熊を撃退した後、ヨシアキ達は何時もより早くに村に帰還。村長に森で熊に遭遇したことを伝えた。
すると村長は、村の衛士達を呼び集めて警戒態勢を取らせた。
柵を強化し、幾つか罠を仕掛けた。
そしてヨシアキは、戻るまえに槍を隠した。
ヨシアキ曰く
『なんとなくだけど、今はまだ隠しといた方がいいと思うんだよね』
とのことだった。
ヨシアキのその言葉に、リヒトとライエは従った。
ヨシアキが言うのならば、そうなのだろう、と。
「ヨシアキって、強いんだね……」
「そうかな?」
リヒトの問い掛けに、ヨシアキは思わず首を傾げた。
ヨシアキは、自身が強いとは思っていないのだ。
「強いよ……今の僕よりも……」
リヒトは無力な自身が許せないのか、拳を強く握りしめた。
そして、真剣な表情で
「ねえ、ヨシアキ……僕に、アインクラッド流を教えてくれないか……?」
とお願いしてきた。
場所は変わり、ALOのギルドホールの一室。
「あれから、どうだった?」
と言葉を発したのは、リズベットだった。
その部屋には、黄昏の風メンバーの他にかなりの人数が集まっている。
そしてリズベットの問い掛けに、アスナ、リーファ、フィリア、シノン、ユウキの五人は首を左右に振って
「ダメ、何回行っても面会謝絶」
「家族ですら、顔を見ることすら出来ません」
と告げた。
すると、サジが
「となると、やっぱあの病院に居ないってのは確実か」
と言いながら、顎に手を当てた。
そこに、ユイが
「皆さん、このマップを見てください」
と全員に見えるように、マップを表示させた。
「この光点は、お兄さんとパパの携帯電話の電波を一分毎に追跡したものです」
ユイはそう言いながら、マップに重ねて表示させていた光点を指差したのだが、かなり距離が開いている。
「かなり距離が……」
「しかも、海上に出ているな……」
その光点を見て、エリスとケイトがそう呟いた。
そこにユイが
「この光点の距離から、移動速度は約時速200kmを越えていることが計算出来ました」
と説明した。
「時速200km越え……ヘリ?」
「そうと考えられます」
アスナの言葉に、ユイは首肯した。
それを聞いて、シノンが
「けど、ヘリコプターで海上に出て、どうするのかしら……」
と悩み始めた。
その時、不意にアスナが
「そういえば、キリト君とヨシアキ君がバイトしてた所の名前って、なんだったかしら……」
と呟いた。
「どういうことだ、アスナ」
「なんか、引っ掛かるの……」
ケイトが問い掛けると、アスナは真剣な表情を浮かべた。
そして、ユイに
「ユイちゃん、調べられる?」
と問い掛けた。
「少し待ってください。調べてみます……」
ユイはそう言って、目を閉じた。
恐らく、AI研究をしている企業等を調べているのだろう。
キリトとヨシアキがバイトしていたのは、新機軸のAIに関する物だと聞いていた。
長い名称らしく、二人も正式名称は覚えていなかったが
「確か……STL……」
とアスナが呟いた。
そこに
「ダメです、ママ。AI研究をしている企業を調べましたが、STLという文字は出てきませんでした」
とユイが告げた。
そんなユイを労るように、アスナが優しくユイの頭を撫でた。
そこに、リーファが
「そういえば……少し前にニュースで国が大きな研究をするプロジェクトを立ち上げたって見たなぁ……」
と呟き、ウィンドウを開いた。
「あった、これだ……アリス」
プロジェクト・アリス
詳細情報は伏せられていて、分かっているのは主研究を海上に建設した移動研究所だということ。
「海上移動研究所……」
「……条件的には、一致する……」
海上移動研究所、確かに、ヘリコプターで海上に出たことから、条件には一致する。
「……なんだっけ、確か一度その研究所の写真が公開されたんだけど、亀みたいだけど、豚にも見えた……」
リーファは思いだそうと、腕組みしながら唸り始めた。
すると、シノンが
「亀でもあり、豚でもある……確か、神話に居たわね、そんなのが……」
と呟いた。
シノンとリーファだが、結構な読書家で、特に北欧神話を読んでいる。
その二人は、今言った言葉に引っ掛かりを覚えた。
亀でもあり、豚でもある。その生き物に名前を、アスナは最近何処かで聞いた。
三人が唸り始めると、他のメンバーは邪魔にならないようにと黙っていた。
そして
『ラース!!』
と三人が、同時にその名前を思い出した。