「なんで、キリトがウォロ先輩と模擬戦してるのさ!?」
とヨシアキは、訓練場を見て頭を抱えた。
それは、ヨシアキだけでなくキリトも剣を入手して少し経ったある日のことだった。
その日ヨシアキは、アシュリーの許可も貰えたので朝から街に買い物に出ていた。
細々とした物を買って戻ったら、何故かキリトとウォロ・レーバテインが模擬戦をすることになっていたのだ。
「それが……」
頭を抱えていたヨシアキに説明を始めたのは、キリトと行動を共にしている少年。ユージオだった。
ユージオの話によれば、キリトは当初、学園の中庭でルーリッドから持ってきた花のタネを育てていたらしい。
その後、そのまま中庭で新しく入手した剣の調子を確かめるために剣を振り始めた。
そこまでは良かった。そこにウォロが通り掛かり、更には先日降った雨で足下に泥が有って、キリトが振った剣により飛んだ泥が、ウォロの制服に付着したのだ。
決してわざとではないが、それでも上級生として何らかの罰則を与えないといけない。
そこでウォロは、キリトに模擬戦を挑んだのだ。
「僕からもウォロ先輩にはお願いしたんだけど……」
「大丈夫、ユージオは悪くないから。キリトの運の悪さが原因だから」
ユージオが苦い表情を浮かべながら言うと、ヨシアキはそう言いながらユージオの肩に手を置いた。
ユージオはウォロの傍付きなので、なんとか模擬戦をしないように嘆願したのだろう。
そんなユージオを労いながら、ヨシアキは内心で
(キリト、巻き込まれ体質だからなぁ……)
と溜め息を吐いた。
その時、訓練場の端に居たキリトが傍付きとなっている上級生、ソルティリーナ・セルルトが
「構わん! 本気でやれ、キリト!!」
と声援を飛ばした。
それを聞いたキリトは、ニヤリと笑みを浮かべて
「了解しました、リーナ先輩!」
と答えた。
リーナというのは、ソルティリーナの愛称である。名前が長いから、そちらで呼んでくれと言われている。
「行くぞ……ぜあぁ!!」
ウォロは気合いの声を上げながら、持っていた剣を轟と振り下ろした。恐らく、並の剣士だったら一撃で勝負は決まっていたかもしれない。
その攻撃を受け止めたキリトだったが、後ろに数十cmは押し飛ばされた。
着地したキリトは、右手を軽く振りながら
「初手から本気とは……少し大人げないんじゃないのか?」
と言葉を投げ掛けた。
「模擬とは言え、試合なのだ……本気で行かないのは、失礼というものだ!!」
ウォロはそう答えながら、剣を肩に担ぐように構え直して
「はっ!!」
と再び、一撃を繰り出した。その一撃をキリトは、剣を斜めにして受け流した。そして
「しいっ!!」
と突き出した。
ウォロはその一撃を剣で軌道を反らしたが、その目は驚愕で見開かれている。
「……貴様、本当に入学したばかりか?」
「ああ、そうだよ……まだまだ行くぞ!」
その言葉を皮切りに、キリトは更に早く動き始めた。
「む、ぐっ!?」
「せあっ!」
ウォロはキリトの早さに終始押され気味になるが、それでも上級生らしく一撃は入らない。
「むんっ!!」
「おっとと!?」
鍔迫り合いになった際、ウォロはその力でキリトを押し飛ばした。
「どうやら、奥義を使うしかないようだな……」
「それは、恐悦至極……」
短く会話すると二人は、それぞれ構えた。
ウォロは、自身が使うハイ・ノルキア流奥義、
それに対しキリトも、剣をまるで弓を引くように構えた。
(まさか、アレを狙ってる?)
ヨシアキはキリトの狙いに気付き、僅かに眉を動かした。その直後、二人は同時に動いた。
「おおおおおぉぉ!!」
「はあぁぁぁぁぁ!!」
ウォロの天山割覇、またの名をアバランシュ。
そして、キリトのヴォーパル・ストライクが激突し、激しい金属音が訓練場に鳴り響いた。
二人の体は交差し、立ち位置は入れ替わった。
その数秒後、ウォロの持っていた剣の上半分が床に突き立った。
その証拠に、ウォロの手の中には柄と僅かに刃が残っているのみ。
そこに
「そこまで!」
と新たな声。訓練場に居た全員の視線が、声が聞こえた方に向いた。その先に居たのは、一人の女性。
「あの人は、寮監さん?」
その女性は、修剣士学園の寮監だった。
するとその女性は、ウォロに
「ウォロ・レーバテイン……いい経験になりましたね」
と言った。するとウォロも、素直に頷き
「はっ……世界の広さを知りました」
と告げた。
それを聞いた女性は、頷いてから
「今回のことは、これにて終わりとする! 総員解散!」
と告げた。
「え、あの人って……」
「知らないのか? あの方は、三年前の主席にしてウォロの師範だった方だ」
「……わお」
リーナの説明に、ヨシアキは驚く他なかった。
その間に、ウォロは折れた剣を拾って
「以後、訓練する時は場所に気をつけろ」
とキリトに言ってから、去っていった。その言葉にキリトが頭を下げていると、ユージオが駆け寄り
「今の奥義は何!? 僕知らないんだけど!?」
「あー……まだ教えてない奥義の一つで……」
とキリトに詰め寄った。
どうやら、知らない技だったのが衝撃的だったようだ。
そんな光景に、ヨシアキが深々と溜め息を吐いていると
「あの方を呼びに行ってよかった」
とアシュリーが、溜め息混じりに言ったのだった。
最近、これのリメイクを考えてます