明日奈達がオーシャンタートルに到着した頃、ヨシアキとリヒトは大会に参加し順当に勝ち進めていた。
当たった誰もが、ヨシアキとリヒトの動きに対応しきれず、一撃で勝ち続けた。
「いよいよ、決勝だね」
「そうだね」
二人は、与えられた控え室で会話していた。
最早、二人がセントリア修剣士学校に通えるのは確定しているが、だからと言ってわざと負ける気は毛頭無い。
やるからには、全力で戦う。
それが、アインクラッド流だからだ。
しかし
「だけど……面倒だなぁ……」
ヨシアキはそう言いながら、部屋の壁に貼られてある対戦表を見た。
決勝の対戦相手の名前は、レオト・マクルガー。剣の腕は、中の下で大したことはない。
ならば、何故面倒なのか。
それは、レオト・マクルガーが貴族だからだ。
ヨシアキは一度、偶然だがレオト・マクルガーの試合を観ることが出来た。
その試合でレオト・マクルガーの腕を見れて、レオトが貴族と確信した。
何故ならば、その時のレオトの対戦相手の剣の腕は上の下だったのだが、レオトの攻撃を受ける瞬間にわざと握りを緩めたのが見えたのだ。
剣を持って戦っている間、手の力を緩めるというのは確かに必要だが、防御の時に力を緩めるのは有り得ない。
ならば、出来レースということで、そんなことをするのは貴族に他ならない。
そして、ヨシアキの読みは的中していた。
レオト・マクルガーはマクルガー伯爵家の三男で、マクルガー家現当主は三兄弟全員が修剣士学校に通っているという箔を着けるために、剣の才能がそれほど高くないレオトを大会に参加させ、あまつさえ運営委員会の一部と身内を出場させて、ブロック優勝をさせようと画策したのだ。
結果、レオトに当たる対戦相手は、軒並みが格下になるように調整したのだ。
しかし誤算は、ヨシアキが居たということ。
「ま、やりますか」
ヨシアキはそう言いながら、部屋に用意されていた剣ラックの中から一本を適当に掴んで、会場に向かった。
そして、この大会に出場して分かったことだが、この世界にも剣術は確かにあって、それらはどうにも威力もあるが、見栄えの方に偏重されているように感じた。
「剣は確かに見せ物もあるけど、何よりも戦うための技術でしょうに……」
ヨシアキはそう呟きながら、会場でレオトを待ちながら剣を肩に担いだ。
そして、待つこと少し
「ふん、逃げなかったようだな。庶民風情が」
とレオトが、大剣を持ちながら侮蔑的な言葉を投げ掛けてきた。
「逃げる理由が無いしね……勝てるって分かってるのに」
しかしヨシアキは、レオトの言葉を軽く受け流して構えた。そんなヨシアキの態度に舌打ちしながらも、レオトは大剣を肩の高さで構えた。
その時ヨシアキは、その大剣の光が少し違うように感じた。
(……まさかね……)
ヨシアキがそう思った直後、ゴングが鳴って試合が始まった。
レオトは一気に駆け出し
「ザアァっ!!」
と気合いの声と共に、大剣を振り下ろした。それをヨシアキは、冷静に剣で受け流すように防いだ。
そしてヨシアキは、防いだ際に聞いた音で確信した。
(あの大剣、優先度が高いのか!! さっき、この剣から嫌な音がした!)
それもまた、マクルガー家現当主の企みの一つだった。
レオトの剣を受け止めたら折れ易くなるようにと、レオトの使う剣は大会側が用意するよりも優先度が高い大剣を使わせているのだ。
(……本当に、面倒だな……)
「何時まで耐えられるか!?」
レオトはそう声を上げながら、大剣を次々と振るった。だがヨシアキは、それを必要最低限の動きで全て回避し続ける。
するとレオトは、苛立った様子で
「逃げるだけか、臆病者め!!」
と大剣を横凪ぎに大きく振り回した。だがヨシアキは、それを利用して距離を大きく取った。
具体的に言えば、レオトの剣身を蹴って飛んだのだ。
そうして着地したヨシアキは、剣を構えた。
それを見たレオトは
「どうやら、覚悟を決めたようだな!」
と大剣を大上段に構えた。すると、大剣に青いLEが宿っていく。
どうやら、奥義を使うつもりのようだ。
使うのは、ハイ・ノルキア流の奥義。
技名は忘れたが、使われるSSは分かっている。大剣流SS、アバランシュである。
だからヨシアキも、片手剣流SSを発動用意させた。
ソニックリープ
優先度の高さから、かなりの確率でヨシアキの剣が折れてしまうだろう。
しかし、ヨシアキはある箇所を見逃していなかった。
レオトの使っている大剣の柄から約20cmの位置にヒビがあったのだ。
幾ら優先度が高くとも、レオトの扱いが悪くて損耗度が飛躍的に早まっているようだ。
(狙うは、一点!!)
二人は同時に動き、甲高い金属音が会場に響き渡った。
そして十数秒後、レオトの大剣の
「なっ……」
事実が受け入れられず、レオトは自身の手の中に残っている柄部分を見ながらワナワナと震えていた。
そこに、ヨシアキが剣を突き付けて
「どうする?」
と問い掛けた。
大剣が折れたことにより、レオトに選べる選択肢は一つだけ。
それを理解しているからこそ、レオトは苦々しげにヨシアキを睨みつけながら
「……降参だ……!!」
と宣言した。
これにより、ヨシアキのブロック優勝が決定。
リヒトも、危なげなく優勝を決めており、二人は無事にセントリア修剣士学校に入学を決めた。
そしてヨシアキは、ここで懐かしい人物と再会することになる。