

だが、近い雰囲気は知っていた

あの映像で見た、オレンジギルドを潰して回っていた時の表情に似ていた

 

「もう諦めたら? 確かに人気は無いけど、ここ監視カメラが有るんだよ? 指名手配されてるの、忘れた?」

 

「忘れちゃいねえよ! お前をさっさと殺って、おさらばしてやる!」

 

根本はそう言って、懐からクリーム色の拳銃を彷彿させる物を取り出した

 

「あれは!?」

 

「それは……」

 

それを見て、詩乃と明久が反応した

すると、根本は

 

「お前には武器は無いが、俺には有るぜ……これがなっ!!」

 

と言って、掲げたのは医療用無針注射器

 

「武器な無い……か……どうかな?」

 

明久はそう言って、自分が持っていた傘の先端を側溝の溝に噛ませて、強引に捻った

すると先端の木が砕け、鋭利になった

 

「即席だけど……詩乃、傘貸して……」

 

「ええ……」

 

明久の要請に、詩乃は自分が持っていた傘を手渡すことで応えた

そして明久は、最初に持っていた傘を左手に持って、切っ先を地面付近でフラフラとさせていた

対称的に右手の傘は、肩に担いでいる

 

「けっ! 傘程度で、戦えると思ってんのかよ、バカが!」

 

根本は明久をバカにするように、吐き捨てた

しかし明久は

 

「……こうなるんだったら、SAO時に始末すべきだったよ……君は……」

 

と呟くように言っていた

この時、琴音は警察に電話していた

根本は指名手配されてるので、警察を呼ぶ理由になる

その時だった

 

「死ねや、バカが!」

 

「つおぉぉぉぉあぁぁぁぁ!!」

 

二人は同時に動いた

その直後、二人は交差した

明久の右手の傘は根本の左手によって防がれていたが、左手の傘は根本の腹部に刺さっていた

そして根本が持っていた無針注射器は、明久の右手に当てられていた

しかも根本は、引き金を引いていた

それにより、注射器に装填されていた薬液

サクシニルコリンは、明久に注入された

それにより、二人は同時に倒れた

 

「がっ……痛ぇじゃねぇか……このバカ野郎が……!」

 

根本はそう言いながら、懐からナイフを取り出した

だが

 

「寝てろっ!!」

 

と琴音が、根本の顔面を思い切り蹴った

その一撃で、根本は気絶したらしく、動かなくなった

それを確認した琴音は

 

「詩乃、明久は!?」

 

と明久の容態を、詩乃に問い掛けた

すると詩乃は、根本が落とした注射器を見てから

 

「いけない、カートリッジが空になってる! 明らかに、致死量を越えてる! 明久、しっかりしなさい! 明久!!」

 

と明久の名前を呼んだ

しかし、明久は浅く呼吸を繰り返すだけ

その時、救急車とパトカーの音が聞こえてきた

根本が毒を持っていることを言っていたので、救急車も来たようだ

そして、明久は救急車に乗せられた

だが、救急隊員が

 

「脈拍が、弱くなっていく! 一体、何を使った!!」

 

と焦りの声を上げた

それを聞いた詩乃が

 

「あいつが使ったのは、サクシニルコリンです! カートリッジ満杯の!」

 

と教えた

それを聞いた救急隊員は、別の救急隊員に

 

「強心剤とAED用意!」

 

と指示を下した

実はほぼ同様刻、和人ももう一人の逃走犯

兼元に襲われ、サクシニルコリンを注入された

その後二人は、懸命の治療を施されながら、病院に搬送された

そして、新しい世界での戦いが幕を上げる

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